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タカト! ピンチ! 大ピンチ!

 変化があったのはズボンの中の暴れん坊だけではない!

 タカトの脳内スパコン腐岳がけたたましい警報音を上げていた。

『非常に危険! 非常に危険!』

 ――そんなことは分かってんだよwwww

 だが、目の前は魔豚ダンクロールにさえぎられ、背後は絶壁で逃げばなしww

 ――詰んだ……

 それほどまでに絶望的な状況に陥っていたwww

 ――この状況……俺……生きて帰れるの?

 無理だろwwww

 そのため、タカトの脳内スパコン腐岳がはじき出した計算結果は

 『生存確率0.01%』

 ――あかん……これは……あかん奴やて……


「タカトォ!」

 崖の上に帰り着いたビン子は崖下の様子に驚いた。

 落ちていた自分を救ってくれたタカトが、今や大ピンチ!

 タカトのあの様子。

 どうやら、あのブタ……ただの飛べないブタではないようだ!

 衝突の破壊力……到底、普通のブタでは考えられない。

 先ほどの魔草花の群生地帯。

 おそらく近くに小門があるのはほぼ確実。

 ならば!あのブタは!小門を通ってきた魔物に違いない!

 だが、今それをビン子が認識したとしてもどうすることもできない。

 だって……ビン子の武器はハリセンだけ……

 タカトには絶大な攻撃力を有するが…… 一般的には何らダメージを与えることができない代物なのである。

 そんな武器一つで魔物を相手にできようか……無理だ……無理に決まっている。

 だが、このままタカトを見殺しにしていいのか

 ――そんなこと絶対にイヤ!

 ならば! 取る方法は一つ!

「タカト! 待っててね! 今すぐジイちゃんを呼んでくるから!」

 ビン子はクルリと向きを変えると、すぐさま森の中へと駆け込んでいった。


 崖上から届いたビン子の声を聴くタカトは思った。

 ――ビン子の奴! アホなのか! この状況分かってんのか!

 『待っててね』って言われても…… 一分も持ちこたえる自信などまるでない。

 おそらく権蔵が到着する頃にはタカトはダンクロールの腹の中……

 ――無理だ……絶対にじいちゃんが来るまで持ちこたえるなんて絶対に無理だ……

 だが、その時、ふと思ったのだ。

 ――まずい! 非常にまずい!

 それは死に面した男であればたいてい思うこと。

 それがまして!予定していない突然の死ならなおさらだ!

 そう!男には一つや二つの隠し事があるものなのだ!

 ――このまま死んだりしたら……俺のムフフな本のコレクションはどうなるんだ⁉

 あらかじめ自分が死ぬと分かっていれば、当然それらをまず片付ける。

 作者だってそうだ!

 まずはパソコンおよびスマホの全データの完全消去!

 過去に保存してきたCD、DVDの数々を電子レンジでチン!(マジで結構危険だから、自分が死ぬ時以外はやらないでねwwww)

 本棚の裏に隠してあるムフフな本は、仕方ないのでブックオフにでも売りさばく。

 それは……長き時間をかけて集めてきた自分のコレクション!

 いわば、自分の人生そのものと言っても過言ではない!

 そんなものを残したまま死んだりしたら……残された家族が遺品を整理した際に見てしまうかもしれないのだ……

「きゃぁぁあ! 変態!」ぐらいで済めばいい。

「親父の奴……こんな性癖があったのかよ……」と軽蔑されるかもしれない。

 実際、作者は古い書棚から祖父が残したであろう昭和初期のエロ本を発見したのだ。

 今とはことなる古風な髪型やポーズ。色褪せた紙質。プッと吹き出すような雑誌広告などに、ある種の感動を覚えたぐらいである!

 だが、時は令和……情報網が発達した世界である……

「親父の遺品を整理してきたらこんなものが出てきたんだけどwww」と、破廉恥な画像がインターネットを通して世界中に拡散されかねないのだ……

 もう、そんなことを想像しただけでも顔面蒼白!ムンクの叫び! もう、声すら出ない……

 当然、男の子のタカトにだって、そんな秘密が一つや二つ、いや、十や二十以上あることだろう。

 ならば、そんな秘密を残したまま死んでいいだろうか……

 いや、よくない!

 そんなものがビン子に見つかろうものなら……

「きゃぁぁぁあ! 変態!」

 と大騒ぎ!

 そのうえ、「汚物は消毒よ!」と言わんばかりに全て燃やされることだろう……

 え?燃やしてもらえるんだったら万事解決してるじゃんwwwwって?

 あほか!

 自分で燃やすのとビン子に燃やされるのとではまるで意味が違う!

 というか、ビン子にだけはそんなものを見られるのは絶対嫌なのだ!

 ならば、この状況、自分で何とかするしかない。

 何とか切り抜けて、ベッドの下のムフフな本をビン子にバレる前に何とかしないといけない……のだ。

 だが、タカトに戦うすべなどありはしない……

 ⁉

 ――うん? そういえば……

 タカトは腰についた硬いイチモツに気が付いた。


 え? タカトの暴れん坊は小さく縮こまっているはずでは?

 そう、確かにタカトの暴れん坊は小さく縮こまっている。

 だが、タカトはもう一本の暴れん坊を持っていたのだ!

 それは、タカトがカマキガルの鎌と小剣を融合加工した『お脱がせ上手や剣(完成品)』改め! ただの小剣!

 権蔵が魂を込めて磨き上げた無名の逸品である!


 ――この剣なら!

 タカトは腰から小剣を抜き出すとダンクロールに向かって構えた。

 カタカタと震える剣先。

 いかに小剣が優れていても、それを使うものがタカトでは……

 だが、この小剣はタダの小剣ではない!

 そう、権蔵がタカトのために固有融合を施したモノ。

 通常の融合加工品よりも威力は3割り増しとなっている!

 しかも!その硬度はイノシシやクマの頭蓋だって簡単に貫いてしまうほどなのだ!

 それほどまでにカチカチに固い暴れん坊!

 こんな固くて立派な一モツを持っていたら……どんな女でもwwwもとい!どんな敵でも落としてしまえるかもしれないのだ!

 そう考えたら……もしかしたら、童貞のタカトにだって可能性が……

 タカトは震える親指を剣の束についた棘に押し当てる。

「きゃ……きゃいけつ、きゃぃひょぉーーーーーー」

 もう、タカトの奴……恐怖でまともにしゃべれない様子wwww

 だが、それでも棘に押し付けられた親指からは一滴の血が滴り落ちる。

 そして、その瞬間! 小剣の白き刀身が青白く輝きだしたのだ!


 そのとたん、ダンクロールはタカトから距離をとるかのように数歩後ろに下がった。そして、タカトの周りをまるで円でも描くかのようにゆっくりと歩きながら様子を伺うそぶりを見せ始めたのだ。

 だが、その緑の双眸はしっかりとタカトをとらえたまま。

 タカトにすこしでも隙があればすぐさま飛び掛かる気のようである。


 って……尻もちをつきながら小剣を突き出しているタカトは、どこからどう見ても隙だらけ。

 というか、この状況、どこから突っ込んでも簡単に牙で貫けそうな気がするのは作者だけだろうかwww

 まぁ、それほどまでに今のタカトの姿は無様なのであるwww


 無様なのだが……

 突き出している小剣に隙がないのだ。

 先程から日の光をはじく刀身がダンクロールの行動を威圧するのである。


 おそらくダンクロールにも、その小剣がタダの小剣でないことが分かったのだろう。

 このまま無策に突っ込んだとしても、最悪、あの小剣に貫かれかねない……

 ダンクロールの体に刻まれる無数の傷がそう忠告するのだ。

 おそらく、この魔豚……今まで多くの人間たちと戦い生き残ってきたのだろう。

 それは多くの人間を食ってきたことを意味する。

 ――あと少しで魔人に進化できるかもしれんというのに……

 それは、目の前に無様に転がる小僧を食えばなしえるかもしれない。

 ならば、今すぐにでも食らいたい!食らいつくしたい!

 ――だが……焦りは禁物……

 聖人世界に来てまで必死になって頑張ってきたのだ。

 それなのに、ここにきてあんな小僧に傷を負わされていいのだろうか?

 いや、傷で済めばいい……

 あの小剣……急所に当たれば最悪、死だってありうるのだ。

 それほどまでの威圧感……

 ――決して!あのような小僧が持っていていいような業物でない!

 それは歴戦の勇者が持ちうる武器。

 魔装騎兵が持つような代物なのだ。

 だが!

 ――目の前の小僧は、どう見ても素人……

 魔装騎兵や武人ではありえない。

 鼻息を荒くしたダンクロールは頭を低くする。

 ――優れた武器も優れた使い手があってこそ……

 人切包丁と言われる日本刀だって素人が振るえば骨すら断てない。

 それどころか、肉に食い込み動かなくなってしまうのだ。

 ――ならば、その食い込みすらも無理にすればいいだけの事よ!

 全身に込められる力。それは無数に生える体毛を硬化させる!

 ――もうこれで奴はタダの肉!

 準備万端と言わんばかりに地をこする前足が土ぼこりをたてはじめた。


 その様子を見たタカトは、すでに涙目。

 先ほどから構える剣先の震えが大きくなっていた。

 ――もう、無理だ!

 さすがに死を覚悟する。

 人とは絶望の淵に立つと神に赦しを請うのだ。

 ――あぁ、神様!

 それは今までの人生に対する懺悔。はたまた、死後の世界に対する些末な願いなのかもしれない。

 ――せめて、あの巨乳の歌姫アイナちゃんの本だけでも、天国に持って行くことは叶いませんでしょうか……

 って……お前の願いはそれでいいのかwwww

 というか、ビン子だって神様だろうが!

 ――アホか! アイツは能無し!乳なし! 自分の乳すら大きくすることができない奴なのよ!

 確かにビン子は神である。

 金色の眼を権蔵の作った眼色変更コンタクトで誤魔化している。

 というのも、ビン子には記憶がない、そのため、神の恩恵が全く使えないのだ。

 もはや……無乳の神……いや、無能の神……

 それどころか、毎日、タダ飯を食うだけの貧乏神……

 そんな神に願ったところで願い事などかなうはずもない。

 ――というか! この状況! アイツを助けようとしたからだろ!

 そういえば、そうだったwwww

 崖から落ちようとしたビン子を助けようとしたためにタカトは崖下に落ちたのだ。

 落ちるビン子、手を伸ばすタカト。

 なぜ……俺はあの時、咄嗟に手を伸ばしたのだろう……

 ビン子がいなくなれば3日に一度不味い飯を食わなくてもよくなるではないか……

 だが……それでいいのか? 家族だろ?

 いや……そんなものよりももっと大切な何か……

 己が命をなげすてでも守らないといけない存在。

 それがタカト本心からなのかはタカト自身にも分からない。

 分からないのだが……

 まぁ、その前にビン子を馬鹿にしていた時点で責任はタカトにあるように思うのだが……タカトのとっては、それはそれ!これはこれ!の話なのだwwww

 そう考えると、今のタカトに取ってビン子はもう貧乏神じゃなくて疫病神といっても過言ではない!

 ――ああああ! それもこれもアイツがわるい!

 なんだか胸糞が悪くなってきた。

 ――ならば!このまま死んでいいのか!

 なぜだか死んだタカトの位牌の前でビン子がニヤニヤ笑っている姿が想像できてしまう。

「タカトwwwあなたのムフフな本はwwwww」

 燃やされる?

 ――いや違う! 奴は絶対にそんなことしない!

 そう、タカトのムフフな本の多くは巨乳のアイナちゃんの写真集が占めている。 

 その存在は無乳のビン子にとっては天敵と言っても過言ではない。

 それを見たビン子の反応……

 すぐさま本を燃やす?

 いや、そんな事ではビン子の胸のイライラが収まるとは思えない!

 もっとひどいこと!

 そう、ムフフな本といえどもその尊厳を汚そうとするはずなのだ!

 たとえば、変態オタクどもの欲望の糧に供するかもしれない。

 オタクたちの前で両足を広げるかのように押し広げられたムフフな本のページにのるアイナちゃんの姿。

 そこに変態オタクたちの暴れん坊が無理やり押し付けられる。

 『これが欲しいんだろ! これが欲しいって言え!』

 『イヤ! 絶対にイヤ!』

 だがついには……巨乳のアイナちゃんの尊厳は白濁に汚されることになるのだ。

「タカトwwwあなたのムフフな本はwwwww私がしっかりとブックオフに売ってきてあげるわwwww」

 もう!勝ち誇ったかのような笑みを浮かべるビン子。

 ――それだけは絶対に許さん!

 だから!ビン子にだけは!ビン子にだけは!見られるのは絶対嫌なのだ!

 そう考えると!タカトに闘志がわいてきた!……理由はともあれ……

 ――だいたい!俺、童貞だぞ! それどころか!おっぱいすら揉んだことないんだ!

 そう、日頃、訳の分からぬエロ道具を作っているにもかかわらず、その願いが成就したためしは一度もない!

 そのかいあって、タカトの純潔はきれいなまま保たれていた。

 それどころか、ラッキースケベすらないタカトには……オッパイを揉むという感触は……抱き枕を揉みしだく!以外では頭の中の想像でしかなかったのだ……もう、まさに不憫。

 ――このまま死んでいいのか……いや、いいはずがない! いいはずないだろうがぁぁぁぁぁぁあ!

 恐怖をグッと飲み込む!

 そして、無理やり震えを抑え込んだ剣先が、ダンクロールの正面をまっすぐにとらえた。


 まるでそれを合図とするかのように、ダンクロールが足を踏み出した。

 一気に加速するイノシシの巨体!

 嵐のごとき勢いで土ぼこりをたてながらタカトに向かって突進してくる。


 それを見るタカトの目!

 力強くダンクロールをにらみつける!

 だが……

 ――あっ!やっぱ……無理!

 あきらめたwww

 コイツ!秒で!あきらめよったwww

 ――だって……あの勢い……抵抗しても絶対に無駄だもん……

 それを理解したタカトは目を閉じた。

 ――痛くしないで……

 その切なる思い……もしかしたら、ムフフな本の中で足を広げるアイナも思ったのかもしれない。

 そんなタカトはアイナと気持ちがシンクロしたような気がした……とはいっても、まぁ、タカトの勝手な妄想なわけなのだがwww

 だが、初めてとは痛いと聞いたことがある……

 そのため、痛みで気を失うこともあるという……

 というか……すでにタカトは明らかに意識を失っていた。

 まるで魂が抜ける、いや、暴れん坊の栓が抜けるかのようにタカトは昇天していたのである。

 ジョボジョボジョボ……

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