皆に事情説明
マールムの空間から出ると、何故か私達の開拓領域に着いた。マールムが気を利かせてくれたらしい。
『ここがあなたの土地で合っていますか?』
「うん」
『では、話を聞かせて貰いましょう』
「そうね……私も……娘の身体が……どうなっているのか……心配だわ……」
ニュクスさんだけでなく、他の皆も同じ気持ちみたい。確かに、ここで話すという話になっていたので、ちゃんと話す事にする。中央の広場にテーブルと椅子を用意していると、どんどんと神様が集まってきて、会場の用意どころではなくなった。なので、ガイアさんが後を引き継いでくれる。
皆に無事を知らせて、何とか落ち着かせる事に成功した。そこにギルドエリアからアカリがやって来た。どうやら誰かが知らせてくれたみたい。ニュクスさんに抱かれている私を見て、アカリはホッと胸をなで下ろしていた。
「良かった……皆がハクちゃんが消えたって言うから心配してたよ。最悪でも向こうには戻ってこられると思って待機してたけど、ちゃんと戻ってこられたんだね」
「うん。心配掛けてごめんね。ちょっとマールムの試練で過去に行っててね。その辺りも全部説明するよ」
「過去……? うん。分かった」
アカリは少しだけ納得しているようだった。ゲームとして考えて、何かしらの過去編をプレイしていたという事を察してくれた感じかな。まぁ、やっていた事は過去編どころか邪神編だったのだけど。
そんな会話の中でフルーレティがマイクを渡してくる。何故と思ったけど、周囲には神様や悪魔、天使、精霊、妖精、妖怪を含めたほぼ全てのギルドエリアの住人達が集まっているのを見て、確かに必要だと思った。
私との繋がりが切れたという情報を受けて皆が心配していたという事がよく分かる。ニュクスさんは私を放す気はないみたいで、椅子に座ったニュクスさんの膝に乗せられて、しっかりと抱きしめられた。この状態での説明になる。
「それじゃあ、説明するね。まず、この星で起きた出来事を知るために、私はマールムに過去へと送って貰ったの。多分、これが皆との繋がりが一時的に断たれた理由。この現在にいないから、繋がる先がないって事だね」
私が説明すると、皆が納得したように頷いていた。さすがに時間のズレで感じ取る事は不可能だという事は共通認識らしい。
「まぁ、過去の出来事を知る事は、リガイアの攻略に繋がる事だから、必要な事だったんだけど、その過去で私の身体の中に邪神が入っちゃった」
私が極力笑顔で説明すると、全員の顔が強張る。私の中に邪神が入ったという事が、衝撃的だったのだと思う。まぁ、普通はそうだよね。
「ひとまず中に入られても、身体に大きな影響はない。ちょっと邪神の言葉を認識出来るようになったくらい。現状邪神が入ったという事実以外に変わった事はないって感じ」
実際、今も変な感じはしていない。邪神が入ったという事も、皆が私の中に異物を感じる程度でしかない。
私の説明の中で、アカリが手を上げる。
「はい。アカリ」
私がアカリを名指しすると、フルーレティがサッとマイクを届けていた。有能スタッフだ。この状況にアカリは即座に適応している。困惑しているマールムとリリィルーナが可愛い。てか、いつの間にかアク姉達やフレ姉達、ソルさんもいる。人数が多すぎて気付かなかった。
「邪神の姿は、どんなの?」
「姿? えっと、私の中に入ったのは雲みたいなのと触手うねうねのだったかな。身体のあちこちに触手が生えていて、一定の形があるって感じじゃなかったかも?」
「……シュブ=ニグラスとヨグ=ソトースかな」
「そんなのがいるの?」
「うん。アクアさんなら、説明出来ると思う」
アカリがそう言うと、即座にフルーレティがアク姉にマイクを渡す。
「シュブ=ニグラスは、千匹の子を孕みし森の黒山羊とも呼ばれる豊穣の神であり地母神だね。ハクちゃんが見た通り雲のような姿とも言われるし、肉塊とも言われる。この辺りは書いている人によって変わるかな。比較的人間に好意的な邪神で、信者、信徒に恩恵を授けてくれる事でも知られるね。最初に言った呼び名の通り、沢山の子供を産んでる。しかも、沢山の配偶神もいる。一説には男神としての性質もあるらしいね。一応、ヨグ=ソトースと夫婦であるともされているよ」
アク姉はすらすらと説明をしてくれる。本当によく知ってる。隣にいたフレ姉が『こいつ、何でこんなに知ってんだ?』みたいな顔をするくらいだ。
「恩恵って?」
「あ~……恩恵までは知らないかな。特徴的には創造だから、身体を作り替えるとかはありそうだけど。そういうものもあるみたいな事を書いてあった気がする。何にしても色々な存在と交配するから、そういう系の能力があると思う。後は眷属とかもいて、黒い仔山羊だったかな。かなりの化物みたいだよ」
この話から考えて、あのスライムは眷属ではなかった感じかな。恩恵がよく分からないのが怖いし、身体を作り替えるというのも怖い。今のところ何もないから大丈夫なのかな。
「ヨグ=ソトースは、とにかくよく分からないって感じかな。時空の制限を受けず、時空そのものとも言われてる。始まりも終わりもない。過去、現在、未来に同時に存在するようなもの。空虚とも言われるかな。一にして全、全にして一。外見的には、ハクちゃんが目撃したような姿もあれば、もっと異なる姿もあるよ。宇宙の外にいるとも言われているね」
「じゃあ、私が引っ張られた先は宇宙の外?」
「さぁ? ハクちゃんが何度も会う邪神と同じで隔絶した別空間にいたのかもしれないよ。そもそも本来は時空を支配するような邪神だったはずだから。これでも一番上の邪神じゃなかったはずかな。まぁ、結局、ここら辺の邪神って、直視しない方が良いんだよね。下手したら狂っちゃうから」
「へぇ~、まぁ、私には関係ない事だったみたいだね。じゃあ、スライムみたいなのは?」
もう一種類の邪神の正体も聞いておこうと思ったのだけど、これに対して、アク姉は即答出来なかった。
「う~ん……大きかった?」
「ううん。そこまで」
「う~ん……でも、別に小さい可能性もあるしなぁ……はっきり言って、スライムみたいな不定形って、あそこら辺の邪神って大体なる事が出来るからねぇ。まぁ、順当にいけばショゴスかな? これは……説明するとややこしいから、作られた存在だと思っておけば良いよ。これはシュブ=ニグラスの傍にいたの?」
「そこに至るまでの道程にいて、雲の邪神に倒されてた。私を守るような感じだったかな」
「へぇ~……どうなんだろう……結局、ここら辺は私達の予想でしかないからね」
確かに、結局これらはアカリ達の予想でしかない。まぁ、ゲーム的にも考えて、ある程度設定がある邪神を用意するだろうしね。
名前の候補とその力の予測が出来たから、これから何か起きてもある程度対応出来るかな。いや、さすがに無理か。




