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flappers   作者: さわきゆい
第3章 Lost Children
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密会 ②

「これがあったんで、洸の話も信じる気になったんです」

 伊達守は深いため息をついた。

「すいません、もう少し早くお伝えするべきだったのかもしれませんが、洸と同じで最初はランダムにしか発動しない力だったので。オレ自身も自分の力を確証するのに時間がかかりました」


 伊達守は、ゆっくりと首を振った。

「また、予想もしないことを背負い込んでしまったね。素直に素晴らしい力だと言ってあげられないのが……複雑な気持ちだよ。私に言ってなかったとかなんて、気にしないでほしいね。むしろ、こうして打ち明けてもらえるのは光栄だよ。君たちに頼りにされている証、と考えていいかな?」

「もちろんです」

 西崎の返答に、本郷も隣で大きく頷いていた。

「こうしていつも助けていただいてますから。むしろ、甘え過ぎて申し訳ないくらいです」

「ふふ、なんの、なんの」


 伊達守は大きく息を吐いて、肩の力を抜いた。盃をあおり、また息を吐く。

「さて、そうすると水沢洸くんの言っていることも、慎重に検討しなければならない、ということだ。これから先、ウィンガーになる可能性の高い少年。しかも、2人目の黒い翼となると―」

「洸は確信してます。そこまではっきり感じたのは初めてらしくて。それだけになんとかしてやりたいって、気持ちが強いようです」


 洸が西崎に告げた未来は、神代翔太がウィンガーとして発現するのみならず、その翼が凪と同じ黒い翼だということだった。




「ただのウィンガーなら、オレもほっといていいと思うんです。素直に登録されりゃいい。でも、姉ちゃんと同じ黒い翼、人の心に干渉する能力まであるとすれば、ほっとけないんで」

 洸はあの日、西崎の目を真っ直ぐ見て、そう言い、更に言葉を繋いだ―




「いきなり発現したら、世界中大騒ぎ……どころじゃないよな」

 本郷が、ここへきて初めて料理に手を伸ばしながら言った。

「しかし―小学生となると、君らの誰かがそばに張り付くわけにもいかないだろう」

「ええ。そこはオレらも検討中です。ただ、洸が言うには、もう少し時間の余裕はあるようなので。なので、まずその小学生の今の環境を知っておきたいんです。実は、洸が高校卒業したら、自分が近くで様子を見ようと計画しているんですが。家族とは進路のことで揉めてるようなんで、どうなるか」


「普通に就職ならともかく、音楽やりたいって言われたら……すぐに賛成は難しいよな」

 本郷の言葉には実感がこもっている。

 幼い頃から医学部進学が大前提だった家庭で育った身としては、親の反対は容易に予想できるのだろう。


「彼、ミュージシャンを目指しているのかい。いや、夢を追うのは大事だよ。特に若いころは尚更。ただ、親御さんの気持ちも分からなくはないよね。―それに―その神代くんの近くにいるために、と考えているなら賛成はできないな。彼一人に委ねるには、責任が大きすぎる」

 伊達守は父親の顔になっていた。

「そうですね。オレも、洸だけに任せるつもりはありません」

 頷く西崎に、伊達守は身を乗り出した。


「一度、その洸くんに会ってみたいんだが。どうだろう?」

 西崎は本郷と顔を見合わせて、少し考えた。


「多分、洸は喜んで来るんじゃないかと思います。なかなか社交的なヤツなんで。ただ、水沢―姉の方が、嫌がるかもしれません」

「だな〜。この間も弟、引きずって帰ろうとしてたしな」

 本郷が、ニヤニヤ笑う。


「ああ、凪さん、だね。彼女もできれば一緒に。一度、話してみたいと伝えてくれるかな」

 それはまた、凪がすぐに承知するとも思えなかったが、西崎は頷いた。

「話してみます」


 凪が特殊なウィンガーだということは、伊達守も知っているが、進之介や自分達からの情報だけで、会ったことはない。

 正確には、小学校の行事などで見かけたりはしているはずだが、当時は大勢の中の一人として、顔も名前すら伊達守には記憶されていないだろう。

 転校と同時に、ウィンガーとの関わりを絶った凪だが、去年の事件以降、同級生たちのコミュニティには深く関わっている。洸や、神代翔太との関わりも考えれば、伊達守には一度会っておいてほしいのも確かだった。

(理由を説明すれば、分かってくれない相手ではない)

 西崎は、そう思った。


「さて、じゃあ神代くんについては、早速調査するよう、手配するよ」

 颯爽とした笑顔で膝を叩いた伊達守を、急いで西崎は遮った。

「あ、いえ。調査の依頼はオレたちでするので、信頼できるスジを―」

 伊達守はすぐに首を振った。


「私から依頼するのも、私の口利きで依頼するのも結局、同じだよ。君たちには学業がある。西崎くんにはビジネスもね。私はね、学びの時間はそこに集中すべきだと考える。私の僅かな労力で、それが確保できるなら、むしろ喜びですらある」

 伊達守は選挙演説さながらに滔々と語った後、ニヤッと笑った。


「というか、それくらいさせてくれ。神代くんが本当に黒い翼のウィンガーになるなら、君たちの活躍はむしろ、それからだよ」

 そこまで言われれば、西崎も本郷もそれ以上は何も言えなかった。

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