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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
◆閑話◆

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カッツェは魅惑的な夢を見る(前編)

※このエピソードは、ちょっとアダルトな内容となってます(勝負下着の話です)。念のため、ご注意ください。



 これは、とある休日の話。

 ユダとヨハネが買い出しに行き、ヤコブもアルバイトで留守だった。

 このタイミングを狙っていたペトロは、一人で部屋にいるシモンを訪ねた。ある重要な案件の話をするためだ。

 お菓子が出されたが、それよりも話を優先したいペトロは、真剣な顔付きでシモンに切り出した。


「折り入って、シモンに相談があるんだ」

「相談? なんの?」


 シモンはマイペースにお菓子を食べながら、呑気な調子で尋ねた。


「えっと。それは……」


 切り出したペトロだが、急に俯き、何やら恥ずかしがって歯切れが悪くなる。


「あ……アレ、のこと……なんだけど……」

「アレ?」

「その……。アレの時の、アレ……」

「アレが多くてわからないよ」


 チップスをバリバリ食べながら、シモンは小首を傾げる。

 恥じらいから、はっきり口にするのをためらうペトロだったが、このままでは話が進まないと、勢いに任せて思い切って口にした。


「しょ……勝負下着! シモンは持ってる!?」


 ペトロ・ブリュール、十八歳。上げたその顔は、恥ずかしさで真っ赤に染まっていた。けれど、思春期ど真ん中の十五歳のシモンは、勝負下着と聞いても顔色一つ変えていない。


「勝負下着? なんでボクに訊くの?」

「一応、恋愛の先輩だから、そういう準備もしてるのかなって……」

(なるほど……)


 と、冷静に理解するシモンだが。


(ていうか。ボクの方が恋愛の先輩なんだ?)


 ペトロの恋愛事情も同時に了解した。


「ユダと恋人になったから、えっちなことする時用にほしいんだ?」

「ほしいって言うか……。普通のしかないから、あった方がいいのかなって……」


 ユダと付き合い始めて結構経ち、恋人の自覚を持ったペトロも、そういう気遣いにも気を向けるようになったようだ。

 しかし、勝負下着の選び方や、どこで買えるのかがわからず、ヤコブと付き合っているシモンに相談を持ち掛けたのだ。


(ペトロも、かわいいこと考えるんだなぁ)

「いいよ。ボクの見せてあげる」

「持ってるの?」

「ヤコブにはナイショだから、言っちゃダメだよ」


 指に付いたチップスの塩を舐めたシモンは、かわいらしく人差し指を口の前で立てた。

 こっちだよとペトロを呼び、自分のクローゼットの引き出しを開けて腕を突っ込むと、奥から小さめの黒い紙袋が出てきた。


「そんなにえっちのじゃないんだけど、二枚あるんだ。ビキニタイプと……コレ」


 シモンは、ニ枚の下着をベッドの上に広げた。かわいい花柄のビキニタイプと、もう一枚は……。


「こ、これ……Tバック?」


 えっちい下着でお馴染みのTバックだ。存在を知ってはいたが初のご対面を果たしたペトロは、実物を見ただけでドキドキする。


「これは張り切っちゃった。えへへ」

「シモンて意外と、結構大胆なタイプ?」

「思い切りはいい方かな」


 普段の服装も派手ではなく普通の少年なのに、隠れていた意外なシモンの一面を知って、ちょっとペトロは驚いた。

 Tバックをちょっと手に取って拝借したが、お尻丸見えのデザインはやっぱりえっちくて、ドキドキが止まらない。


「店で買ったの?」

「さすがにネットで買ったよ」

「ネットで買えるの?」

「うん。どんなのがあるか、見てみる?」


 どうやら、よく閲覧している下着専門のネットショップがあるらしい。ペトロにも紹介するよと言って、シモンはパソコンを開いた。

 種類や色の選択をせずに一覧が表示されると、派手な色物や柄物など、カラフルなサンプル写真がたくさん出てきた。


「種類もだけど、いろんなパターンがあるんだよ」

「おぉ……」


 下着専門のネットショップを見るのも初めてのペトロは、シモンの隣で興味津々で画面を覗く。


「これが、ボクが買ったのと同じビキニタイプ。最初は、この辺からスタートしてもいいと思うよ」

「シンプルで手を出しやすそうだけど……」

(どれも、えろく見える……)


 勝負下着探索脳に切り替え中なので、普段使いできる下着ですらそれっぽく見えてしまうペトロ。一方で、見慣れているシモンは平然としていて、えろ精神年齢はペトロより上なのは間違いない。

 画面を下にスクロールしていくと、違う種類も出てきた。初めましてのペトロは、写真を指を差して訊いた。


「これはどうなってるんだ? 後ろに布がなくて、紐しかないんだけど。これもTバックの一種?」

「これは、ジョックストラップタイプだよ。穿くと、お尻全体が丸見えになるやつ」

「丸見え!?」

「だから、脱がなくてもできちゃうよ」

「できちゃう……!」


 さらりと言うシモンとは対照的に、想像するペトロは赤面して、声を裏返して動揺する。

 そんなペトロをさらっと流して、シモンは次のタイプを紹介する。


「あ。これも、脱がなくてもいいやつだよ」

「これも、どうなってるんだ。ゴムが腰の部分にしかないし、この輪っかは?」

「これもお知り丸見えで、前は被せて、輪っかはアレに引っ掛けるんだよ。前はほぼ被せてあるだけだから、簡単に剥がされちゃうよ」

「剥がされ……!」


 また想像したペトロは、余計に赤面する。シモンは、それもまたスルーした。


「あと、これは究極だと思うんだけど。前に被せるだけの、Cストリングってやつ。えっちの時になったらすぐ脱げちゃうね」

「すぐ……!」


 アレのカバー的なものが瞬殺される瞬間を想像し、ペトロの顔面から火が吹きそうになった。

 次々といろんな勝負下着を紹介されて、その刺激の強さに免疫のないペトロは動悸でふらついた。


(ペトロの反応が面白い……)


 新鮮なペトロの反応を見たシモンは、ちょっと面白がっていた。




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