リガイアが残した痕跡
しばらく捜索を続けていると、ガイアさんとソイルが同時に反応した。
「いた?」
『ううん……でも……他の土とかと……違うものがある……』
「恐らくは脱皮した甲羅ね。大きさの予想からしてそこまで多くないから移動している最中に落ちたという感じかしら。土に還らず、まだ残っているという点から新しいものと予想できるわね」
この辺りは、移動中に考察したことの一つだった。長い時を生きていると予想されるリガイアが、たった数度の脱皮で済んでいるはずがない。
それこそ大陸のあちこちに散らばっていてもおかしくはない。そこから導き出した答えが土に還る。分解されて土になれば流石のガイアさんでも発見は困難になるらしい。
ここの土を管理していれば別だけど、ガイアさんは手をつけていないから無理だそうだ。
「落ちている並びは一直線でした?」
「そうね。多少蛇行しているように思えるのは甲羅の斜面によるものだと考えられるわ」
「分かりました。念の為調べましょう。スノウ、ニクス」
『ガァ!!』
『キュイ!!』
スノウとニクスに呼びかけて、地上へと降りていく。その間にガイアさんとソイルが地下からリガイアの脱皮した甲羅を引っ張り出してくれた。その大きさは、学校の教室くらいある。いや、それ以上か。
研究施設で手に入れたあの欠片は、本当にただの欠片だった。全体の中でも本当に爪の先くらいの欠片だ。
ソイルが甲羅を引っ張り出してくれている間に、先に出してくれた脱皮した甲羅を調べる。
「私が回収したものとは違う……石って感じがしない」
「リガイアの生命力の高さを感じるわねぇ」
アスタロトの言うとおり、この甲羅からは生命力のようなものを感じる。脱皮したものだから、既に命はないはずなのに強い生命力のようなものを感じる。
「脱皮してどのくらいかって分かりますか?」
「さすがに分からないわね。この甲羅も外側は石のようになっていた事と地面の中にあった事を考えるに、かなりの時間は経過しているわね」
「確かに、地面の下に行くって事はそれだけ被さっているって事ですしね。取り敢えず、回収だけはしておきます」
大陸要塞の甲羅片を回収する。同じ名前だけど、その大きさと中に内包されているものは大きく異なる。これを見抜けるようにならないといけないってなると、生産織のプレイヤーも大変だなと思ってしまう。
『お姉ちゃん……あっちに……続いてるよ……』
「うん。ありがとう、ソイル」
ソイルの頭を撫でてあげながら労い、ソイルが掘り出してくれた甲羅片を回収していく。スノウとニクスには空から警戒をして貰っている。何かあれば思いっきり吠えてくれるから安心して調べることが出来る。
「ここから向こうの方角に向かったのか、逆方向に向かったのかが問題ですかね?」
「そうでもないわ。ソイルも分かったかしら?」
『うん……向こうに行くと……石の範囲が……ちょっとだけ……狭いかも……』
そう言ってソイルは新しく引っ張り出している甲羅片の方を指差す。石になっている部分が狭いという事はそれだけ生命力が残っているという事。それは脱皮が新しいという事を表している。
「じゃあ、向こうの方に行けば、リガイアがいる可能性が高いって事だね。スノウ!」
ここから地上を歩くよりも、ソイルとガイアさんに感じ取って貰いながら空を移動する方が良い。もう一度スノウに乗って移動を始める。まぁ、どちらかというとガイアさんに乗っているのだけど。
「やっぱり、亀だから生命力が強いんですかね?」
「そうかもしれないわね」
鶴は千年亀は万年とか言うくらいだから、その辺りのものをゲームに落とし込んでいるのかもしれない。
千年くらい経っている脱皮した甲羅にも生命力が残っている程だから、そもそもの寿命は数億年とかもあり得るかもしれない。下手したら創世のマールムよりも長生きしている可能性すらある。いや、さすがに創世のマールムと同じくらいまでしかないかな。
「そもそも大地の穢れって何なんでしょうね。大地の原初神であるガイアさんなら分かりますか?」
皇帝の残留思念やら何やらが大地を穢したという事は分かるけど、それ以前にリガイアが動くきっかけになる大地の穢れが分からない。
リガイアがどのくらいの周期で動くのかとかも考えるのに、その情報があると良いなと思いガイアさんに訊いてみた。大地の原初神であるガイアさんならそういう事も分かるかもしれないと思った。
「一番簡単なもので毒かしらね」
「毒……」
毒と言われて真っ先に隣にいるアスタロトを見る。
アスタロトは、黒い竜を喚び出す他に毒を扱う。その戦闘方法を見ているために、毒と言われてアスタロトが思い付いた。
話を聞いていたからか、私の視線に気が付いたアスタロトは何故かウィンクをしてきた。私の手が届くのなら顔面を鷲掴みしているところだ。
「私も大地を死なせる事は出来るけれどぉ、それを浄化したくらいで治るとは思えないわぁ」
「何度も浄化を重ね掛けしたら?」
「主人は死んだ対象も蘇らせられるけれどぉ、それを浄化したって言うかしらぁ?」
「ああ、なるほどね。そうなると、リガイアがしてる事は大地の浄化じゃなくて、大地の再生になるもんね」
「毒は毒でも弱い毒になるかしらねぇ」
「なるほどね。そうなると、毒の可能性は低いですね」
「そうね。一番簡単に穢す方法というだけね」
毒が広がるという事も考えられるけど、態々リガイアが動くとなると、もっと大きな事になる気がする。ガイアさんも手っ取り早い方法というだけで、可能性は低いと考えているみたい。
「後は呪いね」
「呪い……大地が呪われるって事が何度もあるんですかね?」
「皇帝の話を聞くと呪いの可能性が高いけれど、リガイアが動く程かとなると微妙ね。ただ呪いの蓄積は考えられるわ」
「蓄積?」
「例えば、生命の死が重なっていくと、その分大地に残留思念の欠片がへばり付いたりするわ。そういう最早意思も何もない死という概念そのものがどんどんと重なって呪いとなり、それが蓄積していくという感じね」
「生き物の死でどんどん大地が穢れるって事ですか?」
「そうね。考えようによっては浄化というよりも成仏を手伝っているとも言えるかしらね」
段々とリガイアがどういう存在なのかが形取られていく。ただし、これも私達の想像に過ぎない。ただ、この可能性を考えるとやっぱり戦うこと無く攻略したいと思う。
この先にいるはずの大陸要塞のリガイア。願わくば戦闘にならない事を祈ろう。




