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SHINOBIAI  作者: 蒼井 紫杏
1/5

【親方様の指令】

またもや百合!

『Last color』も書けてないのに!

ごもっとも……

「親方様。お呼びでしょうか」

「うむ……。静流(しずる)よ、お前は今年でいくつになる」

「はっ、先程17を数えました」

「そうか………」


周りに緑以外を見出すことが出来ない程の山奥に二つの人影があった。


「…………親方様?いかがされましたか?」

「いや…。静流よ、今の世をどう思う」

「今の…世……ですか」

「そうだ」

「…………」


二人は旅装束などではなく山奥には不釣り合いな格好である。

親方様と呼ばれた男は黒衣の着流しを、静流と呼ばれた娘は同じく黒衣の……


「先の戦で多くの民草が死にました。民草の事など考えもつかない者どものせいです。……多くの農民が徴兵され同じように徴兵された農民同士が、ただ領土が違うというだけで、訳も分からなまま殺し合いをさせられたのです。男手を失い、土地を失い……明日食べる物もない難民が更に死に……腐った世の中です…」

「そうであったな。お前は先の戦の…………。ただ静流よ、その戦は13年前に終結を迎えた」

「ジポン……」

「そうだ。統治国ジポン」


感情のまま吐き出した静流の言葉を遮り親方様が言った言葉。

それは、この広大な島国である今の国名である。

13年前に終結を迎えた全ての国を巻き込んだ戦乱は、それまで存在していた大きな七つの国を丸々一つに取り込みあまりにも大きな国を生んだ。[ジポン]


「しかし親方様……。今も尚苦しんでいる民草はいるのです!」

「静流よ。お前は若い。以前の各国を知るまい」

「知っております!」

「いや、一方的にしか見ておらんな」

「戦が生んだ苦しみは知っております!皆も申しておりました!!」

「そうだ。この里の……戦しか知らぬ者の意見ではないか」

「!!!……ですが…」

「以前の各国は今の世より酷い物であった。ソヨでは悪法がまかり通り正義でさえも金で買えた。官の目の前で人殺しをした商人を見逃し道の端に寝ていた動けない浮浪者を捕まえるなどという事も普通に起こりえた。イジピンでは年々上がる税に苦しむ民草が、集団で自決するなどということも普通にあったのだ。ライでは厳し過ぎる男尊女卑に苦しんだ。女性は金で売り買い出来る財産だと認知されていた。カランもテイギもモスキットも同じように今より酷い状態だったのだ」

「………」


過去に淘汰された六つの国、その実情は静流の想像を超えていた。

人から見聞きして作り上げられた過去は、今異なる方向から聞かされた真実によって新たな形を見出す。


「静流。お前は先の戦で幼き頃にこの里に流れてきた。それ故、里の外を知らな過ぎるのだな。お前は確かに優秀だ。日々鍛錬に励み里の生まれの者をも凌ぐ実力となったのだからな。このまま実力をつけていけば女といえど侮られない力量となろう。しかし、過去のことに縛られたままでは成長できんな」

「………」

「よいか静流、お前の記憶している暮らしが幻影だったとは言わん。だがモスキットは荒れ果てた荒野の続く死地だ。いや、平民はそこにしか住む場所がなかったと言い換えよう。恐らく静流、お前もお前の母親とお前の父親と3人で穏やかに暮らしていたわけではあるまい。だからこそ、お前の父親はテイギへ出稼ぎに行き大戦が―――」

「分かっています!!!」

「………ふぅー……静流よ、常に心穏やかであれとは言わんが、静の心無くして果たして一人前と言えようか」

「……………」


眉間に皺を寄せた静流と静かな親方様の目が合って数秒…静流は何も言えずに目を伏せた。

唯何も言い返せずにいる静流と、静かに見守っている親方様。

5分は経っただろうか。静流が顔を上げた時も親方様は唯、静流を黙って見ていた。


「……………」

「………親方様は、今のジポンを評価していると?」

「そうだ。今のジポンは評価している。(・・)のジポンはな」

「どういう意味でしょうか」

「今のジポンの統治者(レクト)が次の者へ承継すればどうなるか分からぬな」

「レクト……確か今のレクトは…」

「レクト(はかなし)………20年前から変わらぬジポンのレクトだ…」


過去七国の中で最小最弱の国であったジポンを、ここまでの大国に作り替えた男。

世襲制ではないジポンの中でも、出身地、家族、年齢等の全てが不明の男であった。

過去不明の男、儚。だが、それはレクトとなった今でも不明のまま。

対戦の最中、過去を洗い出そうとした敵国の諜報部も誰一人知ることが出来なかった。

ある諜報部員が冗談で言った事がある。曰く「あの男は別の世界に過去がある」………


「まさか親方様、レクトが変わるとお考えですか?」

「静流よ。今のレクトは齢60を超えた。唯でさえ統治するには大き過ぎる国。目を光らせておくには年を取り過ぎた。裏で動き出すものが居てもおかしくはあるまい」

「つまりは……?」

「今のレクトを暗殺、或いは何かしらの手で権力を簒奪しようとする者が現れる」

「親方様は……この隠れ里はレクト側につくと?」

「いや。レクト儚も次の継承者探しをしていることだろうからな。私は、より良い世を見出したい。例え簒奪者であろうと継承者であろうと、今より濁ることのない世を…………されば静流!」

「はっ!!」

「お前に任を与える!今を持ってジポン国首都ライに赴き城内潜入、レクト儚及びその周辺の密偵、諜報活動に努めよ!詳細はライにて由布(ゆう)に聞け!!」

「御意!!」


二つの人影から小柄な人影が木々の中へとかき消えていくように見えなくなる。

その姿は黒装束……そう、まるで忍者(くのいち)のようであった。


今回のはサブタイトルを活用することにしました。

ぽちぽちやっていきますんで、よろしゅう!

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