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flappers   作者: さわきゆい
第3章 Lost Children
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密会 ①

 目と口を開いたきりになった洸に、西崎は左の口角を上げて、ニヤリと笑った。


「なんで、オレに話す気になったのかは知らないけど、とっておきの秘密だったんだろ。だから、オレも秘密を1つ、教えてやる」

 西崎は、まだまばたきを忘れている洸に、そう言った。


「オレは、過去のビジョンが見える」

「……か……?」

「ああ」

 西崎ははっきりと頷いた。

「まるで、お前と対になるような能力だよな。未来が見えるって言われてすぐ信じられたのも、だからだよ」

「そういう……こと、か……」


 洸の顔に笑顔が戻った。

 だが、いつものちょっと人をからかうような、無邪気な笑顔ではない。ひどくホッとして、力の抜けた、自然な笑顔だった。


 西崎の翼はまた一瞬、光の粒子になって消えた。

「このことは宙彦にしか言ってないんだ。完璧にコントロール出来ている能力じゃないし、あまり気分のいいものでもないからな」

「え、でも、さっき……」

「翼を出して、相手に触れて、その情景を思い出してもらえば、かなり鮮明にそのビジョンは見える。ただ、相手がよく覚えていないことは、ぼんやりしか見えないし、その相手の主観が入った映像だから、事実かどうかは分からない」


 首を傾げた洸に、西崎は続けた。

「例えば、すげえきれいな夕焼けだったって記憶していても、他の人にはいつもと変わらない夕焼けだったかもしれない。メチャクチャきれいな女の子を記憶していても、実は理想に近付けて補正された記憶なら、実際の人物とはだいぶ違っている可能性がある」

「へえ。なるほど。あ、だからコントロール出来ないって?」

「まあ、そういう意味もあるけど。翼を出していない時はお前と同じ、見える時と見えない時があるってことさ」

「あ、じゃあ、普段の時も、急に相手の過去が見えたりするってことですか」

「そういうこと。だから、気分のいい能力じゃないって言うんだ。誰だって勝手に知られたくない過去ってあるだろ」

「ああ、確かに」


 頷いた洸は、そのまま、テーブルのチャーハンに視線を落とした。

「とりあえず、食っていいっすか?」




 それから数日後の都内某所。

 豪華な料理が並んだテーブルに、季節の花がたおやかに生けられた床の間。

 その床の間の前に胡座をかいているのは、国会議員として、知る人ぞ知る伊達守清友だった。


 向かいあっているのは、西崎と本郷。

 料理はほとんど手付かずで、テーブルの上をはなやかな色彩で満たしている。

 2人から一通りの話を聞いた伊達守は、

「ふむ……」

 と、思案顔で、膝に頬杖をついた。



 **********


 洸の話を聞いた後、神代翔太の情報を集めるためには、プロの力を借りた方が早い、と西崎は判断した。だが、そのためには信用できる人間が必要だ。

 思い浮かんだのは、伊達守だった。

 これまでも、野宮れい子のことや、同級生の動向を追えたのは、伊達守の資金と人脈あってのことだ。

 少し躊躇はしたが、洸の能力も含めて、伊達守には報告し、信頼できる調査会社なり探偵なりを紹介してもらえないかと考えた。


 かなり危ない橋を渡りながら、自分達を支援してくれている伊達守に、情報を提供するのは当然だと思っている。ただ、大人になるにつれ、それが伊達守を更に追い込むことにならないかと、考えることをも増えた。

 だから、自分達で解決できることなら、出来るだけ伊達守を煩わせたくはない。


 電話で大体のことを話し、伊達守には、今日は調査を任せられる人間を紹介してもらうだけ、のつもりだった。

 更に時間があれば、翔太の地元へ向かい、本郷と2人で、出来るだけのことは調べてみようと計画していたのだが。


 車で連れてこられたのは、一目で分かる老舗の料亭である。

「あ、いや、オレたちはすぐに……」

 だが、伊達守は鷹揚に西崎の肩を叩いた。

「ははは。政治家の密談と言ったら、料亭に決まっているじゃないか」


 **********



 結局、こうして座敷に通され、豪華な料理を前にしている。

 ここら辺の強引さは政治家として必要なものだろうし、息子の進之介の我が道を行くスタイルも、つまりは父親譲りなのかもしれない。


 西崎は、案内してきた店の人間がいなくなると、すぐ本題を切り出した。

 伊達守は真剣に話を聞いてくれてはいたが、「未来が見える」能力に関しては懐疑的なようだった。

 右膝に頬杖をついたまま、左手を盃に伸ばしかけ、

「ふうむ、」

 また、吐息を漏らす。


 西崎は膝立ちになると、

「失礼します」

 そう言って、軽く息を吐いた。

 光の粒子が瞬時に白い翼の形をなす。


「宙彦、念のために見張ってて」

 本郷は頷いて入り口の襖の前に移動した。

「伊達守さん、オレの能力も披露したいんで、手を出してもらえますか?」

 やや、呆気に取られた様子のまま、伊達守は右手を差し出す。


「昨日、ゴルフに行かれたんですよね。その時のメンバーを思い出してもらえますか?」

「何か……新しいウィンガーの力でも発見したのかい?」

 不安そうというより、心配そうに眉を寄せる伊達守の手を、西崎は軽く握った。


「昨日のメンバーね……結構いつも同じなんだよ。若い人は誘ってもなかなかきてくれなくて。ええと、まず……」

「錚々たる面子ですね」


 ゴルフのメンバーを口にしようとしたであろう伊達守は、

「えっ?!」

 と、首を傾げた。

「幹事長に政調会長。それに―」

 最後に西崎の口から出た名前に、伊達守の目が幾分見開かれる。


「すいません、出さない方がいい名前でしたか?」

 手を離し、翼も消した西崎は伊達守に頭を下げた。

 それは他の党、つまり野党の次期党首候補として名前の上がっている、有名な議員の名前だ。与党から喧嘩からする形で離党した経緯があり、特に現政権の幹部とは遺恨のある関係のはずだった。


「―ああ、他言はしないでもらいたいな。次の選挙に向けていろいろあってね……西崎くんの能力っていったい……」

 改めて座り直し、本郷も席に戻ると西崎は自分の能力について、伊達守に説明した。


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