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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第四章 異世界聖戦

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第268話 情報収集と種まき

 店を開店しても、すぐに客は寄り付かなかった。だがそこでクラティナは、店頭でアルコールランプのような物に火をつけて置く。するとお香のような、とてもいい香りがあたりに漂い出す。


 その臭いに誘われて、人が寄って来た。


 慣れてるようだ。


 すると客が声をかけて来る。


「これは、なんだい?」


 ランプを指さしている。


「いい匂いだろう? これは特製のオイルなのさ」


「いい香りだ。これは売ってもらえるのか?」


「中身のオイルだけね。安くないよ」


「見せてくれ」


 足元の背負子から小瓶を取り出して、目の前にかざして瓶のふたを開ける。


「嗅いでみて」


「直接、嗅ぐときついんだな」


「だろ? 燃やすと丁度いいのさ」


「いくらだ?」


「ひと瓶、銀貨五枚。もし入れ物を持って来てくれたら、銀貨四枚にするよ」


「そんなに高額でもないな」


「んじゃ倍にするかい?」


「いやいや。一本おくれ」


「まいど!」


 その買う様子を見ていた後ろの客が言う。


「他には何かあるのかい?」


「さあてね。あたいは薬師だからね、薬を売りに来たんだ」


「腹痛に効く奴はあるかい? うちのボンズが何か悪いもの口に入れたみてえなんだ」


 するとクラティナがごそごそと背負子から、何包かの薬の包みを取り出した。


「これが腹下しの時に飲むやつ。こっちは虫下し、でこっちは整えるやつだ。どれがいい?」


「うーん。虫下しかもしれねえし、腹を下してるだけかもしれねえ」


「なら。一度虫下しを飲まして、酷くなったら腹下しの薬を飲ませると良いよ。その後で整えるやつを飲ませれば落ち着くんじゃないかな」


「わかった。三つくれ」


「銀貨六枚だよ」


「なんとかまからんか?」


「じゃあ他をあたっておくれ」


「わかったよ」


 そして男はジャラジャラと銀貨を出して払う。だがクラティナは三包をわたして、もう一つ小さな木箱を渡した。


「なんだいこりゃ?」


「ちっさい子がいるんだろ。なら良く怪我するだろうから、傷薬を少し分けてやるよ」


「いいのか?」


「気前よく払ってくれたからね」


「わりいね。いただいて行くよ!」


 なかなかに商売がうまい。するとそれを見ていたシーファーレンが、俺をこっそりしゃがませる。


「なに?」


「思いの外、商売がうまいようです。ここは評判になるために、ある事をしましょう」


「ある事?」


「話題になるような事です」


 そしてシーファーレンが言う。


「テン」


「はい!」


「傷薬はまだあるかしら?」


「あります!」


「それを見せてもらっても?」


「はい」


 クラティナがシーファーレンの前に傷薬を並べた。するとシーファーレンはその傷薬の前に魔法陣を書き始めた。


「ごめんね。テンの薬は効くと思うんだけど、更に仕掛けてもいいかしら?」


「自由にしてください!」


「ええ」


 そして魔法陣の上に、クラティナの薬の木箱を並べ始めた。そしてシーファーレンが俺を振り向いて言う。


「聖魔法をよろしいですか?」


「これにかければいいの?」


「はい」


 俺は地面の上でこっそり聖魔法を使う。光が魔法陣と木箱に注いでいき、木箱が光り輝いたあとで光が消える。


「よし。じゃあこれを普通に売りましょう」


「はい」


 それからポロポロと来る客に薬を売っていく。同じようにおまけで傷薬を売り、だいぶ金も溜まってきたようだ。クラティナがにこにこしながら言う。


「やっぱり、田舎で売るよりお金がいいです」


「それはよかった。だけどじきに買った客が戻って来るわ」


「そうですか?」


 そしてシーファーレンの予言は当たった。何人か目に薬を買って行ったおばさんが、血相変えてやってきたのだ。


「あ、あんた! どえらいもんを売ってくれたね!」


 だがクラティナは呆然として答える。


「ん? 普通にかゆみ止めをやっただけだろ」


「ちがうよ! そのおまけでつけてくれた傷薬さ! 旦那の大怪我が一発で治っちまったんだよ!」


「そんなばかな」


 だがクラティナはハッと気が付いて、シーファーレンを見る。そこでシーファーレンが言った。


「うちの傷薬は特製だから。それは効くはずよ」


「あれはもっと売ってくれるのかい?」


「うーん。あれは他の物を買ってもらった時につける物だから、売るわけにはいかないのよね」


「じゃあ買うよ! そのいい香りのオイルを買ってもくれるのかい?」


「二本買ってくれたらね」


「わかった! 二本で銀貨十枚だね!」


「ありがとうございまーす」


 するとおばさんは、オイルを買って傷薬を貰って言った。でシーファーレンが言う。


「では。今日はこのあたりでいいかしら」


「えっ?」


「明日は忙しくなるわよ」


「わかりました」


 そうして早々に店じまいをし、俺達はさっさと宿に戻るのだった。宿に戻ると、マグノリアとゼリスが出迎えてくれる。


「お帰りなさい!」


「何か変化はあった?」


「今のところは特別な情報は無いです。貴族や高級商人などの宿泊客ばかりですが、マルレーン家がやって来てる様子はありません」


「まあ、続けようか」


「はい」


 そして俺達がまっていると最後にネル爺が帰って来た。そしてネル爺から報告が入る。


「王家御用達の武具屋は二軒ございました。武具の補修や手入れで王宮に足を運ぶ事があるそうです」


 それを聞いて俺が答える。


「おお。それは朗報だ。なんとか潜り込みたいね」


「残念ながら人を雇う予定は無いようでした」


 だがそれを聞いていたシーファーレンがくすりと笑って言う。


「なんと幸運が続くのでしょうね。流石は聖女様のパーティーというところでしょうか」


「でも。募集はしてないようだけど」


「大丈夫です。今は少し待ちましょう」


「わかった」


 そうして俺達の潜入捜査一日目は終わるのだった。俺としては何かが進んだ感じが一切しないが、シーファーレンは手ごたえを感じている様子だ。とりあえずそれを信じて、今日のところはこれで終るのかと思いきや、シーファーレンが言う。


「では飲みに参りましょう」


「あ、これから?」


「はい。聖女様とわたくし、アンナ様とクラティナで」


「わかった。それじゃあ、リンクシルはマグノリアとゼリスの護衛で残ってくれる?」


「はい」


「わ、わしは?」


 するとシーファーレンが言う。


「ネルさんも残って、皆さんを護衛して下さる?」


「わかったのじゃ」


 そして俺達が着替えをして、シーファーレンが再調整した変身用ペンダントをつける。すると俺達四人は、妖艶な娼婦のような見た目になるのだった。


「これで行くの?」


「これでいいのです」


 俺達はセクシーなお姉ちゃんになって、夜の繁華街へと繰り出す事になったのである。

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