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第25話(怪我の功名)

情報過多過ぎたので少し省略しました。

レイは、すっかりご馳走になってしまった。ワインも勧められるままに飲んだが、普段の夕食の値段を考えると、素直に酔えない気がした。


フィオナとサラはレイの前を並んで話しながら歩いているが、フィオナが足を引きずっているのが痛々しい。

冒険者として一緒に戦い、話し、食事をし、酒を飲んで、少なからず縁を結んでしまった人を放っておくのは、

レイには気が引けた。


(アル、やっぱりフィオナさんの足をなんとかしたい)


(ナノボット治療であれば足はすぐに治ります。ただ、普通の治療ではありえない結果になるので、周囲から疑われる可能性は高いです)


(じゃあ、どうやったら周りに悟られないようにできる?)


(上級ポーションの効果でゴリ押しするしかありません。ただし、完全に疑念を抱かれない保証は全くありません)


(分かった。それならフィオナさんにも内緒にしておきたい。できるかな?)


(それは難しいです。上級ポーションの効果に見せかけるために、汎用型ナノボットを使いますが、フィオナさんの体調がすこぶる良くなる可能性があります。ナノボットが体内を正常な状態に戻そうとするので、効果はすべてのナノボットが機能を停止し、自然に排出されるまで続きます)


(それってなんで?)


(ナノボットは、体内に入ると、治療対象の部分だけでなく、全身の状態を最適化しようとします。

汎用型ナノボットは、体のあらゆる異常を修正するように設計されています。だから、彼女の体に入ったナノボットは体調を徹底的に整えようとするのです)


(あ、それってゴブリンの穴で目覚めた時の感じか!)


(そうです。あの時はレイの水虫やストレス性胃腸炎も治しました。さらには、髪にもツヤを出しました)


(そこまでやったのね…)


(はい、ですのでフィオナさんが一番驚くでしょうね。それを悟らせないよう自然治癒に見せかける時は、ナノボットの原則に反するため、高度な判断能力を持つナノボットが必要です。しかし、その場合、高い確率でナノボットが私と同じように彼女に話しかけるでしょう)


(なんでそうなっちゃうの?)


(現在、レイの体内にいるナノボットは私の管理下で動いています。しかし、フィオナさんの体内に入ると、命令以外の自己判断でプログラムを変える可能性があります。その場合、健康を守るため、あるいは彼女の指示に従うよう調整され、結果的に彼女を新たな主と認識することもあり得ます)


(それって、フィオナさんが混乱するのが目に見えてるよ)


(そのため、フィオナさんとコンタクトしないように命令を与えますが、その効力は二日程度しか持ちません。

これを防ぐためには、判断能力を持つナノボットを入れ替える必要があります)


(入れ替えってどうするの?)


(毎日、フィオナさんと五秒間…五つ数える間、接触してください。それでナノボットを入れ替えできます)


「ええっ! それってフィオナさんにずっと触れってこと!? 無理無理無理!」

勢い余って口に出してしまった。もちろん、前を歩いていた二人には丸聞こえだ。


「ん? 私に触る? 無理?」

フィオナは落ち着いた顔で振り返る。


「なんのことだニャ? さてはフィオナに惚れたかニャ?」

サラがにやにやしながらからかってくる。


レイは慌てて頭を下げ、言い訳を探すが――うまく出てこない。

(うわー! 口が滑っちゃった!)


(レイ、私の言った通りに説明してください)

アルの冷静な声が響く。


「えっと、その…師匠から教わった治癒を促進する方法で、気功による手当てという方法があるんです。

それは、自分の体内の気を練って、掌に集中させて皮下から体内に流し込むというもので、これによって体が活性化し、自己治癒力が高まると言われています」


「すごいニャ。それって治癒魔法みたいに感じるニャ」


「レイ殿の師匠という方は、非常に博識だな。隠遁していなければ、お会いしてみたいものだ」


「えっと…そうですね…。その続きがありまして…」


「どうしたのだ?」 

「どうしたニャ?」


「治療中は、患部に直接手を触れなきゃならないんです!」


「なっ!」

フィオナの顔が一瞬赤くなるが、すぐに落ち着きを取り戻した。


「だから、さっきの言葉を口走っちゃったんです」

レイは深く頭を下げる。


「なるほど、治療行為なら仕方ないな」


「なので忘れてください。すみません」


「いや、そうじゃない。それで少しでも楽になるなら…その…試してくれるか?」


「それで治るニャら、どんどん触れってことニャ!」


「えっ、良いんですか?」


「お願いできないだろうか?」

フィオナの真剣な眼差しに、レイは覚悟を決めた。


「分かりました。やってみます」


「よっしゃ、商談成立ニャ! さっそく宿に戻るニャ!」


口を滑らせたことで巻き起こった騒動だが――思ったより悪くない方向に進みそうだと、レイはほっと胸をなで下ろしたのだった。


読んでくださり、ありがとうございます。

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