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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二十四章 王国の蠢動
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魔王国防衛計画

 掲示板回と同時に投稿しています。

 ルクスレシア王国がティンブリカ大陸の存在を認知した。その事実は一気に拡散され、私達の間で共有されるようになった。その影響はやはり大きく、別日に『魔王国』に所属するプレイヤークランの代表者が一堂に会することとなった。


「集まったようだな。では、早速だが認識の齟齬がないように詳細な情報を共有しよう。ミツヒ子、頼む」

「わかりました。では、ご説明させていただきます」


 王宮にある会議室に集まった私達だったが、又聞きの情報などよりも実際に情報を収集した者の口から聞いた方が良い。ということでミツヒ子には詳細な情報を伝えるように頼んだのだ。


 日を改めたということもあり、彼女達が集めた情報は増えていた。私達が聞いていたのは王国にとってはフロンティアであるティンブリカ大陸を発見し、調査し、開拓しようという動きがあること。そしてその主導権を得るべく野心家達が牽制し合っているということだった。


 その主導権争いであるが、範囲が拡がってしまっているらしい。どういう意味かと言うと、ティンブリカ大陸開拓についての情報が王国の貴族にも漏れてしまったようなのだ。


「正確な海図などは流石に出回っていないようですが、大まかな位置は漏れたようです。より詳しく知りたいようで、公表しろと騒いでいますね」

「何だってそんなにここへ来たがるのかねぇ?」

「そりゃあ誰もいない土地を自分のモノにしようってところでござんしょう?ヒヒヒ!」


 王国の者達はティンブリカ大陸には誰の手も入っていない土地だと思っているらしい。そんな土地へ調査団として誰よりも早く乗り込み、自分のモノだと主張してなし崩し的に所有する。皆、それを狙っているのだ。


 つまり、既に開拓している私達は邪魔でしかなく…同時に調査拠点としてそのまま使える街は狙い目でもある。ティンブリカ大陸までたどり着いた場合、『ノックス』と『エビタイ』は必ず狙われることだろう。


 そのことを嫌でも意識させられたからか、会議室はざわめき始める。不安になる気持ちはわからないでもない。私はチラリとコンラートに目配せする。彼はニヤリと悪そうな笑みを浮かべながら頷いていた。


「静粛に。皆に集まってもらったのは、その対策の基本戦略について説明するためだ。コンラート、頼む」

「頼まれましたっと。じゃあ商人の視点から得た情報を共有しようじゃないか」


 コンラートの話によると、現在リヒテスブルク王国では食糧やポーションなどの医薬品、それに武具とその素材が高騰しているらしい。同時に国内だけでなく、国外の造船所にまで大型船が発注されているそうだ。


 これだけ聞くと大規模な調査船団が結成されてしまうと予想してもおかしくない。だが、実際のところはそうではなかった。


「戦略物資は王国全土で加速度的に高騰しているし、大型船は貴族達が個人で発注してるっぽい。これが意味するところは…ね?」

「皆が抜け駆けする気マンマンってことね」


 そう、本気で抜け駆けしようとしている者達がゴロゴロといるのだ。気持ちはわからないでもない。誰の手も入っていない別の大陸で、一気に広大な領土を得られるかもしれない絶好の機会が巡ってきたのだ。巨額の投資をしてでも…それこそ、失敗すれば破産するほどの投資をしてでも領土を得たいと欲してしまうのは人の性である。


 そして大陸発見と大まかな位置についての情報が漏れたということは、その正確な位置についての情報もじきに漏れることは想像に難くない。リヒテスブルク王国が決して一枚岩ではない、ということが浮き彫りになった。これも大きな情報であろう。


「抜け駆けねぇ〜。じゃあそれをプチプチ潰していけばいいじゃん」

「そうだ、タマ。それが基本的な戦略になる」


 だが、気持ちを理解出来ると同時にこの感情を利用して国土を守るのが私達の基本戦略である。抜け駆けという行為は周囲に秘密にするモノ。つまり、どう足掻いても小集団にしかなり得ないのだ。


 一部が手を組むことはあるだろうが、国力を挙げての大船団を組織することは叶わない。ならば個別にやって来る者達を海上で迎撃、各個撃破して沈没させてしまおうという戦略だ。


「沈めた船から略奪してもいいんだよね?」

「もちろんだとも。ただ、どう足掻いてもすぐにアン達の犯行だとバレるだろう」

「ああ、プレイヤーの護衛が乗るようになるからだね」


 トロロンの確認に私は頷いた。秘密裏に事を運びたいのだろうが、いつかはプレイヤーを護衛として雇うことになるだろう。そしてプレイヤーはプレイヤーである以上、死亡しても復活する。そこでアン達による犯行であることは必ずバレてしまうのだ。


 そうなると護衛の数が増えるだろうし、いくらアン達が精鋭で海上での戦闘に特化していたとしても厳しい戦いを強いられるようになるのは明白。そもそもアン達も四六時中ログインしている訳ではない。それではいつかここまでたどり着く者達が現れてしまうだろう。


「それじゃあ本土で迎え撃つってことかよ?」

「いや、王国には可能な限り疲弊してもらう。そのために他国に支援を要請する」

「他国…って、まさか海巨人(オケアス)か!」


 アン達は海上という特殊な環境に限ればプレイヤークランでも最強だろう。だが、それ以上に海では間違いなく無敵と言えるのが海巨人(オケアス)だ。何とか彼らの協力を取り付ければ、海から侵入されることはなくなると言っても過言ではなかった。


 問題は海巨人(オケアス)達が協力を拒否した時である。無論、交渉に手を抜くつもりはない。だが、その時のことも考慮して軍備を整える必要があった。


「確かに海巨人(オケアス)の協力が得られれば心強い話でござんすねぇ」

「協力を求めるのは何も海巨人(オケアス)だけではない。私達がこれまで関わってきた勢力で、力になってくれそうな全てに声を掛けるつもりだ。海の上だけで終わる、なんて楽観視はしていないからな」


 最盛期ほどの性能はないと知ってはいるが、相手は『傲慢』という古代兵器を有している。海路から攻め入って抜け駆けした者達を排除していけば、いつか海路では難しいことに気付くはず。そうなれば『傲慢』を所有する王家に従って動かざるを得なくなるのだ。


 その時はまとまった戦力が襲来する訳だが、それまでに抜け駆けを目論んだ者達が保有していた戦力と財力は大幅に削られている。王国が一枚岩でなくて本当に助かった。


 ただ、削っていたとしても王国の戦力に私達だけで勝てると言うほど自惚れてはいない。ならどうするか?なりふり構わず知り合いに助けを求めるのである。


「それでもまだ確実に勝てるとは言えないのでは?」

「ああ、そうだな。そのためにこちらも人を集めたい。頼めるか、ウスバ?」


 ここで私が話を振ったのはウスバだった。そう、私が利用しようとしているのはウスバの伝手…つまり『仮面戦団(ペルソナ)』と同じPK達という戦力である。


 PK達は対人戦に特化していて、プレイヤーや住民の騎士などとも優位に戦う術を知っているはず。餅は餅屋、というヤツだ。


「フフフフ。声を掛けるのは構いませんよ。ですが、一つだけ忠告を。私が声を掛けるのは戦うことしか考えていない連中です。思い通りに動かすなんて考えてはいけませんよ」

「激戦区に放り込まれて喜びそうな連中だろう?その方が良い。裏切られるよりも百倍マシだ」

「でしたら問題ありませんね。戦う前にしっかりと補給さえしてやれば文句を言わない連中に声を掛けましょうか」

「ああ。それで頼む」


 私がPKに求めるのは協力でもましてや忠誠でもない。純粋な戦闘力だ。よく知らない相手を指揮出来るほど私は指揮官として優れているとも思えない。大雑把な指示さえすれば後は力尽きるまで戦う戦闘狂くらいがちょうど良いのである。


 ただし、ウスバが太鼓判を押すほどの実力者を集めたところで勝利を確実に出来るかと問われれば無理だと答えるしかない。それは他の出席者も同じだろう。だからこそ、ここで発表するのだ。私には十分な勝算があるのだ、と。


「ここまでの話を聞いても不安が残る者もいると思う。だが、私達には秘策がある」

「秘策?」

「ああ、これだ」


 そう言って私は懐から一つのアイテムを取り出す。そして私達の秘策について説明するのだった。

 次回は3月13日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 情報戦が一番効率良さそうだけどな。内部で貴族同士で力をこの機会に削ごうとしているとかは基本として、魔王国に力注ぎ始め兆候が出たらメイン戦力国外ですよって、王国に恨みがある周囲の国に呼びかけて…
[良い点] 散発的に来てくれるなら防衛も楽でいいな。 今までに縁を結んだ勢力に、協力を要請しての連合体制か。中々大規模な戦争になりそうだなぁ(楽勝だと高を括ってる王国に鉄槌を!) [一言] 何故既に…
[気になる点] >気持ちはわからないでもない。誰の手も入っていない別の大陸で、一気に広大な領土を得られるかもしれない絶好の機会が巡ってきたのだ。巨額の投資をしてでも…それこそ、失敗すれば破産するほどの…
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