動き出す傲慢
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職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【尾撃】レベルが上昇しました。
80SPを消費して【尾撃】が【死呪尾撃】に進化しました。
【知力超強化】レベルが上昇しました。
【精神超強化】レベルが上昇しました。
【体力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力精密制御】レベルが上昇しました。
【魔法陣】レベルが上昇しました。
【邪術】レベルが上昇しました。
【鑑定】レベルが上昇しました。
【指揮】レベルが上昇しました。
【死と混沌の魔眼】レベルが上昇しました。
条件を満たし、【カミラの祝福】を賜りました。
200SPを消費して【魔術の真髄】を取得しました。
従魔の種族レベルが上昇しました。
従魔の職業レベルが上昇しました。
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ログインしました。エリとリアを魔王国に取り込んだ後、私は地獄に通いながら金属集めに勤しんでいた。襲い来る獄獣と戦いながら採掘していたお陰で私も強くなっている。その理由は私はカルとリンを伴わず、完全に一人で行動していたからだ。
たった一人で行動するのは非常に良いな経験になった。油断一つが死に繋がるのだ。実際、何度か死んでしまっている。【生への執念】のお陰で死に戻りすることはなかったものの、仲間という存在がいかにありがたいのかを再確認することとなった。
連れて行かなかったカルとリンだが、ジゴロウやルビーなどに連れられて着実に経験を積んでいたのでレベルはしっかり上昇していた。特にジゴロウに敗北したからか、カルは積極的に戦っていたようだ。
そうして地道に強化した私であるが特筆すべき点が三つある。一つは【尾撃】が進化した【死呪尾撃】だ。これは尻尾に触れた全てに強力な呪いを掛けるという強力な能力だ。当てただけでも呪いによって弱体化させられるということもあり、メチャクチャに振り回すだけでも効果的である。接近された時の悪あがきにちょうど良いだろう。
ただ、この呪いは常時発動している。そのせいで味方に尻尾で触れることが出来なくなった。それこそ直近にリアを尻尾で受け止めたが、同じことをやれば彼女は呪われてしまってだろう。進化させる前で本当に良かった。
二つ目は【カミラの祝福】だ。カミラとは『魔術と研究の女神』であり、魔術師と学者が信仰する女神様らしい。私は魔術ではあるが、彼女やその信徒と関わったことは一度もなかった。
だからこそ、これは本当に唐突で私も驚いた。掲示板を開いて情報収集したところ、確実な情報は掲載されていなかった。各種魔術のレベルの合計値や使用回数などで決まるのではないか、と推測されていた。
その効果であるが、あらゆる魔術を使う際に消費される魔力が減少することと魔術の能力レベルが上昇しやすくなること。継戦能力が上昇しつつ、より強くなり易いとなれば誰でも欲しくなる効果である。
私は感謝の意を込めてカミラ様に祈りを捧げる…のではなく、カミラ様を称える女神像を『コントラ商会』から購入してアイリスに作ってもらった祠に納めた。すると私が感謝していると知った住民達が祈るようになったのだ。
女神様としても祈られて迷惑ということはないだろう。フッフッフ、私は仮にも権力者。鶴の一声で住民達にカミラ様を信仰させることなど朝飯前なのだ!
そして三つ目の【魔術の真髄】だが、これは【カミラの祝福】を賜ってから取得可能になった能力である。魔術師であるというのに取得に必要なSPが200とぶっ飛んでいるものの、コツコツ溜めてきたこともあってピッタリ足りていた。
この効果は魔術全般の効果が上昇すること。魔術による攻撃は威力が、魔術による付与は強化倍率が、魔術による妨害は成功確率と成功時の効果が上昇するのだ。流石に同格相手に即死の魔術を成功させるのは難しいものの、逆に言えば同格であろうとほぼ確実に状態異常にすることが可能であった。
なお、【魔術の真髄】はあくまでも魔術のみを強化することを失念してはならない。オーラや魔眼など、魔力を消費して発動する能力には影響していないのだ。『秘術』やオリジナル魔術は魔術という括りの内なので強化されるものの、龍息吹やオーラなどの効力に影響を及ぼさないのである。
「どうだ、二人は?」
そんな私は今、源十郎の道場に顔を出している。その理由はエリとリアの二人の様子を確かめるためだった。コンラートへの借金を返済するべく地獄の鉱石を採掘し続けていたのは前述の通りであるが、そのせいで道場を紹介した後のことを確かめていなかったのだ。
二人が馴染めているのなら良し、逆に馴染めずに行かなくなっていたなら源十郎と二人に謝罪しなければならない。そこまでが紹介した身としての責任と言えよう。
「筋が良いの。変な癖がついておらんから指導も楽じゃわい」
どうやら私の心配は杞憂だったらしい。今、二人はステータスを同等に抑えるアイテムを使ったプレイヤーと模擬戦を行っている。源十郎の門下生を相手に中々上手く立ち回っていた。おお、結構やるじゃないか。レベルが追い付かれたら一対一だと分が悪いかもしれんな。
あれから二人はアン達に連れられて自分達が倒せる魔物がいる小島を制圧したり、源十郎に能力に頼らない戦闘技術を教えてもらったりと充実した生活を送っているようだ。誘った者が魔王国に馴染めているようで私は肩の荷が下りたように感じていた。
「あ、王様やん」
「ホンマや。王様、久し振り…っちゅうほどでもないか」
模擬戦を終えた二人は私に気付いたらしく、こっちに駆け寄って来る。しれっと私の呼び方が王様になっている辺り、私が魔王国の代表者だと誰かから聞いたようだ。
「お師匠さんも一緒かいな」
「紹介してくれてありがとうな」
「礼なら不要だ。楽しんでくれているのなら、それで良い」
「さよか。で、お師匠さん。ウチらはどうやった?」
「うむ、そうじゃのう」
向上心が強いらしい二人に源十郎は良かったところを褒めながらも、動きをより良くするためのポイントを教えている。随分と優しい言い方だ。私やマックなどを教える場合はもっと厳しいのに。
これは男女の違いというよりも、人によって指導の方法を変えているのだろう。厳しく教えた方が伸びる者と褒めなければ伸びない者がいるし、そこの見極めが上手い…というか手慣れている。指導に慣れているのだ。
「うーん、参考になるわぁ」
「ありがとうな、お師匠」
「あ、せや!王様、アンタなんで自分が王様やって教えてくれんかったんや!他の人等と話が合わんくて恥かいたんやで!」
「せや!最初に言ってくれな困るわ!」
「えぇ?それは悪かった」
笑顔から一転して怒りながら二人は私に咎めるような視線を向ける。これは…私が悪い…のか?怒られるほどのことではないのかもしれないが、謝っておかねば後が怖いので私はとりあえず謝罪した。
まあ、当初の目的である二人の様子は確かめられたので良しとしよう。二人が再び源十郎から教えを受け始めたところで、私はそそくさと退散することにした。
「さてと。今日はどうするか…久々にカルとリンを連れて飛ぶのも一興か」
「イザームさん!ああ、良かった!」
「ミツヒ子?」
これからどうするのかを考えていると、慌てた様子のミツヒ子がこちらに駆け寄って来るではないか。あの慌てぶり…あまり良くないことが起きたに違いない。ああ、嫌だなぁ…聞きたくないなぁ…何て現実逃避している場合じゃないな。
「メッセージをお送りしようと思っていたところでした」
「何があった?」
「派遣していた記者からの情報です。『傲慢』のデータにはこの大陸についての情報が残っていた、と」
…なるほど?ついにこのティンブリカ大陸の存在が明らかにされたようだ。王国はこの大陸をフロンティアだと思っているはず。ならば調査し、開拓しようとする可能性は高かった。
「王国の方針は?」
「調査団を送ることは即刻決定したそうです。ただ、誰が調査団を率いるのかについて紛糾しているようですね」
「なるほど、手柄の奪い合いか。なら、付け入る隙はありそうだ」
骸骨の仮面の下に隠された頭蓋骨には皮膚の破片すらないので、私には表情というモノがない。だが、私は自分が邪悪な笑みを浮かべているだろうことを自覚している。何故なら魔王国に危機が迫っているとわかっているのに、私の頭の中は連中を苦しめる方法がいくつも浮かんでいたのだから。
次回は3月9日に投稿予定です。




