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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第四章 異世界聖戦

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第247話 擬似クーデター

 作戦決行当日。


 俺は皆の前に立ち最終の伝達事項を述べる。


「私一人で行きます。もし最後に罰せられるとすれば全ては私のみの責任で」


「嫌です。もし捕らえられるのならば私も」


 ミリィが言うと、スティーリアも前に出て言う。


「私もです。お咎めを受けるなら、私も一緒に」


 ヴァイオレットもアデルナも申し出て来る。


「私も残るのは嫌です」

「私もですね。ここまで来て逃げるなんてできません」


「でも。もし咎められたら、死罪だってあり得るんだよ」


「ダメです。これは皆の意思です」

 

 ミリィが言うと皆が深く頷いた。リンクシルやマグノリア、ルイプイやジェーバ、マロエやアグマリナまでが目を潤ませて俺に懇願して来た。それならば俺は覚悟を決めて言う。


「あの…、これから不敬で衝撃的な事を言うけど良いかな?」


 皆が頷いた。


「万が一、罰せられるような事になりそうだったら、私はそのまま国家転覆します。擬似的なクーデターではなく、本当にクーデターにしてしまいましょう。その後は私達が国を動かします。その覚悟はありますか?」


 ミリィが涙を溜めながら笑って言った。


「いまさら聞きますか? 私は全てを聖女様に捧げます」


 それを聞いたアンナが言った。


「覚悟を決めるのはどうやら聖女だったようだな」


「なるほどね」


 そして俺がシーファーレンに向かって言う。


「お世話になりました。これからどうなるか分かりませんが、賢者様は関係が無かったという事で」


 するとシーファーレンも泣きそうになりながら言う。


「何をおっしゃいます! わたくしもご一緒させていただきますわ! もし国家転覆などなった暁には、私のこの知恵をお生かして下さればよろしいのです」


「シーファーレン…」


「私達も、もはや後戻りできないところに来たのです」


 するとシルビエンテも深々と礼をしてきた。


「老いぼれの命、いかほどにもしていただいて構いません」


「…わかりました。では皆さん参りましょう」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


 俺達は変装の魔道具をつけて、全員で賢者邸を後にした。最初に向かったのはクビディタス教会の跡地だった。そこに行くと、聖騎士達がぞろりとそろい踏みしており、俺達を見かけた聖騎士長が近づいて来る。そこで俺達は変装の魔道具を外した。


「お待ちしておりました聖女様」


 聖騎士長が礼をすると、聖騎士達が俺に向かって敬礼をする。


「護衛をよろしくお願いします」


「は! 何人も近づけません」


 そして俺達は聖騎士達に囲まれて、ぞろぞろと王宮に向かって歩いて行く。本来なら第一騎士団が市中で警備をしているところだが、既に第一騎士団もこちらの手中にあった。全く何事もなく王宮に到着すると、これまた何事もなく王城の門が開く。


「ありがとう」


 俺が先頭になって入っていくと、ぞろぞろと第一騎士団が現れた。そして目の前に第一騎士団長フォルティスと副団長マイオールがそろっている。


「聖女様。お供いたします」

「私も!」


「ありがとうございます。フォルティス騎士団長。できましたら今日は誰も怪我をすることなく、平和に解決できるよう心から祈っております」


「「は!」」


 フォルティスとマイオール、そして第一騎士団が合流し王城へと入っていく。


 良かった…。本当に第一騎士団がこちらについてくれるか分からなかったけど、どうやら滞りなく協力してくれるらしい。こんなにすんなり行くと思わなかったので、俺は逆にあっけに取られていた。


 王城の玄関も何事もなく開き、なんとその中に近衛騎士団が待ち構えていた。


 どうでるか…


 だが杞憂だった。そこにはバレンティア近衛騎士団長が微笑んで立っている。


「聖女様、お元気そうで何よりです。失踪したと聞いておりましたので、我々騎士は皆恥ずべき事だと悔やんでおりました。晴れてお顔を見れた事、大変うれしく思います」


「ご協力ありがとうございます。バレンティア卿」


「お変わりなく?」


「むしろ元気にしておりました」


「はい」


 俺はそうそうたる騎士の面子を連れて、王城を歩いて行く。使用人達が何事かと、俺達の道を開けた。俺は先頭を歩き、ルクスエリムの待つ部屋へと向かう。


 俺達が最後のドアを開くと、そこに諜報部隊が待ち構えていた。今回の作戦で彼らとは接触できず懐柔していないので、今は王を守る立場としてここに立っている。


 諜報部のあの怖いおっさんが俺に礼をした。


「聖女様。まさかこのような暴挙に出られるとは、諜報部が一歩出遅れましたな」


「これはどうも。そして諜報部が見逃した罪は大きいかもしれませんね」


「そうですね。ですが我々は陛下を守る立場にあり、命に代えてもここを通すわけには参りません」


 するとバレンティアが俺の前に立って言う。


「近衛騎士団、第一騎士団、聖騎士団を相手にしますか?」


「…そうですね。用件次第ではそうならざるを得ないかもしれませんね」


「面白い…」


 めっちゃ殺伐とした空気が流れて来たところで、奥からルクスエリムの声が聞こえた。


「よい! 通せ!」


「は!」


 諜報部隊員達が道を開け、俺は王の前まで歩いて跪いた。


「聖女よ。そなたの覚悟は分かった。して、これは一体どういうことじゃな?」


「陛下。良かったです…まだ生きておられましたね」


「ん? どういうことだ?」


 そして俺が大きな声で言う。


「不敬を承知の上で申し上げます! ここに裏切者がおられます!」


「裏切者? それはお前達と、第一騎士団であり近衛騎士団、そして聖騎士団ではないかな?」


「いえ。私達の忠誠は変わらぬまま。ですが陛下のご子息であらせられるカレウス様には、その忠誠がおありでしょうか?」


 俺が言うと、部屋奥のカーテンの裏からカレウス皇太子が出てきた。


「何を言う! 聖女め! 言って良い事と悪い事の良し悪しも分からんのか!」


「いいえ。分かっているつもりです。それよりも、カレウス様。デバロー・ルース・ヒストル殿下とはかなり親しくなさっているようで」


「うっ。そ、それはそうだ。大叔父様と仲良くして何が悪い」


「不敬を承知で申し上げます。あなたは大馬鹿です」


「な、なんだと?」


「王位継承一位であるあなたが、なぜ王を脅かすような真似をなさったのです?」


「な、何の事だ?」


「言い換えましょう。なぜ、私の命をお狙いになったのです?」


「…それは…」


 カレウスは言葉に詰まった。それを見たルクスエリムが問う。


「どうしたカレウスや。そんな事は無いであろう?」


 するとその時、カレウスは隠し持っていた短剣を出してルクスエリムに飛びかかった。距離的には騎士達では間に合わない。フォルティスやバレンティア達が叫ぶ。


「陛下!」

「危ない!」


 だが俺は既にそれを想定していた。カレウスの頭上から大きな水玉が降り注ぎ、破裂し水浸しになったところで雷魔法を放つ。


 ピカッ!


 カレウスはその場に崩れ落ち、短剣が滑って俺の所まで飛んできた。俺はそれを拾い上げ、隣りにいたバレンティアに渡した。


「お見事です」


 そして俺はルクスエリムに振り向いて言う。


「陛下、お気づきでは無かったのですか?」


 ルクスエリムは一度立ち上がっていたが、そのまま椅子に崩れ落ちた。


「なんと…。殺したのか?」


「眠っているだけです。縄をおかけしても?」


「うむ…」


 その言葉を聞いてフォルティスとマイオールが、カレウスの側に行く。


「御免!」


 そう言って気絶しているカレウスを後ろ手に縛る。俺もカレウスの所に近づいて、カレウスに回復魔法をかけた。


「う、ううう…」


「お目覚めになりました」


 するとルクスエリムは立ち上がり、カレウスのもとにやってきた。


「なぜじゃ?」


 するとカレウスは少しずつ焦点を合わせてきた。


「はっ! これは…」


「カレウス。なぜこのような事を?」


「ち、父上」


「言って見よ」


 するとカレウスが俺をぎろりと睨んで言った。


「こいつが悪なのです! 悪は滅ぼさねばならない、父は既にこの悪に取り込まれているのです! だから殺さなければならなかった! そうでなければ、この世界は悪に滅ぼされてしまう!」


「何を言っておるのじゃ?」


「こんなものをのさばらせていたら、男達の立場が無くなり、女の力が強くなって世界は逆転してしまう!」


「だが女性の力を世の為に役に立てようというのは、間違ってはおらぬと思うがの」


「ほらぁ! 父上も母上も既に毒されているんだ! ビクトレナもすっかり聖女に洗脳されて、この世界を女の世界にしようとしているんだああああ」


「愚か者! お前は何を言っているのだ! そんな事でわしや聖女を殺そうとしたのか?」


「もう、こうするしかなかったんです。誰もが聖女を信じ騙されているんだ」


 ルクスエリムは目を伏せて、フォルティスに言った。


「連れていけ」


「は!」


 するとそこに突然声が鳴り響いた。


「まったく! お前の息子は使えんなあ!」


 窓の柱の裏から、突然人影が現れる。


 それをみたルクスエリムが言った。


「お、叔父上!」


「しかも雁首揃えて、そこの女の尻に敷かれおって」


 そこにいたのは、ルクスエリムの叔父であるデバロー・ルース・ヒストルだったのである。

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