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あれ、あいつら……

 今、タカトの目の前では、『ぺっ・ヨーテンカ』が潰れていた。

 酔いつぶれたオッサンが地面の上でゲロを吐いているように見える……いや、目も脳みそも飛び出し……まさにスプラッター状態! 某アイドルに嫉妬を抱いている者であったとしてもココまでの残虐行為は決してしないだろう。

 だが……仕方ない……

 乙女のスカートの下にいるということは万死に値するのだ!

 それは神であろうがアイドルであろうが同じこと。

 したがって、ぺっしゃんこにつぶれたとしても文句は言えない。

 だが、つぶれたのは某アイドルの顔ではなく、幻覚剤を内包する『ぺっ・ヨーテンカ』。

 その破裂の勢いで幻覚剤を飛び散らせたのは言うまでもない。

「こいつ……『ぺっ・ヨーテンカ』……さっきの夢は、コイツのせいだったのか……」

 タカトは棒でつぶれた某アイドルの顔、いやサボテンもどきをツンツンとつつきながら、夢の記憶を思い出そうとしていた。

 だが、夢とは儚いもの……

 目を覚ませば霧のように消えていく……

 映画のような世界にいたような気がするのだが、うまく思い出せない。

 ただ……母とおぼしき声だけはしっかりと耳に残っていた。

『人を傷つけるような道具を作ってはいけません……』


 まぁ、今は夢の事などどうでもいい。

 というのも、タカトの目の前には宝の山がどっさりwww

 『ベロベロチューリップ』などの魔草花が咲き乱れているのだ。

 しかも、半魔草の『ぺっ・ヨーテンカ』まで自生しているではなか。

 ――これを売れば一体いくらの金になるんだ……

 『ベロベロチューリップ』などは人魔症を患った人間の精神安定剤。

 『ぺっ・ヨーテンカ』にいたっては、現実の世界に疲れはてた人間が夢の世界に逃げむときの必需品となっていた!

 人間やめますか? それとも死んじゃいますぅ?

 そんな問いかけに平然と死を選ぶような退廃的な人間には、まさにもってこいのアイテムだったのである!

 高値で売れること間違いなし!

 それが分かるタカトだからこそ、彼の脳内では醜い悪魔が銭勘定を始めていた。

 ――もうかりまっかwwwwもうかりまっせwwwうっしっしwwww


 だが……

 しかし……

 この群生地帯を権蔵が知ったらどうなることだろう……


 『レディホールカーネーション』や『ベロベロチューリップ』、『立チンぼ』などは融合加工に使う事はめったにない。

 すなわち、権蔵にとっては価値がないのだ。

 ならば、人魔症にかかった人のために性欲処理道具として道具屋で売るのはどうだろうか……

 おそらく、権蔵の性格だ……「そんなことをするぐらいなら、とっとと治療してこい!」と追い出すことだろう。

 まぁ、そうはいっても一般国民以下の身分の者が人魔症を治すあてなどない。

 人魔収容所に隔離され死を待つしか道はないのだ。

 当然、そんなことは権蔵だって分かっている。

 分かっているからこそ、無理やり連れていくのだ。第七の門の宿舎へと。

 第七の門……そこは権蔵が以前、奴隷として長い年月を勤めていた場所。

 そのため門の騎士である一之祐とは気心が知れた仲だったのである。

 おそらく一之祐のこと、権蔵が頼み込めば見ず知らずの人間であったとしても人魔症の治療をはじめることだろう。

 だが、それが権蔵にどれだけの負担を背負わせることか……

 おそらく、その見返りに権蔵は第七駐屯地で再び働かないといけないことになりかねない……

 そんなことは、アホのタカトにだって十分理解できていた。

 それが分かったうえで、人魔症の患者が求める『ベロベロチューリップ』を店に置くことができるだろうか……

 ――そんなの!できるわけないだろうが!


 『ぺっ・ヨーテンカ』も同じ……

 人間を堕落させるような代物を堅物の権蔵が売るはずもない。

 そんなものを店に並べようものなら、「このドアホが!」とタカト顔がアンパンマン以上に腫れあがることは間違いなかった。


 理解できている。

 タカトにはそんなことは十分理解できている。

 できているのだが……目の前のお宝をみすみすと見過ごすという事は、簡単にできないのだ。

 ――さてさて……どうする……

 幸いにも、この場所を知っているのはタカトとビン子の二人のみ。

 しかも、ビン子の奴は、この魔草花の価値に気づいていないと見える。

 ――ならば、今はひとまず問題を棚上げして……あとでゆっくりと考えるとするか

 実に日本人らしい考えであるwwwって、タカトって日本人なのか? いやいや、れっきとした聖人世界で生まれた人間です!

 

 ということで、後でもう一回この場所に来ることができるようにマーキング!

 こんな深い森の中、印がないと簡単に見失いかねないのだ!

 なので!

 タカトはおもむろにズボンのチャックをおろした。

 そして、中からミニダ○コンを引きずり出して……

 ジョボジョボジョボ……

 ――これでマーキングはオッケーwww

 って、お前は犬か! 犬なのか!


「ちょっと! タカト! 何してんのよ!」

 びっくりしたビン子は、顔を赤らめて声を大にした。

 振り返るタカト。

「え? 何って、ションベンwwww」

「ちょっと! こっちに飛ぶじゃない! あっち向いてしてよ!」

 跳ねる液体から体をそらすビン子。

 だが、タカトはそれを見てニヤリ!

 体をそらして「ほれ!ほれ!」とミニダ○コンを振りだした。

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 悲鳴を上げて右に左に逃げ惑うビン子。

 そして、ついには!

「いい加減にしなさい‼」

 ビシっ!

 と、鋭いハリセンがタカトの頭をはたきこんだ。

 シュンとしおれるタカトの頭とミニダ○コン。

 どうやら、マーキング作業は終了したようである。

 

 そんな時である。二人の耳に遠くから獣の声が響いてきた。

 それはかなり大きな鳴き声。いや、唸り声。

 小動物が発するようなか細き声とは全く異なっていた。

 それを聞いたタカトは小躍り

「よっしゃ!ラッキー。こんなに早く大物が見つかるとはな!」

 どうやらやっと、森に分け入ってきた理由を思い出したようである。

 そう、タカトとビン子はこの森の中に獲物を狩りに来たのだ。

 決して魔草花を取りに来たわけではない。

 まして、ビン子の写真集を撮りに来たわけでもないのだ。

 あゝ……長かった……

 ここまで来るのがこんなに長くなるとは思ってもみなかった。

 当初は数千文字程度の初原稿。

 それが、今では8万文字wwww

 まじで……無駄に長かった……

 だが! 途中、話が脱線するも、何とか本線に戻ってこれた。

 しかし、タカト達にとってそれはわずかな時間。

 ほんの30分ばかりの間の出来事だったのである。

 そのため、本来の目的をド忘れているのは作者だけというありさまだったのだw

 ごめんねぇ~wwww

 だが、作者もまた、やっと本来の話を思い出したのである!

「やったぁぁぁぁぁあ!」

 タカトは喜び、声がする方向に足を向けた。

 だが、またもやビン子が待ったをかけるのだ。

 もう! 空気読めよ!

 そう思うのだが、ビン子が不思議そうに尋ねるのである。

「でも、普通、動物がこんな声を出す?」

 確かにそうだ。

 本来警戒心の強いはずの獣たちが、ここまで大きな声をあげるのは普通ではない。

 それも、一回だけでなく、いまだに続いているのだ。

 そう考えれば、何かが起こっていると考えるのが筋というもの。

 だが! タカトにはそんなの関係ねぇ!

「なんでもいいじゃん。とにかく、そこに獲物がいれば、それで、万事解決よ!」

 じゃないと、この目の前のお宝の山、魔草花が誰かに取られてしまうかもしれないのだ。

 そう考えると、もう、気が気がじゃない。

 ならば! さっさと獲物を取って帰る!

 権蔵とビン子を家に監禁しておいて、再びこの場所に戻ってくる!

 それが今のタカトのやるべきこと!

 であれば!

 もう獲物の種類なんて関係ない。

 いや、権蔵に「こんな小さな獲物で足りると思とんか!」と言われないような大物であれば、この際、なんでもいいのだ!

 あの大きな鳴き声! 唸り声!

 きっとそこにいるのは大物に違いない!

 ならば、さっさと片づけてしまおうではないか!

 ――待っててねレディホールカーネーションちゃんwww

 と、タカトは森の茂みをかき分け奥へと入っていく。

 それを見るビン子は心配そう。

 だが、かと言ってタカトを放っておくわけにはいかない。

 ――あの目……あのタカトのにやけた目……きっと!絶対!何か企んでいるんだわ!

 ビン子ちゃん!さすがに鋭い!

 だが、今の時点ではビン子にはタカトが何を企てているのかは分からない。

 分からないのだが、どうせろくでもないことはよく分かる。

 ――お天道様が許しても! このビン子様の目が黒いうちは決して見逃さないわよ!

 と、日がまだら模様に差し込む緑の中にビン子もまたズカズカと分け入っていったのであった。

 

 どうやら獣の唸り声は移動しているようであった。

 先ほどまですぐ前から聞こえていた声は、次第に奥の方へと遠ざかっているのだ。

 それはまるでタカトたちを森の奥へと誘うかのよう。

 この先に一体何があるのだろう。

 もしかして小門でもあるのだろうか。

 小門……それは魔人世界と聖人世界をつなぐダンジョン。

 魔草花の群生地帯が広がっていたことからして、それがあるのはほぼ確実である。

 だが、小門を通ってくるのは魔草花だけではない。

 当然、魔物や魔人といった類だって通れるのである。

 ならば……あそこで唸り声をあげているのは……もしかしたら、魔物という線もありうるのだ。

 そう考えると、ますます不安になるビン子。

「ねえ! タカト! じいちゃんの所に戻ろうよ! 森の中に入りすぎてるって! ねぇ! 帰り道分からなくなるよ!」

 だが、タカトはそんな言葉に耳を傾けない。

 それどころか、奥から聞こえてくる唸り声に早く追いつこうと足を速めるのだ

「大丈夫だって、もう少しで追いつけそうだしな」

 もう、頭の中では魔草花を売った金で何を買おうかと迷っていた。

 ――まずはアイナちゃんの最新写真集だろ……頑固おやじ印の極め匠シリーズの工具も欲しいな……あっ! 匠シリーズのネジも買っておかないとwwww

 取らぬ狸の皮算用!

 だが、近づいてくる唸り声はタヌキではない!

 どちらかというと犬。

「うーーーー! ワン!ワン!ワン!ワン!」

 しかも、それは一匹だけではない。

 2匹?

 いや、3匹の鳴き声が入り混じって争っているようだ。


 タカトは目の前の緑の茂みをかき分ける。

 パッと差し込む日の光。

 一瞬、そのまばゆさに目の前が白くなる。

 だが、徐々に色を取り戻していく視界には青い空。

 そして、まるでその空へと続くかのように尖った崖先が突き出ていた。


 タカトとビン子は恐る恐るその崖先に立つ。

 そして崖の下を覗きこんだ。


 その高さは大人二人分ほど。

 下に広がるバスケットコート半分ほどの大きさのひらけた場所では巨大な豚と2匹の犬が一食触発の状況でにらみ合っていた。

 一匹は大きな犬。もう一匹は明らかに小さな子犬。

 だが、大きな犬はうずくまったまま動かない。どうやら足に怪我を負っているようで顔だけ上げて必死に豚を威嚇していた。

 そんな犬をかばうかのように子犬が低いうなり声をあげ続けている。

 だが、所詮は子犬。大型バイク2台分以上の大きさがありそうな豚と比べるとその大きさは全くお話にならない。

 しかし、そんなことにかまうことなく子犬は豚へとにらみを利かしているのだ。

 その気迫! 小さき体と言えども魔装騎兵に匹敵するほどに鋭い。

 そのためか、豚はまるで警戒するかのように鼻息を荒くしながら、先ほどから前足をこすりつづけているだけなのだ。


「あれ、あいつら……」

 そう叫ぶタカトには見覚えがあった。

 その犬たちは第一駐屯地に向かう途中に出会った親子に違いない。

 路地の上で足を引きずる母犬は、あばらを浮き出しながらも子犬を気遣っていた。

 そして、子犬はというと、こちらも同様にやせ細っていたのだが、それにもかかわらず元気に母犬の周りを飛び跳ねていた。おそらく、母犬に心配をかけまいとしているのだろう。

 飢えていても一生懸命に生きている二匹。

 それをこともあろうかベッツという不良少年が思いっきり蹴り飛ばしたのだ。

「なんだこの犬! 汚ねぇな!」

 道に倒れる母犬。

 子犬は母を守ろうとベッツに向かって牙をむく。

 まさしく、今の状況と同じである。

 タカトはそんなベッツに喧嘩を挑む!

「ベッツ! お前の方がうるさいんだよ!」

 ……だが、勝てるわけはなく……魔装騎兵であるヨークに助けてもらったのだ。

 ちょっと惨め……

 だが、タカトはその場に残る二匹がどうしても気になった。

 すり寄ってくる母犬が、なぜか懐かしく大切な存在に感じたのだ。

 ――せめて、今日の飢えだけでも……

 それが単なる自己満足とわかっていても自分の昼飯を分け与えずにいられなかった。

 そして、ビン子はというと、食べ物が豊富に見つかる森の方角を教えたのである。

 おそらく、その教えに従いこの森にやって来たのだろう。

 豊富な森の恵みのおかげで、あの時の子犬は大きくなっていた。

 それでも、まだ母犬の半分ほどの大きさ。やはり、まだまだ子犬である。

 だが、その気概はあの時よりも男前になっているようだ!

 不良少年に比べたら比べものにならないほどの豚、いや!イノシシの恐怖。

 それを前にしても一歩も引く気を見せようとしない!



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