第三章 第六話 魂を欲する理由
エルファバが「そう」と答えると、人差し指を立て二回軽く振った。
ガタガタガタ
物が動く音が聞こえる。
周りを見ると椅子や本や箒などがふわりと浮き上がった。
「それで何を聞きたいのかしら?」
浮かんだ本は股関節あたりまで積み上がり、椅子はふわりと着地する。
「座って」
各々目の前にあるものに腰掛ける。
俺も座ろうか。
目の前にあるのは本の椅子。
座ってみると……座りにくい、立とう。
「あら? アナタは座らないの?」
「俺は立ってる方が好きだから」
「そう……それで何を聞きたいの? お嬢さん?」
エルファバは椅子の高さぐらいに浮いた箒に腰掛け、脚を組む。
「お嬢さんって言わないで、私には神代 零っていう立派な名前があるの」
「はいはい。それで零、何が聞きたいの?」
神代は眉を顰め、グッと堪える。
俺は視線をエルファバに向け、神代はこう言った。
「そうね……なんであなた達妖魔はわたし達、人の魂を狙うの?」
俺は神代を見る。
「なに大神くん? 私変なこと言った?」
「いや、聞いていいものなの?」
「魂? なんだそれ?」
「魂、僕たちが絶対持ってるもので、絶対奪われていけないもの」
後ろに振り向くと真吾がゆっくり歩き、そして、僕が座った座り辛い本の椅子に座る。
「魂を奪われるとその人の大切なものが奪われる。消滅すると一生戻って来ない」
「マジかよ……」
「マジだよ」
亮夜は「そうか」と呟き、頷く。
神代がため息を吐き「それでなんで狙うの?」とエルファバに聴く。
「魂ねぇ、ワタシは興味ないわ」
「それはなんで?」
「だって摂取すると百パーセント中毒になるもの」
「中毒? どういうこと?」
「本当に何もしらないのね。わかった説明するわ」
エルファバは『妖魔がなぜ魂を狙うのか』を説明し始めた。
内容はこうだ。
妖魔は人の魂を摂取することによりその魂の潜在的能力を得ることで能力を使用することができる。
能力は重複することができ、摂取すればするほど強くなる。
妖魔が魂を摂取した際、快楽や快感を覚えるらしい。
そして、これ以上に強くなりたいと渇望し、人を襲い魂を摂取する。
その悪循環が続き、最後は妖魔の体が持たず崩壊するらしい。
まるで……。
「薬物じゃないか」
エルファバが俺を見て「そんな薬あるの? 人も苦労してるのねぇ」と答える。
妖魔と人。
お互い違う存在ではあるが、似てる部分はあるんだな。
共通点が薬物なのは最悪だけど。
「なんていうか嫌なところだけ一緒だな」
真吾が「そんなもんだよ」と言うその隣で神代が「なるほど……だから……」と呟く。
「神代さん、なにが『だから』なんだい?」
「ううん、なんでもない。ちょっと納得しただけ」
一体彼女はどんな体験をしてきたのか、これは聞いていい者なのだろうか。
そう思ったが、今は話せそうにないので覚えていたら聞いてみようと思うのだった。
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