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【第二十二話】「目的の図書館」

 図書館の場所を確認したルリアは頷いた。

(ここからそう遠くもないな。歩いて行けそう)


 散歩日和の涼しい空気と賑わう街の景観を楽しみながらも、ルリアは足早に歩いた。


 途中聞こえる会話。

「そういえば、この街にラチッタが来てるらしいよ」

「あぁ、昔よく聞いたなぁ、その名前。マジックする人たちでしょ? ここ数年はだいぶ飽きられて不人気って前に新聞で読んだけど」

「それがだいぶ盛り返してるらしい。新しいこといろいろ始めてるんだって。あさって公演らしい。行こうよ!」


 ルリアは何となく嬉しくなった。


***


 歩きながら今までの疑問を再び心の中で問いかける。

(何で私には過去の記憶がないんだろう……。魔女って他にも能力があるの……? 魔女はなんで人からここまで嫌われているのだろう……)


 一通り思いを巡らしているうちに、目的の図書館の前へと着いた。


 その建物はルリアが予想していたよりも大きく、自然にも囲まれたとても開放的な雰囲気だった。

(こんなに大きいんだ……。ミヤさんが言ってたとおり、ここなら魔女のこと、私自身のこと、少しでも分かるかもしれないな)


***


(あった……)

 ルリアは多くの本棚を確認しながら移動し、やっとのことで魔女に関する専門書籍の一画へと到達した。


 いくつか気になる本をピックアップして手に取り、椅子に座って読むことにした。


『魔女の能力全集』


 この本には、様々な魔女の特長について事細かに書かれていた。ルリアはものを変形する能力をする魔女であり、多くの魔女がこの能力を持っている。だが能力には個人差がかなりあると記されていた。

 また、それらの能力を保持しない魔女は他の特殊な能力を持っていることもあるとのこと。

 ルリアの目に留まったのは、そこにあった一文だ。

『魔女には記憶を操作したり消したりすることができる者もいる』


(もしかしたら……私の過去の記憶がないのも……他の魔女が……)

 息をのむ。


 次に開いた本は『魔女の一生』という本だった。

 この本は、多くの研究者によるレポートがまとめられており、魔女が人間とどのように異なる成長をして、どのように老い、どのように朽ち果てていくのかを記したものだと、前書きに説明書きがあった。


 ルリアはすらすらとページをめくっていった。

 だが、あるページを境にルリアのその動作は止まる。


「え……」


 ルリアの視線は一点に釘付けされる。

 そこにはこう記されていた。


『魔女は年齢を追うごとに良心を失っていく傾向がある。これは多くのレポートからも明らかで、大人になればなるほど厄介になる。昨日まで親切だった魔女が突如別人のようになってしまい、人々を裏切る事例もある』


 ルリアに悪寒が走った。

 一度深呼吸をし、頭の中を整理することにする。


(私はずっと理不尽に考えていた。なんであんなに人が魔女を嫌うのだろうって……。でもこれを読むと……)


 黙って本を閉じた。


 ルリアは立ち上がると、読んだ本も読んでない本も全てまとめて本棚に戻す。

 そして、中庭のベンチに腰を掛けた。

 雲行きの怪しくなってきたこの場所には人気ひとけはなく、ざわざわと風が葉をこする音だけが鳴っていた。


(もしかしたら……私、ラチッタのところにこれ以上いてはいけないのかもしれない……。私は魔女。もし……い続けたら……、私はみんなを裏切って、そしてきっと……傷つけてしまうんだ……)


***


 その夜。


 レヴェカは宿屋に戻るとルリアの宿泊部屋をノックした。

「ルリア! 寝ちゃった? 入るよぉ! 今日さぁ、おいしいケバブの屋台見つけちゃってさ、お土産に……ってあれ……」


 レヴェカは部屋の明かりを点けた。

 だが、そこはがらんとしていて誰もいない。


 この晩、ルリアは宿屋に帰ってくることはなかった。


***


 夜の草原。馬に乗り街を見下ろす長身の男の影。

「やっと追いついたぞ……」


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