表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二十六章 魔王国防衛戦争
671/688

対王国の悪巧み

 『エビタイ』のオークションは大盛況に終わった。欲しいアイテムを見付けた者達も、使い道のないアイテムが大金に化けた者達も大いに満足したことだろう。買えなかった者達もオークションの雰囲気を楽しんだに違いない…私と同じように。


 一方でこのオークションは主催、すなわち魔王国そのものには金が入らない仕組みになっていた。あくまでも防衛成功を祝うための催しだったからだ。


 ただ、オークションそのものは好評だったので定期的に開いて欲しいとの要望が多かった。次からは闘技場などを使ってもっと大々的に行い、こちらにも金が入る興行として行うことになるだろう。その時も司会進行は七甲とネナーシに任せるとするか。


「おっ、アタシが一番乗りみたいだね」


 オークションの後、私は宮殿の一室でログインしている魔王国のクランリーダー達を待っていた。その理由はもちろん、彼らと相談したいことがあったからだ。


 招集した手前、遅れる訳にも行かない。そこで私はオークションの終了と同時に部屋へ向かった。するとさほど待つでもなく『蒼鱗海賊団』のアンが入室した。


「見ていたぞ。派手に散財したじゃないか」

「こういう時はパーッと使わなきゃね。実際、欲しいアイテムも多かったし」


 オークションにおいて、アンは恐らく最も多くの品を落札していた。相当な金額を支払っており、金額的には『ノックス』で大きなクランハウスを構えられるほどだ。


 ちなみに、『蒼鱗海賊団』は『ノックス』にも小さいがクランハウスを構えている。無論、本拠地は従魔にした回遊海獣(アスピドケロン)の上だが、地上でログアウトする時に使っているようだ。


 利便性もあるが、それ以上に魔王国に拠点を置くことで税金を納めるのを目的としている節がある。その方が魔王国にいる他のクランとの軋轢を回避出来るからだ。アンなりの処世術と言った所か。


「王様は何も買ってなかったねぇ?」

「金欠だからな。防衛戦のせいでほぼ無一文だ」

「貸してやろうか?金利はトイチで」

「勘弁してくれ。破産してしまうだろう」


 アンめ、私が金欠だと知っていて聞いたな?ニヤニヤと笑っているのがその証拠である。迷宮(ダンジョン)を管理することの仕様は仲間内で共有しているので、知っていて当然なのだが。


 ただし!そんな金欠状態もすぐに解決するぞ!そのための悪巧みをコンラートと共に進めているのだから。


「あんまり慌ててないね?金のアテはあるのかい?」

「その通りさ!」

「何々?何の話?」


 扉を勢い良く開けて入って来たのはコンラートとタマだった。意外な組み合わせのようにも見えるが、二人共タイプの異なるマイペースな正確だ。波長が合うのかもしれない。


「それはね、タマ君。他人の不幸で儲けてやろうって話さ」

「へぇ〜!鬼畜だなぁ!」


 おどけた調子で話すコンラートだが、それはちょっと端折りすぎではなかろうか。だが、タマはそれで納得したらしい…いや、納得したと言って良いのか?


 それはともかく、私達がやろうとしているのが多くの人々を不幸にするのは事実である。何故なら、既に群雄割拠の時代へと突入しつつあるリヒテスブルク王国の内乱をさらに酷い状態にしようとしているのだから。


 私達が防衛戦に勝利したが、金、物資、浮遊戦艦、『エビタイ』という港街そのものなど、失ったモノは非常に多い。その中でも個人的に最大の喪失は参戦した住民の戦死者だ。彼らは丁重に供養するように手配しており、獄獣(ゴクジュウ)との戦いの戦死者と同じく慰霊碑を建てる予定になっていた。


 逆に得られたモノもある。その最たるモノが飛べなくなった浮遊要塞こと『傲慢』だろう。これを得たことで再建後の『エビタイ』は以前とは比較にならない防衛力を得たのだ。


 そして墜落した『傲慢』の内部には王国軍の物資が残っていた。一部はルビー達によって消し炭にされたらしいし、墜落時に焼けたモノも多いようだが、我々にとっては十分であった。


 食料などは仲間や住民にさっさと配ったのでもう残っていない。だが、大量に余ったモノがある。それは王国軍が用意していた剣や槍などの予備の武具と、王国が修理しきれなかったのであろう銃器などの古代兵器だ。


「まず第一段階として、王国に反旗を翻した者達、特に野心を見せた貴族連中に通常の武具を売りさばく。元がタダだから叩き売りでも確実に利益は出る」

「叩き売りって言っても王国軍の正規品だ。そこそこの値段は付くよ。お嬢さんの面目も立つしね」


 王国軍の予備の武具は間違いなく売れる。軍隊の武具ということもあり、武器には炎やら雷やらを放つような機能はない。派手な機能を持つ武器など、集団戦で使えば味方を巻き込みかねないからだ。


 だが、その分武器の耐久性や斬れ味が高かった。それは防具も同じこと。何かに特化するのではなく、物理と魔術のダメージを両方とも同じくらい軽減するようになっていたのだ。


 軍隊を運用するのなら、堅実な性能の方が良い。私自身、不死傀儡(アンデスパペット)を運用する上で実感していた。


「そんならウチで使えば良いんじゃないの?」

「そいつは違うよ、タマ。アタシらの使ってる武具に比べりゃ、性能は数段劣るからね」


 タマの意見を否定したのはアンだった。王国軍の武具は我々にとって魅力的とは言い辛い。その理由は彼女の言う通り、王国軍の武具は我々が普段使いしている武具よりも性能が劣るからだ。


 軍隊は兵士の頭数と、その数以上の武具を予算の範囲内で用意し、維持しなければならない。それ故に高級過ぎる装備ではなく、量産可能な装備が採用されるのだ。


 一方で我々プレイヤーは自分のために多くのリソースを割ける。強力な装備のために素材を集め、足りない素材を大枚叩いて購入し、優れた職人に高額の報酬を払って理想の武具を作ってもらう。軍隊と個人では一つの武具に掛けられる金額が異なるのだ。


「そっかぁ。あ、第一段階って言ったよね。じゃあ第二段階は?」

「古代兵器、具体的には歩兵用の銃器を反乱勢力に売り付ける」

「う~んと…第一段階と何が違うの?」

「売り先は民間人の反乱勢力だよ」


 作戦の第二段階は以前、私達の謀略によって燃え上がった立ち上がった民間人の反乱勢力に銃を売り付けるのだ。前回は反乱に加わった民間人の人数は多かったものの、一人一人の戦闘力は低かった。それを補うのが銃器なのだ。


 無論、銃器を握っただけで無条件に兵士より強くなれる訳ではない。機関銃であっても防具は砕けず、急所に当たらなければ即死しない。盾の武技を使えば銃弾の嵐を突破出来る者までいるだろう。リアルとは異なるのだ。


 だが、それで構わない。私達の目的は反乱勢力にリヒテスブルク王国を統一してもらうことではない。リヒテスブルク王国が分裂し、小勢力が相争う状況を作り出し、再び魔王国を攻め込もうという欲を出せるほどの国力を持てなくすることなのだ。


「コンラート、面白い勢力は見付かったか?」

「さっき報告があったよ。何でも医者が率いるグループで、そのカリスマで結構な人数を率いてるらしい」

「ほほう」

「で、面白いのがそいつの掲げてる理想がまんま共産主義なんだよねぇ」

「んー?」

「「えぇ…」」


 コンラートはクスクスと笑い、タマはわかっていないのか首をひねり、私とアンは思わず顔を見合わせた。王侯貴族による支配の反動とは言え、そっちに走るカリスマが現れるとは…そっちが勝ちそうになったら叩き潰した方が良いかもしれない。


 そうやってリヒテスブルク王国内で争っている間に、我々はビグダレイオと共に王国の領土を荒らして回る。そうすれば王国は疲弊し、魔王国へ攻め込むような愚行は行えなくなるだろう。


「後はもう一押しするだけだな」

「ふーん。あ、ところでさ。そもそも何で集められたの?」


 私達にはさらなる一手があるのだが、タマは興味を失ってしまったらしい。そして今日集まった理由を今更聞いて来る。おいおい、メールに書いたはずだぞ?


「それはな…」

「それは?」

「防衛成功の打ち上げパーティの打ち合わせだ!」

 次回は10月27日に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ジャコバン派が出るかと思ったけどそっち行ったかー
王政から共産へか。上手く行く気はしないし、良いタイミングで潰すべきかね。なにより荒らし回る時にイザームの懐が潤うと良いなぁ。 もう一押しも気になるが、打ち上げパーティか。出来る限り全員参加出来るタイ…
イザームのお財布が少しは潤いますようにw なんにせよ王国は終わりかな、勇者くんはどうなったのかなー、掲示板でフルボッコなされてそうだがw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ