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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第四章 地下墓地の秘密
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脆弱という壁

 休日出勤&残業祭りのせいで感想すらまともに読めない日が続いております…なので誤字・脱字の修正はお待ち下さい…


 しかもストックが残り30話を切ってしまった…


 どこかに楽な仕事って無いですかねぇ…

「き、来たァァァァァ!」

「ひうっ!?」


 私が突然大声を上げたせいでアイリスがビクリと跳ね上がったが、全く気にならない!私は、漸く最悪の弱点である光属性を克服したのだ!


「フフフフフ、ハハハハハ、アーッハッハッハッハ!」

「あ、あの…?」


 …ふぅ。落ち着いた。さて、確認しよう。ステータス欄から【光属性脆弱】の文字は無くなっているな!そして手に入れた称号(タイトル)は『光の届かぬ暗黒』か。どんな効果だ?


――――――――――


『光の届かぬ暗黒』

 弱点である光を克服した者に与えられる称号。

 これを得た者は光を司る者に恐れられ、闇の眷族の尊敬を集めるだろう。

 獲得条件:【光属性脆弱】のレベルを0にする。


――――――――――


 具体的な効果はほぼ無いタイプだな。しかし、ガッカリなどしないぞ!むしろメチャクチャ嬉しい!やっと、やっと昼間に外で活動出来るのだからな!


 そして、光属性が弱点ではなくなったことで私は【光魔術】を取得可能になった!ある意味これが最大の恩恵かもしれない。何故ならこれで私は【付与術】によって光属性の耐性や武器への光魔術付与が可能になったからだ。


 特に耐性は重要だろう。これまでは光属性を用いる敵にほとんど遭遇しなかったが、先に進めば必ず相対する事になるだろうからな。


 それで必要なSPは…10だと!?ば、バカな!各属性魔術の取得に必要なSPは1で固定だったハズ。なのに何故、どうしてこんなにコストが重いのだ!?


 もしや、【鎌術】を取得した時のように元々使えないか向いていない能力(スキル)を取得しようとすると消費SPが増えるのか?『不死(アンデッド)のくせに光属性なんか使うなや』とでも言いたいのか?


 ふん!生憎と私のSPは有り余っているのだ。魔術を極めるためならジャンジャン使うのを惜しまないぞ。では、ポチッとな。


――――――――――


10SPを消費して【光魔術】を取得しました。


――――――――――


 むふ。むふふふふ!ステータス欄に燦然と輝く【光魔術】の文字がたまりませんなぁ!取得したばかりなのでレベルは0だガンガン使って伸ばしていこう。


 幸い、明日以降はファースから小鬼(ゴブリン)ばかりいる北へと向かうのだ。雑魚である小鬼(ゴブリン)なら試し撃ちの相手に持ってこいだし、熟練度稼ぎにもなるしで一石二鳥よ。笑いが止まらんぞ!


「ククッ、フフフフフ!!」

「あ、あの、イザーム?どうしたんですか?」


 おっと、アイリスがいたことを完全に失念していた。作業しながら叫び出し、さらに含み笑いをしていたらそれは不気味だろうよ。彼女が恐る恐る聞いているのがハッキリと伝わってくるからな。


「こう言う事さ、光球(ライトボール)


 私は掌の上に光輝く球体を作り出す。それをみたアイリスは全てを察したのか、触手をくねらせている。この動きは喜んでくれているのだな。


「わぁ!おめでとうございます!【光魔術】を使えるって事は、遂に光属性を克服出来たんですね!」

「ああ。時間は掛かったが、何とかなったよ。これでようやく日中も出歩ける」

「じゃあ皆さんに連絡しましょう!地図の場所には明日行けますね!」

「そうなるな。だから、今日は眠たくなるまで私もポーションを作るよ」


 私とアイリスは三人に私の【光属性脆弱】が無くなった事を伝えた。皆からは祝福のメッセージが帰って来たが、ジゴロウのメッセージの最後の一文が私の頭を悩ませる。それは…


『んで、【打撃脆弱】はどうすんの?』


 これである。これまでは『近付かれたら終わりだし、別にいいか』位に考えていたのだが、克服すべき最大の壁が無くなったからにはこちらも克服して行きたい。欲が出た訳だな。


 だが、何か方法があるだろうか?一度パーティーを解除してジゴロウに殴って貰う?一撃でおっ死ぬ未来しか見えない。厳つい見た目をしているが、私はパーティー内で最も貧弱なのだからな!


「うーん…」

「どうしたんですか?折角、昼間に活動出来るようになったのに」

「ああ、実はな…」


 私はメッセージにてジゴロウに指摘された事をアイリスに語った。それを聞いたアイリスは触手同士を絡ませて何かを考えている。妙案があるのだろうか?


「もしかしたら、少し前に作った魔道具の試作品が使えるかもしれません」

「魔道具、か」


 確かに、私の【光属性脆弱】は魔道具のランプを使い続ける事によって克服出来た。ならばアイリスが作り出した魔道具でも似たような事が出来るのは道理である。


「試作品と言っていたが、どんな魔道具なんだ?」

「えっと、少し待ってて下さい」


 アイリスはそう言って自室に戻って行った。そこに彼女の言う使えそうな試作品があるのだろう。


 彼女が冒険以外のほぼ全ての時間を使って色々と作って試行錯誤していた事を私達は知っている。だからこそ、どんなものを作ったのか、そしてそれがどんな性能をしているのかを全て把握しているのは製作者であるアイリスただ一人なのだ。


 正直、どんなものが飛び出してくるのか楽しみ半分、恐怖半分である。アイリスが戻ってくるのを待つ時間は、何故かとても長く感じられた。


「これです」


 体感時間はともかく、一分ほどで一抱えもある大きめのアイテムを触手で梱包したアイリスが戻ってきた。このアイテムが私の【打撃脆弱】の克服に使えるのだろうか?


「それはもしや…扇風機?」


――――――――――


試作型扇風機 品質:良 レア度:R(希少級)

 魔石をエネルギー源として羽を回転させ、風を生み出す魔道具の試作品。

 ボタンによって風の強弱を三段階で調整可能。

 素材に陶器と木材を使用しているため、非常に重い。


――――――――――


 アイリスが持ち出して来たのは、紛れもなく扇風機だった。それも羽が回転して風を送るタイプの奴。【鑑定】の結果にもそう書かれているので間違いない。


 ただ、リアルのようなプラスチックは無いので、陶器と木材が原材料のようだ。なのでとても重いと思われる。


 しかし、見た目は完璧に私の良く知る扇風機そのものである。ご丁寧に『弱』、『中』、『強』と書かれたボタンまでついているな。こ、これをどう使うと言うのだ?


「そうです!まずカバーを外して…これを取り付けて…」


 アイリスはテキパキと扇風機を解体していく。まあ、製作者なのだから当然か。彼女は羽を覆うカバーと羽そのものを外すと、羽が填まっていた部分に縄を括りつける。


「あとはこうして…完成です!」


 そして縄の先端に球状に磨かれた石を結びつけると完成、なんだそうだ。あ、なるほど。彼女の意図がやっとわかったぞ。


「これを回転させて、私に打撃が与えると言う事だね?」

「その通りです。たった三段階ですが、ボタンで強弱も変えられるので丁度良い所で止めればいいんじゃないかと」


 これは試してみる価値はありそうだな。少なくとも、ジゴロウに殴られるよりは数百倍良い。


「では、早速試すとしよう。まずは『弱』からだな」


 私は扇風機の横に立つと、杖を使って『弱』のボタンを押した。すると扇風機は正常に作動し、石の付いた縄が勢い良く回り始めた。


コンコンコンコンコン…


 石が私の身体を叩いて、小気味良い音を立てる。何だか、私自身が楽器になったような錯覚を覚えるな。ただ…


「これは弱すぎるようだな…」

「そうですねぇ」


 『弱』では私にダメージを与えられないようだ。【○○脆弱】を克服するには、その属性のダメージを実際に受ける必要がある。なので微小でもダメージが無ければ意味がない。


「じゃあ、次は『中』だな」


 ならば一段階上げてみよう。今度は扇風機の『中』のボタンを押してみる。さて、どうなる?


カンカンカンカンカン…


 うん。さっきよりも私と石が立てる音が高くなった以外に変わりは無いな。確かに回転速度は上がったのだが、まだダメージを食らうには至らなかった。


「これでもダメみたいですね」

「ああ。もしかすると、これで打撃ダメージを出すこと自体が出来ないのかもしれないな」


 アイリスが製作したこの試作型扇風機は魔道具ではあっても武器ではない。なので軽く改造しただけではダメージを与えることも出来ない可能性がある。


「うーん、ランプから漏れる光でどうにかなったから行けるとおもったんですけど…」

「まあ、あれは結構裏技チックだったしな。じゃあ、一応『強』を試しておくか」


 それではポチッとな。


ゴンゴンゴンゴンゴン!!!


「う、うおおおお!?」


 ヤバいヤバいヤバい!!!体力がゴリゴリ無くなって行く!死ぬ死ぬ死ぬ!!ちゅ、中止!即刻中止だ!


「し、死ぬかと思った…!」


 一瞬で体力が半分を下回ったぞ!?メチャクチャ食らうじゃないか!


 それに誰だよ、魔道具じゃ打撃ダメージが出せないとかほざいた大馬鹿野郎は!私だよ、こん畜生!


「…一定の速さを超えたらダメージの判定が出るんですね」

「…そうみたいだな」


 アイリスの冷静な分析を聞いて、私もやっと正気に返った。石自体は変わっていないので、やはり速度が関わってくるのだろう。


 括り着ける物を変えれば結果も変わるのだろうが、【打撃脆弱】がここまで酷いとは思わなかった。可能な限り早く克服せねばならないだろう。


「体力が回復し次第、色々試してみよう。丁度自然回復とダメージが釣り合う速度と物の組み合わせがあるかもしれない」

「そうですね。わかりました。じゃあ、打撃ダメージを出せそうな物を集めてみますね」


 試行錯誤を繰り返すことは重要だ。ぴったりの組み合わせを探し出してみよう。



◆◇◆◇◆◇



「ぐおおおっ!!」


 ま、まただ!これもダメか!考え得る限り全ての組み合わせを試したのだが、どれもこれもダメージが0か一瞬で死にかけるかのどちらかであった。極端過ぎる!


 これ、放置は無理だ。一番ダメージを食らわない組み合わせでも、一分と経たずに死んでしまうからである。


「…そう簡単には行かないか」

「むしろ、ランプでお手軽に克服出来たのが奇跡なんでしょう。弱点を克服するのがそんなに簡単である方がおかしいんですし」


 アイリスの言う通りなのかもしれない。【光属性脆弱】を克服するのが順調過ぎただけなのだろう。きっと、あらゆる要素が上手く噛み合った上での奇跡だったのだ。


「それに、あれだけ死にかけて緩和されたと言うアナウンスさへ無いとはな…」

「ログアウト中に放置出来る事がどれほど効果的であったのかが良くわかりますね」


 試行錯誤している間に、私は幾度となく死にかけた。その度に回復を待ったのだが、それでも【打撃脆弱】が緩和されることは無かった。


 短時間で大ダメージを受ける事よりも、ログアウト中にチクチクと極小ダメージを受け続けた方が効率がいい事らしい。きっと弱点属性攻撃によって食らったダメージの総量が緩和の条件なのだ。


「とにかく、今のままではどうにもならない事が明らかになったのを収穫だと思おう。…今までの作業が無駄であったとは思いたくないからな」

「そうですね。弱点克服用の魔道具を製作する上での貴重なデータが取れたと考えますね」


 【光属性脆弱】を克服して有頂天になっていたが、【打撃脆弱】というもう一つの壁が想定以上に高かった事に冷や水を掛けられた気分だ。アイリスは克服用の魔道具を作ってくれるようだが、彼女に任せきりなのも悪い。


 何か良い方法は無いものだろうか?私は外に出掛けた仲間達が帰ってくるまで【錬金術】で作業場しながらずっと考え続けるのであった。

某女神「そう簡単に弱点を無くせると思いましたか?色々と試す姿は面白かったですよ♪」

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― 新着の感想 ―
【推敲】 取得したばかりなのでレベルは0だガンガン使って伸ばしていこう。 ⇩ 取得したばかりなのでレベルは0だがガンガン使って伸ばしていこう。 【誤字報告】 「こう言う事さ、光球」 ⇩ 「こういう事…
[一言] 他の魔物プレイヤーの脆弱はなんじゃろな
[気になる点] 下僕に定期的に攻撃させれば克服できるのでは?
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