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プロローグ3:じいちゃんからの餞別


『とある大陸の国に、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、彼を知らずして己を知れば一勝一負す、彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」という古い言葉がある。勝ち続けるため、ひいては過酷なラグラシアの世界で生き延びるためには、敵を知る前にまず己を知る事が肝要なのである。

 『ステータス』と声に出してみるといい。今の貴方の力量が、数値にて目の前に示されるであろう……


「ステータス」


 そう呟くと、目の前に半透明の枠が出てきた。



 ☆


◇基本情報◇

名前:橘 海斗カイト・タチバナ

種族:人間

性別:男

レベル:1

ジョブ:ウェポンマスター(ランク1)


◇装備品◇

右手:

左手:

頭:

体:クロース

足:


◇能力値◇

HP:30/30

MP:10/10

STR:8

VIT:7(+1)

INT:6

MGR:6(+1)

AGI:7

DEX:10

LUK:10


◇武器熟練度◇



◇スキル◇

・武芸全般

 全ての武器の扱いに長ける。武器装備時、DEX値に倍の補正。武器経験値入手量に倍の補正。ウェポンマスターの基本スキル。


・ステータス偽装

 ステータスを偽る事ができる。任意の箇所を幾つでも偽装可能。カイト・タチバナのユニークスキル。


・自動翻訳

 異界の言語を自国語へ翻訳する。異世界転移者に与えられるスキル。


◇アビリティ◇

・疾風

 高速攻撃。攻撃力は半減するが連続使用可能。消費MP1。CT(クールタイム)0。


 ☆



「………」


 気になる部分が結構あるな……よし、上から順番に確認しよう。


 基本情報で特に気になるのは、レベルとジョブという表記。『レベル』という概念が存在し、『ジョブ』という形で成長傾向が示されている……って、まんまRPGだなコレ。ラグラシアって、やっぱりそういう世界だったんだな。

 ……それにしても、ウェポンマスターか。なんか響きがかっこいいな。


 装備品は……まあ、普通の服しか着てないから当然か。むしろ、それをちゃんと装備として認識してくれてるのは何気にすごい。能力値にも反映されてるしな。


 その能力値については、平均的な数値だ。強いて言うならDEX(器用)LUK(幸運)が高く、ややSTR(筋力)に優れているくらいか。他のINT(知力)MGR(魔防)VIT(体力)AGI(敏捷)もそこそこあるし、総じてバランス型ってところかな。


 次は武器熟練度……って、んん? 空白になってるな、どういう事だ?

 ……ああ、もしかして武器を装備しないとダメなのか。試しに剣でも装備してみるか。

 袋から取り出した、何の変哲もない鉄の剣を右手に持ってみる……おっ、早速ステータスが変化したみたいだ。



 ☆


◇装備品◇

右手:聖剣アキラ


◇武器熟練度◇

剣:E(DEX上限補正:30)


◇能力値◇

STR:8(+135)

INT:6(+85)

DEX:10(+10)


 ☆



「………」


 ……確かに、武器熟練度は出てきたな。剣:Eって書いてある。エム○レム式に言うなら、武器を使い込むほどE→D→C→B→A→Sみたいにランクが上がっていくんだろう。ちゃんと見てはいないが、手紙にもそれらしき事が書いてあった。

 DEX上限補正というのは、能力値的にDEXが30を越えても、補正で30に抑え込まれるという意味なんだろう。DEXは武器の扱いの巧さを表す数値(これも手紙情報)らしいし、当然と言えば当然か。


 まあ、そんな事よりもっと気になる事があるんだけどな。












 剣の名前が聖剣アキラって……しかもSTRだけじゃなくて、INTまでとんでもなく上がってるし。見た目ただの鉄剣なのに、性能高すぎだろコレ。


「若気の至り……ってやつか?」


 だいぶ昔から蔵に行ってたらしいからなあ。じいちゃんにそういう()()()時代があったとしても、なんらおかしな事じゃない。

 ……でも、ちょっと待てよ? 本人が黒歴史だと思ってるのなら、いくら高性能でも袋にコレを残したりはしないような……?


「………」


 うん、深く考えるのはよそう。強い武器のお陰でラグラシアを冒険するのが楽になった、それでいいじゃないか。


 さ、さて、ステータスで一番()()()な部分を見るとしようか。

 そう、スキルとアビリティだ。

 スキルは常時発動型(パッシブ)、アビリティは任意発動型という違いはあるものの、どちらも戦闘を有利に進めるためには必須の存在。これを把握し、最大限に活用する事が生存への第一歩となる……と手紙には書いてあった。まあ、最近のRPGゲームでは定番のシステムだな。

 で、俺が持ってるスキルは『武芸全般』と『ステータス偽装』、『自動翻訳』、アビリティは『疾風』だけか……よし、上からいくか。


 武芸全般は、どの武器を装備してもDEXが倍になるというスキル。しかも武器熟練度上昇に必要な経験値が、実質半減するというスキルみたいだ。

 前者もさることながら、後者が地味に強力。なにせ武器熟練度でDEXの上限値が決まるわけだから、それが早く上がるのはDEXが早く上がるのに等しい。武器戦闘(ウェポン)専門家(マスター)らしいスキルだな。

 ……ただ、利点ばかりでもない。DEX以外の能力値は上がらないし、武器選択の幅が広いという事は、一つ間違えれば器用貧乏になる危険性もあるという事だ。しばらくは、コレと決めた種類の武器を極めるのが良さそうだな。


 次はステータス偽装……なんか嫌な名前だな。しかも、俺のユニークスキルって書いてあるし。

 まあ確かに、自分を本来の自分より良く見せようと頑張ってた時期があったからな。あながち間違いとも言えない所が、なんとも切ない。

 ……ただ、敵勢情報というのは戦いにおいては非常に重要だ。それを自分だけ欺けるというなら、最初から優位に立っているも同然。ぜひとも有効に活用させて貰おう。


 次は自動翻訳……ってそのまんまだな。スキル名からして視覚には作用してくれそうだが、聴覚にも作用するんだろうか?

 まあ、こればっかりは町にでも出てみないと分からないな。検証は後にしよう。


 最後に、疾風。多分アレだ、ド○クエでいう『しっぷうづき』をMP消費ありで連発できるやつ。使いどころさえ見極めれば、DPSの高いダメージソースになりそうだ。

 ……まあ、今はMPが10しかないし、せいぜい牽制程度にしか使えないだろうけどな。




 よし、とりあえずはこんな所か。じいちゃんの手紙はまだ続いてるみたいだが、後は実戦を交えて検証やら何やらを進めるとしよう。袋にじいちゃんの手紙を入れて……と。


 武器はこのまま聖剣アキラでいこう。まずは剣で戦いに慣れてから、他の武器に手を出す事にする。

 さて、次は防具一式を装備っと。今気付いたんだが、コレ袋に手を入れて『装備』って念じるだけで、一瞬で装備が切り替わるんだな。



 ☆


◇装備品◇

右手:聖剣アキラ

左手:ファルコンシールド

頭:ファルコンヘルム

体:ファルコンアーマー

足:ファルコンブーツ


◇能力値◇

STR:8(+135)

VIT:7(+213)

INT:6(+85)

MGR:6(+172)

AGI:7(+168)

DEX:10(+10)

LUK:10


 ☆



 ……防具も普通じゃなかった。ただの皮製防具にしか見えなかったのに、なんかファルコン()の名を冠したすごい装備だった。

 当然、能力上昇値も尋常じゃない。能力値を見ると、装備に()()()()()感が半端ない。

 ……が、こんなのがバレたらさすがにまずい。早速ステータスをいじって、と。



 ☆


◇基本情報◇

名前:カイト・タチバナ


◇装備品◇

右手:鉄の剣

左手:皮の盾

頭:皮の兜

体:皮の鎧

足:皮のブーツ


◇能力値◇

STR:8(+7)

VIT:7(+14)

INT:6

MGR:6(+2)

AGI:7(+5)

DEX:10(+10)

LUK:10


◇スキル◇

・ステータス偽装(非表示)

・自動翻訳(非表示)


 ☆



 ……よし、こんなところか。名前はカタカナのやつだけにして、装備名を偽装、能力上昇量もかなり低めに見えるようにした。ついでにステータス偽装はもちろんのこと、自動翻訳のスキルも非表示にしておく。


 これで、準備は整った。さて、どの扉にしようかな……っとそう言えば。じいちゃんの手紙、有効活用しないとな。

 袋に手を突っ込む。なんとも便利な事に、これだけで手紙の内容を読む事ができるらしい(手紙情報)。


『鍵の色は、その扉が繋がる先の環境に合わせて色分けがされている。赤ならば溶岩吹き出す火山、橙ならば岩肌晒す峡谷、黄ならば熱射降り注ぐ砂漠、水色ならば魔物が巣くう浜辺、青ならば絶海の孤島、紫ならば人を拒む毒の沼……といった具合だ。

 そして、最初に通るのは緑がいいだろう。出る先はナグラ平原、見通しの良い草原が広がり、現れる魔物も総じて弱い。まずはここで経験を積み、それから他の扉に挑戦する事が定石となろう』


 緑の鍵を袋から取り出し、空中通路を通って緑の扉の前へ行く。

 扉を触って確認するが、どこにも鍵穴らしきものは無い。どうやって開けるのか―――


―――鍵の所有者を確認しました。人物照合……カイト・タチバナ、正統な所有者であると確認。ナグラ平原へ転移しますか?


 ……透き通るような、女性の美しい声。まるで歌うように、俺の頭へ言葉を響かせてきた。

 クロノスの壺に触れた時とよく似た状況だが、今度は戸惑わない、迷わない。


「―――する! 俺をナグラ平原へ連れてってくれ!」

『肯定の意思を確認、ナグラ平原への道を開きます』


 緑の扉が、音もなく開いていく。その先に見えるのは青い空、白い雲、地平線まで広がる萌木色の絨毯……まさに大平原と呼ぶに相応しい、広大な土地がそこには広がっていた。

 ここから、俺の冒険が始まるのか……なんだかワクワクするな。ほんの数時間前までは、この世の全てが灰色に見えてしまいそうなくらい、心がガチガチに凍り付いていたというのに。

 今はもう、そんな鬱屈とした感情は跡形もなく消え去っていた。


「―――よし、行くぞ!」


 一歩、大きく踏み出す。


 ここから、俺の冒険は始まるのだ!


とりあえず、プロローグまでは出来たので投稿します。

次の第1章は、3話分くらい書き溜めが出来てから投稿し始めます。ちょっと時間かかるかも。


更新は不定期です。ご了承下さい。

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