第16話 王都でのデート➂
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「さぁ、次は雑貨屋さんに行こう。ここからちょっと歩くけど、食後の散歩だと思って」
「いつもは屋敷に商人をお招きして買うので、楽しみです!」
「着いたよ。ここだ」
ルークがドアを開けて入店したので、シルヴィアもそれに続く。
お店の中をぐるりと見渡すと、マグカップやお皿、ガラス製品など生活雑貨からアクセサリーまで幅広く扱っているお店のようである。
ルークとシルヴィアはそれぞれ見たいものを見ることにしたので、一旦別行動をする。
シルヴィアはアクセサリーのコーナーに足を運ぶ。
ピアスやネックレス、ブレスレット、髪飾りが所狭しと並んでいる。
本物の大粒の宝石を使っているのではなく、大きい宝石を削る際に出来る小さい宝石を使っていたり、ガラスを使っているので、値段も手ごろで、気軽に使えるものが欲しい時にぴったりである。
シルヴィアはしばらく吟味していると、手作りアクセサリーという文字が目に入る。
その時ちょうど店員がシルヴィアの近くに来たので、手作りアクササリーについて聞いてみることにした。
「ここに書いてある手作りアクセサリーとはどういうものですの?」
「それはお客様自身に自分が好きな石を選んでもらって、オリジナルのアクセサリーを作るというものですよ。作る作業は私達店員がやるので心配はいりません」
(これで、ルークの分と私の分でブレスレットを作りましょう。そして、ルークの分はプレゼントにしましょう。今日一緒に遊んだ記念にもなるはず)
「では、それを二つ分お願いしますわ」
「はい、では此方に」
店員に連れられた先には色ごとに石が入った容器が並んでいる。
「色はこちらにある分ならどれを選んで頂いても大丈夫です。選んだ石はこの容器に入れて下さい」
シルヴィアはルークと自分の髪と瞳の色の石を選んだ。
青とピンクと紫。
ルークの髪色の銀はないので代わりに透明を選ぶことにした。
「選んで入れました」
「はい。では後はこちらで作りますね。時間はそんなにかからないので、引き続き店内を見ながらお待ち下さい」
「お願いしますわね」
アクセサリーは店員に任せておけば出来上がるので、シルヴィアはルークのところへ行く。
ルークはマグカップを見ていた。
「いいものはあった?」
「ええ。ルークは?」
「今、マグカップを見ていてね。シルヴィが我が家に遊びに来た時に使う用として買おうと思ってるんだ」
ルークが見ていたマグカップは、全体がキラキラした紫のグラデーションにカップの淵はピンクで縁取られているものだ。
「可愛いデザインですわね! ……あら。奥の方には同じシリーズで青のマグカップがありますわ」
シルヴィアは奥の方に見つけた青いマグカップを取り出す。
「あれ? これは僕の色合いだね。せっかくだしこれも買おう」
こちらは全体がきらきらした青のグラデーションで淵が銀色で、色違いだ。
ルークと話していたシルヴィアに先程手作りアクセサリーを対応した店員が話しかける。
「お客様、出来ましたのでこちらに来てご確認お願いします」
シルヴィアはその場を離れ、店員のところへ行き、確認する。
出来栄えを確認し、満足したシルヴィアは代金を払う。
「これ、プレゼント用に包装してもらうことは出来ますか?」
「プレゼントなんですね! 勿論出来ますよ。包装しますね」
「ありがとうございます」
シルヴィアは包装してもらったブレスレットを鞄に入れ、ルークのところへ戻る。
自分の分はこのまま使うということで左腕に付けている。
「お帰り。綺麗なブレスレットを付けてるね。それを買ったの?」
ルークは目ざとくブレスレットに気づく。
「好きな石を選んで店員さんに作ってもらうというものですわ。ルークの分も作ったので、帰りにお渡ししますわね」
「僕の分も? ありがとう、シルヴィ!」
「今日の記念ですわ」
「じゃあ僕もマグカップ二つお会計してくるから少し待っててね」
ルークは会計を済ませ、二人は雑貨屋を後にする。
雑貨屋を出た後、二人は本屋に向かう。
しかし、途中で使用人達へのお土産を何も買っていないことに気づいたシルヴィアはルークにお土産を買えるようなお店がないかルークに尋ねた。
「使用人達にお土産を買いたいのですが、何かお土産にちょうどいいものをご存知ですか? 日頃の感謝を込めて贈りたいのですが……」
「使用人達ということは、大きめもしくは数が沢山入っているお菓子類を買って贈りたいということでいいんだよね?」
「はい」
「う~ん……。そう言えばここから近いところで焼き菓子のお店があるね。クッキーとかマドレーヌとかを売ってるお店。良質なバターを使っていることが売りのお店で、隠れた人気店という感じかな。買う・買わないは別にして、とりあえず行ってみる?」
「そうですわね。とりあえず行ってみましょう」
二人はその焼き菓子のお店に向かった。
お店のドアをあけるとバターの良い香りがふんわりと漂ってくる。
「いらっしゃいませ~!」
若い女性の店員が明るく元気な弾むような声でルークとシルヴィアに声をかける。
「いつもお世話になっている10人に感謝の気持ちを込めて、お土産を渡そうと思っているのですが、商品を見せて頂けませんか?」
「は~い! どうぞ~! ウチの店は焼き菓子専門店だから焼き菓子全般ありますよ」
商品棚にはクッキーやマドレーヌ、フィナンシェ、バターサンドなどが並んでいる。
「店員さんのおすすめはどちらですか?」
「私のおすすめはクッキーですね。シンプルなバタークッキーだけど、良質なバターと小麦粉を使っていてとても美味しいですよ! サクサクとした軽い食感もおすすめのポイントです」
「では、店員さんおすすめのクッキーを20枚とマドレーヌを10個下さい」
「僕もクッキー20枚お願いします」
「ありがとうございます! お代金はお嬢さんの方が全部で金貨3枚、お兄さんの方が金貨2枚です」
ルークとシルヴィアはそれぞれ自分が買った分の代金を店員に渡す。
「はい、確かに受け取りました。こちらが商品です。割れやすいから、袋を持ったまま激しく動いたり、ものにぶつけたりしないように気を付けて下さいね」
「わかりました」
「良かったらまた来て下さいね~! ありがとうございました!」
「使用人達のお土産もいいものが買えてよかったね」
「はい! いいものが買えてよかったですわ」
「なんかちょっと歩いて喉が渇いたから屋台で飲み物を買って休憩しない? ちょうどそこにジューススタンドもあるし。ここにベンチもあるから座ってゆっくり出来るしね」
商業地区の通りにはところどころにベンチが置いてあり、屋台で食べ物や飲み物を購入して来て、ベンチに座って食べたり飲んだりすることが出来る。
「確かにちょっと疲れたので休憩したいですわね」
「じゃあ僕がジュースを買ってくるからシルヴィはここで座って待ってて。何味のジュースがいい?」
「オレンジジュースでお願いします」
「了解。じゃあ買ってくるね」
ルークはジューススタンドでジュースを買う為にその場を離れ、シルヴィアは一人になった。
(婚約破棄される前はこうやって誰かと一緒に商業街でたわいないことをして楽しむことなんてなかったけれど、いいものですわね。前までは忙し過ぎてそんな時間はなかったけれど、これからは前より時間が取れるはずだからルークとまたこんな時間を過ごしたいですわ)
感傷に浸っていたら、急に声をかけられる。
「ねえ、おねーさん、一人? もしよかったら俺と遊ばない?」
声をかけてきたのは軽薄そうな印象の見知らぬ若い男性だ。
「一人ではありませんわ」
「またまた~強がっちゃって。連れなんていないんだろう?」
「いいえ、本当に一人ではないのです。連れはちょうど今、ジュースを買いに行っていていないだけですわ」
「はいはい。嘘はいいから。こっち来なよ」
その男性はシルヴィアの腕を掴み、どこかへ無理矢理連れて行こうとする。
しかし、そこにちょうどルークが戻って来た。
「ちょっと待ちなよ。その子は僕の連れだ」
「チッ! 男連れかよ!」
男は悔しそうに舌打ちして、去って行った。
男は去ったが腕を掴まれた恐怖で震えるシルヴィアはルークにくっ付く。
「ギリギリ間に合ってよかった。間に合わなかったら……と思うとゾッとする」
「連れて行かれる前に戻ってきてくれて安心しました。連れはいるって言ったのにしつこく絡んできて……。怖かったですわ……」
ルークはシルヴィアをぎゅっと抱きしめて宥める。
「今日はもう帰ろう。帰ってゆっくり休もう」
怖い目に遭って精神的にダメージを負っているシルヴィアを気遣って、今日は予定を切り上げて帰ることにした。
行きに馬車を降りた場所まで歩き、馬車に乗ってローランズ公爵邸まで向かう。
公爵邸に到着し馬車から二人は馬車を降りる。
「最後はあんなことになってしまって申し訳なかったけれど、今日一日シルヴィと遊べて楽しかったよ。次会う時はまたシルヴィの笑顔が見れると嬉しいな」
「私も楽しかったですわ。またのお誘いお待ちしておりますわ。それと、ルークの分のブレスレットです」
「ありがとう、シルヴィ。大事にするね。じゃあ、また今度」
こうしてルークとシルヴィアのデートは幕を閉じた。
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