龍神ブートキャンプ
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職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【浮遊する双頭骨】レベルが上昇しました。
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ログインしました。私はアルマーデルクス様の下を訪れては大量の兵器を回収して帰るということを繰り返していた。そして持ち帰った兵器はプレイヤー達に支給されたり、生産職達の手によって『ノックス』の防衛に適した形に改造されたりしている。『ノックス』の防衛計画は着々と進みつつあった。
それと前後してアン達も激しい戦いに身を投じている。彼女が率いる『蒼鱗海賊団』は既にリヒテスブルク王国からやって来る艦隊をいくつも海の藻屑と変えていた。
アン達の活躍のお陰で、未だにティンブリカ大陸が目視可能な距離にまで近付かれることなく接近する敵船団を排除出来ている。彼女曰く、貴族の艦隊よりも王家直属の艦隊の方が圧倒的に強いそうだ。
ただし、海上での防衛が成功しているのは海巨人の協力があってこそである。私達からの要請に対し、彼らは快く応じてくれた。どうやら地上の産物を得られる私達という取り引き相手を相当に失いたくないようだ。
彼らはメイド服を着た人魚によって索敵を行い、海底から投擲した槍や銛によって船底に大きな穴を空けて戦艦を沈めるのだ。鯨などの大型海洋生物と戦っている海巨人にとって帆船など狩りの対象でしかないらしいな。
戦艦といえども、海中から船底を狙われてはどうしようもない。船の残骸は沈むか、あるいは回収して私達に売り付けている。売った金で地上の産物を山程買って買えるのだ。彼らはウハウハだろうな。
船の残骸はコンラートが購入していて、使える部分を使って別の船を作っているらしい。壊れていたとは言え、元々は偽装した軍艦だったこともあってニコイチでも頑丈な商船に仕上がったらしい。実はコンラートもこの戦争で儲けているようだ。
こうして戦艦は全て破壊している訳だが、船乗りもまた全員排除している。アン達が襲撃した洋上は、付近に陸地がほとんどない場所だ。泳いで帰還するのは不可能であり、逃げられるとすれば複数の小島くらいしかなかった。
そして、その小島にも罠が仕掛けてある。その罠というのは研究区画の者達が作り出した悪魔の兵器であった。それは魔導生物。各種薬品と生体武器、そして武器製造の技術を結集した自律兵器であった。
魔導生物はざっくりと言えば兵装として生体武器を搭載している魔導人形である。魔導人形の部分には各種ポーションが仕込まれており、魔導人形と生体武器の両方を修理可能な形になっていた。
金属の骨格に生体の身体が組み合わされていること、そしてそれらが様々な生物を模した形状になっていることから魔導生物という名を付けたのだ。小島にはこの魔導生物が可能な限り配置されていて、命からがら小島へ逃げ込んだ兵士を排除していた。
魔導生物はかなりの戦果を挙げている。所有者の命令に忠実ということもあり、戦闘の補助や移動時の騎乗用に購入する者がいるほどだ。『ノックス』の防衛にも導入されることが決定していた。
我ながら鬼畜なことをやっている自覚はある。だが、自分達の居場所を守るためならば何でもやるのだ。そこを躊躇するつもりは更々ない。侵略者は徹底的に排除するのだ。
「うおおっ!?動きが速すぎる!」
そして私もただアルマーデルクス様の下へと行っている訳ではない。何とアルマーデルクス様が直々に稽古をつけてくれていた。
ただし、アルマーデルクス様と直接戦っても稽古にならない。軽く踏み潰されて終わりであろう。それ故に私の相手はアルマーデルクス様が用意した別の存在だ。
「ぐうぅ!」
「防ぐのに集中し過ぎんな。防戦しながら魔術も使え」
「は、いぃ!」
その存在の名は幻龍人。アルマーデルクス様の魔力から生まれる兵士である。高位の龍であれば作り出せるらしいのだが、その実力は作成した者によって変化するらしいのだが…私が戦っているのは龍の頂点に立つお方の手によるモノなのだ。
つまり、理論上最強の幻龍人と戦っているのだ。幻龍人を要約すれば制限時間付きの意思のない半龍人である。作成された時にステータス、武器、レベルなどが決まるようだ。
「ぬおおっ!」
「良いぞ、その調子だ。武器と魔術だけじゃねぇ。お前には尻尾もあるんだ。全部使っていけ」
大前提としてアルマーデルクス様が作る幻龍人のレベルは100の最大レベルで固定。武具はアルマーデルクス様の爪牙に比肩する強度。動きは熟練の戦士並。まるでプレイヤーと戦っているかのようだった。
しかも武具や使える能力に関してもアルマーデルクス様が毎回ランダムに変えている。昨日は大盾と戦斧で戦う戦士、そして今日の相手は両手剣を携えつつ魔術も織り交ぜる魔術剣士であった。
鋭い剣閃を受け止めればたちまち力負けして吹き飛ばされる。それをこれまでの経験から熟知しているので、ジゴロウや源十郎から学んだように大鎌を使ってこれを受け流す。大鎌の刃の反りを利用すれば楽だと助言されてはいるものの、力では圧倒的に負けている上に能力の補正を受けられないのでタイミングはとてもシビアであった。
私は近接戦闘の才能がないので、受け流しの成功率は五割にも満たない。ただ、直撃を食らうことだけは防げている。一発の直撃が致死に繋がるのだから必死である。
「ぬああっ!」
「よし!そうだ!それで良い!」
そうして受け流しが成功した時を絶対に逃してはならない。逃せばジリジリと追い詰められ、いつか直撃して死んでしまうからだ。実際、【生への執着】がなければ死んでいた場面はいくつもあった。
受け流しに成功した私は一気に反撃に出る。このタイミングでしか反撃出来ないのだから、その反撃は苛烈なものにせざるを得ない。そうしなければ勝てないからだ。
連続で尻尾を叩き付け、手数を重視した魔術を連続して叩き込む。相手は両手剣を用いる魔術剣士。物理と魔術の両方によって攻められる攻撃的な構成だが、だからこそ防御は疎かになりがちだ。そこを突くのである。
口から杭のような突起を持つ頭蓋骨という尻尾の先端で乱打しながら、私は防御しながら待機させていた魔術を発動する。発動するのはアルマーデルクス様の幻龍人と戦うためだけに作った【虚無魔術】を弄ったオリジナル魔術だ。
実はアルマーデルクス様の幻龍人は全ての属性に耐性がある。ふざけるなと叫びたかったが、それ故に防御を貫通可能な【虚無魔術】だけが効果的なのだ。
発動した五つの魔法陣から鋭い槍状になった【虚無魔術】が発射され、幻龍人の身体に突き刺さる。そしてその槍は爆発した。ここまでが一連の効果なのだ。
私はさらに追い打ちを掛けた。爆発して仰け反っているところに尻尾を片脚に巻き付けて引っ張り、その態勢を崩そうとする。だがお互いの筋力に差から倒れずに耐えようとしていた。
耐えられるのは想定済み。幻龍人の真上に移動させていた【浮遊する双頭骨】によって操作するスペアの頭部から魔術を放つ。威力は低めではあるものの、最後の一押しには十分であった。幻龍人はその場で転がった。
「ここだっ!断命!」
「よくやった!」
そこですかさず大鎌を振るう。【鎌術】の首を刈ると即死させる武技を発動。幻龍人の首は斬り飛ばされ…そのまま砂のようになって消え去った。
油断せずに武器を構える私の背骨を、アルマーデルクス様は嬉しそうに笑いながらバシバシと叩く。あんまりやると死んでしまうので止めてください。実際、一回本当に私を殺して大慌てしてたでしょうが。
「今回のお題もクリアした出来たじゃねぇか。自分で思ってるよりも全然動けてるぜ、イザームよぉ。ほれ」
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戦闘に勝利しました。
クエスト『龍神の試練』をクリアしました。
報酬と5SPが贈られます
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そう。私はただ幻龍人と戦っていた訳ではない。アルマーデルクス様に指定された倒し方でとどめを刺さなければならないクエスト扱いだったのだ。
ただ、このキツい条件を満たせば大きな報酬が受け取れる。それが今まさにアルマーデルクス様から私に手渡されていた。
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龍神の古鱗 品質:劣 レア度:G
龍神アルマーデルクスの抜け落ちてから時間が経過した鱗。
抜け落ちてから数百年が経過しており、経年劣化が激しい。
龍神の魔力が残留しており、極めて優れた防具の材料となる。
龍神の古牙 品質:劣 レア度:G
龍神アルマーデルクスの抜け落ちてから時間が経過した牙。
抜け落ちてから数百年が経過しており、経年劣化が激しい。
龍神の魔力が残留しており、極めて優れた武器の材料となる。
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与えられたのはアルマーデルクス様の素材である。品質がとんでもなく低いが、それは仕方がない。アルマーデルクス様曰く、高品質の素材が欲しければ殺して剥ぎ取れとのこと。いや、絶対に無理でしょ。
品質は『劣』とあるが、それでも素材としては超一級らしい。持ち帰った鱗と牙を武具に加工すれば一気に戦力増強は疑う余地もないだろう。
この恩恵にあずかるのが私だけというのはもったいない。アルマーデルクス様にも仲間達を連れて来る許可はとっている。アルマーデルクス様式ブートキャンプの始まりだ!
次回は3月25日に投稿予定です。




