第二章 第五十七話 戻っていく家族
「ねぇ、レビィ?」
「何かしら?」とレベッカがエルファバに返事する。
エルファバは眉を顰め、ブギーマンを見つめる。
「一人知らない人がいるのだけども……」
「あっ、私ですかぁ? 大丈夫ですよぉ、観客みたいな感じです」
「はぁ」と理解したような理解してないような反応をする。
その反応を見て、岩城はこう言い始めた。
「エルファバさん、彼はブギーマンって言って…………ごめん、僕たちもよくわからないんだ」
そう岩城が言った瞬間、エルファバの視線は彼ではなく違うところを見ていた。
「それはいいんだけど。ねぇ、あなた」と岩城が担いでいる物を指差す。
「担いでるものは何?」と言い、岩城に近づく。
岩城は彼女から視線を逸らし、やや体を後ろに引いた。
「これは……ノコさんです。はい、申し訳ございません」
エルファバは「はぁぁぁ」と大きくため息を吐く。
「随分と派手に斬ったものね。修理しがいがあるわ」
「えっ? あんたが直すのか?」
「そうよ。そこに転がっているドラゴンクロックにしろ、ノコにしろ修理できるのはワタシだけだから」
彼女は岩城に両手を伸ばす。
岩城はノコを見る。
「また喋ろう」
岩城はスリープモードのノコをエルファバに渡した。
「レビィ、ワタシはノコを修理してくるから後はよろしく」
「わかったわ。早く直しなさいよ」
エルファバは微笑み「えぇ」と返事し、ノコを抱きしめながら一階の廊下へ向かうのだった。
彼女が向かうのを確認すると岩城がこう発する。
「よし! これで屋敷内は終わったね! あとは……」
「あとはベイカーだけ」
「そう! あとはベイカーだけだね! やっとベルちゃんに会えるよ〜! 待っててよ、マイラブリー☆エンジェルベルちゃ〜ん♪」
そう言い岩城は意気揚々と玄関前の扉を開く。
「へっ、このロリコンが」と亮夜が嘲笑うように呟く。
やっと最後だ。
やっと終わるんだ。
そう思いながら俺たちは玄関へ向かった。
目の前には立派な扉がある玄関口。
ほぼ密室にされた身からすると、やっと外に出られるという感動を覚える。
亮夜がその扉を見て「なんか疲れたな」と呟く。
「そうだな」
正直時間が長く感じた。
「それじゃ開けるぞ」
玄関の扉が開かれる。
俺たちはやっと外に出られたのだ。
ウギィーーーーーーー!!!)
扉を開くと早々、ベイカーの喚く声が聞こえた。
「今日もベイカーは元気ねぇ。そう思わないカルロス?」
「確かにそうでございます。お嬢様」
この二人は何呑気に言っているんだ?
ベイカーを斬るの俺だぞ。
そう思っているとベルが俺たちに気づく。
ウギィッ!?
彼女は蔓を引っ張りながらこちらに向かってくる。
近づくに連れ、彼女の今にでも泣きそうな表情が見えてくる。
その光景を見て岩城が興奮しだした。
「ベルちゃんがこっちに向かってくるよ。これは僕が抱きしめてあげなくちゃ。ベールちゃーーーん♡」
そう早口で言い、両手を広げベルに向かっていく岩城。
結果は——。
スッ
華麗に避けられ、すれ違うだけだった。
すれ違った瞬間、彼はガクンと膝から崩れ落ちた。
「お嬢様ーーー!」
ベルは泣き叫びながらレベッカに抱きついた。
「よ゛がっだでず……ヒッ……本当によ゛がっだでず」
「ウキィ!! ウキィーーー!! 」
俺は「うるさい」と言い、ベイカーを斬る。
ウキィッ!?
ベイカーは首をカクンと下を向き、そのまま動かなくなる。
振り向くとレベッカが優しくベルを抱きしめ、頭を撫でていた。
これでやっと全員、元の姿に……仲良しの家族に戻ったのだった。
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