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吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ  作者: 月輪林檎
吸血少女と進展?

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扉の先に待ち受けるもの

 目を覚ますと、一時間半くらい経っていた。後三十分寝られるけど、何だか中途半端な感じがしたので、隣で静かに寝息を立てているアカリを起こさない様にしながら、寝袋などを仕舞って、テントを出る。


「あら。まだ時間はあるわよ?」


 見張りが、フレ姉からゲルダさんに変わっていた。


「目が覚めちゃったので」

「そう。おはよう」

「おはようございます」


 挨拶を交わすと、ゲルダさんが手招きをした。傍に来いという事だと思うので、傍に来て隣に腰を下ろす。


「尻尾と耳、触って良いわよ」

「!!」


 ゲルダさんから許可を貰った。ゲルダさんが尻尾を私の前に回してくれる。優しく触ってみると、現実の猫みたいな柔らかい毛並みだった。でも、若干の違和感もある。それが何なのか具体的に言葉に出来ないけど。

 耳の方にも手を伸ばして触ってみる。


「おぉ……?」


 耳って感じがするけど、やっぱり違和感がある。


「あまり納得いかないって感じね。気持ちは分かるわ。毛並みは良い感じだけど、リアル感はないのよね。テイマーズ・オンラインが凝りすぎていたから、期待値が上過ぎるのかもしれないわね」

「確かに、それはあるかもです。そういえば、耳四つなんですね」

「そうね。人間部分の耳の扱いに困って、そのまましたのかもしれないわね」

「こっちは、普通の耳ですね」


 ゲルダさんの人部分の耳と自分の耳を触り比べて、何も変わらない事が分かった。こっちは、本当に人の耳らしい。


「そういえば、猫の耳は、どんな感覚なんですか?」

「普通の耳と同じ感覚よ。違うのは、自分で結構自由に動かせるって部分ね。尻尾は、尾てい骨ら辺から、手が生えているって感じが近いわね。どっちも触られるとくすぐったいって感じよ」

「へぇ~」


 それを聞きながら、ゲルダさんの尻尾を触る。テイマーズ・オンラインの触り心地には劣るものの、このゲームではあまり味わえない感覚なのでなんとなく触ってしまう。

 ゲルダさんは、そんな私の頭を撫でていた。


「そういえば、回復魔法の話をしていた時、ハクは、霊峰の颪って言っていたわよね?」

「はい」

「どうして、この山が霊峰だと知っているのかしら? 山の中に入った時も、名称は出て来ていないのだけど」


 私とアカリが霊峰だと知っているのは、今も手首に付けている霊峰のブレスレットがあるからだ。知らないという事は、フレ姉達は、霊峰のブレスレットを持っていないという事になる。


「私とアカリは、山の頂上まで登って、このアクセサリーを手に入れたんです。これの名前が霊峰のブレスレットとなっていたので、この山が霊峰だって分かったんです。私の気分が悪くなった理由も、霊峰の颪だったからって納得出来ました」

「そういう事だったのね。私達も登りきったら、貰えるのかしら?」

「さすがに、先着とかではないと思いますけど……」

「まぁ、分からないわよね。ここの攻略が終わったら、登ってみることにするわ」

「頑張ってください」


 そのまま、ゲルダさんの尻尾を触りながら三十分待っていると、皆が起きてきた。順番的には、フレ姉、メイティさん、カティさん、トモエさん、サツキさん、アメスさん、アカリ、アク姉って順だ。


「よし。揃ったな。準備は良いか?」


 フレ姉の確認に、皆が頷く。そもそも出来る準備なんてないし、出来ていないわけもないけどね。


「それじゃあ、行くか」


 フレ姉が扉に近づいていくと、私達全員の前にウィンドウが現れる。休憩前には出てこなかったから、ある程度近づかないと出てこないものみたい。


『これより先、レイドボスエリアとなります。準備を整えてからお入りください。(推奨人数:12)』


 本当に、レイドボスとの戦いになるみたいだ。運営が推奨する人数は十二人。でも、私達の人数は十人。つまり、二人足りないという事になる。


「まぁ、大丈夫だろ」


 フレ姉はお構いなしに扉を開けて、中に入っていった。私達も後を追って中に入る。扉の中は、かなり広い円形の部屋になっていた。そして、中央には、巨大なドラゴンが寝ていた。大きさは、かなりでかい。翼を広げれば、野球の内野くらいの大きさはあると思われる。


「ドラゴンか。厄介だな」


 フレ姉がそう言うって事は、本当に厄介なモンスターなのかもしれない。


「今回は、アカリもハクも前に出ろ。タンクは、私とトモエでやる。アクア」

「臨機応変に後衛の守りをしろでしょ?」


 アク姉がそう答えると、フレ姉は満足したように笑った。


「行動パターンが、今までのドラゴンと一緒とは限らねぇ! 一挙手一投足に気を配れ! それと、ハク」

「何?」

「これまでのドラゴンと変わらねぇのなら、あいつの項部分は攻撃の死角になる」

「分かった」


 フレ姉の言いたいを理解した私は、笑いながら頷く。死角があるのであれば、私がしがみつく事が出来るかもしれないという事。それは、私にとって朗報と言えるものだ。


「私の一撃から始める。トモエは、隙を見て、ヘイトを奪え」

「分かりました」


 フレ姉は、普段使っている槍じゃなくて、それよりも無骨で大きな槍を取りだした。


「【アレスの猛り】」


 メイティさんが、フレ姉に魔法を掛ける。多分、付加魔法だと思う。一瞬だけ、フレ姉の身体が赤く光って消えた。


「【グングニル】」


 フレ姉の持つ槍が、赤い光を纏う。直後、強く前に踏み込んだフレ姉が、思いっきりぶん投げた。一般人が出せるような速度を、遙かに超えた速度で飛んでいったフレ姉の槍は、まっすぐにドラゴンを貫いた。


「っ!!」


 先程まで寝ていたドラゴンが、大声で咆哮する。声に刃でも乗っているのではと思う程に、身体中が痺れて、痛い感じもしてくる。でも、実際には、ダメージを負っていないので、行動阻害がメインなのかな。

 この中で、トモエさんだけが前に出て行った。


「【弱者の嘲り】」


 トモエさんがそう言うと、急にドラゴンがトモエさんだけを見た。攻撃をしたフレ姉とそのパーティーである私達から、全てのヘイトを奪い取ったのかもしれない。だから、トモエさんだけを敵として認識している。

 ダメージを与え、完全に私達を敵と認識したところで、ドラゴンの名前とHPゲージが表示される。名前は、霊峰の支配竜。HPゲージは、全部で四本だ。

 霊峰の支配竜は、大きな羽を広げる。


「アクア!」

「【ダイヤモンドダスト】」


 フレ姉の掛け声とほぼ同時に、アク姉が魔法を発動する。霊峰の支配竜の周囲にキラキラとしたものが現れる。それが、霊峰の支配竜の羽に命中すると、その羽が凍結していった。状態異常マークに、氷みたいなものが表示されている。

 羽を動かせなくなり、霊峰の支配竜が咆哮しようと、口を大きく開ける。そして、声を出そうとした瞬間、急に口を閉じさせられた。その犯人は、下に潜り込んでいたゲルダさんと私だ。私はいつも通り蹴りを、ゲルダさんは爪ではなく拳を叩き込んで、無理矢理口を閉じさせたのだ。

 これによって、霊峰の支配竜の咆哮はキャンセルされた。


「【十連】【雷霆の怒り】」

「【フェイルノート】」


 十筋の稲妻が、霊峰の支配竜の身体をまばらに貫き、カティさんが次々と放つ矢が、一本残らず霊峰の支配竜に命中していく。アメスさんと同じく、同じ箇所に当てずに、様々な場所に命中させているところから考えるに、弱点を探っているところかな。

 ここまで一方的に攻撃出来ているけど、レイドボスって事もあって、一本目の一割しか削れていない。

 そして、やられっぱなしでいてくれる程、霊峰の支配竜も優しい訳じゃない。アク姉が封じた羽を力尽くで解除し、勢いよく尻尾を振って、攻撃してきた。


「【アトラスの支え】」

「【鉄塊】【グレートシールド】」


 メイティさんが、トモエさんに付加する。

 それを受けて攻撃の前に出たトモエさんの盾が、少し大きくなった。そして、その盾で霊峰の支配竜の攻撃を受け止めた。さすがに耐えられないのではと思ったけど、一切押される事もなく、完全に受け止めていた。

 攻撃を止められた事で、霊峰の支配竜の動きが止まる。そこに、フレ姉、アカリ、サツキさんが飛び掛かる。


「【トリシューラ】」

「【シューティングスター】」

「【圧斬り】」


 フレ姉の槍に纏っていた水色の光が、三つ叉の槍先に変わり、突き刺される。

 地上から空に上がる流星のように突っ込んで行ったアカリが、細剣を勢いよく突き刺す。

 重厚感が増したような大剣を、サツキさんが振り下ろす。

 三重の攻撃が、同時に身体の右側面に命中して、霊峰の支配竜は左側に押された。私は、そこに飛びついて、その身体に血刃の双剣を突き刺した。さすがに、両手合わせて二回の攻撃では、出血状態には出来なかった。だから、何度も突き刺し続ける。

 すると、身体の側面にくっついている私を疎ましく思ったであろう霊峰の支配竜が、身体を振り回し始めた。


「【暗黒の呪縛】」


 アメスさんの詠唱が聞こえたと同時に、霊峰の支配竜の下に黒い渦みたいなのが現れ、そこから出て来た黒い手が霊峰の支配竜を掴んで地面で縛った。

 その間も、突き刺し続けていたら、ようやく霊峰の支配竜が出血状態になった。【血装術】で、血を二回取りだして、血刃の双剣に纏わせる。


「【震転脚】」


 私が離れると同時に、ゲルダさんが踵落としを叩き込む。四つ脚で【暗黒の呪縛】に耐えていた霊峰の支配竜の身体が地面に着く。

 その背中に、フレ姉が着地する。


「【赤華乱舞】」


 フレ姉が槍を振り回しながら、尻尾側から頭側まで駆ける。背中の上でダメージエフェクトが舞っていく。そこに、どんどんと矢が撃ち込まれていた。カティさんは、手を休めずに、矢を撃ち続けていた。

 その矢が、ある一点。霊峰の支配竜の胸ら辺に命中すると、これまでと霊峰の支配竜の反応が違った。身体を跳ねさせて、無理矢理拘束から逃れようとする。


「【タナトスの誘い】」


 メイティさんの魔法で、霊峰の支配竜の動きが、ほんの少しだけ悪くなった。でも、霊峰の支配竜が暴れるのは止まない。そして、怒りの状態異常マークが付いた。


「逆鱗みてぇなものか……」


 私の隣に来ていたフレ姉がそう呟く。弱点となる場所である胸の一点だけど、そこを突かれたら、怒りの状態異常になる。怒りは、私自身が味わったように、視野が狭まるし、憎い相手しか見られない。

 幸い、霊峰の支配竜が、その黄色い眼で見ているのは、トモエさんなのでヘイトは動いていない。それでも危険である事には変わりはなかった。

 霊峰の支配竜は、拘束から逃れて、空を飛ぶ。そして、これまでで一番大きな咆哮をした。HPゲージの残りは、三本と半分。まだレイド戦は、始まったばかりだった。

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