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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第四章 異世界聖戦

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第256話 賢者の力を知る

 シーファーレンを聖女邸に連れて来た俺は、すぐに執務室に連れて行って地図を広げて説明をする。これから確認しに向かう場所は三カ所、南東と南に位置する都市と村だ。シーファーレンは呑み込みが良く、一度説明しただけですべてを把握してくれた。


 そしてソフィアの元へ向かうメンバーは、俺、アンナ、シーファーレン、リンクシル、マグノリア、ゼリスの六人。ヒッポに馬車を取り付けて、それに乗って行く予定だ。しかし俺のパーティーメンバーもだいぶ立派になったものだ。


「ちなみにコードネームを言うね」


「はい」


「私はオリジン、アンナがエンド、リンクシルがファイ、マグノリアがシクス、ゼリスがナイン シーファーレンはゼロでいい?」


「わかりましたわ」


「では夜の出発まできっちり腹ごしらえをしよう」


 俺達が食堂に行くと、既にミリィ達が食事を用意してくれていた。俺達は席についてすぐに飯を食う。結構がっつり系で、しっかりと腹に溜まる物にしてくれている。


「お酒はお預けでごめんね」


「仕事の前ですわ」


「帰ったら打ち上げしよう」


「はい!」


 シーファーレンが頬を染めて喜んでくれた。思わずその胸元に顔をうずめたくなるような笑顔だが、グッと我慢をして食事を続ける。その後、食事が終わって出立の準備をすることになった時、俺はシーファーレンにある物を差し出す。


「これなんだけど着てくれる?」


 それは黒いローブで、実は俺のアラクネのローブとおそろいだった。漆黒のローブは夜に身を隠す事ができ、強靭で魔法も弾くのでかなり役に立つ。


「まあ! こんな高価なものを」


「私とお揃いで申し訳ないけど」


「聖女様と同じだなんて光栄ですわ。そうだ! せっかくだから魔法を付与いたしましょう」


「えっ?」


「ナイフと筆とお水をください」


「ただいま」


 ミリィがナイフと筆と水瓶を持ってくる。


「この水がめ、後で洗ってくださいね」


「はい」


 するとシーファーレンは自分の手のひらをスッとナイフで切った。血がぽとぽとと水がめの中にしたたり落ちていく。


「大丈夫?」


「ええ。ちょっとまってくださいね」


 シーファーレンが水がめの上から手をひいたので、俺が回復魔法で傷を塞いだ。


「あら。わたくしでもできましたのに、聖女様から治していただけるなんてとてもうれしいですわ」


「痛そうだったし」


 次にシーファーレンは筆を水につけて、アラクネのマントの裏側に何かを書き始めた。血が混じったとはいえ水で書いているので、何を書いているかは見えないが、筆の流れを見ると魔法陣を書いている事が分かる。シーファーレンが筆をおいて、アラクネのマントに手をかざし何か唱えた。するとアラクネのマントの上に、何重にも幾何学的な魔法陣が浮かび上がってきた。


「凄い」


 皆も、その神秘的な光景に見とれていた。何重にも重なった光の魔法陣が、一枚一枚降りて行ってマントに消えた。


「定着しました」


「魔法が付与された?」


「はい。ではもう一枚も」

 

 同じような作業でもう一枚のアラクネのマントに魔法を付与した。するとシーファーレンがニッコリ笑って言う。


「これで世界に二つとないお揃いのマントになりましたわ」


「何の魔法を付与したの?」


「自然治癒と毒効果無効、火炎と氷結に耐性をつけ、物理攻撃にも若干防御力が上がりましたわ」


 すっご…


「ありがとう! かなりの強化になった!」


「でも過信は禁物です。マントが破壊されない訳ではありません」


「大丈夫。結界を張るから」


「それは頼もしい」


 にしてもあっという間に魔道具にしてしまうその才能が凄い。皆も尊敬の眼差しでシーファーレンを見つめていた。するとその視線に気が付いたシーファーレンが、だんだん真っ赤になって来る。


 これ以上見ていたら顔から火が出そうなので俺が言う。


「じゃ、いこっか」


「はい」


 俺達が庭に出ると、ヒッポが空から降りてきた。マグノリアがヒッポに聞く。


「ご飯食べた?」


「ぐるぅぅ!」


「聖女様、万全です」


「じゃあ馬車を繋いで」


 みんなが協力をして馬車を繋ぎ、マグノリアとゼリスがヒッポの背中に座った。


「じゃあ行って来る。朱の獅子は屋敷のみんなをよろしくね」

 

 ロサが代表して答えた。


「任せてください。責任をもって護衛いたします」


「では」


 すると聖女邸の皆が言う。


「「「「ご無事で!」」」」


「はい」


 俺達四人が馬車に乗り込むと、新しいパーティーを乗せたヒッポは空高く夜空に舞い上がるのだった。


「マグノリア! まずは南東へ!」


「はい」


 ヒッポがぐんぐんとスピードを上げ王都を飛び出した。夜の月が大きく輝き、ある場所から見れば一瞬月に馬車の影が映っただろう。暗い草原の上を飛ぶ窓から、シーファーレンが外を見て喜んでいる。


「こんな高く飛べるなんて凄いですわ」


「面白いでしょ」


「月がこんなに近くに」


「綺麗だよね」


 シーファーレンの横顔が。


「ええ。月がとってもきれいですわ」


 ヒッポのお腹も満タンなので、しばらくは休みなしで飛び続けるだろう。


 そして数時間後の深夜、シーファーレンが言う。


「そろそろ目当ての都市が見えてくるはずですわ」


 俺は前に身を乗りだし、ヒッポの背中にいるマグノリアに叫ぶ。


「マグノリア! 低く飛んで」


「はい」


 ヒッポが降りるとそこは森の上だった。


「街道を探して」


 旋回しながら飛んでいると、下に道らしきものが見えてきた。


「道沿いに飛んで」


「はい」


 そして地面から三十メートルほど上空を、街道に沿って飛んでいくと道の先に都市が見えてきたのだった。


「降りて」


「はい」


 マグノリアがヒッポを着陸させ。俺達は荷物を背負って街道に降りた。


 するとマグノリアが言う。


「私を呼ぶときはこの鳥に言ってください。ゼリスが使役しています」


 そう言うとゼリスの手からパタパタと俺の肩に鳥がとまる。青とグレーの綺麗な鳥で、頭の上に毛が立っていた。


「二人は、なるべく安全な所にいてね」


「はい! 大丈夫です!」

 

 俺達が手を振ると、マグノリアとゼリスを乗せたヒッポが舞い上がった。俺達の上を一回旋回して月に向かって飛んで行く。


「じゃ行こう」


 三人がコクリと頷いた。リンクシルが先行し、危険を察知出来る位置に着く。俺とシーファーレンがその少し後ろを歩き、俺達の後ろにアンナがついて来る。


「この都市にいると良いんだけど」


「そうですね」


「アンナ。万が一はシーファーレンを守ってね」


「そのつもりだ」


 俺達は月夜の草原を歩き、夜の都市までもう少しの所で立ち止まる。門には見張りがいるが、女の集団が深夜に現れたら怪しむだろう。するとシーファーレンが言う。


「回り込みましょう」


「分かった」


 都市を左手に見ながら、俺達は迂回するように茂みを回り込む。街を囲む柵はそれほど高くはなく、よじ登ればは入れそうだった。


「ここを登ろう」


「そんなそんな、聖女様にそんなことはさせられません」


 シーファーレンが杖を高く掲げて言う。


「フライ」


 スッと俺の体が浮かび上がった。


「えっ?」


 俺は簡単に柵を飛び越えて都市の内部に入るのだった。今まではアンナに引っ張ってもらっていたが、なんとスマートな進入方法なのだろう。シーファーレンの凄まじい力に感心してしまう。アンナとリンクシルは自分で飛び越え、シーファーレンが最後にフライで飛んで入ってくるのだった。

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