第462話 超大量デモンの殺処分
フワフワと宙を舞ってカララの糸が秘密の出口から地下へと入り込んでいく。各地で魔人達が召喚兵器を使用し戦闘を行ってくれたおかげで、俺はかなり魔力が増したようだ。そのため配下であるカララの力も数段上がってしまっている。尽きる事のない数万本にもなる不可視の糸が次々と地下道へと入り込むのだった。
「こりゃ敵も盲点だろうな。」
「そうですね。」
どうやらファートリアの地下にはもともと結界が張り巡らされていたようだが、この秘密の地下道の出口には、結界は張られていなかったのだ。おかげで俺達は誰にも気がつかれることなく聖都の地下へと糸を流せている。
「こんなに大量の糸を出し続けても魔力が減らないのか?」
「減ったように感じません。」
「なんかすごく力が増したんだな。」
「シャーミリア達の力もかなり増しています。ラウル様の系譜の繋がりが常に感じられるようになり、恐らくグラドラムにいる一般の魔人にも影響を及ぼしているのではないでしょうか?」
「そうかもしれないな。その影響はどこまでなのか分からないが、山脈を越せば比較的グラドラムに近いはずだからな。」
「おそらく兵士の成長も早いことでしょう。私の眷属にもアラクネが生まれればいいのですが。」
「それは良い事だが…。」
「どうされました?」
魔人達が成長する事は嬉しい。そして軍として魔人の力が向上する事は、これからの魔人国の繁栄にとても良い事だ。
しかし…。
「俺のバージョンが上がらないんだ。」
「ばあじょんでございますか?」
「俺の兵器は実は細かい分類がなされているんだよ。場所 用途 規模 種類 対象 効果 施設 日常 連結と9の要素に分類されていて、その中で呼び出せる兵器の基準があるんだが、それの成長が止まってしまったんだ。」
「止まってしまった?」
「止まってしまったというより、そのバージョンをさらに上げるには敵から吸い取る魂の数や、経験の難易度を上げないとだめらしい。どれだけ戦闘を重ねても向上しなくなった。」
カララは糸を流す作業を止めずに俺の話を聞いてくれていた。
「今の状態が最高値というわけではないのでしょうか?」
「いや違うと思う。いまだに召喚出来ない兵器があるからな。」
「えっ!こんなに凄い兵器を召喚されているのに、未だ見ぬ物があるというのですか!?」
「ああ。見せられないのが残念だよ。」
そう…俺のデータベースはバージョン4でストップしてしまったのだ。それによって呼び出せない兵器が多々あり、それさえ呼び出せれば作戦もさらに楽になるはずなのだが。
兵器バージョン4
場所 陸上兵器LV5 航空兵器LV3 海上兵器LV4 宇宙兵器LV0
用途 攻撃兵器LV7 防衛兵器LV4
規模 大量破壊兵器LV3 通常兵器LV7
種類 核兵器LV0 生物兵器LV0 化学兵器LV3 光学兵器LV0 音響兵器LV2
対象 対人兵器LV7 対物兵器LV6
効果 非致死性兵器LV3
施設 基地設備LV4
日常 備品LV5
連結 LV3
宇宙兵器LV0 核兵器LV0 生物兵器LV0 光学兵器LV0 が未だレベルがゼロのままなのでどうにかしてバージョンを上げたいのだが、何をしても上がらないのだった。生物兵器などは使うつもりはないが、戦術核兵器が使えればデモンなどは容易く一掃できるはずだ。
「私達は十分にラウル様のお力を見せていただいております。私などはラウル様のおかげで恐ろしいほどの力を得ることができました。」
「本当にカララの糸は面白いよな。まるで手足のように使えるし、索敵能力もある。俺と一緒に居れば数千の兵と一緒に居るのと同じ状態になるからね。」
「ありがとうございます。」
しかしながら、万が一カララがやられてしまえばあっというまに戦力ダウンしてしまうから、運用には十分気を付けなければならない。そう考えれば俺がヴァルキリーを入手できたことで、かなり運用の幅は広がった。
さらさらと糸を流し続ける事1時間。地平線の向こうに太陽が沈みきるころだった。
「ラウル様、流し終わりました。」
「お疲れさん。」
「ただ、一部だけ気になる部分が御座います。」
「気になる部分?」
「はい。地下の更に深い部分になのですが。」
「ああ。」
「氷か魔石のような物に包まれた人間がいます。」
「人間?」
「他はすべてデモンとしもべなのですが、何かに固められたようにして人間がいるようなのです。」
「どんな奴か分かるか?」
「見る事は叶いませんが、その気配は…。」
「なんだ?」
「ラウル様や、オージェ様などと同じ気配がします。」
「グレースやエミルとも?」
「はい。」
と言う事は…最後の日本人の可能性がある。召喚された人間のうちの最後の一人。
エドハイラ
「生きているのか?」
「生きておりますが、動いてはおりません。」
「なるほど、これからの地下攻撃の時にその人間を防御する事は出来るか?」
「ラウル様の兵器は強力ですので、難しいかと思われます。」
「なら、その周辺には何もしないでおこう。」
「はい。」
最後の日本人がなぜかファートリアの地下にいるらしい。しかも魔石か何かに固められているようだし、意識があるのかどうかも分からない。だが何かの情報を持っている可能性もあるから、殺さないで生け捕りにしたい。
「ほかの地下の様子はどうだ。」
「かなり入り組んでおります。すみずみまでデモンやしもべが配置されているようです。」
「俺達が都市部の地上に侵入してくるのを待ち伏せしてるんだよな。」
「そうだと思われます。」
「どのくらいいそうだ?」
「その数、30万以上。」
「さ、30万いじょう!デモンとしもべが?」
「はい。すべて人間ではございません。」
「バケモンがそんなにいんの?」
「ざっとですが、もしくはそれ以上。」
「あっぶな!簡単に都市に侵入してたら、俺達は死んでたかもしれないな。」
「危険だったと思われます。」
地下に30万以上のデモンが蠢いているのに、俺達が何も分からず聖都に侵入していたら殺られていた可能性が高い。この秘密の出口の事に気が付いて本当に良かった。
「都市が壊れるけど攻撃するしかないな。」
「そうかと思われます。」
「この攻撃でファートリア聖都は再生不可能くらいに壊れるんだよ…。」
「たしかに特別な場所だと言う事は分かります。魔法使いが多く生まれる土地ですから魔素の量も多いのかと。」
「しかたないよな。」
「仕方ないです。」
カララの言うとおりだ。ここまで来たら既に後戻りはできない。大量の一般人を殺害しておいて、デモンを残して攻撃を止めますなんて道理はない。
「地下牢とかにも人はいないんだよな?」
「捕らえられている者はおりませんでした。」
「わかった。」
そして俺はカララにやる事を説明をする。
説明は簡単だった、TNTとプラスチック爆弾を出してすぐさま信管を設置して爆発させる。
それだけ。
カララの蜘蛛の糸であればそんな作業は容易にこなせる。ただ今回普通じゃないのはその火薬の数だった。カララの糸を張り巡らした地下4万箇所以上に一気に爆弾を出現させ、すぐさま爆発させるのだ。カララに聞けば一気にできると言う。
「逃げれるヤツはいるかね?」
「可能性はあるかと。」
「まあ部隊は一旦避難させているし、何か起きても問題ないだろ。」
「はい。」
そして俺は、カララの肩に手を置いてデータベースを開いた。すぐに魔力を流し込んでいき、カララがすべての糸の先に精神を集中していく。
「行くぞ!」
「はい!」
そう、俺はカララの糸を通じてその先に武器を出す事が出来るのだ。その力を使って一気に爆薬を仕掛けて攻撃をするつもりだった。
4万のTNTとプラスチック爆弾と信管を、カララの糸の先に呼び出した。
「爆破します。」
「やれ!」
ズズズズズズズズ
ズズゥウゥゥゥン
まるで地震のような揺れがここにも伝わって来た。
「カララ戸から離れろ。」
カララがドアから離れ、俺が石の引き戸を閉めた。
少しの時間をおいて、岩の引き戸がかすかに揺れるほどの衝撃が伝わって来た。
その爆発が終わった後だった。俺は少しめまいを起こした。
「おっと。」
「大丈夫ですか?」
カララがそう言いながらも膝をついた。
「お前こそ大丈夫か?」
「まだなんとか。」
魔力はそれほど消費していないが、かなりのデモンとしもべを消滅させたのが原因かもしれなかった。これは久々の感覚だ。
「ラウル様の兵器の衝撃で糸が焼ききれました。」
「内部がどうなっているかは分からんか。」
「再度糸を流さねばなりません。」
周辺はすっかり暗くなっていた。街灯などがあるわけでもないので、普通の人間なら既に何も見えない状態だろう。俺も遠くまでは見通せなくなってきた。
くらくらする。
「カララ。こい。」
ふらふらしながらカララが俺にしがみつくようにした。ヴァルキリーがカララを抱きあげる。
「都市の確認は後だ。」
《ヴァルキリー、俺はかなり眠い。お前が俺とカララを連れてここから更に北西へと飛んでギレザムたちがいるところに行け。》
《かしこまりました。我が主。》
バシュー
ヴァルキリーが自分の意志で飛行を始める。燃料推進じゃないので火が出ない為、夜でも敵に察知されることなく飛ぶ事が出来るのが俺の兵器とは違うところだ。こればかりはバルムスとデイジーとミーシャに感謝だ。
「ラウル!」
オージェから無線が来た。
「お前たちは避難は出来ているか?」
「ああ、大丈夫だ。それよりも…シャーミリアさんやマキーナさん、そしてルフラさんやセイラさんが眠ってしまったんだが。」
「すまん。こちらで大量のデモンを仕留めた結果だ。」
「進化ってやつか?」
「恐らくは。俺も意識を失いそうだ。」
ヴァルキリーが抱えるカララは既に眠りに落ちてしまったようだ。
「わかった。お前が目覚めるまで俺達は山脈の隠れ場にて待機している。」
「すまん。」
「お前も無事でな。」
「わかった。」
飛んでいるヴァルキリーの中で俺は意識を落としてしまいそうになっている。しかしヴァルキリーがギレザムの所に到着するまでは眠るわけにはいかないと考えた。
…って事は大量のデモンを消滅させたって事だな。久しぶりすぎて驚いたが、どうやら聖都戦に参加した魔人達は進化が始まったようだ。…いや下手をするとここから近い場所にいる、ギレザムたちにも変化が訪れているかもしれない。
まずいな。
そう、ギレザムたちの中で恐らく進化の眠りにつかないのは、泥棒髭ハイグールとモーリス先生と助けた男達4人、そして日本人3人だ。
アナミスが寝てしまえば日本人がどうなるか…。そしてモーリス先生に危険が及ぶかもしれない。
眠るカララを抱きながら、ヴァルキリーはひたすら飛行を続けるのだった。




