40話 二組のバンデ
アミーの戦力追加も虚しく、ユダたちが形勢逆転し始めた。そんな時、ヤコブが提案する。
「なあ。俺たちで一気にアミーを攻めちゃえるんじゃね?」
「バンデが二組いるしね」
「ちゃんとお返ししないといけないし」
「じゃあ、袋叩きいっとくか!」
四人が戦っているあいだに、一ブロック先の建物の屋上に移動していたアミーは、また生首片手に不和助長の能力を使おうとしていた。
「此のままじゃ、お嬢にがっかりされるよ」
「がっかりついでに、解雇されればいいんじゃね!?」
居場所を嗅ぎ付けたヤコブが、〈悔謝〉を振り下ろし襲い掛かる。が。アミーは間一髪で回避し、斧はコンクリートを破砕した。
アミーは翼代わりのマントで地上へ逃げ、ヤコブも後を追う。
「部下にばっかり戦わせんじゃねぇよ!」
追跡しながら、連なる天の罰雷を放つ。飛行するアミーはマントを盾にする。
「眷属はそういう物だよ!」
アミーは、ヤコブの背後に眷属を喚び出す。しかし。
「射貫く! 泡沫覆う惣闇、星芒射す!」
シモンが〈恐怯〉放った無数の光の矢で、一瞬で全滅する。
「こうして一緒に戦えばいいのに!」
ヤコブは、引き続き攻撃しながらアミーを追う。アミーも防御と青い炎での反撃を繰り返し、後方にいたシモンも先回りして攻撃を繰り出す。
「敵に戦い方を教えられるとは、不愉快極まりないね。目障りな足手まとい君!」
アミーは生首をシモンに向けた。
「@@@≯≯≯∀∀∀ッ!」
「うっ……!」
シモンは片手で耳を塞ぐ。怯んだ隙きに、アミーは青い炎を纏わせた槍をシモンに突き刺そうと襲い掛かる。
「させるかっ!」
ヤコブは攻撃で阻止し、アミーは急ブレーキを掛け回避した。そのタイミングを狙い、ヤコブは〈悔謝〉を再び振り下ろす。杖で受け止めるアミー。
「シモン!」
「射貫く! 泡沫覆う惣闇、星芒射す!」
シモンが放った光の矢はヤコブをうまく避け、アミーを射抜こうとした。
「くっ!」
味方が近くにいては攻撃はできないと思ったアミーは、若干回避行動が遅れた。マントに穴を開けられると、初めて余裕の表情を崩し憤慨する。
「おのれ! 吾輩の翼をっ!」
「強靭奮う! 晦冥たる白兎赤烏、照らす剛勇!」
アミーがシモンに気を反らした瞬間を見逃さなかったヤコブは、攻撃を食らわせる。重い刃をまともに食らったアミーは、街路樹に落ちた。
「ぐぅっ!」
すぐにヤコブとシモンから距離を取るが、休む暇なく次の攻撃が来る。
「切裂く! 朽ちぬ一念、玉屑の闇!」
ペトロが〈誓志〉で斬撃を放つ。アミーは間一髪でマントを操り、身を翻す。
「人間如きが!」
「ごときが、なに!?」
その背後から、ユダが〈悔責〉を振り上げていた。大鎌を振り下ろされアミーは回避するが、刃が足を掠める。「っ!」
マントを羽ばたかせ、空中に逃げるアミー。追い掛けて来るユダとペトロをビルの屋上で待ち構え、生首を向け、同時に眷属も喚び出した。
「@@@≯≯≯∀∀∀ッ!」
「オンパレードだな!」
ペトロは足を止め、超音波を物ともせず、後方に現れた軍勢を斬撃で薙ぎ払う。
「断切る! 来たれ黎明、祝禱の截断!」
ユダも超音波を受け流し、追いながらアミーに青白い斬撃を放つ。マントで飛び回避したアミーは急旋回し、青い炎の槍でユダに突っ込んで来る。
〈悔責〉で受け止めたユダだったが、アミーとともに青い炎の壁に囲まれた。
「ユダ!」
燃え盛る青い炎の海に飛び込もうとしたが、ペトロは躊躇し踏み込めない。
炎の中のユダはアミーと一騎討ちとなり、大鎌と杖で鍔迫り合いとなっていた。
「此の儘燃えなよ。正体不明の不審者さん」
「盗み聞きと覗き見は、プライバシーの侵害だよ」
「吾輩とあんた、何方が悪者だろう?」
「それは圧倒的に、お前の方だろう!」
ユダは大鎌を握っていた片手を離し、御使いの抱擁をお見舞いする。「グアッ!?」光の爆発をまともに食らうアミー。
「はあっ!」
ユダは間髪を入れず横から〈悔責〉を振るうが、しぶといアミーにマントで防がれた。
その時。
「ぅおおっ!」
勇気を振り絞って青い炎の中へ飛び込んで来たペトロが、〈誓志〉で斬り掛かった。アミーは炎を操り目晦ましする。
「舐められるのは御免だよ!」
「っ! それは、こっちのセリフだ!」
前方を遮られただけでなく周りを青い炎に囲まれるが、ペトロはそれに怯え臆することなく振り払い、力を込めた剣を振り下ろす。
「何っ!?」
恐れを跳ね除けた剣は、盾にしたマントとアミーの片腕を斬り付けた。「グウッ!」
「私のパートナーを、馬鹿にしないでほしいね!」
振るわれた大鎌をアミーは杖で受け止めたが、「はああっ!」大鎌の威力に負け、杖の柄ごと手首を落とされた。
「クソッ!」
「切裂く! 朽ちぬ一念、玉屑の闇!」
ペトロからの斬撃はかわし、アミーは炎の中から空中へ飛び出す。だが。
「断切る! 来たれ黎明、祝禱の截断!」
ユダも青い炎から脱して、攻撃を繰り出した。その攻撃が盾のマントだけで防御しきれなかったアミーは、せめて直撃は回避しようとして片腕を失う。
「グアアッ!」
翼のマントまで切られ空中で体勢を崩したアミーは、地上へ落下する。地上には、ヤコブとシモンが袋叩きをするために準備万端で待ち構えていた。
「捕まえたぜ。顔だけイケメン野郎」




