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第二十三話 黒の皇帝

「わあ、真っ黒」

「なんかかっこいい!!」


 全身黒色の鎧で身を固め、兜には二本の曲がった角が生えていた。

 威圧的なその姿で一人鎮座しているため、思わずごくりと喉を鳴らす。


「……陛下。事前の連絡もなしに謁見する無礼をお許しください」


 コトロッツさんは、その場に跪き、首を垂れながら謝罪の言葉を述べた。俺達も、釣られて跪こうとするが、それよりも早く皇帝が右手を突き出す。


「よい。楽にするがいい。……事の次第は聞いている。リックが魔剣狩りと遭遇し行方不明なのだろう?」

「はっ! それゆえ、騎士団総動員で団長の行方を捜索しようと思っております」

「うむ。リックのことだ。次に魔剣狩りに会ったら、どう攻めるかと笑みを浮かべながら思案しているであろう。己が怪我をしていることを忘れてな」


 皇帝は、リックのことをよく理解しているようだ。

 俺も、容易にそんな姿を想像できてしまう。


「ゆえに、火急に捜索を開始しなければならないと存じます」

「うむ。よかろう。帝国の剣を失うわけにはいかぬ。早急に捜索を開始せよ」

「はっ!!」

「だが、その前にコトロッツよ。目立った外傷はないようだが、一度治療を受けよ。そなたも我が帝国の剣。もっと自分の体を労われ」

「も、勿体なきお言葉!! で、では治療の後。団長の捜索を開始致します!!」


 コトロッツさんは、皇帝の言葉に若干上ずった声で感謝をし、その場から急ぎ足で去って行く。よほど嬉しかったのだろう。

 横切った時に見た彼の表情は、かなりにやついていた。


「さて」


 コトロッツさんが居なくなった後、皇帝は重い腰を上げ、こちらへと近づいてくる。

 そして、俺の目の前で立ち止まった。


(でかい……それに、物凄い威圧感だ)


 ヴィオレットほどではないが、俺よりも頭一つ分は大きい。それに、身に纏っている漆黒の鎧のせいもあって味方のはずだが、つい身構えてしまう。


「そなたが、闇の炎を操りし男だな」

「はい。ヤミノ・ゴーマドと言います」

「我が名は、ゼーベ・ロム・ヴィルガルドだ。……ヤミノよ。そなたは、力を何のために使う?」


 ゼーベ皇帝の言う力とは、闇の炎のことだろう。

 どんな表情で俺の言葉を待っているのかわからないが、すぐに口を開く。


「もちろん。護るために」

「即答か。だが、容易ではないぞ」

「はい」

「……よかろう。そなたが、今後世界にどのような影響を与えるか。楽しみだ」


 俺が、世界に……。


「もういいかしら? ゼーベ」

「リア―シェンか。そなたは、相も変わらずだな」


 ずっと沈黙を保っていたリア―シェンだったが、俺とゼーベ皇帝の会話が終わると一歩前に出て口を開いた。


「あんたこそ、素顔を見せないなんて失礼じゃない?」

「お、おいっ」


 コトロッツさんが居たら失礼であるぞ! とか言いそうだ。


「許せ。素顔を晒すわけにはいかぬのだ」

「ふーん。まあどーしても見たいってわけじゃないから、良いけど」


 確か、代々皇帝は漆黒の鎧を身に纏い、信頼する者達であろうと徹底して素顔を晒すことをしないんだったか?

 普通なら、皇族だろうと不気味がり、不審に思うところ。実際、大昔に反乱が起こったようだ。

 結局、皇帝率いる騎士団により鎮圧されたようだけど……。


「わたしは気になる!!」

「ルビアちゃん。あたしも気になるけど、今回は我慢我慢!」

「えー?」


 正直に言えば、俺も気になるところだが……。


「ゼーベ皇帝陛下。話は変わりますが、グラーチア大陸に『聖神教』が上陸しているようです」

「うむ。こちらにも情報は入っている。連中の狙いは、そなたらであろう」

「はい。すでに、リア―シェンやファリエが襲われたらしいので」

「……であるならば、メーチェルよ」

「は、はい!! な、なんでしょうか? 陛下」


 俺達から少し離れた位置でずっと沈黙を保っていたメーチェルだったが、ゼーベ皇帝に話しかけられ驚いた様子で返事をする。


「このことは当然ネネシアも把握しているであろう?」

「も、もちろんです」


 ネネシア……『闇の炎様好き好き教』の教祖か。


「であるなら『闇の炎好き好き教』もこの件に協力せよ」

「も、もちろんです! 私達の神を害するなら、喜んでご協力致しますとも!!! 実は、そのためにまた合流したわけですので、はい」


 どうもメーチェルはゼーベ皇帝が苦手なようだ。


「ならばよい。……我も、我で動くとする。また何かあればこれに連絡するといい」


 そう言ってゼーベ皇帝はたくさんしゃべろうぜくんを取り出した。

 俺は慌てて自分の分を取り出し、魔力を注ぎ合う。

 それが終わると、彼は静かに皇の間から去って行った。


「ふう……き、緊張して一言も喋れませんでした……」


 すると、すぐファリエが大きく息を漏らす。


「メーチェル」

「は、はい。なんでしょうか? ヤミノ様」

「この後は『闇の炎好き好き教』のところに行くってことで、いいのか?」

「そう、なりますかね。も、もちろん! 皆様がよろしければ、ですが」


 と、俺達の反応を待つようにメーチェルの視線が右へ左へと動く。『闇の炎好き好き教』の総本山か……いったいどんなところなのか。

 

「わたしは行きたい!」

「あたしもー!」


 すぐに了承したのは、エルミーとルビアだった。


「私も構わないわ」


 それに続きリア―シェンも了承し、ファリエは静かに首を縦に振っていた。


「ヤミノ様は?」

「……行こう。協力者は多い方がいい」

「よ、よかったです! あはは、これはネネシア様が大喜び……を通り越して失神しちゃうかもですね」


 し、失神……? それは、かなり心配になるんだけど。本当に行っても大丈夫なんだろうか?

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