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第412話 カトリーヌの策略

ゴーグが捕えた敵兵をアナミスが調査し、その結果を念話で伝えて来た。


《どうだ?》


俺が聞く。


《敵兵は精神干渉を受けております。》


どうやら敵が送り出して来た部隊は、デモンの精神干渉を受けているようだった。


《やっぱりな。アナミスは俺抜きでどこまで対応可能だ?》


《幻覚を見せるくらいはできます。》


《そのまま追い返す事は出来るかな?》


《敵の目的が分かればですが。こちらの情報が筒抜けになる事が無いように、まだ直接の尋問などはしておりません。現段階ではあくまでも建物外からの調査によるものです。》


《なるほど。デモンの精神干渉を受けていると言う事は、すでにゴーグから攻撃を受けて施設に収容されたところまでは、敵に伝わっていると考えていいな。》


《そう思われます。》


《ちょっとまて。》


《はい。》


俺はアナミスとの念話を一旦切る。そしてみんなの方を向いた。


「どうやら南方で捕えた敵兵はデモンの精神干渉を受けているらしい。」


俺がみんなに伝える。


「そうか…と言う事は偵察かね?」


オージェが言う。


「そうじゃないですか?」


グレースもそう思っているらしい。


「そして既にこちらが攻撃を仕掛けて兵士を収容したところまでは、敵にバレてると思っていい。」


「なるほど。」

「うーん。」


オージェとグレースが腕組みをして考え込む。


「その捕虜を使って何ができるかな?」


「村が損害を受けずに何も無かったように見せるとか?」


「うーん。オージェ、それだと魔法陣が発動したはずなのに妙だと思われるんじゃないか。」


「そうですね、ちょっと整合性が合わないかもしれないですね。」


グレースも同意する。


「まあ攻撃されて兵が収容されているわけだからな。こっちの小細工がバレる可能性もあるか。」


オージェも納得する。


「あの、わいが思ったことを言っても?」


トライトンが何かを思いついたようだ。


「トライトン。なにか案があるのか?」


「いえ、案ってほどの物じゃないですけど、間違った情報を流してやったらどうでしょう。」


「間違った情報?」


「とにかく敵が不利になるような攪乱情報です。」


「攪乱情報か…。どんな情報が良いかな?」


「すんません。わいにはそれ以上の案が思い浮かばないです。」


「‥‥。」


トライトンが言うように攪乱情報を流すのは悪くない案だ。しかしどういう風にしたら攪乱できるのか、敵を不利な状況に追いやれるのかが思いつかない。


「攪乱するにしてもどうするかか…」


「物凄い軍勢の幻影を見せて、西部ラインに敵が押し寄せてこないようにしたらどうでしょう?」


グレースが言う。


「なるほどな。」


「まあそれだと相手の動きを封じる事ができるかもしれんな。」


「時間稼ぎができるって事か?」


「じゃないですかね?」


こちらの戦力を大きく見せる事ができれば敵も慎重にならざるを得ないか…。だがそうしたとしてどうなるだろう。ただ相手に猶予を与えてしまう事にならないだろうか?


「あの…。」


俺達が一つの答えにたどり着く前に、意外な人が口を開く。


「カティなにかあるのか?」


カトリーヌだった。


「私の案が役に立つとは思えませんが。」


「いいよ。言ってみて。」


「敵は既にデモンが発生した事を知っているのですよね?」


「恐らくは。」


「兵士はその様子を見に来たという事ではありませんか?」


「その通りだと思う。」


「であれば、まだ戦いが継続していると思い込ませてはいかがでしょう?」


「戦いが継続しているように?」


「はい。恐らく敵はラウル様がその前にやった村人救出作戦を知らないと思うのです。」


「そうだな、おそらくは知らないだろう。」


そう。俺達が村人を全て連れ去ったため、おそらく生贄が足りずに弱いデモンが召喚されたのだが、敵は百人もの村人を生贄にしてそこそこのデモンを召喚したと思っているだろう。その前の数万のリュート人を犠牲にした前線基地の確認も出来てはいないはずだ。確認しに来たなら既に俺達の網にひっかかっている。


「そこでデモンとの戦いが続いているように思わせるのです。」


カトリーヌが続ける。


「なるほど。だがここからどうやって、軌道修正するかが問題だ。」


「戦いが継続しているように見せるには捕虜を逃がさなければなりません。」


「どういうことだ?」


「これから敵兵に幻覚を見せるにあたって、デモンが捕えられた兵達を救出しに来た事にすればよいのではないでしょうか?」


「デモンがか?」


「はい。強力なデモンが牢獄へ捕虜を救出しに来るのです。そしてわざと捕虜を逃がし、ゴーグ君と魔人軍がそのデモンに惨殺されるシーンを見せるんです。」


「ほう。」


「そして魔人軍を撃退した後で、その兵士たちはもともと村があった場所に拠点を作り、飲めや歌えやの大騒ぎをする。もちろん全てアナミスの幻覚によるものですが。」


カトリーヌが言う事を皆が黙って聞いている。カトリーヌが話すその先を聞きたい。


「それで?」


「そうすれば敵はデモンが魔人の撃退に成功したと思います。油断するかもしれませんし、南端の村が突破口だと考えそこに更に兵を送るかもしれません。以前に行ったリュート人を犠牲にしたデモンの成果の確認をしに来る可能性もあります。」


「なるほど…それはあるかもしれないな。」


「さらにそこに、こちら側から大軍を連れた魔人軍の長が名乗りをあげて現れた、という幻覚を見せればよいかと。」


皆がカトリーヌに対し畏怖の眼差しを向け始める。


「こちらの本体が南の拠点に現れたように見せるのか?」


「はい。それならば敵は二つの選択肢に迫られると思います。」


「それは?」


「一つは敵の大将を討ち取るためにそこに主力を送り込むか、もう一つは他が手薄になったと考えた他の拠点に兵を差し向けるか。」


「‥‥。」


皆が静かにカトリーヌの話を聞いている。


「そうすれば我々潜入部隊が、手薄になったファートリア国内を深く調査できるのではないかと思います。さらに西部ラインの各拠点の戦力を拡充させておけば、敵が分散してきた場合はそのまま迎え撃つことができますし、一点集中で攻めてきたら挟撃する事ができるかと。かなり大部隊が来た場合はシャーミリアがラウル様を連れて飛べば間に合うのではないでしょうか?」


凄い…


「ラウル。それありじゃないか?」

「ですねラウルさん。とにかく敵は何らかのアクションを起こすはずですよ。」


「確かに。」


カトリーヌが言うその内容は俺達の想像を超えていた。


「カティはそれを今考えたの?」


「はい。思いつきですみません。」


思いつき…


俺はナスタリア家の血の怖さをカトリーヌに見るのだった。今の素案を一瞬で考え付いたらしい。そのことに俺達転生組も魔人達も唖然としている。


「いや!カトリーヌ!本当に思いつきなのかって思うくらいキレのある作戦だよ。」


「本当だ。敵を揺さぶるには最高の作戦じゃないか?」


「凄いですね。カトリーヌさん!うまくいけば敵の戦力も削げますし、重要な情報が入手できる可能性もあります。」


「え、そんなに大した事は言っていないのですが、敵を動かさないと更なる深い情報が取れないような気がしたものですから。」


カトリーヌは謙遜しているが、敵が何のために調査兵を送り出して来たのかを考えると、きっと何らかの動きが出るのは事実だ。やってみる価値は十分にあるし、失敗しても相手が動かないだけでデメリットが少ない。


「今の作戦を試そうと思う。そして万が一西部戦線に大部隊が来た場合、最前線に行くのは俺じゃなくグレースだ。シャーミリアはグレースを連れて現地に飛ぶ。そして大隊の後方支援をしてもらう事になるだろう。」


その理由は簡単だ、敵の深部に潜入するのはこの少人数ではかなり危険だからだ。申し訳ないがグレースは俺の次に兵器補給の要となる、弱いグレースに被害が及ぶ事を避けたいという思惑があった。


「わかりました。万が一は覚悟します。」


グレースが言う。


「オンジさんもそれでよろしいですね?」


「かまいません。そのほうがグレース様の生存確率が高いですからな。」


「そういう事です。」


「よし!そうと決まったら早い方が良いだろう。」


オージェが言う。


俺は早速、今決まった幻覚を捕虜にみせるようにアナミスに念話で伝える。ゴーグが殺されるように見せるが、捕虜を助けるデモン役はゴーグだし、ゴーグを殺したように見せるのもゴーグだ。ここでもまた自作自演の出来事となるが、ゴーグが演じるわけではなくアナミスが見せる幻覚だ。さらに大将として俺が援軍となって駆けつけるように見せるが、俺の正体を明かすわけではなく全くの別人を俺だと思いこませることにする。


以上がだいたいの幻覚のあらずじとなる。


《どうかな?こんな幻覚を見せるのは大変か?》


《いいえ。まったくもって単純な事、すぐにも行えますが?》


《いや、アナミス。作戦は西部ラインの軍備を増強してからとなる、既にフラスリアや前線基地からは補給部隊が送られているが、再度見直しをして指示を出し直す。3日後に作戦開始だ。それまでは囚われた兵士に余裕がなくなるように、恐ろしい叫び声でも聞かせておけ。》


《かしこまりました。》


アナミスとの受信を終える。


《ギル。》


《はいラウル様。》


俺は西部ラインの中央にいるギレザムに念話を繋げ、今の作戦を事細かく伝えた。


《…と言うわけだ。作戦は流動的になるかと思うが問題は?》


《ございません。》


《わかった。各拠点に増援がくるから速やかに対応させろ。》


《かしこまりました。》


ギレザムとの念話を終える。


そしてすぐに同じ内容をガザムに伝え、最後にドランに念話を繋げる。


《前線基地にはさらに補充をやる。とにかく南のラインへと戦闘車両を移動させる指示を。》


《かしこまりました。》


《スラガには防衛を中心に体制を整えさせろ。》


《かしこまりました。》


《あとエミルに伝えてほしいんだが、西部ラインの3つの拠点に兵員を輸送してほしい。これから3日はあまり休養を取れないが寝ずにやってくれと。》


《はい。今伝えました。エミル様からのお返事はお聞きになりますか?》


《一応聞いておこう。》


《「あいかわらず人使いの荒い魔王だな。帰ったらSB-1 デファイアントに乗ってみたい。」との事です。》


《了解だ。》


エミルの新型ヘリコプターに乗りたいという我儘を了承し俺は念話を切る。


次に俺は二カルス森林基地のミノスに念話を繋ぐ。距離があるため多少魔力を食うが緊急なのでかまわず話す。今回の作戦の内容を伝え動きがあれば、すぐ二カルス基地からゴーグのいる南の拠点に自らを含む援軍を出すように伝えた。


《二カルス基地の防衛体制は問題ないか?》


《既にトレント達との戦闘訓練でかなりの魔人が育っております。我が抜けたところでびくともしないでしょう。》


《了解だ。》


そして次に俺はユークリットのラーズに念話を繋ぐ。


《ラーズ、前線で動きが出そうだ。お前だけ前線基地に合流するように。》


《かしこまりました。》


《各国の要人たちの護衛はどうか?》


《既に選抜の魔人達がついております。我が抜けても問題ないかと。》


《分かった。それじゃあよろしく頼む。》


《は!》


俺はラーズとの念話を切った。


《ウルド。》


《は!》


《サナリアはどうだ?》


《既にかなりの魔人が住みついております。》


《わかった。お前はそのままユークリットに行って防衛の任についてくれ。》


《かしこまりました。》


《サナリアはどうだ?》


《サナリアの防衛に問題はありません。かなりの魔人が育っております。》


《わかった、念のためジーグ(オーガ)をそこに残してユークリットへ。》


《は!》


俺は全ての直属の配下を前線に送った。各拠点にはそれぞれ隊長格か副隊長格の魔人をシフトし、グラドラムから動いた魔人達を各拠点へと振り分けていく。全員に告げた到着の期日は3日、3日の間に俺の指定した場所へと動きスタンバってもらう事にする。


俺は魔人軍の動きを、目の前にいるみんなに説明をした。


「全ての振り分けは終わった。前線が動くのは3日後となる。」


「了解。」

「了解です。」

「は!」

「かしこまりました。」

「はい!」

「わかりました。」


全員が返事をする。


「それまで3日間は旅人に扮して内地を調査する。各自警戒を怠らぬようお願いする。」


皆が頷き会議を終えた。


しかし…カトリーヌがいつの間にかこんなことを考えるようになっていたとは。いや…思えば初めて会った時に民を救うために自ら毒を喰らおうとしていたな。もしかしたらとんでもない才能があるのかもしれない。


物凄く優しそうな笑顔で俺を見つめるカトリーヌが、頼もしい反面…もしかしたらこの人が俺の正妻になるかもしれないのかと思い…


ぶるっ


軽く身震いしてしまうのだった。

第413話 サキュバスうたかたの夢


お読みいただきありがとうございます。

続きを読んでもいい。ちょっと気になる。

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★★★★★の評価がいただけましたらうれしいです!


引き続きこの作品をお楽しみ下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 情報操作 ゴーグ君が捕らえた部隊…精神干渉を受けているようで、兵士の見聞き・体験した情報が敵側に伝わっている模様 色々と考えを巡らせる中、意外な人物が… トライトン曰く 「いえ、案ってほどの…
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