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教会支援部屍鬼対策課アメリ・パルツァーの手紙  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)


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1話 アメリカらの手紙

☨ ☨ ☨ ☨


愛しい義弟エルンストへ


 おはよう。まずは、挨拶もせずに任務に向かったこと、ごめんなさい。

 この手紙は先輩にお願いして君に届けてもらっています。なにしろ、いきなり出張が決まったからね。


 初任務のお相手は、なんとマクシミリアン王子。


 悪名高きマクシミリアン王子とはいったいどんな人物なんだろう。今からどきどきしています。


 御年は17歳。ものすごく冷淡で恐ろしい王子だとか。顔も性格と同じく悪いらしいの。いつも髪はぐしゃぐしゃで、顔は泥とか血で汚れている、とも。エルンストと同い年なのに、こんなに違うなんて。


 浄化師たちと好き勝手していて、彼らと任務をする課員は疲れ果てて一か月ほど寝込むとか。ああ、想像するだけで恐ろしい! どんな無理難題を言われるんだろう!


 おっと、こんなことを書いても君が不安になるだけだね。忘れて頂戴。どんな王子だろうと、うまく付き合っていくつもりです。でも、どうせならアンドレアス王子がよかったなぁ。天使と例えられる第二王子。マクシミリアン王子とは正反対ね。


 そうそう。この際だから、書いておきます。


 君は今回の異動の件で、私に対して申し訳なく思っているようだけど、そんなことで苦しむ必要はないんだよ。


 私たちは家族じゃないの。両親が亡くなった今、たったふたりの姉と弟。


 君が心身ともに穏やかに暮らせることがなにより嬉しい。

 そして、私のこの嬉しさが、君の喜びにつながると思っています。


 私は大丈夫。 

 それよりも、君が心配です。


 朝晩まだ冷えます。気管支にこたえるのだから、温かい格好をしておくように。 

 薪はケチらずにしっかりと必要分使って。この前、たくさん割って倉庫に入れておいたのを、君も見たでしょう? 大丈夫。筋肉痛はもう治ったよ。


 薬については、ローゼンハイム卿にお願いしています。定期的に届けてくださるそうなので、しっかりと飲むように。君はすぐに飲み忘れるからね。ああ、そうだ。この手紙を薬袋の近くに置いておくように。そうすれば、私の小言を君は思い出してくれるでしょう?


 エルンスト。

 どうか私を心配しないで。

 私は平気。


 しっかりとお役目をこなし、必ず君のもとに戻って来るから。お土産、期待しておいて。いくつか候補を考えています。


 それでは。

 心はいつも君の側に。


 エルンストの姉アメリより。


☨ ☨ ☨ ☨


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