第十四話 記憶の試練・赤
緑、黄の試練を終え、次なる試練は赤。
気合い十分の赤炎の化身フレッカは、今まさに激しい戦いを繰り広げていた。
「ふははは!! よい! よいぞ!! この激しさ!! 猛り!! まさしくルビアじゃ!!!」
回避など不要とばかりに、真正面から赤き炎を叩きつけ合うフレッカとルビアの形をした発光体。
これまで、何度も二人のぶつかり合いを見てきたけど……。
「あの発光体。やはり、ルビアと同じですが……どこか違うように感じます」
拳と拳。力と力のぶつかり合い。
激しく燃え盛る赤き炎。
が、やはり違和感がある。いつもの楽しそうな声がないからか? それとも、相手が記憶により構成された存在だから?
「戦い方は、ルビアそのままだけど。なんだか動きがぎこちないように見える」
「ええ、私も同意見よ。他もそうだったけれど、本物と比べて雑念が動きに反映している感じね」
それでも、力はルビアのそれだ。
フレッカも、それを理解しているからこそ油断など一切していない。
「はっはぁ! どうした! ルビアの記憶よ! 力は良いが、動きが雑過ぎるぞ!!」
振り出される右拳に合わせ、フレッカは軽く下から左拳を叩きつける。流れるように体を捻り、回し蹴りを食らわせる。
「まだまだじゃあっ!!」
赤炎は吹き出し、一瞬にして吹き飛んだ発光体の背後へと回り込む。
「ほれ!!」
反撃の隙を与えないように、高速移動しながら攻撃を叩きつけていく。
「言っておくが! わしは! 一切! 容赦は! せんぞ!!」
「ほ、本当に容赦ないな」
「いつものことじゃないですか」
このまま一方的な展開に……と思っていたが、発光体が反撃に出る。
炎を爆発させ、風圧によりフレッカの動きを一瞬だが止める。
そこへ、ラッシュをかける。
「よい反撃じゃ! もっと、わしを楽しませてみせよ!!」
再び力と力のぶつかり合いが始まる。
「やっぱ、フレッカの奴。手加減してるんじゃない?」
「ど、どういう、こと?」
「だってさ【オーバー・フレア】を使ってないじゃんか」
「そう、言えば」
エメーラの言うことは理解できる。確かに【オーバー・フレア】を使えば、相手を圧倒的な力でねじ伏せることはできる。
フレッカから説明を受けたが、完全開放まで至る前に解除をすれば燃え尽き状態にはならずに済むとのこと。徐々に、段階的に力が増していく……そして、溜めたものを一気に解放。それが終われば、あの時のようにふにゃふにゃなフレッカになってしまう、ということだ。
「なんだかんだ言って、あいつも躊躇ってるのよ」
フレッカとルビアは、いつも力試しはもちろんだが、一緒に食べ物を食べ、風呂に入り、寝る。
何も知らない者達から見たら、親子というよりも姉妹のように見えてしまうだろう。
「う、あぁ……」
「む?」
激しいぶつかり合いの中、ついに発光体が喋り出した。
「楽しく、ない」
楽しくない?
「ぜん、ぜ、ん……楽しく、ない」
そうか。発光体の動きから感じたのは、そういうことだったのか。
「楽しくない、のう」
ルビアの声で、そんなことを言われ、フレッカも心中穏やかではないだろう。しかも、本物じゃないとはいえ、相手は記憶により構築された存在。
もしかしたら、本当にルビアが、あんなことを言ったのかもしれない。
「お前が、わしの失った記憶により構築された存在なのだとしたら……情けない限りじゃ」
はあ、とため息を漏らすフレッカ。
「まあ、その楽しくないが、どういう意味合いなのかによるがのう」
彼女の言う通り、意味合いによっては捉え方が変わる。
果たして、その言葉が意味するものとは。
「じゃが、今は悲しき娘を解放させるのが最優先!! 後のことは、後に考える!!」
刹那。
フレッカの背後に、ひとつの炎が灯る。
「決めにいくようね」
「ああ」
【オーバー・フレア】を発動。フレッカの背後に、炎が灯り出す。
「昔、わしらの間に何があったのかは、まだわからん。じゃが!」
更に、炎が灯る。
「今のわしらは、心の底から楽しく生きておる!! 記憶よ!! 今のわしらの力を受けるがいい!!」
猛々しく赤炎が燃え上がる。
フレッカの両腕には、赤炎の手甲が生成される。あれは……より強固によりかっこよくなっている。
「見よ! これぞ赤熱炎甲フレッカ・ナグル!!!」
「相変わらずのネーミングセンスですね」
「いいじゃん。というか、リムエスも似たようなものだよ?」
フレッカの叫びと共に、手甲の両脇に付いている噴出口から赤炎が噴き出す。それが更なる加速を生み出し、発光体へと叩きつけられた。
「【ブレイズ・インパクト】!!!」
「が、がああ!!!」
そのまま倒される、かのように見えたが、発光体は赤炎を爆発させ、なんとか防いだ。
「くははは!! この攻撃を弾くとは!! じゃが、まだまだ止まらぬぞ!!」
一発、二発、三発。容赦のない打撃が発光体を襲う。
相手も対抗はするもののやはり防戦一方。
「過去よ」
そして、背の炎が半分まで灯ったところで、フレッカは瀕死の発光体を真っすぐ見据え、深く腰を落とし右拳を握り締める。
「また会おう」
別れ、ではなく再会の言葉と共に渾身の一撃が発光体を貫いた。




