ヴェノムアナコンダ
勢いよく吹っ飛んだ結果、ヴェノムアナコンダは、川に落ちた。
「蛇って、水平気だったっけ? でも、昔の映画か何かで川を泳いでいるのを見た気もするし……」
これでボス戦終了かと思っていると、ヴェノムアナコンダの気配が動き始めた。川の中を泳ぎ、近くの森に入り込んだ。
「えっ!? この空き地が、ボスエリアじゃないの!?」
幸いな事に、【感知】で気配が分かるので、不意打ちはない。しっかりと森の中でも存在は追えている。でも、私も失念している事があった。
それは、ヴェノムアナコンダの大きさだ。私が視線で追っていた場所から少し離れた場所。そこからヴェノムアナコンダの尻尾が出て来た。私が感じていた気配は、ヴェノムアナコンダの頭周辺の気配だった。気配がする箇所の考察は、後に回して、双剣を十字に重ね、尻尾の攻撃を防ぐ。尻尾は、また森に戻っていった。
「身体の長さ……そこから考えて、完全に反対側にいれば、尻尾による攻撃を受ける事もない」
さっきまでは、中央にいたけど、すぐに気配から離れた場所に移動する。こうすれば、さっきみたいな尻尾による攻撃はこない。でも、まだ一つ懸念がある。それは、毒液による攻撃が残っている。でも、それくらいは避けられる。
ヴェノムアナコンダが、どういう行動に出るのか。気配を頼りにしながら、探っていく。すると、真っ正面から、もの凄い勢いで突っ込んできた。双剣で止めようとすると、運の悪い事に【血装術】が解けた。
「うげっ!?」
大分効果時間が延びてきたけど、やっぱり安定はしていない。もっと育てる必要がありそうだ。血の刃がない双剣で受け止めるのは、無理があるので、両腕を硬質化させて、腕を交差させる事で防ぐ。それでも、衝撃で吹っ飛ばされるけど。
吹っ飛ばされている中で、双剣を仕舞い、血染めの短剣を抜く。私を追撃してきたヴェノムアナコンダの牙を、右手の短剣で弾いてから、その横顔をぶん殴る。蹴り程の威力はでないけど、ヴェノムアナコンダが少し蹌踉ける。さらに、顎を下から蹴り上げる。思いっきり上を向いたヴェノムアナコンダの身体に接近する。
「【アタックエンチャント】【ラピッドファイア】」
攻撃力を上げて、高速の二十連撃を叩き込む。硬直時間が解けた瞬間、上からヴェノムアナコンダが私を飲み込もうとしてきた。即座にバックステップを踏んで避ける。
「【追刃】」
血染めの短剣に、青と緑の光が纏う。出来るかどうかは賭けだけど、【追刃】と高速移動のコンボを使う。この巨体相手なら、上手く出来れば大ダメージを与えられる。高速移動でヴェノムアナコンダの横を抜けつつ斬る。そして、すぐに靴のスパイクで地面を噛んで、勢いを殺し、別の進路に向かって高速移動する。
いつもよりも足に力を入れないと、身体を止められない。いつもよりも遅くなってしまうけど、攻撃の密度は変わらない。ヴェノムアナコンダは、私の姿を追って、攻撃をしようとしていたけど、【追刃】で追ってくる刃に阻まれて、攻撃は通らなかった。
【追刃】の軌道に重ならないようにしながら攻撃を続けて、HPを半分まで削る事が出来た。効果が切れた直後、ヴェノムアナコンダが動く。
これまでの鬱憤を晴らすかのように、尻尾を大振りしてきた。私は、身体を回して、その尻尾に合わせるように後ろ回し蹴りをする。互いの攻撃がぶつかりあって、周囲に衝撃が撒き散らされる。そして、僅かに向こうが押された。
【神脚】を信じての行動だったけど、 まさかこっちが勝つとは思わなかった。これによって、ヴェノムアナコンダの体勢が崩れた。この隙を逃す理由はない。
「【蟻の一噛み】」
ヴェノムアナコンダを短剣で斬る。直後、ヴェノムアナコンダの身体のあちこちでダメージエフェクトが散った。【蟻の一噛み】は、直前一分間に負わせたダメージを、再び負わせる技だ。これを最大限活用するのであれば、【追刃】を使った後に【ラピッドファイア】を使って【蟻の一噛み】を使うというのが良いけど、【追刃】と高速移動でも十分【ラピッドファイア】に匹敵するダメージ量を出せる。ヴェノムアナコンダのHPが二割になり、赤ゲージに入った。
ヴェノムアナコンダは、硬直時間で止まっている私に向かって尻尾を振う。【蟻の一噛み】の難点の一つは、硬直時間が長いという点だ。だから、こうして反撃を食らう事になる。勢いを殺さずに、ヴェノムアナコンダから離れる。
でも、赤ゲージに入った。【執行者】の効果範囲だ。私は、もう一度血刃の双剣に持ち替える。
ヴェノムアナコンダは、突っ込んでくるのではなく、毒液を吐き出してきた。それも今までのような毒弾的なものではなく、嘔吐みたいに口から吐き出している。正確に言えば、毒牙らしき場所から噴き出しているって感じかな。毒液が広がっていき、ボスエリアの三分の一を埋めた。川、陸、毒って並びになって、戦闘を出来るエリアは真ん中だけになった。
そして、豚が泥遊びをするように身体に毒を纏い始めた。
「うわぁ……」
もの凄く手を出しにくい状態になった。出血状態も治ってしまっているので、【血装術】を使うには、一度双剣を突き刺す必要がある。
「【毒耐性】を信じるか」
毒を無視すれば、戦闘エリアは変わらない。高速移動で突っ込むのと、ヴェノムアナコンダが突っ込んでくるのは同時だった。その脳天に、硬質化した膝を入れる。反動は来るけど、向こうの方が酷い。ヴェノムアナコンダが吹っ飛んだので、着地してすぐに地を蹴り、高速移動を使った必殺キックを叩き込む。
空中にいて踏ん張りも出来ないヴェノムアナコンダは、そのまま更に吹っ飛んだ。毒溜まりの上に来た。ヴェノムアナコンダの上に乗ったまま、双剣を突き刺して、出血状態にする。そのまま【血装術】を発動して、血を纏う。
「【双月】」
ヴェノムアナコンダに双剣を振り下ろす。残り一割。ヴェノムアナコンダは、身体を動かして私をどかそうとする。振り落とされる直前に、硬直が解けたので、双剣を突き刺して、吸血する。一気にヴェノムアナコンダのHPを削り、倒す事に成功した。
その結果、ポリゴンになってヴェノムアナコンダ消え、私は毒溜まりに落ちる事になった。
「うぶっ……毒消し、毒消し」
毒溜まりから出て、毒消しを飲む。ザ・薬って感じの味が広がって、少し口が歪む。口直しに林檎を齧りながら、ヴェノムアナコンダのドロップとかを確認する。
『ヴェノムアナコンダを討伐しました。称号【毒大蛇を退治する者】を獲得しました』
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【毒大蛇を退治する者】:毒蛇系モンスターとの戦闘時、攻撃力が一・五倍になる。
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「毒蛇限定……どうやって見極めれば良いんだか……」
相変わらず、称号の効果は限定的過ぎる。
次にドロップしたものは、ヴェノムアナコンダの皮、ヴェノムアナコンダの牙、ヴェノムアナコンダの毒液、ヴェノムアナコンダの毒牙、ヴェノムアナコンダの核だった。
「最後の【吸血鬼】で、血は吸い取っちゃったか。てか、蹴りよりも吸血の方が、攻撃力が高いみたい。やっぱり、何だかんだ言っても【吸血鬼】が、一番なんだなぁ」
最後の吸血による攻撃は、【執行者】の効果があると考えてもHPの減りが早かった。でも、使いどころが難しい。【血装術】の操血で吸っても、【吸血鬼】の本領は発揮出来ない。牙で吸って初めて、【吸血鬼】に攻撃力が生まれる。動き回るモンスター相手に、その状況を作り出せるかが、一番の鍵になる。
「【支援魔法才能】を上げて、行動阻害系の魔法を強化しないとかな。エンチャントは、時々忘れちゃうんだよね。他のゲームでも、あまり使わないし。中々意識が切り替わらないなぁ」
前にも似たような事を考えていたかもと思いつつ、ボスエリアの先に進んで行く。取り敢えず、熱帯エリア突破だ。




