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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第四章 異世界聖戦

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第301話 クラティナとの別れ

 トリアングルム王国からの帰り道。行きと違って、めっちゃくちゃ豪華な大名行列になってしまった。ソフィアをちょっと救って帰ってくるつもりが、何故か隣国の王族と軍隊、そして大量の物資を乗せた馬車列を引き連れている。途中で立ち寄った町のホテルも最上級の物を用意され、兵士の警備の元でゆったりとくつろぐ事が出来ている。


 ただ…。まだいる。護衛の騎士とメイドが常に身の回りにいる。こんなんじゃソフィアにチューすることも出来ないし、みんなでワイワイ風呂に入る事すらできない。まあいないからといって、ソフィアとチューが出来るとは限らないが…。


 俺はヒッポから落ちた時の、ソフィアとの事を考えていた。あの時、シーファーレンが来なかったら、俺はソフィアと深いチューをしてたはずだ。まあ…チューしてたら死んでたけど。


 ホテルで一夜を過ごした朝、メイドが俺の部屋にやって来た。


「メルキン様がいらっしゃいました」


「ああ、通して」


「失礼いたします!」


 脳筋っぽい王子が入って来た。


「出発ですか?」


「はい。本日国境を越えます」


「わかりました」


「すでに詳細は、早馬でヒストリア王国に伝わっているはずです。越境の際は何卒お口添えを」


「はい。お任せください」


「では、間もなく出発です」


 そしてメルキンが出て行き、俺とアンナだけになった。


「かなり時間がかかってしまったな聖女」


「そうだね。まさかこんな風になると思っていなかったから、ヒッポなら一日で帰れるのに」


「きっとヒストリアでは騒ぎになってるぞ」


「無断で国を出ちゃったもんね。いくら偽装したって、スティーリアとミリィとアデルナだけじゃ、もうバレちゃうだろうし」


「彼女らには、気苦労をかけているだろうな」


「ヒッポで先に帰りたかったけど、この軍隊が越境するとき私がいないと、トリアングルムが攻めて来たとか言われるだろうし…。仕方ないよね」


「そうなるだろうな」


「じゃ、行こっか」


 俺とアンナが部屋を出ると、既にソフィアとその両親、仲間達が待っていた。そこにシーファーレンが近づいて来て言う。


「聖女様。次の村でクラティナとはお別れになります」


「そっか。彼女の村だもんね」


「はい」


 そしてまた大名行列が始まった。物凄い列になり、馬車の数もハンパない。長々と続く車列に市民達も驚いている。だが俺はさっきシーファーレンから聞いた話が気になり、クラティナを一緒に馬車に乗せた。この馬車には俺とクラティナとアンナしかいない。


「クラティナ」


「はい」


「一緒に戦ってくれてありがとう」


「いえ。シーファーレン様がいらっしゃいましたので」


「そっか。そうだね」


「はい…」


 シーファーレンと離れる事が寂しいのだろう。めっちゃ悲しそうな表情をしている。


「あのね、クラティナ」


「はい」


「あなたはこの国の生まれなんだっけ?」


「そうです」


「そっか。あなたはあそこの村に帰るの?」


「はい」


「そうなんだね。あそこが気に入ってるのかな?」


「えっと、私がいないと薬を求めている人達が困るから」


 なるほどなるほど。クラティナは優しいんだね…。


「あのね。メリールーがこの国の医療大臣になったんだ。そして、私はトリアングルムの王族にも提言する事が出来る。貧困の人たちにも手を差し伸べる約束をしたんだよ。じきに各町の医療が充実し始めると思う。きっとクラティナがいなくても、医療が充実する日が来ると思うんだ。それも、そう遠くない未来に」


「えっ、そうなんですか?」


「私がそうさせるから。カイト王子とも王様とも約束したから」


「凄い…」


「だから。あなたが居なくても、村に薬が行き届くようになる日が必ず来る。そうしたらヒストリア王国の私を訪ねて来てほしい。シーファーレンと一緒に過ごせるようにしてあげる」


「えっ…シーファーレン様と…」


「そう。彼女と一緒に居たいでしょ?」


「それは。はい…。 でもシーファーレン様は迷惑じゃないでしょうか?」


「そんな事を考えてたの?」


「はい」


「絶対迷惑じゃないと思うよ」


「…本当ですか?」


「本当だよ」


「…」


「君に、これを託すから」


 そう言って俺は、黒いアラクネのマントを渡した。


「これは?」


「ずっと私の命を守ってくれたアラクネのマント。これを私に返しに来てね」


 するとクラティナはコートを抱いて言う。


「はい。必ず…必ずお届けします」


「まってるよ」


「はい」


 そうして大名行列はクラティナの村を通りかかった。俺がメルキンに言って行列を止めてもらい、クラティナを降ろす。俺とシーファーレンも降りて、クラティナと挨拶をした。


 シーファーレンが言う。


「クラティナ。ありがとう、本当に助かったわ」


「いえ…」


「これでお別れになるけど、またいつか会いましょう」


「はい。また…いつか…」


 そう言ってクラティナが俺をチラリと見た。俺はにこりと笑ってピースサインをする。するとクラティナは安心したような表情で、シーファーレンに力強く答える。


「はい! いつか必ず!」


「ええ!」


 命がけでネメシスと戦ってくれたクラティナと別れ、俺達の行列は再び出発する。姿が見えなくなるまで、クラティナはずっと手を振り続けていたのだった。俺の馬車に一緒に乗ったシーファーレンが、名残惜しそうにずっと見ている。


 俺がシーファーレンに言った。


「彼女は凄く優しいね」


「そうなんです。村の人の為にあそこに残ってるんです」


「そうみたい。でもいずれこの国は変わる、その時は…」


「ありがとうございます。お心遣い感謝します」


「シーファーレン。クラティナとの思い出聞かせてもらえる?」


「よろこんで」


 俺とシーファーレンとアンナが乗る馬車で、シーファーレンが語りべとなり、二人の思い出の物語を聞かせてもらうのだった。

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シーファーレンとクラティナのカプも尊い!!
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