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第430話 デモン干渉を調査 ~スラガ視点~

ラウル様からの指示を受け、自分と部下の5人が冒険者を装って村に近づいて行く。ここから西に5キロほど離れた森には約90名の魔人が待機していた。そして自分達10名が先行し村のそばまで来たのだった。草原から村を監視していたところでラウル様に念話を繋げた。ラウル様からは、村へのデモン干渉の有無を確認するように申しつかっている。


「よし、行くぞ。」


「「「「はい!」」」」


自分とサキュバス、そして人間形態のライカン3名を連れてきている。ラウル様からは人間に見える魔人を選んで連れて行くように言われているからだ。


村に近づいて行くと魔獣を解体している3人組がこちらを見ている。あれは念話で聞いていた、シャーミリアが連れて来たというルタンで強制労働してた人間だろう。シャーミリアの残滓がある。


「止まれ。」


村の入り口に近づくとその3人組の一人が声をかけて近づいて来る。


「どうも。」


「あんたらは何者だ?」


「冒険者だ。先日ここに男一人女が二人の商人が来なかったか?」


「‥‥‥知り合いか?」


「そうだ。そしてお前達ともな。」


自分の隣にいるサキュバスがすぐさま、その男に術をかける。


「あ、ああ…そうだな。久しぶりだな、元気にしてたか?」


「もちろんだ。お前たちも元気そうで何よりだ。」


「入れ。」


自分ら5人は村の中に通された。元強制労働者3人のうち2人は何事もなかったように解体を続け、1人が自分達を連れて村の中を進んでいく。すると村の人々が自分達を物珍しそうに見るのだった。


しばらく進むと、大き目な建物の前に二人の男が立っていた。


「ん?その少年は誰です?」


建物の前に立っていた男のうちの1人が聞く。


「あ、ああ。俺達の仲間だよ。昔の知り合いさ。」


元ルタンの強制労働者が言う。


「それはそれは!遠いところから。」


「これはどうも。」


自分が頭を下げると後ろに控えた魔人4人も頭を下げた。


男に少年と言われてしまったが、これは進化してしまったせいだ。進化前の自分の体系はどちらかと言うと、ずんぐりむっくりのドワーフに近い感じだった。もちろん巨人化すればその体系ではないが、少なくとも少年と呼ばれるような外見はしていなかった。しかし度重なる進化を経て、黒髪の少年のようないでたちになってしまったのだった。


「村長!」


男が建物の中に声をかけると、玄関から初老の女が出て来た。


「あら?お客様かしら?」


「すみませんペルデレさん。こちらは知り合いの冒険者達です。」


自分達を連れて来た、元ルタンの強制労働者が紹介してくれる。


「あ、どうも。」


「わざわざ遠いところを?ですがここへは何をしに?」


あ。困った…デモンの干渉を受けていないかを探りに来た。などと言うわけにはいかない。


「えっと‥あの‥。」


「なにかしら?」


「お嬢様たちに言われてきた。」


半分本当の事を言ってしまった。


「あら!そう!彼女たちはお元気かしら…お名前も聞かずじまいだったのよ…。」


「そうか。自分たちは冒険者なんだ。な、何か手伝う事は無いか?」


咄嗟に口から出た言葉だった。


「ああ、そういうことなのね。」


ペルデレと呼ばれる女が勝手に納得してくれた。


「ああ、そういうことだ。」


「でも冒険者にお支払いするお金なんて無いのよ。」


「あ、後払いでもいい。」


「今はそのあても無いのだけど。」


「とにかく困っているのだろう?手伝う。」


「そう言われてきたのね…なんという慈悲深いお嬢様でしょう。」


「ああ、そうだ。我らの主人は素晴らしいお方だ。」


本当の事だ。だが主人はお嬢様ではない。


「でもどうしようかしらね。」


ペルデレが元ルタンの強制労働者を見る。


「ああ、こいつらはいい冒険者だ。とにかく飯を食わしてやれば何かやるよな?」


「も、もちろんだ。飯をくれ!そしたら手伝ってやる。」


まさか洗脳されている人間に救われるとは思わなかった。すると村の通りの向こうから数人の人間が近づいて来た。


「あら?お客様ですか?」


「ええアデルフィア。こちらの冒険者のお仲間さんですって。」


「それはそれは!こんな辺鄙な所までようこそ。」


「どうも。」


「アデルフィア。こちらの方達が村を手伝いたいって言うのよ。」


「そうなんですか?確かに猫の手も借りたいけど、お支払いできるものなんて何もないんです。」


「いいんだ。一緒に飯が食えれば。」


「そんな。わざわざ来ていただいたのに…。」


「いいんだ、主にはそう言われてきたんだ。」


「やはりあの方は素晴らしい方でしたのね。」


そう、我々の主は素晴らしい方だ。


「とにかく、自分達は手伝う。何をしたらいい?」


「いえいえ、まずは遠いところからおいでなさったのでしょう?我が家で昼食をとってからでもいいのでは?」


「いや、自分達は仕事を…。」


「まあそう遠慮なさらずに。」

「そうですよ。」


ペルデレとアデルフィアが自分達に飯を食えと言う。こういう時はどうしたらいいのだろうか?ラウル様ならどうするのだろうか?任務中にもてなしを受けるなど許されるものなのだろうか?


「じゃ、じゃあ一口だけ…。」


一口ならいいだろう。


「それではどうぞ屋敷に上がってください。」


「あ、ありがとう。」


自分ら5人はぞろぞろとペルデレについて屋敷に入っていく。とりあえず早々に飯を食って仕事に取りかからなければ。


「おかけになって。」


自分達が食堂のテーブルにつくと、ペルデレやアデルフィアは部屋から出て行ってしまった。台所にでも行ったのだろう。残ったのは俺達だけになった。


「あの、スラガ様?」


「おい、様はよせ。そして名前はガラスだ。」


「は、はい。ガラス、仕事はよろしいのでしょうか?」


サキュバスが聞いて来る。


「派手に動き回るわけにはいかない。まずは村の者が言ったとおりにするべきだ。」


「わかりました。」


他のライカン3人も頷く。


そして自分達は何も話さずに座っていた。


「失礼します。」


さっきアデルフィアと呼ばれていた女が再び部屋に入って来た。


「なんだ?」


「はい、皆様外套を脱がれてはいかがでしょう?」


上着を脱げと言うのか?自分とライカンはいいが、サキュバスは羽が生えている。どうする?


「いや!このままでいい。すぐに仕事に移れるようにしたい。」


「そ、そうですか…。それではわかりました。ぜひおくつろぎください。」


アデルフィアが部屋を出て行った。


「こういう時どうするんだ?」


サキュバスに聞く。


「人間の社会の事はさっぱり…。」


「一口って言ったんだから一口食えばいいか。」


「そうかと。」


コンコン


ドアを叩く音が聞こえてドアが開く。


「料理をお持ちしましたよ。」


ペルデレとアデルフィアともう一人の女が料理を運んでくる。


よし!さっさと食って仕事に…


…また来た。


そして。


…また料理が運ばれて来た。


まただ…


テーブルには所狭しと料理が並んだ。


「最近は冒険者仲間の3人が魔獣や木の実、果実などを取ってきてくれるので充実しているんですよ。」


ペルデレが言う。


「あ、ああ。」


「前にお嬢様たちが来た時に、従者の方に出したご飯はとても粗末なものでしたの。」


そうなんだ。それなら自分たちはそれでもよかった。


「とにかく遠いところからいらしたのだからゆっくり味わってください。」


アデルフィアが言った。


「わかった。ではいただこう。」


自分達が食事を始めると、ペルデレやアデルフィアは壁のあたりに立っている。


‥‥もしかして全部食うのを見張ってる?


自分達が黙って食っているとじっと見つめて来る。


‥‥なんだ?何かを言わなければならないのか?


「う、うまいな。」


「それはよかったです!」

「喜んで頂けて何よりですわ!」


顔をほころばせて俺の言葉に返事をする。どうやら自分の答えで当たっていたらしい。どうやら少しは心を許してくれているのだろう。


自分はサキュバスに目配せをする。


サキュバスがコクリと頷いた。


サキュバスから紫の煙が部屋に充満しペルデレやアデルフィアの目がトロンとする。サキュバスが席を立って女たちの目を覗き込む。


「干渉はありません。」


「間違いないか?」


「はい、見る事しかできませんが。それ以上はアナミス様でないと無理です。」


「いや、見るだけでいいんだ。」


「では干渉はありません。」


「わかった。」


部屋からスーッと紫の煙が無くなっていく。そしてサキュバスがパチン!と指を鳴らした。


「お口にあったようでよかったですわ!」


ペルデレが先ほどの続きの言葉を話す。


「本当です。これも冒険者様達のおかげです。」


アデルフィアも言う。


「仲間が役に立ってよかった。」


「ありがとうございます。」


そして自分たちは全ての食事を平らげた。自分もライカンも魔人の中では量を食う方なので、あっという間に片づける事が出来た。


「それじゃあ、仕事をしたいのだが?」


「どんなお仕事を?」


「農作業でも、機織りでもなんでもいい。」


「それでは…住宅の修繕をお願いできますか?」


「お安い御用だ。」


丁度よかった。建物に入れるのならそれぞれを個別に調べる事が出来る。ペルデレに言われる前に気がついていたが村のあちこちが壊れていた。それを修繕しながらことを進めるとしよう。


「アデルフィア、ジョーイはどこかしら?」


「恐らく畑にいっているかと思います。」


「彼らをジョーイに案内させて。」


「はい。」


自分達はアデルフィアについて家を出た。そして村を通り抜けて外に出ると畑が広がっており、そこで農作業をしている村人たちが居た。


「ジョーイ!」


「はい!」


畑から1人の少年が走ってくる。


「この方たちは冒険者の仲間よ。お仕事を手伝いにきてくれたらしいの。」


「これはようこそいらっしゃいました!」


「どうも。」


「住宅や柵の修繕をお願いしたいと思っているのよ。あなたが壊れた場所などを案内してくれる?」


「わかった!」


そして自分たちはジョーイ少年について、村のあちこちを回る事になった。村は盗賊に襲われただけではなく、手入れが行き届いていないのだろうか?かなりの場所が破損しているようだった。人が居る家にはジョーイが挨拶をして自分たちの事を伝えてくれた。


「大体こんなところです!何か必要なら言ってください!」


「特には無い。」


自分らは鉈や斧も持っているし、ユークリット王都の修繕を散々やって来たのでこれくらいはお手の物だった。素材は林に行って取ってくればいい。


「じゃあお前達。修繕に使う木々を持ってきてくれ。」


「「「はい。」」」


ライカンの3人組は森の方向へと消えて行った。


「木材を持ってくるから、自分とこいつはいろいろ見回る。」


自分がジョーイに言う。


「わかりました。なにか御用の時は俺に声かけてください!」


俺とサキュバスとジョーイの周りには人間が居なかった。”御用”と言えば今あるのでサキュバスに目配せをする。ジョーイの周りに紫の煙が舞うと、彼の目がトロンとする。サキュバスが目を覗き込みこちらを振り向く。


「この人間も異常ありあせん。」


「よし。」


パチン!


サキュバスが指を鳴らすと、ジョーイがさっきの続きを言う。


「じゃあ俺は畑の方に居るので声がけください。」


「わかった。」


そしてジョーイは自分達から離れて畑の方へと向かった。とりあえず自分らは壁が壊れた一つ目の家に行ってドアを叩いた。


「はい!」


玄関から出てきたのは子供3人だった。


「自分らは建物を直しに来た冒険者だ。」


「はい。さっきジョーイが言ってました。」


「ならば勝手に壁を直させてもらう。」


「わ、わかりました。」


子供達をサキュバスの紫の煙が包み込み、さきほどと同じようにサキュバスが子供たちの目を確認する。


「異常ございません。」


「わかった。」


パチン!


子供達が目を覚ます。


よかった。


最初はどうなるかと思ったが、自分たちは問題なくラウル様の指示をこなせているようだった。こういう場合でもラウル様は落ち着いて対応できていた。自分の未熟さを感じながらも、ライカンがもってきた木材で壊れた壁を修繕していく。


「この調子だと今日一日では終わらないか。」


「そのようです。」


「とにかく急ぐぞ。」


「はい。」


自分とサキュバスは村人全員を調べる指令を受けている。ラウル様の作戦が遅くならないように一刻も早くと焦るが、焦りは禁物だとラウル様から言われていた。


慎重に正確に仕事を進めるように自分に言い聞かせるのだった。

次話:第431話 各部隊の掌握 ~ギレザム視点~


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― 新着の感想 ―
[一言] スラガさん、村を訪れる… ラウル君の指示で村へのデモン干渉の有無を確認しにきたスラガ… この時の元ルタンの強制労働者とのやり取りで、サキュバスの術で意識を操って… 「あ、ああ…そうだな。久…
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