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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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第25話:治療法

「失礼するよ」


入って来たのは、セレフィーネとカトレア、そしてエルメガリオス王だった。


「これは、エルメガリオス様。先日は父の葬儀へご参加いただき誠にありがとうございます」


「えぇ、彼は先代とは違い話が分かる人でしたので」


「それで、本日は何を?」


「いや、何やら親友の忘れ形見の婿が大変な事になってると聞いてな」


俺へと視線を移して笑うエルメガリオス様。


「ホウショウ殿、貴殿の嫁の一人が何やら厄介なものにかかっているとネリーニアから聞いてな、話を聞かせてもらえないか?」


「は、はい……実は――」


昨日起こった事とティティアちゃんについての容態と、嫁という事の否定をして伝えると大きく頷いた。


「ふむ、それであらば『オルドリリウム』という名の花であれば治療が出来そうだな」


「「「「「えっ?」」」」」


「君達の言う呪毒と言うのは特殊な毒でな。元々は治療魔術が産み出される前に行っていた人の体を切り、治療するという医術と呼ばれるものが主流だった時代。その時代に使われていた薬に魔術を使いて、人の恨みや怨念を注入したものだ」


出された紅茶を一飲みして笑う。


「それに、ネモフィラ嬢によってティティア嬢は毒の回りが極端に遅くなっている。本物であれば1週間は持たないだろう」


「私の母の時は、ひと月でした……」


「そうか……あの時に知っておれば、助ける事が出来たのだが……」


「仕方ありません、あの時は国交樹立してすぐでしたし。呪毒についてもただの毒としか認識されておりませんでした」


「そうでしたか、力になれずすみません」


それから幾つかの情報交換をしてエルメガリオス様が立ち上がる。


「という事で、イブキ公爵家へはホウショウ殿()と共に向かいます。それと、アラテシア()はどうするかね?」


「僕も向かいます。それと兄さん達、僕の継承権はそのままにして下さい。捨てるにしても、もっと有効活用してやります」


真っ直ぐに兄二人に向かって頭を下げる、上げた後には抜け殻だった姿は、もう無かった。


◇◆◇◆

「アラテシア様、もう大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫。最悪の未来へ進んだと思ったけど、いい方向に進みそう」


話を聞くと、どうやらティティアちゃんの件については元々襲われたりする未来は数多あったそうだ。その殆どが命を落としたりする結果だったらしい。


「多分、どこかで未来が変わったんだと思う、ティティアについてはその影も、未来では見えなかったし」


「そうだったんですか……でも、どこで未来が変わったんでしょうね」


「わからない、ツバサ君がカトレアさんと結婚をしたからなのか、エルメガリオス様に気に入られたか……だと思う」


「まぁ、何にしても。ティティアちゃんが助かりそうで良かったですよ」


「そうだね……」


何かが引っかかるのか複雑そうな顔をするアラテシア様、だがしばらく考えているといつの間にか眠りに落ちていた。


暫く街の音と馬車の音に耳を傾けていると、どうやら到着した様だ。


「公爵邸って、裏門出てすぐだったんだな……」


いつもは正面から回ってるので20分くらいかかるのだが、今日は裏門からなので10分もかからなかった。


「アラテシア様、着きましたよ……。うーん、大分ぐっすり寝てるな……」


目の下の隈も酷かったし、暗殺直後やティティアちゃんの事で眠れなかったのだろう。


とりあえず起こさない様に抱っこして運んで行く、この間までは男だと思ってたけど改めて女性と思うと気恥ずかしさが凄い。


「いらっしゃいませ、ホウショウさん……そちらは、アラテシア様?」


出迎えてくれたのはシェルティア公爵夫人で、アラテシア様を抱えている俺を見て驚いた顔をしている。


「はい、ティティアちゃんの事で治療法が見つかったので伝えに来たのですが……安心したのか眠っちゃいまして」


「治療法が!? わかりました、ティティアの部屋に向かいましょう私達が容態を見る為に使っている簡易ベッドがありますのでそちらに……」


「ありがとうございます。それとこちらが、エルフ国ユグラシアの王様でエルメガリオス様ですね」


適当な紹介になるが、向こうも面識があった様で簡単なあいさつでティティアちゃんの部屋へ向かった。


「アラテシア様がいらっしゃいますので、夫にはこちらへ来てもらう様に言いました。皆様、どうかお座りください」


カトレアと俺が一緒に座り、エルメガリオス様はお誕生席に座る。メイドさんが紅茶を出すよりも早く廊下が騒がしくなった。


「ティ、ティティアの治療法が見つかったって!?」


着替えも疎かな姿で部屋に飛び込んで来たイブキ公爵、そして夫人、俺、カトレア、エルメガリオス様の順番に見て顔を赤くする。


「す、すまない!」


慌てて扉の先に引っ込んだ、そして数分でカチッとした服装に着替えて扉から現れた。


「すまない。先程は随分と見苦しい恰好を見せてしまった……」


「いえいえ、父親としては、非常にお心がわかります」


「かたじけない……」


挨拶を終えて、先程と同じようにエルメガリオス様が説明をする、道中カトレアの正体に驚いていたがそれよりも色々と把握してもらった様だ。


「では、娘は助かるのですか?」


「そうだね、かなり高い確率で助かると思うよ」


「でしたらすぐに!!」


「いや、イブキ公爵には悪いが。連れて行くのはホウショウ君達だけだ、エルフの国は人間に厳しい。特にネリスフィニアの国を滅ぼしたこの国の人々には冷たく当たるだろう」


「でしたら、ティティアだけは!」


「それは構わないよ、ネリーニアからはホウショウ君の嫁と聞いてるからね」


「わかりました、ホウショウ殿。娘を頼みます!」


ここで頷くと、外堀が埋められそうだけど……。ティティアちゃんの為だ頷くしかない。


「わかりました、任せて下さい。ティティアちゃんは必ずお二人の元に元気になって帰って来るようにいたします!」


「ありがとう……」


「ありがとうございます……」


泣いている二人に、出発等時期などの今後の予定を伝え。今日はアラテシア様を公爵家に置いて帰宅した。



◇◆◇◆◇◆◇◆

そして3日後、出発準備を終えた俺達はギルドの前に集まっていた。


「装備確認、食料確認、テントや防寒具もおっけー」


準備の確認を終えて振り向くと、旅装を整えたミラさんがそこに居た。


「良いんですか? 私まで……」


「えぇ、折角の里帰りですし。ギルマスもしっかり休暇をくれましたからね」


ニコニコと笑うギルマス、今回のエルフ国に向かう事をミラさんとギルマスに伝えると、ミラさんはギルマスから里帰りを提案されたのだ。


『ついでにホウショウ君達と向かえば、旅費も大幅に安くなるだろうし。護衛もエルフ国の騎士団が居るからね道中の安全も問題無いよ』


その結果、今回の旅行について来る事になったのだ。


「それよりも良かったんです?案内を引き受けてもらっちゃって」


「はい。地元ですし、それよりも依頼料までいただいちゃって……」


「まぁ、エルフ国には不慣れですし。ミラさんであれば皆も知ってる人ですから安心できますよ」


ギルド職員をやってる事もあり休止中だが、ミラさんは銀等級冒険者であり昔俺もお世話になった人だ。モンスターとも戦えるし、何だったら旅慣れてる、今回の旅行ではかなり頼りになりそうだ。


「わかりました、頑張って案内しますね!」


そう言って、まだ準備をしている奏さん達の元へ向かって行った。



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