加熱する反乱
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職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【知力超強化】レベルが上昇しました。
【精神超強化】レベルが上昇しました。
【体力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力精密制御】レベルが上昇しました。
【暗黒魔術】レベルが上昇しました。
新たに暗黒化の呪文を習得しました。
【死霊魔術】レベルが上昇しました。
【呪術】レベルが上昇しました。
新たに奪力の呪文を習得しました。
【降霊術】レベルが上昇しました。
新たに死神鎌召喚の呪文を習得しました。
【邪術】レベルが上昇しました。
新たに絶死の呪文を習得しました。
従魔ヒュリンギアの種族レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが上昇しました。
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ログインしました。王国における反乱はまだまだ鎮圧されていない。それどころか鎮圧のために派遣された軍が敗北するという事態が起こっているようだ。
王国側が敗北した理由はいくつかある。一つは王国側が反乱を甘く見ていたことだ。所詮は一般市民に過ぎないとばかりに反乱が起きた都市へと同時に軍を派遣したのである。
一つ一つ鎮圧していけば良かったのだろうが、王国としては短期間で鎮圧したかったらしい。複数の都市を同時に鎮圧するべく軍をいくつかに分けていたようだ。
その結果、想像以上に激しい抵抗をする一般市民によって思わぬ苦戦を強いられた。一般市民を虐殺する訳にもいかず、鎮圧軍は撤退せざるを得なかったのだ。
また、雇われたプレイヤーが大暴れしたのも理由に挙げられるだろう。ある意味、大手を振って正規の軍と戦える好機である。PKまでするつもりはないが対人戦は好きという層が大義名分を得たことで挙って反乱に参加したのだ。
そして一般市民の持つ武器とプレイヤーを雇う資金を提供するスポンサーとなったのが一部の商人である。その一部には住民もプレイヤーも含まれていて、彼らは内乱が長引けば長引くほど儲けられると踏んでいるようだ。相当に上手く立ち回らないと両方の恨みを買いそうだが…私には関係ないことか。
さらに最大の盲点だったのは鎮圧軍の士気が非常に低かったことだろう。自国を守るための兵士が、国民に暴力を振るう。士気が上がる方が妙と言うものだ。
それどころか、兵士の一部は反乱勢力に寝返ったらしい。そういうこともあって鎮圧軍は敗北や撤退を強いられ、反乱は一向に収まる気配を見せなかった。
「このまま国が滅ぶんじゃねェか、兄弟?」
「流石にそれはない。王国は大国だぞ?むしろ大負けしたせいで片手間にやる気はなくなっただろうよ。つまり…」
「次ァ全力で叩き潰すってことかァ。ヘッヘヘ!反乱した連中のお手並み拝見って洒落込もうぜェ」
私が王国の立場であれば、これ以上の敗北は許されない。反乱した者達が調子付くし、何よりも王国が揺らぐ。敗北によって既に威信が大きく傷付いているのだ。二度目に敗北すれば王国は本当に亡国へまっしぐらだろう。
それが分かっていないとは思えない。次は精鋭のみで構成された軍によって街を一つずつ攻略していくのではないだろうか?少なくとも私であればそうする。
「兄弟なら最初っから全力で叩き潰すんじゃねェの?お前ェは心配性だからなァ」
「それはそうだろうな」
私は自分でも臆病だと思うこともあるほどの心配性だ。だが、それを変えるつもりはない。魔王国はまだまだ大国とは程遠い。国と皆を守るために私は舵取りを誤る訳にはいかないのだ。慎重に慎重を期すくらいでちょうど良いのである。
現在、私の関心は王国が派遣するだろう精鋭兵の戦力である。ミツヒ子にはその戦いぶりを記録しておくように頼んであった。彼女らとしても戦場については記事にするつもりだったようで、頼む必要すらなかったようだが。
ちなみに王国軍が反乱した者達に敗北したことは号外記事として各地にバラ撒いたらしい。ご丁寧にも敗走する王国軍と勝鬨を上げる反乱勢力のスクショ付きで。両方ともどうやってその近さで撮影したのか、と言いたくなるほど近かった。
「コンラートによれば商人連中が反乱勢力同士の繋がりを強くしようとしてるらしい。今は街に住む者達や依頼されたプレイヤーが各自で反乱しているだけだが…」
「上手く行きゃァ反乱軍に昇格だなァ。どうせ烏合の衆になるだろうけどよォ」
「誰か強烈なカリスマがいれば別だろうが、な」
反乱勢力が勝利したことで、王国軍が本気になった。反乱勢力が同時に蜂起したことから、各地の反乱勢力に繋がりがあるのは間違いない。だが、今はあくまでも各地の反乱勢力がその時期を合わせただけでしかなく、大きな一つの組織がある訳ではなかった。
反乱が長期化させて儲けようとしている商人からすれば、一瞬で鎮圧されてはつまらない。そういうこともあって反乱勢力同士の繋がりを強化させるべく暗躍しているそうだ。
ただ、私はこの動きが上手くいくかどうかは五分五分だと思っている。自分達の生まれ育った街の者達を率いるならともかく、同じく一つの勢力を率いる者達のさらに上に立つにはカリスマ性が必要だ。そんな人物が果たして存在しているのだろうか?
合議制というのも悪くはないが、軍隊を動かすとなれば良いこととは言えない。話し合ってじっくりより良い方法を模索する政治とは異なり、小田原評定という言葉もあるように軍隊は移り変わる戦況に即応することが求められるからだ。
「いたらどうなるんだァ?」
「無論、反乱軍が敗北する。多少は粘るかもしれんが、勝つとは思えんな」
「結果は変わらねェのかァ」
反乱軍を率いるカリスマが現れたとしても、王国軍に勝つのは無理だろう。派遣されるであろう軍隊は戦闘に特化した職業と能力を持つ者達の集団だ。勝てると思う方がおかしい。敗北を遅らせるのが精々だろう。
ただし、反乱軍は住民の集団であり、それ故に住民の大半は反乱軍の味方という点は無視出来ない。早急に鎮圧するには山程住民を討つ他になく、それをやれば住民に間違いなく恨まれる。一方でなるべく被害を抑えようとするならば鎮圧には時間がかかるだろう。さて、王国軍はどちらを選ぶのかな?
「…無駄話をする余裕があるたぁな。お前ら二人だと強くなり過ぎだろう」
この会話はアルマーデルクス様の鍛錬中に交わされていた。別に私達は油断している訳ではない。ただ単に余裕があるだけなのだ。
今は二人で鍛錬を行っているのだが、一人の時に比べれば圧倒的に戦いやすかった。前衛を兄弟に任せれば余りにも数が多くない限りは抜かれる心配はない。そして後衛として私は兄弟をサポートし続ける。付き合いが最も長いだけあって、私達は阿吽の呼吸であった。
「もっと難易度を上げるぜ。そうしねぇと意味がねぇだろ」
「終わりィ!……望む所だァ。またアンタが相手でも良いんだぜェ?」
「それはお預けだって言ったろ?とりあえず、今は次の奴らに変われ」
ジゴロウがアルマーデルクス様に喧嘩を売るが、軽くあしらわれている。いや、私も付き合うことになるんだぞ?勘弁してくれ、本当に。
ただ、アルマーデルクス様に鍛えて貰っているのは私達だけではない。それ故に順番待ちが存在するのだ。兄弟はともかく、私には休憩も必要なのでこのインターバルはありがたかった。
「チェッ、そう安売りしちゃくれねェか」
「当然だろ…む、ミツヒ子から連絡が来たって、オイオイ、本当か?」
「どうしたァ?」
「…このタイミングで反乱勢力に加わっていたプレイヤークランの一つがやってくれた。街の反乱軍を裏切った挙げ句、新たな領主として名乗りを上げたらしい」
「…ハァ?」
休憩時間になってミツヒ子から届いていたメッセージを読むことが出来た。それによると反乱勢力に与していたプレイヤークランが街の反乱勢力を駆逐して乗っ取ったようなのだ。
きっとコイツらは街を支配するためにこの機会を狙っていたのだろう。反乱勢力に協力したのもこれが目的だったのは確実だ。上手くやった…と言えるかどうかは微妙だろう。何せここからは王国からも反乱勢力からも敵視されるのだから。
私であればどうするだろうか。反乱勢力を討伐しているので、そちらとは手を組めないだろう。ならば王国と手を結ぶしかあるまい。だが、王国の立場からすればそれを受ける可能性は低い。反乱勢力に迎合すれば弱腰だと思われるからだ。叩き潰してこそ威信を取り戻せるのである。
むしろ今更和睦は認めないことをアピールするためにも真っ先に狙われる可能性まである。どの街を占拠されたのか記されていないので地理的に真っ先に狙うのが無理かもしれないが、少なくとも領主として認めさせることは難しいと私は推測していた。
「ミツヒ子からの続報だ。何々…ほう?面白いこととになっているぞ」
「何だァ?」
「プレイヤーの領主様には後ろ盾がいたらしい。テラストール大陸の森人の国が、な」
この領主になると言い出したプレイヤーだが、実は後ろ盾となる国家があったらしい。その街には小さな港があるのだが、プレイヤーが占拠するや否や海上から複数の軍船が停泊し始めた。その船に掲げられていたのが森人の国の国旗だったそうだ。
王国の混乱に乗じて手を出す国家が本当に現れるとはな。ミツヒ子達が煽った効果があったのかもしれない。これをどう収めるのか…王国の一挙手一投足に目が離せなくなるな。
次回は5月4日に投稿予定です。




