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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二十六章 魔王国防衛戦争
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もう一つの独立国

 『魔女集会』の魔女達は自分達についての勘違いを必死に訴えた。自分達はフィクサーでも何でもなく、支配者になるつもりもないのだと。


「いやぁ、そうも行かんと思うぜ?結局は周りがどう思うか、だからな」

「掲示板ですら評判になってるんだよ。他の街を潰した魔物の軍団と交渉してみせた英傑、みたいなノリで」

「ふえぇ…」


 普段の以前から憧れていた魔王、イザームとの会話と魔王国への招待。その二つに浮かれていた『魔女集会』の魔女達は、普段は情報収集に使っている掲示板を見るのを忘れていた。まさか自分達が預かり知らぬところで注目の的になっているとは思わなかったのである。


 ただ、彼女らは自分の興味がある話題について語られている掲示板しか読んでいない。偶然にも誰かが『魔女集会』について書き込んでいない限り、仮に掲示板を覗いていたとしても五人は気付かなかった可能性はあるのだが。


「そう自分達を低く見積もることもねぇって。運が良かっただけって言う連中もいるだろうがよ、その運を活かせるかどうかは本人次第だぜ?その点、あんたらは良くやってる」

「そうそう。私達だって魔王国に加わる機会に恵まれたのは、イベントの時に偶然イザームと会ったのが理由だし」

「でもな、その後に俺達が魔王国の住民に一目置かれるようになったのは俺達の努力の賜物ってヤツだ。要は、こっからは実績で黙らせてやりゃぁいいってことだろ」


 マック17とポップコーンによって励まされたものの、魔女達は前向きな気持ちにはなれなかった。本音で言えば、全員がフィクサーとして君臨することには少しだけ憧れがある。魔女のロールプレイを楽しんでいることからもわかるだろう。


 だが、実際にやれるかと問われれば全く自信がないのだ。妬み嫉みは実績でねじ伏せろと言われても、自信がないのだからむしろ逆効果ですらあった。


「大丈夫。ウチの魔王様がサポートしてくれるから。それに、ここに来たこと自体がある意味で一つの実績だもん」

「え?」

「どういうことですか?」

「ビグダレイオを通じて魔王国とコンタクトを取った挙句、支援をもぎ取ったってことになるから」


 ただし、『魔女集会』に限っては魔王国の土を踏んだこと自体が実績と言える。裏の事情を知らない者達の目には、彼女らは魔物の国家と交渉して市民を守った上に魔王国からも認められたクランになるからだ。


 これはポップコーン達も知らないことだが、イザームは印象操作のために『魔女集会』を魔王国公式生放送に出演させることも目論んでいる。これが実現すれば『魔女集会』は魔王国と…古代兵器を持ち出してた大国の侵略を跳ね除けたプレイヤー国家と強い繋がりを勝ち得たというアピールになることだろう。


「あのぅ…一つ聞いていいですか?」

「何々?何でも聞いて!」

「もう一つの国を作ったクランって、どんな人達なんですか?」

「和風大好きなクランでね、名前は…ヤバッ!ど忘れしちゃった!」

「『戦国乱世』だよ。ボケが始まる年でもあるめぇにってぶへぇ!?」


 余計な一言を言い放ったマック17の顔面を思い切り蹴飛ばした後、ポップコーンは『戦国乱世』というクランが何をしたかについて語った。王国の侵略軍に加わっていたこのクランだが、そもそも本拠地がアクアリア諸島に築いた武家屋敷ということもあって独立国を作ることに興味はなかったらしい。


 そんなクランが何故、ルクスレシア大陸に独立国を建国したのか。それはアクアリア諸島の商人からの依頼である。アクアリア諸島は海運によって栄えているが、入港料などで足元を見られることも多かった。


 この入港料が馬鹿にならないこともあり、商人達は常により安く入港可能な港を求めていた。そんな折、王国が内乱状態になったことで、商人達は結託して自分達が出資してでも安い入港料の国を作ろうということになったのだ。


「それで白羽の矢が立ったのが『戦国乱世』ってことらしいな」

「でも、独立国に興味はなかったんですよね?」

「あー、うん。独立国そのものには、ね」

「どういうことですか?」


 苦笑いしながら含みのある言い方をしたポップコーンに、魔女達は首を傾げる。マック17は彼女のぼかした部分を語り始めた。


「このゲームの世界観ってよ、基本的に街ってどこも城塞都市だろ?フィールドには魔物がいるんだから当然だよな」

「えっと、そうですね」

「そんでな、さっき『戦国乱世』は武家屋敷を自前で作ったって言ったろ?連中、生産職を大勢抱えてるらしいんだが、そいつらも和風大好き集団なんだよ」

「はぁ」


 魔女達は『戦国乱世』の内部事情を聞いてもピンと来ていないらしい。魔女のロールプレイをしていても、他の人物のこだわりについて推測するのは難しいようだ。


「わかんねぇか?武家屋敷を作っちまった筋金入りの和風狂いだぜ?そんな連中が城と城下町を一から作れる機会をみすみす逃すと思うかって話だ」

「建設地はミサイルで更地になった場所らしいわ」


 海沿いだしね、とポップコーンは締めくくった。『魔女集会』の五人は自分達も魔女に傾倒していると自覚していたが、世の中にはさらに上がいるのだと実感せずにはいられなかった。


 ただ、彼女らは新たな疑問を抱く。更地になったとしても、海側以外は全て王国領に面することになる。建設は必ず邪魔されるのではないか、と。


 実際に建国しているのだから、この問題をどうにかしてクリアしたことになる。その方法について『戦国乱世』は公開していた。


「墨俣一夜城って逸話を参考にしたんだと」

「歴史に詳しくないと知らないわよね?私達も源十郎さんから聞いてようやく理解したし」


 公開といっても、掲示板には『一夜城の手法で』と墨俣一夜城の逸話を知っているのが前提という説明だった。それなりに有名な逸話なのだが、歴史に興味がない者達にとってあまりにも不親切だったのである。


 要約すれば、『戦国乱世』はインベントリに城壁と櫓のパーツを入れて上陸し、インベントリから取り出したパーツを急いで組み合わせたのだ。こうすることで数時間と掛からずに長大な城壁が完成したのである。


 画期的な方法のがように思えるが、これは『戦国乱世』が多くの生産職を抱える大規模クランだから可能だったこと。真似するのは難しい方法だったのだ。


「周辺の都市は慌てて攻めたみたい。でもねぇ…」

「『戦国乱世』は戦闘員の数も質も良いし、なんなら指揮官も戦上手って評判だからな」


 短時間で築かれた、見たことのない様式の長大な城壁。これを放置する者などいるはずもない。近隣の領主は急いで軍を編成して派遣した。


 だが『戦国乱世』は魔王国との戦争にも参加していた武闘派クランでもある。やって来た軍団を持ち前の武力で粉砕し、その武名を轟かせた。


「その後、近くの領主が別の派閥に入ってるってんで緩衝地帯になったって話だ」

「場所選びが完璧だったってことね」


 すでに城壁は築かれ、海からは物資が供給される。王国の海上戦力は魔王国への派兵でほぼ全滅。さらに『戦国乱世』を挟んだ領主は敵対派閥、となれば余計な手出しをしない方が都合が良い。こうして『戦国乱世』は一国一城の主となったのだ。


 『戦国乱世』は独立国を築いたのは間違いないが、その後ろ盾としてアクアリア諸島がある。ビグダレイオという後ろ盾を持つ『魔女集会』に似ている状況ではあった。


「ま、同期の国はそんな感じだ。繋いで欲しけりゃイザームに言ってみな。それより…到着だぜ」

「ようこそ、『ノックス』へ!」


 『戦国乱世』の話をしている間に、七人を乗せた小船は『ノックス』の水門前までたどり着いていた。ポップコーンが歓迎するのに合わせたかのように水門はせり上がっていく。こうして魔女達は魔王国の本拠地、『ノックス』に入国したのだった。

 次回は22月14日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
戦国乱世ねぇ······ 以前の防衛戦で指揮を取ってた人は少なくともメンバー、 もしかしたら幹部かリーダーっぽいな
もう1つの独力国を成したクランは『戦国乱世』ですか。まぁ描写に有る通り和風狂いのクランかw。とはいえ魔女集会と同じく後ろ楯(アクアリア諸島)が有ってだし、やはり完全独立国は厳しいんだろうな。
一夜城って現代風に言うと、プレハブ工法でガワを先に造ることだから 中身のないハコをそれっぽく仕上げて、敵勢力が慄いて攻められる前に要塞機能を準備させると結構理にかなう行動 恐るべき和風キチ共
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