第266話 各自の持ち味を生かして
俺達は早速、王都へと潜入して調査を開始する。だが王都は広くて大きく、俺達が欲しい情報は全くと言っていいほどに聞こえてこない。まあこんな大きな町では、隣国の貴族がやってきたところで、それほど話題になるとも思えないが。
そもそもまだ到着していない可能性も高いし、本当にマルレーン家がここに来るかも定かでは無い。
「勇み足だったかな?」
「どうでしょう? まだいらっしゃってないのかどうかも分かりませんね…」
「確かに」
「いずれにせよ時間をかけて調べる必要があるかと思いますわ」
「そうだねえ」
するとネル爺が言い出す。
「あの! 聖じ…オリジンならば、王城へ直接出向いてもお通しされるのではないかと思われます!」
「正式な許可も貰ってきてないし、突然来たら騒ぎになるんじゃないかな?」
「で、ですが! 邪神の先回りをするならば、些末な事ではないでしょうか?」
…確かにネル爺の言う事も一理あるかもしれない。だが逆にネメシスにこちらの動きがバレる恐れもある。既にネメシスの手下らしき者とも接触しているし、こちらにネメシスがやって来る可能性は高い。
「作戦会議だね」
俺が言うと、シーファーレンが頷いた。
「その方がよろしいかと」
そして俺達は話し合いをする場所を確保する為に、宿泊宿をとる事にしたのだった。
「あまり高級な所を取るとおかしいよね」
「高くも無く安くも無く、中堅以上の冒険者が取るような宿がよろしいですわ」
「わかった」
するとそれを聞いていたクラティナが言う。
「私はいいです! 野宿します!」
それを俺が制する。
「だめだめ。仲間なんだから一緒に」
「えっ!」
シーファーレンがクラティナに言う。
「お言葉に甘えなさい。あなたも一員です」
「は、はい」
どうやら勝手について来た事を負い目に感じていたようだ。だが一緒に来たからには既に仲間、一人だけ野宿なんてさせられない。
そして街中を探し宿場街へとたどり着く。大通りに面した場所には、大きくて立派な宿屋が並んでいた。流石は王都だけあって、かなり大きなホテルが立ち並ぶ。
「奥に行こうか」
大通りから路地の奥に入ると、それほど装飾されていない宿がでてきた。
「ここがよろしいですわ」
シーファーレンに言われて一つの宿に入る。するとまあまあ品の良さそうなオヤジが、カウンターからこちらを見ていた。俺達が近づいて行くと、普通に挨拶をしてくる。
「いらっしゃいませ」
「えー、八人なんだけど部屋は空いている?」
「空いて御座います。ですが四人部屋が二つとなります」
…まてまて。もし宿泊するとなったら、ジジイと同じ部屋になるかもしれないって事?
「悪いけど一人男だから、一人部屋をもう一つ用意できる?」
「もちろんでございます。ですが三部屋分の料金となります」
「問題ない」
そうして俺達は部屋を確保した。早い時間帯だったので、丁度人が抜け出た所だったらしい。一人部屋は一階で、四人部屋が二階にあるらしく、階段の下でネル爺と別れる。
「あとで部屋に」
「はい」
二階に上がり部屋の前で俺達が足を止めた。
「部屋割りはどうしよう」
するとクラティナが最初に手を挙げた。
「はい! ゼロと同じ部屋を希望します!」
「え…」
シーファーレンが若干嫌そうな顔をする。そこで俺が言った。
「ゴメンねクラティナ。今回は重要な仕事だから、大事な話もあるんだよね。護衛の問題もあるし、私とゼロとエンドが一緒、ファイ(リンクシル)とシクス(マグノリア)とナイン(ゼリス)とクラティナが一緒かな」
「あ…はい…わかった…」
クラティナがめっちゃ残念そうな顔をするが、本当に遊びじゃないので我慢してもらうしかない。
「とにかく荷物を降ろしたら部屋に来て」
「はい!」
そして俺達は各部屋に分かれて入る。するとシーファーレンが俺に言って来た。
「ありがとうございます。聖女様」
「あれにくっつかれてたら休まらない」
「はい」
そして俺達が荷物を下ろして一息つくと、ネル爺や隣の部屋の面子がやって来る。
「さてと、まずは何をしたらいいだろう?」
俺が言うと、最初にマグノリアが手を挙げた。
「あの。ゼリスのテイムで周辺のホテルを調査したらどうでしょうか?」
いきなりいいアイデアが出て来た。流石にマグノリアも、俺と散々修羅場を潜り抜けて来て分かっているようだ。
「そうしよう」
「それがいいですわね。高級ホテルの側に宿を借りれたのは良かったわ」
そしてクラティナが言う。
「あの! 薬をいっぱい持って来たのだけど、市場でそれを売りながら情報を探るというのは?」
それも悪くなかった。人が集まる場所での情報収集は効果的だろう。
「市場で店を借りるにはどうしたらいいか知ってる?」
「大丈夫! 任せてほしい!」
クラティナは薬販売については慣れているようだ。ならばひとまず任せてみるのがいいだろう。
「ならば、わしは武器屋や道具屋などを周って、王室と繋がっている店を探してみましょう」
めっちゃすげえ。
「それも名案だ。ならネル爺にはそれをお願いする」
「は!」
するとシーファーレンが俺に言う。
「マグノリアとゼリスは部屋にいながらにして出来ますわね。クラティナには護衛をつけたいところですが…」
そこで俺が言う。
「リンクシル。クラティナの護衛についてくれる?」
「はい」
「私はどうしたものかな?」
するとシーファーレンが言う。
「わたくしに案が」
「なに?」
「修道士に扮して教会に潜り込みましょう。一人では怪しいので、わたくしとアンナさんと一緒に巡礼中だという事にしていくとよろしいかと」
「ではそうしてみよう」
宿を取って良かった。みんなもいろいろ考えてくれていたみたいだが、拠点を作った事で戻る場所が出来た。それによってバラバラに動いても、再び集まるのが容易になる。
そして俺は言った。
「ではあまり時間の余裕もないので、さっそく動こうかな。目的が達成されても、そうじゃなかったとしても、夜までにはここに戻ってくる事にしよう」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「じゃ、マグノリアとゼリスは留守番で」
「「はい」」
そうして俺達は、それぞれの目的を果たすために宿を後にするのだった。




