カッツェは魅惑的な夢を見る(前編)
※このエピソードは、ちょっとアダルトな内容となってます(勝負下着の話です)。念のため、ご注意ください。
これは、とある休日の話。
ユダとヨハネが買い出しに行き、ヤコブもアルバイトで留守だった。
このタイミングを狙っていたペトロは、一人で部屋にいるシモンを訪ねた。ある重要な案件の話をするためだ。
お菓子が出されたが、それよりも話を優先したいペトロは、真剣な顔付きでシモンに切り出した。
「折り入って、シモンに相談があるんだ」
「相談? なんの?」
シモンはマイペースにお菓子を食べながら、呑気な調子で尋ねた。
「えっと。それは……」
切り出したペトロだが、急に俯き、何やら恥ずかしがって歯切れが悪くなる。
「あ……アレ、のこと……なんだけど……」
「アレ?」
「その……。アレの時の、アレ……」
「アレが多くてわからないよ」
チップスをバリバリ食べながら、シモンは小首を傾げる。
恥じらいから、はっきり口にするのをためらうペトロだったが、このままでは話が進まないと、勢いに任せて思い切って口にした。
「しょ……勝負下着! シモンは持ってる!?」
ペトロ・ブリュール、十八歳。上げたその顔は、恥ずかしさで真っ赤に染まっていた。けれど、思春期ど真ん中の十五歳のシモンは、勝負下着と聞いても顔色一つ変えていない。
「勝負下着? なんでボクに訊くの?」
「一応、恋愛の先輩だから、そういう準備もしてるのかなって……」
(なるほど……)
と、冷静に理解するシモンだが。
(ていうか。ボクの方が恋愛の先輩なんだ?)
ペトロの恋愛事情も同時に了解した。
「ユダと恋人になったから、えっちなことする時用にほしいんだ?」
「ほしいって言うか……。普通のしかないから、あった方がいいのかなって……」
ユダと付き合い始めて結構経ち、恋人の自覚を持ったペトロも、そういう気遣いにも気を向けるようになったようだ。
しかし、勝負下着の選び方や、どこで買えるのかがわからず、ヤコブと付き合っているシモンに相談を持ち掛けたのだ。
(ペトロも、かわいいこと考えるんだなぁ)
「いいよ。ボクの見せてあげる」
「持ってるの?」
「ヤコブにはナイショだから、言っちゃダメだよ」
指に付いたチップスの塩を舐めたシモンは、かわいらしく人差し指を口の前で立てた。
こっちだよとペトロを呼び、自分のクローゼットの引き出しを開けて腕を突っ込むと、奥から小さめの黒い紙袋が出てきた。
「そんなにえっちのじゃないんだけど、二枚あるんだ。ビキニタイプと……コレ」
シモンは、ニ枚の下着をベッドの上に広げた。かわいい花柄のビキニタイプと、もう一枚は……。
「こ、これ……Tバック?」
えっちい下着でお馴染みのTバックだ。存在を知ってはいたが初のご対面を果たしたペトロは、実物を見ただけでドキドキする。
「これは張り切っちゃった。えへへ」
「シモンて意外と、結構大胆なタイプ?」
「思い切りはいい方かな」
普段の服装も派手ではなく普通の少年なのに、隠れていた意外なシモンの一面を知って、ちょっとペトロは驚いた。
Tバックをちょっと手に取って拝借したが、お尻丸見えのデザインはやっぱりえっちくて、ドキドキが止まらない。
「店で買ったの?」
「さすがにネットで買ったよ」
「ネットで買えるの?」
「うん。どんなのがあるか、見てみる?」
どうやら、よく閲覧している下着専門のネットショップがあるらしい。ペトロにも紹介するよと言って、シモンはパソコンを開いた。
種類や色の選択をせずに一覧が表示されると、派手な色物や柄物など、カラフルなサンプル写真がたくさん出てきた。
「種類もだけど、いろんなパターンがあるんだよ」
「おぉ……」
下着専門のネットショップを見るのも初めてのペトロは、シモンの隣で興味津々で画面を覗く。
「これが、ボクが買ったのと同じビキニタイプ。最初は、この辺からスタートしてもいいと思うよ」
「シンプルで手を出しやすそうだけど……」
(どれも、えろく見える……)
勝負下着探索脳に切り替え中なので、普段使いできる下着ですらそれっぽく見えてしまうペトロ。一方で、見慣れているシモンは平然としていて、えろ精神年齢はペトロより上なのは間違いない。
画面を下にスクロールしていくと、違う種類も出てきた。初めましてのペトロは、写真を指を差して訊いた。
「これはどうなってるんだ? 後ろに布がなくて、紐しかないんだけど。これもTバックの一種?」
「これは、ジョックストラップタイプだよ。穿くと、お尻全体が丸見えになるやつ」
「丸見え!?」
「だから、脱がなくてもできちゃうよ」
「できちゃう……!」
さらりと言うシモンとは対照的に、想像するペトロは赤面して、声を裏返して動揺する。
そんなペトロをさらっと流して、シモンは次のタイプを紹介する。
「あ。これも、脱がなくてもいいやつだよ」
「これも、どうなってるんだ。ゴムが腰の部分にしかないし、この輪っかは?」
「これもお知り丸見えで、前は被せて、輪っかはアレに引っ掛けるんだよ。前はほぼ被せてあるだけだから、簡単に剥がされちゃうよ」
「剥がされ……!」
また想像したペトロは、余計に赤面する。シモンは、それもまたスルーした。
「あと、これは究極だと思うんだけど。前に被せるだけの、Cストリングってやつ。えっちの時になったらすぐ脱げちゃうね」
「すぐ……!」
アレのカバー的なものが瞬殺される瞬間を想像し、ペトロの顔面から火が吹きそうになった。
次々といろんな勝負下着を紹介されて、その刺激の強さに免疫のないペトロは動悸でふらついた。
(ペトロの反応が面白い……)
新鮮なペトロの反応を見たシモンは、ちょっと面白がっていた。




