第四十一話 凶刃
仮面の男ロヴィウスは鋼鉄の橋の上に佇んでいた。
視線の先には、何十、何百と並んだ獣型のイア・アーゴントが参列している。そこへ、コツコツと足音を鳴らしながら仮面の女マギア―が近づいて来た。
『随分と量産されたわね』
『ああ。ようやくデータが揃い、改良に改良を重ね、量産化も順調に進んでいる。これならば、あの炎達にも容易に焼かれることはないだろうさ』
『ふーん。容易に、ねぇ』
焼かれることはない、と言わないロヴィウスにマギア―は隣に並び呟く。
『私も、完全に焼かれないものを作ろうとは思っているのだが。そう簡単にはいかないのだよ』
『まあいいわ。あの炎達が弱かったら、こっちも殺し甲斐がないもの』
それはそれは、とロヴィウスが両肩を上げる。
『……ところで、新人くんはなんで隠れているのかしら?』
薄暗い鋼鉄の部屋の隅っこ。
そこにある柱の陰に隠れているが、全然隠れ切れていない鎧武者が居た。
『あ、あはは。いやぁ、任務を失敗した挙句、何の成果も得ずに逃げ帰って来たので……』
『怒られると思った、かな?』
『う、うっす』
『ふふふ。そんなことはしないわ。ほら、こっちに来なさい』
優しい声音で手招きするマギア―に、鎧武者セギラは静かに近づいていく。
そして、手が届く範囲まで近づいたところで。
『制裁』
『はうっ!?』
マギア―は一瞬のうちに鋼鉄の巨腕を右手に纏わせ、そのままセギラを平手打ちする。勢いよく壁に激突したセギラは、ほらやっぱり! と言わんばかりにマギア―を指差す。
『いよいよだ』
『ええ。我が神の封印もついに解かれる。始まるわ……再びの世界の生物を蹂躙する時が』
・・・・
「なんか静かですね……」
いつもの場所、いつもの空気。
何もかもいつも通りのはずなのに、メーチェルは違和感を覚えた。
「仕方ありません。ヤミノ様達は、もう帰られたのですから」
しばらく賑やかな声が響いていた『闇の炎様好き好き教』の総本山。だが、ヤミノ達が帰ったことで一気に静かになってしまった。
正確には、いつも通り信徒達の話し声が聞こえてくるのだが……それでも、静かに思えて仕方ない。
「それにしてもネネシア様が闇の炎の化身だったとは驚きですよ」
「隠していて悪いとは思っていました。しかし、これも全ては世界を救うため。今、世界を脅かす侵略者達を倒すためだったのです」
ネネシアは、両手を重ね、その場で膝を突く。
「……そういえばネネシア様。これからヤミノ様達とどこかで会うんですよね? 重要な話をするために」
「ええ、そのつもりです」
「その場所ってどこなんですか?」
「ごめんなさい。たとえメーチェルでも、それは教えられないんです」
祈りを続けながらネネシアは、申し訳なさそうにメーチェルに言う。
「そうなんですか……まあ仕方ないですよね。すみません、ただ言ってみただけです」
あははは、と笑いながらメーチェルはすぐ引き下がる。
「あ、そういえばネネシア様」
「どうかしましたか? 今日のメーチェルは随分とお喋りですね」
しかし悪い気はしないとネネシアは思った。今日は、自分も気分がいい。このままメーチェルと楽しく談笑するのも良いだろう。
そう思いながら立ち上がり、くるりと踵を返す。
「―――」
が、そこで目にしたのはにっこりと満面な笑みを浮かべながら剣を振り下ろさんとするメーチェルの姿だった。
ふいー……ちょっと急ぎ足な気がしますが。年を越す前になんとか四章を終えることができました。
皆さん! よいお年を!!




