進化と転職(三回目)
ジゴロウのイタズラは置いといて、次に移ろう。次は待ちに待った【光魔術】の進化だ。
いやはや、遂に【光魔術】を進化させるに至ったか!長かったぞ!必要SPは…30…?…なるほどね?
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30SPを消費して【光魔術】が【神聖魔術】に進化しました。
新たに聖盾の呪文を習得しました。
称号、『相克の超越者』を獲得しました。
これまでの行動経験から【時空魔術】スキルを取得可能です。
30SPを消費して【時空魔術】を取得しました。
新たに短転移の呪文を習得しました。
称号、『属性の支配者』を獲得しました。
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ふふふ、くくくく、あーっはっはっは!後悔なぞ!一つもない!一気に60SPを消費したが!それ以上のリターンがあったのだからな!
先ずは新たに手に入れた魔術だ。聖盾は魔力盾の強化版らしい。単純な固さもそうだが、一撃だけならどんな攻撃も耐えられるという特性がある。
敵の乾坤一擲を無慈悲に防ぐ聖なる盾、か。むしろ悪役の技っぽくないか?序盤の強キャラや主人公の師匠の決死の一撃をアッサリ防ぐ、的なことが出来る訳だし。
もう一つは短転移。視界の開けた空間へ転移できる術だ。奇襲にも逃走にも使えそうだな。
そしてお次は称号の確認だ。意図せずしてさらに二つも増えちゃったよ。そちらもまとめて確認だ。
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『水龍王の友』
世界に三体いる神代水龍王が一柱、アグナスレリムの友の証。
龍神と龍帝、特に水龍帝の好感度が大幅に上昇。
また、知能の高い龍は無条件で敬服する。
獲得条件:アグナスレリムに友と見なされること
『相克の超越者』
己が存在を蝕む筈の力を我が物とした者へ贈られる称号。
全ての能力が大幅に上昇する。
獲得条件:弱点属性の魔術を進化させること
『属性の支配者』
あらゆる属性の魔術を使える偉大な魔術師へ贈られる称号。
全属性魔術の消費魔力減少。
獲得条件:全ての基本属性魔術の進化と複合属性の取得
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ほほう?どれも興味深いな。『水龍王の友』は我々全員が得た称号だ。条件も分かりやすい。だが、それよりも神代水龍王が世界に三体もいる事だろう。
そこで思ったのだが、もしかして神代火龍王とか、神代地龍王とかも複数いるのでは…?絶対に敵に回したくないものだ。
さらに説明文に登場した龍神と龍帝…。アグナスレリム様よりも上位の龍なのだろう。かの龍王のレベルが87なのは気になっていたのだが、理由は単純明快だと思われる。おそらく、90レベルに達すれば龍帝に進化するに違いない。
つまり、レベル80~89の龍が龍王なのだ。ではアグナスレリム様よりも二段階上に君臨する龍神とは、どれほどの存在なのだろうか?レベルが上限に達したプレイヤーが全員で襲い掛かっても勝てないような絶望感があるな。
お次の『相克の超越者』だが、これ、人類じゃ獲得出来ない奴だ。だって人間や森人見たいな大多数のプレイヤーには弱点属性が無いんだからな。
対して我々で弱点属性を持たない者はいない。植物系のアイリスと虫系の源十郎は【火属性脆弱】が、粘体のルビーは【雷属性脆弱】が、そしてジゴロウは炎雷狂大鬼になった時に【水属性脆弱】が付いたらしい。
これ、私のような事をすれば全員が『相克の超越者』を獲得出来るんじゃないか?確かに面倒だし時間も掛かるが、全てのステータスが大幅に上昇する、と言うのはとてつもない効果だ。
そして同時にこの情報は魔物が我々五人しかいない現状をひっくり返し得る爆弾だ。公開するべきか、しないべきか…皆と相談だな。
逆に最後の『属性の支配者』は分かりやすいな。効果も優秀である。私が極めんとする深淵系魔術に一切の恩恵が無いのは悲しいがな。
よぉし、では最後の作業に移ろうか。それは進化のお時間です。蛙人王子戦でついにレベルが30に到達したのだ。さぁて、何になれるのかなっと。
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混合深淵龍骨賢者
深淵系魔術を全て使え、身体に龍の一部が含まれる骸骨賢者の希少種。
通常の骸骨賢者とは比較にならない強さを誇る。
【錬金術】により腕が増えている。
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今回の進化先は一つか。まあ、毎回選択肢があった今までがおかしかったんのだ。では早速、進化…の前に身体改造タイムだ。
腕を追加してからと言うもの、様々な素材と私の身体との相性を調べて来た。相性が最高なのは『魔骨』と『魔石』で、逆に最悪なのは金属類、というのが調査の結論である。
まだサンプルが少ない上に【錬金術】のレベルが低いだけかもしれないので断言は出来ないが、これを利用してアイリスの協力の下でこんなアイテムを作り上げた。
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闇魔骨 品質:優 レア度:S
闇属性を持つ魔骨。錬金術でしか生み出せない。
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作成方法は『魔骨+魔石(闇)』だった。ほかの属性を持つ魔石があれば他にも作れそうだな。しかし、今はこれが精一杯だ。
いや、これを作るのは苦労した。普通に融合させると品質が低くなってしまうのである。
試行錯誤を繰り返したところ、魔石を磨り潰して粉状にすると上手く行くことが判明した。磨り潰す役目をアイリスに任せるとムラ無く仕上がるらしく、品質が高くなった。生産が得意な仲間がいると本当に頼もしいな!
「よっこいしょ」
「…!?」
これを新たなパーツとして取り込もう。今回は腕やら脚やらを増やしたりせず、普通に融合させていこう。新たな腕の感触には慣れつつある。近接戦闘もそれなりにこなせる位には使いこなしていると言っていいだろう。
とは言え、まだ完全には程遠い。なので更に増やすのは止めておく、という訳だな。
「ここをこうして…おお、こうすればいいな!」
「お、おい…」
ただし、一切形状を弄らない訳ではない。上腕骨や前腕骨、更には大腿骨や脛骨を追加したり、他の骨も太くして純粋に頑丈にするなど己を魔改造していく。
それに合わせて関節の形状や数も変えねばならないのは厄介だが、むしろそれが楽しく感じるのは、私が凝り性だからに違いない。
「ふんふ~ん、ふふんふ~ん♪」
「えぇ…」
私は鼻歌を歌いながら作業に没頭する。その過程でおもいついたのだが、遊び心で骨を変形させ、縄や糸ように縒ってみる。おお~、螺旋を描きながら絡み合う骨というのも中々にオツなものではないか。
しかし、全てに同じ加工をするのも味気ないしゴテゴテし過ぎなのもセンスが無い。あくまでもオシャレなワンポイント的扱いだからいいのだよ。なので元々あった前腕にある二本骨、即ち橈骨と尺骨を縒ってから、その周囲を囲むように三本の新たな骨を追加する。う~ん、マーベラス!
これで魔改造は終わりっと。それで進化先に変化は…無いな。少々ゴツくオシャレになっただけではダメということか。では、進化だ!
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混合深淵龍骨賢者選択されました。
混合深淵龍骨賢者へ進化を開始します。
進化により【不死の叡智】レベルが上昇しました。
進化により【深淵の住人】レベルが上昇しました。
進化により【深淵のオーラ】レベルが上昇しました。
進化により【下位不死支配】を獲得しました。
進化に伴い、蓬莱の杖、髑髏の仮面、月の羽衣が一段階成長しました。
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うん、またこの万能感だ。今なら何でも出来そう、と言う謎の高揚感には慣れないなぁ。
それで、【下位不死支配】とな?…ほう、レベル20以下の不死は私に絶対服従するのか。ただし、中身がプレイヤーの場合は動けなくするだけ、と。
格下相手の能力は面倒が無くなるが、持っていても余り冒険の役に立つ場面が少ないのが欠点だよな。我々が自分から格上溢れる場所に行くから自業自得なんだが。
それよりも私の進化に合わせて強化された装備はどうなったかな?これが一覧だ。
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蓬莱の杖 品質:神 レア度:G
蓬莱山の神樹から造られた杖。破壊不可。所有者固定。
真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。
装備効果:【魔術効果上昇】Lv4up!、【魔力増強】Lv4up!
【魔石排出】
【魔石吸収】
【属性魔石排出】 new!
月の羽衣 品質:神 レア度:G
月に住まう神と眷属が纏う羽衣。破壊不可。所有者固定。
真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。
装備効果:【色彩・形状変更】、【魔術耐性】Lv4 up!
【飛行】 Lv4 up!
【能力向上:月光】 Lv4 up!
【能力向上:夜】 Lv4 new!
髑髏の仮面 品質:神 レア度:G
死の力を増幅する仮面。破壊不可。所有者固定。
真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。
装備効果:【死霊魔術強化】Lv4 up!、【呪術強化】Lv4 up!
【偽装】 Lv4 up!
【邪術強化】 Lv4 up!
【降霊術強化】 Lv4 new!
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うん、どんどん強くなっているな。レベル制の効果は軒並み上がって、増えた効果は【属性魔石排出】、【能力向上:夜】、そして【降霊術強化】だ。
どれも文字通りだな。あ、【属性魔石排出】は属性を纏った魔石を杖が作る訳だが、当然、私の持つ属性しか使えない。つまり、全属性の魔石が使えるわけだな!うはははは!
しかし、出来れば進化前に欲しかった!それなら色々な骨を作れたと言うのに!
まあ、とやかく言っても仕方あるまい。それよりも、これでアイリスの生産がさらに捗りそうだ。私は動く魔石製造機になった訳だし。
もしかすると、皆の【○○属性脆弱】の克服用アイテムも簡単に作れるかもしれない。彼女と相談だな。
次は転職か。どんなものがあるか…おっと、これしかないな!
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『深淵魔導師』が選択されました。
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深淵魔導師はさらに深淵系魔術に補正が加わる職業だ。私のプレイスタイルならこれしかあるまい。むしろ『深淵○○』という職業はコンプリートしてやりたいくらいだ。
よぅし、これで私の強化は終わったな!後は皆が集まるのを待ってから、ボスを倒して山登りだ。
何だかかなり長い寄り道だったなぁ。だが、得るものも多かった。機会があれば、またここに来たいものだなぁ…
「き、兄弟よォ!お前、何やってんだ!?」
「うん?進化と転職だが?それがどうかしたか?」
私が進化と転職をしている様子を見ていたジゴロウは、顔を引きつらせている。どうしたのだろう?
「その、骨がキモい位に増えてンじゃねぇか!」
「今更その話か?腕を増やした時には大して驚かなかっただろうに」
前に私が腕の本数を増やした時、ジゴロウと源十郎の反応は女性陣に比べればかなり薄かったと記憶している。なのに前よりは地味な変化しかしていない今回の進化でジゴロウは過剰に反応している。何故だろうか?
「あのよォ、俺ァ人間ブッ壊す方法を本気で考えるために解剖学を勉強してンだ」
「はぁ、それで?」
「わかんねぇか?兄弟がやってんのは俺にとっての解剖学の常識が通じなくなる事なんだぜ?」
あー、なるほど!骨と関節の形状やら位置やら数やらが変われば、格闘で倒す時の勝手も変わると言いたいのか。
「兄弟がやれたってことァ、他にも似たような事を考えて実行する奴もいるかもしんねェ。そうなりゃあ、多少苦戦出来るだろォなァ…」
そんなことを言いながらジゴロウはニンマリと笑う。凶悪かつ好戦的な笑みだ。なら次に言い出す言葉は決まっているだろう。
「つー訳で、兄弟。似たような形の動く骸骨を作ってくれよ!俺のスパーリング相手によ!」
言うと思ったわ!しかし、今の私には断る口実があった。
「生憎だが、私にはもう魔骨のストックがほとんど無いのだよ」
「げっ、マジかよ…」
嘘である。実はまだまだ結構残っているが、その総量を把握しているのは私だけ。なので『無い袖は振れない』と言えばどうしようも無いのだ。なんだが流通量を調整する小賢しい商人になった気分だ。
「なら仕方ねェか。俺も骨があったら集めるからよ、そん時は頼むぜ」
「ああ、任せろ」
ふふふ、騙されてくれたらしいな。これで骨だけではなく、様々な素材を集める癖をつけてくれれば申し分ないな!
だが、この進化によって様々な創作意欲が湧いたのも事実。試行錯誤しながら、ジゴロウを苦戦させられる不死をいつか作り出したいものだ!
今回は地味(?)な変化でしたね。毎回劇的に変わるのも何だかなぁ、と思ってこうしました。
以前に龍王のレベルが低いのに違和感を感じるとのコメントをいただきましたが、本文にもある通り、龍帝というもう一段上の進化先があったのが理由です。
むしろ、もう一段先の進化があると言う伏線だったのですが、解りにくかったですね。伏線を張るのって難しい…




