第15話 王都でのデート②
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注文したパフェと飲み物が運ばれるまで、ルークとシルヴィアは話をしながら待つ。
「ノエルのこと、びっくりしたよね」
「確かに驚きましたが、どういう経緯でお知り合いになったのですか?」
「彼もこの前のクリスとほぼ一緒でね。ノエルのお父上が近衛騎士団の団長なんだ。僕がまだ王子だった頃、ノエルのお父上に剣術を習っていたんだけど、僕と同い年の息子がいるから一緒に剣術を学ばせようという話になった。友人兼好敵手としてちょうどいいと。それで実際に彼と会って、一緒に剣術を学んだんだ。僕もノエルも将来は軍人になるつもりはなかったから、自分の身は自分で守れる程度に剣を扱えるようになることを目標に習っていた。だから、実際習った期間はあまり長期間ではないよ」
「お父様はあの団長様なのですわね! 失礼なお話かもしれませんが、近衛騎士団長様はガッチリした筋肉質の身体に厳めしいお顔の如何にも武人という感じの方なので気付かなかったですわ」
シルヴィアは次期王妃教育を王城で受けていた為、文官系、武官系を問わず要職に就いている者とはほぼ顔見知りだ。
だから、近衛騎士団長と言われてすぐにピンと来た。
「実はノエルの実家のアントワーヌ伯爵家は、長男が生まれた後、長女・次女と続き、その後ノエルが生まれて、末っ子として三女という家族構成で。ノエルは母であるアントワーヌ伯爵夫人に似て、小さい頃は女顔だったから、お姉さん達の着せ替え人形になっていたんだ。さらにお姉さん達はお菓子作りが趣味だったからそれに付き合わされて、彼もすっかりお菓子作りが得意になってしまったんだ。だからこのお店は彼の趣味でやっているんだ」
「先程、”お客さんとして来るなんて思ってなかった”と仰られておりましたけれど、あれはどういう意味ですの?」
「実はこのお店は僕が出資しているんだ。オーナーが僕で、ノエルは雇われ店長。雇われ店長といっても、僕はノエルのお菓子作りの腕前を信用して、僕からお願いしてやってもらっている。ノエルが店長としてお店を盛り立ててくれているお陰で、王都で評判のカフェという地位に就けて、商売大繁盛なんだ」
「昔からの知り合いで、且つ今はそれに加えて、オーナーと店長という関係でしたのね」
「ベレスフォード公爵領はフルーツの生産に力を入れていてね。市場に出回っているものよりも美味しいフルーツを作っていて、王都のお嬢さん方をターゲットにこのカフェで売り込みをしているんだ。王都とベレスフォード公爵領が馬車で一日半程度の距離だから、収穫して傷んでしまう前に運べるからいつでも新鮮なフルーツを運ぶことが出来る。領地の方でもカフェはやってるし、桃狩りや葡萄狩りやりんご狩り等、季節のフルーツの収穫体験も出来るよ」
「私もベレスフォード領で果物狩りをしてみたいですわ!」
「ちょうど近々領地に行こうと思っていたから、今度一緒に行こうね」
「はい! 楽しみにしていますわ!」
個室のドアがコンコンっとノックされ、ノエルが入室する。
「はーい、お待ちどうさま! シャインマスカットと葡萄のパフェと桃のパフェ。コーヒーと紅茶。あと、ワタシからのサービスでオレンジのゼリー。このゼリーはお店のメニューには載っていないわ」
「わぁ、美味しそうですわ……!」
シルヴィアはキラキラと目を輝かせる。
シャインマスカットと葡萄のパフェは、艶々な実がふんだんに使われており、黄緑と紫のコントラストが鮮やかで、まるで宝石箱のような造りである。
一方で桃のパフェは、パフェの下部に桃のコンポートが使われているだけでなく、パフェの上部に桃が丸ごと一玉使われている贅沢な造りだ。
「ノエル、サービスまでありがとう」
「いえいえ。ルークのおかげでお店をする夢が叶ったからこのくらいのサービスはお安い御用よ。じゃあお二人ともごゆっくり。もしコーヒーのお代わりとか困ったことがあればまたベルを鳴らしてちょうだいね」
ノエルが退室した後、ルークとシルヴィアはパフェ用の長いスプーンを持ち、早速パフェを食べる。
「シルヴィ、まずどっちが食べたい?」
「桃から頂きたいですわ」
「じゃあ僕は葡萄の方から食べるね」
シルヴィアはスプーンでパフェの上部の桃を一口分取り、口に運ぶ。
桃の甘さと瑞々しさに舌鼓を打つ。
「この桃すごく美味しいですわね。今まで食べたどの桃よりも甘くて瑞々しいですわ」
「そう言ってもらえたら嬉しいよ。葡萄の方も甘くてジューシーな葡萄の実だから期待してて」
しばらくして葡萄の方のパフェも食べたいと思ったシルヴィアはルークに交換してもらう。
「葡萄もすごく美味しいですわ。こんなに美味しいフルーツが食べられるなんて! 今日はここに連れてきて下さってありがとうございます」
「こんなに喜んでもらえたらこのお店にしてよかったよ。次はシルヴィのおすすめのカフェに連れて行って欲しいな」
自然に次の約束が出来てシルヴィアは喜んでいた。
「わかりましたわ。とっておきのお店を紹介しますわね」
「楽しみにしているよ。ところで、シルヴィ。生クリームがほっぺについてるよ」
「え……!?」
(夢中で食べていたら気づかなかったなんて恥ずかしいですわ)
「僕が取ってあげるからじっとしていて」
ルークが手を伸ばし、恥ずかしそうにもじもじしているシルヴィアの頬についた生クリームを親指で拭う。
シルヴィアはそれをナプキンで拭うのかと思ったらそのままルークはクリームがついた親指をぺろりと舐めてしまう。
「ごちそーさま」
(い、い、今、舐め……!? 嘘!? ナプキンで拭うのではないの!?)
妖艶に告げたルークにシルヴィアは口をパクパクさせて顔が真っ赤になる。
こうして二人はカフェで美味しいパフェに舌鼓を打ちながら、穏やかでちょっぴりドキドキなひと時を過ごした。
ルークとシルヴィアは頼んだものを完食したので、カフェを出て、次の目的地に向かうことにする。
お会計の為にベルを鳴らし、ノエルを呼ぶ。
「お代は全部で金貨3枚ね」
シルヴィアは全額ルークにご馳走してもらうつもりはなかったので、鞄にいれてある財布を取り出そうとしたが、ルークに止められる。
「シルヴィ、僕が払うからそれは出さなくていいよ」
「でも私も頂きましたので……」
「律儀なところは美点だけど、このお店に連れて来たのは僕だし、全額払えない程、甲斐性がない訳ではないよ。おごってもらうのが申し訳ないと思うなら、さっきの迷惑料と思ってくれないかな?」
「わかりましたわ」
ルークが金貨3枚をノエルに渡す。
「はい、ちょうどね。シルヴィアちゃん、ルークがいない時も大歓迎だからまた来てちょうだいね!」
「はい! とっても美味しかったので今度家族でお邪魔しますわね」
「じゃあ、ノエル。また今度」
こうして、二人はカフェ リーベを後にする。
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※後書き部分で、金貨一枚=現代日本で何円程度かは敢えて書きません。
読者様の想像にお任せします。




