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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
◆閑話◆

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252/263

誕生日の夜の恋人たち ユダ✕ペトロ編

「誕生日の夜の恋人たち」シリーズです。基本的にイチャイチャしてます

第1弾は、ユダ×ペトロです。出だしが「えっ!?(*;゜;艸;゜;)」って感じですが、18禁ではないです! 本人はギリ全年齢だと思ってます! でも、ドキドキシーンはギリギリかも……?

兎にも角にも、お楽しみください♡





「ペトロ。早く」

「あっ……。バカ。動くなって」

「だって、焦らすから」

「焦らしてない。お前がじっとしてないから……」

「それに。ペトロが私の上に乗るなんて、こんなシチュエーション滅多にないから、嬉しくて」

「嬉しいのはわかったから、少しはオレの言うこと聞けよ」

「大人しくしてるから、早くいれて」

「ていうか、いれるって……。付けるの方が合ってないか?」

「確かに」

「それに……。なんでオレは、ユダの膝の上に乗らなきゃいけないんだよ」


 ユダのバースデーデートから帰って来たのだが。なぜか、ソファーに座るユダの太腿にペトロが対面で跨る、という謎の体勢となっていた。


「それはもちろん、ペトロにピアスを着けてもらうためだよ」


 ユダはにっこり上機嫌スマイルで、ペトロの疑問に答えた。

 帰宅後にペトロから誕生日プレゼントのピアスが贈呈されたのだが、今すぐ着けたかったユダは着けて♡ とペトロにお願いした。それで、どういう訳かこの体勢となったのだ。


「太腿に跨ってまで、対面になる必要なかったと思うけど?」

「普通に着けてもらうのもいいけど、せっかくの誕生日だから特別なことがしたくて」

「それは、わからなくはないけど……」

「ほら。手が止まってるよ。早く着けて」


 ユダはペトロの体勢が疲れないように、腰に腕を回してホールドする。


「あんまり密着すると着けづらい」

(それに。変にドキドキする……)


 夜になればあれやこれやをしているから、今さら恥ずかしがることもないのだが。

 帰宅してからしばらくして、ペトロは少し落ち着きがなくなった。プレゼント贈呈にそわそわした訳ではなく、別の理由が原因でドキドキが止まらなかった。

 まずは左耳にピアスを着けられた。

 ブロンズ色のワンポイントが付いた、シルバーの三角形のピアスだ。以前、ハッケシェ・ヘーフェ内でアートを購入したギフトショップの、別の店舗で買ったものだ。

 ネクタイやペンなど仕事で使えるものも考えたが、ピアスはそんなに数を持っていないと聞き、ギフトショップで見たピアスがシンプルで普段使いしやすそうだったのを思い出して、選んだのだ。


「はい。次は右耳」


 ユダは催促するように、顔を左側に向ける。


「今度はちゃんと大人しくしろよ」


 ペトロはユダの右の耳たぶに触れ、ピアス穴の出口を確認してもう片方のピアスの軸を差し込もうとした。

 ところが。またユダにいたずらを仕掛けられる。


「あっ……。ちょっと。耳触るなよ」

「ペトロの耳たぶ、柔らかいね」


 手持ち無沙汰を紛らわすように、ユダはペトロの耳たぶをもみもみする。


「ん……。揉むなって」

「あれ。耳、弱かったっけ?」

「弱くないけど」

(妙に変な気分になる……)


 ペトロのムズムズをわかっていてわざとやっているのか、ユダはいたずらをエスカレートさせ、耳の穴に人差し指を入れた。

「んっ」いつもより感度がよく、ペトロはゾクゾクッとする。


「バカ! 指入れるな!」

「だって。今日はなんだか感度がいいから」

「気が散るからやめろっ」

「はいはい」


 怒られても、ペトロがかわいい反応をするのでユダは楽しそうだ。でも、あとでお預けを食らわないように言うことを聞いて、手の位置をペトロの腰に戻した。


(する時以外でこんなに顔近くならないし、余計に意識する……)


 その後もユダから、手を使わずにイタズラをされる。耳に息を拭き掛けられたり、腰を揉まれたりして妨害を受け、変な声を出しながら、どうにか左耳にもピアスを着けられた。


「はあっ……。はい。着けたぞ」

「ありがと」


 ピアスを着けるだけでかなり疲れたペトロ。時間も十五分ほど掛かった。

 これでひとまずバースデーサービスは一区切りしたのだが、ユダは腰をホールドしたまま離してくれない。


「鏡、見なくていいのか?」

「見るよ。あとでね」

「ひやっ!」


 腰から離れたユダの手は、ペトロのお尻を触り始めた。するとユダは、いつもと違う触り心地に気付く。


「……あれ。下着穿いてる?」

「穿いてるけど……」


 ペトロは、ほのかに頬を染める。


「でも。ズボンと下着二枚にしては、厚みが少ないような……」


 ユダは指先の感覚を研ぎ澄ませて、ペトロのお尻を隅々まで触りまくる。揉まれながら触るので、ペトロはまた変な気持ちになってムズムズしそうになる。


「あんまりさわさわするなよ……」

「本当に穿いてる? まさかノーパ……」

「ちゃんと穿いてるってば!」

「ということは……。いつもと違う下着?」


 恥ずかしがって紅潮するペトロは、浅く頷く。いつもと違う下着を穿いているせいで、落ち着かずドキドキしたり、感度が違ったのだ。


「どんなの?」

「……Tのやつ」


「Tのやつ」と言ったらあのタイプしかない。ユダはペトロのズボンお尻の縫い目の上からなぞって、紐を確かめた。


「ボクサータイプしか見たことなかったけど、そんなの持ってたんだ」

「違うよ……。買ったんだ。シモンに相談して」

「もしかして、朝からずっと穿いてたの?」

「さっき、トイレでこっそり穿き替えた」

「もしかして、私のため?」

「違うの、あってもいいかな……って」


 ペトロは恥らって目を逸らしている。

 まだ見せてもいないのに真っ赤になって恥じらう表情に、下着を選ぶ時も同じように顔を赤くしながら選んだのだろうと想像すると、ユダは愛おしくて堪らなくなる。

 好きが爆発しそうになり、ペトロをギュッと抱き締めた。


「そんな嬉しいことしてくれるなんて。ピアスよりも嬉しいよ」

「本当に?」

「うん。すごく嬉しい。きっとかわいいだろうなぁ」

「かわいいかどうかは、わかんないけど」

「かわい過ぎて、止まらなくなっちゃったらどうしよう」

「そこは、できれば手加減してほしい」


 気持ちが逸ったユダの手が服の下に侵入して来て、お尻を触っていた指先が素肌の背中を滑る。ペトロは背中を反らし、ユダの顔に胸を突き出す。


「次買う時は、一緒に選ぼうね」

「とんでもないやつ選びそうだから、次もシモンに相談する」

「えー」

「その方が、お前も楽しみだろ」

「そうだね」


 ユダの優しい目は、もう雄のそれに変わりつつあった。その目と目を合わせたペトロは、心臓が高鳴る。ユダと同じように自分の身体が内側から燃えていることに気付き、下半身が疼いてくる。

 お互いを繋ぐ導火線が、火花を散らしながらジリジリと燃える。

 そして、合図の破裂音が静かに鳴ると、二人は唇を重ねた。季節外れの熱風が二人のあいだを往復し、雨も降っていないのに水っぽい音が微かにする。


「見ていい?」

「ここで?」

「ベッドまで移動する時間がもったいなくて」

「……どんだけだよ」


 痺れを切らしたユダに半ば押し切られ、ソファーでペトロのTバック姿が初お披露目となった。もちろん拝むだけでなく、一回いちゃいちゃラブラブした。

 そのままユダのエンジンが全開となり、ベッドでもこれでもかというくらい、いちゃいちゃラブラブが繰り広げられた。

 ユダを喜ばせたくて頑張ったペトロだったが、後半はほとんど記憶がなかった。でも。


「ペトロ。今日はありがとう。忘れなれない一日になったよ」


 ユダが満足げに、笑顔で感謝をしてくれたので、


(喜んでくれたなら……いっか)


 たまには張り切るのも悪くはないかも、と思った。

 お互いに身体も心も満たされた、特別な誕生日の夜となった。




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