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第十三話 最悪だわ

「と、ともかく! リア―シェンのことを探さないと」

「そうですね。では、いくつかリア―シェン様が足を運びそうな場所に行ってみましょう」

「うん。それじゃあ、メーチェル」


 今から行けばまだ追いつくかもしれない。そう思い、俺はリア―シェンが行きそうな場所へ転移しようかと、メーチェルの記憶を読み取るために手を動かした。


「ん?」


 が、手を止める。何かこちらを見ているかのような気配を感じる。


「うぅ! なんか嫌な感じ……!」


 どうやら、ルビアも俺よりも先に気づいていたらしい。


「……消えた、か?」


 攻撃が来るかと思い身構えていたが、嫌な気配はまるで溶けるかのように無くなる。


「今の気配は、なんだったのでしょうか?」

「メーチェルも気づいていたか」

「ええ。とはいえ、敵意のようなものはなかったようですが」

「えー! さっきのは絶対敵だよ! 敵!!」

「そ、そうなのですか?」


 メーチェルは敵意を感じなかったようだが、ルビアは敵だと豪語する。俺は、どっちつかずだ。こちらを観察していたのは確かだろう。

 それに、ルビアの言うような嫌な感じもあった。


「うーん。あたしも、肌がチクチクするような気配を感じたけど……本当に敵なの? ルビアちゃん」

「だって、うがー! ってなったから」

「そっかそっか。うがー! かぁ。もー! ルビアちゃんってば可愛いー!! ぎゅー!!!」

「むー! 嘘言ってないからー!!」

「うんうん。お姉ちゃんは信じてるぞー! よしよし!!」


 俺も可愛いと思うけど、本当にエルミーはルビアを可愛がっている。さっきまで、これから戦いが始まるぞと言う雰囲気だったのに。

 エルミーは、どこまでもエルミーだな。

 

「今の気配も気になるけど。今は、リア―シェンだ。早く見つけないと、またどこかに行ってしまうかもしれない」

「そうだね、お父様。雰囲気がどーとかで、移動しちゃうぐらいだからね」


 と、ルビアを胸に抱きながら言うエルミー。


「飽きっぽいのかな? リア―シェンって」

「飽きっぽい、と言うか我が道を進む、的な感じだと思います。あ、あくまで私個人がそう思っているだけですが」

「それじゃあ、我が道を突き進む前に追いつこう」

「おー!」

「いえーい!!」


 こうして、俺達はどこかへ行ってしまったリア―シェンを追うことになった。


「―――ここにはいなかったか」

「うぅ、すみません」

「もー、メーチェルのせいじゃないってば。ほら、元気出せ出せ!」


 俺達が最初に訪れたのは、氷牢の洞窟。大昔に、罪人達を閉じ込めるために使用されていた場所だったそうだ。

 今は、昔の名残があるだけの洞窟でしかないようだ。


「それにしても、リア―シェンさんって。こんなところに何をしに来たんだろうね?」

「……」

「ヤミノ?」


 教会と同じく伝言に変わる青い剣が残されていた。しかも、一番奥にある広い牢獄跡に。そこに残されていたものはこうだ。


 ここもなんか違うから、次に行くわ。


 俺達は、似たような炎の意思が複数あるから、どれがリア―シェンのものなのかわからないでいる。

 そして、その中でも炎の意思が強いところへ転移している。

 

「もしかしたらだけど」

「なんですか?」

「……いや、ごめん。確証があるわけじゃないから」

「えー? そうやって途中で止められるよけーに気になっちゃうやつなんだけど? お父様」

「そーだ! そーだ! 気になるー!!」

「ご、ごめんってば! とりあえず次のところに行こう」


 勘違い、てこともある。とはいえ、空間転移は消耗が激しい。次に行った場所で確証が得られれば良いんだけど。

 そういうわけで、次に炎の意思が強い場所―――パーディアの滝へと向かった。

 

 滝と言っても完全に凍っている。

 それは、近くの氷の上位精霊の影響で近辺にあるもの全てを凍り付かせているからなのだとか。

 氷の上位精霊セレロー。

 どうやら、温厚な性格で敵意を持たなければ襲ってはこないようだ。冷気を操るだけでなく、剣術の腕も相当なもので、腕自慢が幾度も挑むも全戦全勝。

 それにより、自分も自分もと挑戦者が増えていき……セレローは姿を消した。


「わー! 本当に凍ってる! かっちこち!!」

「とげとげだー!!」


 巨大な滝は完全に凍っており、ところどこが鋭利に尖っている。周囲は木々に覆われており、敵の気配は一切感じられない。

 

「ここに、上位精霊が居たんだよな」

「はい。ただ、血の気の多い連中がセレローの強さを知って、次々に挑んで……いつしか、姿を消したんです」

「なんで? いっぱい暴れられるのに」

「セレローは、強いけど争いごとを好まない精霊だったんですよ。ルビア様」


 上位精霊は、知能を持った生命体。性格も違うが、決まった場所から動かないというのは同じらしい。そして、上位精霊が居る場所はより濃いマナが漂っており精霊領域と呼ばれている。

 ここも精霊領域なのだろう。セレローがいなくなったとはいえ、どこか幻想的に見える。


「……」


 当然だが、リア―シェンの伝言の剣が残されていた。足元にあるそれを手にすると、文字へと変わっていく。


 ここも違うわね。次は、海岸辺りに行こうかしら。


 ……やっぱりそうだったか。


「あの、ヤミノ様。これって」

「リア―シェンは、どういうわけか。順番に追ってきてほしいみたいだ」


 次に炎の意思が大きいのは海岸。

 リア―シェンは、どういう意図かはわからないけど、こうやって順番通りに追ってきてほしいみたいだ。


「え? じゃあ、わざわざこうやって順番に追ってくることを予想して剣を残していたってこと? 意味わかんない」

「あたしは、なんとなーくわかるかも」

「えー? どういうこと? エルミー。教えて! 教えて!!」

「うーん。ルビアちゃんには、ちょーっと早いかなぁ」

「なんでー!!」


 そういえば、これから色んなタイプの女性と夫婦になるにあたって、女性との付き合い方とかそういうのを調べたり、聞いたりしていた。

 ……追われたい気持ち、てやつなのか?


「じゃあ、次は海岸ですか?」

「いや、一番弱い場所に行こう。そこにリア―シェンが居るはずだ」

「ど、どうしてですか? リア―シェン様は順番に追ってほしいみたいですが」


 少し焦った様子でメーチェルは問いかけてくる。


「俺も、できることならそうしたいんだけど……空間転移は消費が激しいから」


 このまま順番に転移し続ければ、必ず途中でへばってしまう。


「なら、転移しないで追いかければいいじゃん」

「ルビア。それだと何日。いや下手をすればそれ以上かかるかもしれないんだ」


 少なくとも、伝言の剣がある場所は十一カ所。今日は、三回も空間転移を使ったから、頑張っても後二回ぐらい。

 ヴィオレットとアメリアが居れば、どうにかなったんだろうけど。

 

「それに、こうしている間にも侵略者達が人々の命を脅かしているかもしれないんだ」

「うぅ……それを言われますと」

「ごめん、メーチェル。それじゃあ」


 どうして、メーチェルが焦っているのかはわからないけど。早くリア―シェンに会わなくては。

 そう思い、俺は炎の意思が一番小さな場所へ転移した。

 

「―――最悪だわ。順番を守らずに来ちゃうなんて」


 転移した場所は、大樹が聳え立つ雪原。

 そこには、不機嫌な表情のリア―シェンが待っていた。

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