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第六話 いざ、無人島へ

 勇者将太達の旅は順調だった。

 苦も無く、行く度々で称賛され、確実に強くなってきている。

 最初こそ、苦戦したイア・アーゴントも一撃で倒すことができるまでとなり、今は聖剣の導きの下、とある山岳地帯へ訪れていた。


「皆、構えるんだ! 奴を見ろ。邪悪なオーラを放っている」

「所謂邪悪な存在ってやつかしら? うわー、強そう」

「聖剣がここに俺達を導いたってことは、奴も世界を脅かす存在ってことで良いんだよな?」

「そうに違いありません。今は、山奥にいますが、もしこの先の街に下りてきたら、どれだけの命が失われるか」


 鬱蒼とした山の中を進んでいると、黒きオーラが体中から溢れ出る四足歩行の獣が四人の前に姿を現す。

 血のように赤い瞳、人間など容易に噛み千切るであろう鋭い牙。

 体を覆う毛は黒く、尾の先からは赤い炎が轟々と燃え盛っていた。


 四人を睨みつけ、唸りを上げる。

 まるで一歩でも近づけば容赦なく襲い掛かると言わんばかりに。

 だが、そんなことでは勇者は怯まない。

 聖剣を鞘から抜き去り、戦闘態勢にはいる。


「ミュレットの言う通りだ! こんな邪悪な存在を野放しにしていては、多くの命が失われる! 僕は、勇者として奴を討ち滅ぼす!!」

「気合い入ってるじゃねぇか、将太」

「援護は任せてください!」

「任せた! うおおお!!!」

「いくぞ、おらぁ!!」


 前衛職である将太とダルーゴが、我先にと突撃していく。

 黒き獣は、来るか! と身構え、尾の炎を激しく燃え上がらせる。


「炎……」

「ティリンさん? こんな時に、なにを考えているんですか?」


 防御結界で相手の炎を防ぎながらミュレットは、魔力すら練り上げていないティリンに叫ぶ。


「いや、なんでもないわ。ごめん」


 今は、戦いの真っ最中。余計なことは考えないようにしないと。

 ティリンは、気持ちを切り替え、魔力を練り上げる。


「動きを封じるわ! 【魔力束縛】!!!」


 刹那。

 黒き獣の四肢を魔法陣から飛び出た魔力の鎖が絡みつく。


「よくやった!」

「一気に畳みかける!!」

「――――!!」


 チャンスとばかりに、攻撃を仕掛けようとするが。

 黒き獣が、空気を揺らすほどの咆哮を上げると、鎖が炎で燃え上がる。


「ちょっ!? そんな簡単に……!」


 これまで、多くの強敵を縛り、動きを封じていた鎖が容易く破られたことにティリンは驚く。


「くっ!? なんて熱量だ!!」

「近寄れねぇ……!!」


 黒き獣が纏う赤き炎の熱量に、思わず身を引いてしまう将太とダルーゴ。

 

「今までの敵と格が違います! 皆さん!! 今、光の加護を!!」

「てか、こんなところで炎とか……山火事で逃げられなくなっちゃうんじゃないの!?」

「そうなる前に片付けねぇとな!」

「ああ。聖剣の力で、一気に切り裂く!!」



・・・・



 謎の発明家が居ると言う無人島。

 そこは、強力な結界が張られているらしく、そこにあるが、ないものとされているようだ。

 ならばどうやって行くのか?

 そう聞くとファルク王は、無人島へ導いてくれる魔道具を渡してくれた。それがあれば、結界もすんなり通り抜けれるそうだ。


 そして、名前すらわからなかった謎の発明家だが、ファルク王により正体を隠されていたらしく。

 魔道具も、実はファルク王が裏で色々とやって世界中にばら撒いていたそうだ。

 そうそう。聞けば、ファルク王と仲のいい他の王達も絡んでいるらしく、今は俺達の計画をファルク王が、伝達してくれている。

 

「おお! 海って本当に壮大なんだな!」


 その間、俺達はファルク王が手配してくれた船に乗り、目的地である無人島へ向かうことに。

 港町オーレル。

 そこの船場にある一見するとちょっと大きな船。それに俺達は乗って海を渡るのだ。

 ずっと内陸で暮らしていた俺は、十八で初めて海を見たことに感動している。


「そういえば、ヤミノは海を見るの初めてだったわね」

「ずっと内陸暮らしだったからな」

「ふふ。カーリーったら、可愛い息子にはもっと旅をさせた方がいいと思うわ」

「……あの、どうして先輩が? あなた王妃ですよね?」

「ふっ。今は、ただのセリーヌよ。それに、今から会いに行くのは、世界的に重要な人物だからね。夫の代わりに私がついて行くことになったのよ」


 ……うん。言い分はなんとなくわかる。

 けど、まさか王妃がついてくるなんて。

 いや王妃だけじゃない。


「え!? 海って塩水だったんですか!? フィリアお姉ちゃん!?」

「そうなんだよ。すっごくしょっぱいんだよ」


 王女までついて来てしまった。

 服は、地味目であまり目立たない感じだけど、隠しきれない高貴なオーラが見えるような、見えないような。

 マルクスさんは、ファルク王と共に居る。

 この場に居るのは、俺、ヴィオレット、エメーラ、アメリア、ララーナ、母さん。そこに、セリーヌ王妃とフィリア王女となっている。


「なあ、母さん」

「なに?」

「本当に、護衛は俺達なのか? 大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。この中では、ヤミノ。あんたが一番強いんだから。……頑張りなさい」


 頑張りなさいって言われてもな。

 目立たないために、少人数で行くことになっているが。王妃と王女の護衛を一般人に任せるのはどうかと思うんですが、ファルク王。

 それに、海は地上以上に危険なところって聞くし。

 ……大丈夫だろうか?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王女は新たなヒロイン候補??
[気になる点] 幼馴染みこそ取られたけど……案外まともなんだよなぁこの勇者
2022/10/11 12:21 退会済み
管理
[一言] 炎を尻尾に灯した、謎の黒い四足の獣…………… まさか、ペットか。ペット枠が遂に登場したってーのかっ!?
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