第237話 王宮捜査に向けて
聖女邸の皆は、賢者邸に潜みつつも準備を始めていた。スティーリア、アデルナ、ミリィ、ヴァイオレット各自が、危険を顧みずに動いてくれた結果、いろいろと見えて来た事がある。
まず騎士達については、騎士専用のバーをオープンさせて、俺が昔助けた娼婦達がホステスとなり騎士から情報を聞き出した。飲み屋の名前が特徴的で、バー・マドンナ(聖母)と言うらしい。流石は過去に超ヘビーな娼館で働いていただけあって、男達をたぶらかす事にかけては天下一品だった。
騎士団の男達の、あまりものちょろさに不安を感じつつ、スティーリアから情報を聞く。それによると、どうやら近衛騎士団及び第一騎士団に裏切者がいる可能性は低いという事だ。また今は軍上層部も体質改善の為、急ピッチで体制の立て直しに入っているようで、ダルバロス元帥もケルフェン中将もシロだと分かっている。
次にアデルナがギルドに聞いたところ、何度か聖女の消息を探すような依頼が来ていたようだ。その者が誰かという事まで尋ねたが、依頼主の事は守秘義務があり離せないらしい。だがアデルナがビスティをそそのかして、依頼に来た人の特徴を聞くと、一般市民では無かったように思うと答えてくれる。
ここまででもかなりの情報ではあるが、まだまだ確度が低い。
次にミリィがゼリスの使役する小動物を使って、王宮内の情報を探ったところ、流石に王宮内で不用意な会話をする者はいないらしい。だが調査内容ではかなり気になるところがあった。宰相のザウガイン、総務大臣のペール、外務大臣のホムラン、それぞれに見えない動きがあるらしいのだ。その三人は王派の大臣として、秘密の会議にも参加した者達で、そこに裏切者がいるとすればかなり危険だ。
「でも、不自然って程度で犯人とは決めつけられないよね」
「そうですね」
「ケルフェン中将あたりに接触できれば、あるいは内部を嗅ぎまわる事が出来そうだけど、信頼に値するかどうかはわからない」
そこでスティーリアが言う。
「騎士を抱き込むのはどうでしょう?」
「騎士か。今のところは怪しい人はいないんだもんね?」
「そうですね。ただし、近衛と第一騎士団に限ります」
「接触するとすれば、バレンティア卿かマイオール卿だね。ただマイオール卿は多分使い物にならない、脳筋だし策を練る事など出来ないだろうから」
「でしたら、近衛騎士団長のバレンティア様?」
「それも厳しくない? この状況でどうやって近衛に接触するか。あの性格だったら、バー・マドンナなんかに顔を出さないでしょ?」
「はい。一度も」
「だよねえ」
すると皆が一度沈黙する。だがそこでアデルナがポツリと言った。
「聖女様に不敬を承知で申し上げます。接触できたとして聖女様がお口説きになれば、近衛騎士団長バレンティア様は動くかと思います。まあ聞き逃していただいて結構です」
う、ぐぼぁ! おげぇ!
「いやあ…無理かなあ。なんか危険を感じるしぃ」
違う意味で無理。多分俺が血反吐を吐くから。
「はい」
そこでシーファーレンが言う。
「ちょっとよろしいですか?」
「はい」
「あの。ヴァイオレットさんが、リヴェンデイル領から大量に持ち帰ってくださった魔石なのですが」
「魔石が何か?」
「とても質が良く、かつ、量があるのです。なぜ商業ギルドにお売りにならないのか不思議なくらい」
するとヴァイオレットが言った。
「あの…。うちの父は欲が無くて、お金儲けとかをしようとか思わないのです。その魔石も、知らんうちに溜まってた。とか申しておりましたし、わざわざ都会に売りに行くのが大変だとも言っておりました。父はリヴェンデイル男爵領の人々が平和に安全に暮らせれば、それでよしと思っているのです。ほぼ自給自足でも村の人は文句も言いませんし、周辺地域に野菜や杜の恵みを売ってるくらいがちょうどいいと、村人は口をそろえて言うのです」
「それで、あんなにいっぱい溜まっていたのね」
「はい」
そこで俺がシーファーレンに尋ねる。
「その魔石はどうする?」
「もう一度ヴァイオレットさんに確認なのですが、あれを全部使ってしまっても良いと?」
「ええ。聖女様の助けになるのであれば。どうせ自宅の地下に眠っていたものですし」
「わかりました。それでは私がこれからの活動に必要な魔道具を、いろいろと検討してみたいと思います。それ如何では、恐らくかなりの事が出来るようになるかと思います。もちろん皆様が集めて下さる情報をもとに、試して行かねばなりませんが、引き続き情報収集をお続けいただいても?」
「もちろん。だよね、みんな?」
「「「「もちろんです」」」」
「わかりました。では私もこれから研究開発に引きこもります。そこで人手が欲しいのですが、ヴァイオレットさんをお借りしても?」
「ヴァイオレットはどう?」
「もちろんお手伝いいたします!」
するとマロエとアグマリナも言った。
「私達も使ってください」
「わかりました」
そして俺がシーファーレンにもう一度尋ねる。
「魔道具によっては、かなり進展を期待できるという事?」
「そうですわ。とにかく聖女様とアンナさんのご意見も聞きたいし、マグノリアさんの意見も欲しい」
「わかった。協力する」
そして俺達はそのまま情報収集を進めつつ、シーファーレンの魔道具開発に協力をする約束をする。少しでも前に進むために、急がば回れ。シーファーレンの開発する魔道具で、突破口が切り開けるのならやるしかない。そう思うのだった。




