全軍、出撃!
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【体力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【符術】レベルが上昇しました。
【魔法陣】レベルが上昇しました。
【死霊魔術】レベルが上昇しました。
【罠魔術】レベルが上昇しました。
新たに大罠陣の呪文を習得しました。
【降霊術】レベルが上昇しました。
【錬金術】レベルが上昇しました。
これまでの行動経験から【指揮】スキルを獲得しました。
【指揮】レベルが上昇しました。
【死と混沌の魔眼】レベルが上昇しました。
従魔の種族レベルが上昇しました。
従魔の職業レベルが上昇しました。
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例の会合からしばらく経過した。私は自分を鍛えながら無心で作業を続け、遂にあれだけあった骨を全て使いきることに成功した。そうして作り出された兵士の数は五百。想定していたよりも多い数であった。
作られた五百の内、約百体がジゴロウの厳しい訓練によって進化を遂げている。まさに精鋭であり、肉壁扱いされる者達の中でも生き残る可能性が高いと思われた。いや、逆に酷使し過ぎて真っ先に壊れるかもしれないが。
同じく量産したお札は、戦闘に参加する全員に配布済みだ。アイリスと鉱人製の武具、そしてしいたけ印のポーションも必要な者に配布している。これまで石か魔物の皮を加工した武具ばかり使っていた疵人と四脚人は金属製の武具を与えられて大喜びしていたし、鉱人は作ったことのない武具を作ることが出来て楽しかったらしい。
武具の量産も手掛けたアイリスだが、彼女はそれ以上に不死傀儡達と我々の武具に注力してくれた。新しい素材を入手する度にオプションパーツのようなものを付けて強化し続けていたのだが、今回は全員の武具を大幅に更新している。私の場合はこのようになった。
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夜空絹の黒法衣 品質:優 レア度:S
魔物から採れる繊維から作られた法衣。フード付き。闇に対する親和性が高く、闇属性のダメージを微量ながら吸収する。
裏地に毒炎亀龍と緑風魔狼の皮が用いられており、毒と火属性と風属性への耐性も持っている。
装備効果:【闇属性吸収】 Lv1
【毒耐性】 Lv3
【火属性耐性】 Lv3
【風属性耐性】 Lv2
鼈甲の灰籠手 品質:優 レア度:S
毒炎亀龍の厚皮と霧魔球の弾性柔膜から作られた籠手。様々な属性と打撃に対する耐性を得る。
要所に黄金鼈甲の欠片が張り付けられており、物理と魔術双方への防御力を両立させている。
装備効果:【打撃耐性】 Lv3
【魔術耐性】 Lv6
【火属性耐性】 Lv3
【水属性耐性】 Lv2
【煙霧属性耐性】 Lv2
溶岩死毒蛇のベルト 品質:優 レア度:S
溶岩死毒蛇の皮を用いたベルト。火属性と溶岩属性への耐性を得る。
裏地に森獣亀の皮が使われており、体力の最大値を微増させる。
右側には小物入れが、左側にはブックホルダーがついており、それぞれを素早く出し入れ可能。容量:5
装備効果:【体力増加】 Lv2
【火属性耐性】 Lv4
【溶岩属性耐性】 Lv4
夜空絹のズボン 品質:優 レア度:S
魔物から採れる繊維から作られたズボン。闇に対する親和性が高く、闇属性のダメージを微量ながら吸収する。
腰紐に火鼠の尻尾が使われており、火属性への耐性を得つつ火属性の攻撃が強化される。
装備効果:【闇属性吸収】 Lv1
【火属性耐性】 Lv4
【火属性強化】 Lv3
溶岩死毒蛇のブーツ 品質:優 レア度:R
溶岩死毒蛇の皮から作られたブーツ。体力の最大値を微増させる。
底に金属製のスパイクがついており、滑りにくい。踏みつけ時のダメージ増加。
装備効果:【火属性耐性】 Lv4
【溶岩属性耐性】 Lv4
破滅龍鱗の首飾り 品質:優 レア度:S
破滅龍カルナグトゥールの鱗を用いて作られた首飾り。
幼龍の時の真鱗も使われており、効果が上がっている。
魔力の最大値を増加させ、【暗黒魔術】と深淵系魔術を増幅させる。
装備効果:【魔力増加】 Lv5
【暗黒魔術強化】
【深淵系魔術強化】
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毎度のことながら、本当に素晴らしい装備を作ってくれた。夜空絹という見覚えのない素材だが、これは王宮の宝物庫にあった素材アイテムである。他の皆も多かれ少なかれ宝物庫にあった素材で武具を強化していた。
誰にどれを使うのかはアイリスの裁量に任せている。そのことについて異議を申し立てる者はクランメンバーにはいなかった。全員が彼女のことを全面的に信用しているからだ。
大昔の宝物庫に残されていた素材。それを前にして創作意欲に火が着いたアイリスは、不死傀儡用に作ったモノも合わせてこの一週間で千以上の武具を作成してくれた。それは彼女のモチベーションが高かったこともあるが、リアルな器用さと無数にあるアバターの触手があってこその生産体制だ。本当に彼女がいてくれて助かった。
属性魔術で呪文が増えるまでレベルが上げられたモノはなかったが、【罠魔術】だけは大罠陣という新たな呪文を覚えた。これは罠の威力と範囲が広くなる代わりに、設置から発動までに時間がかかるというものだ。
【魔法陣】の大魔法陣に対応しているのだと思うが、使い勝手が良いとは言えない。それは【罠魔術】の全てに言えることではあるものの、これは相手が踏んだとしても罠が発動しないことがあるからだ。
準備時間中に踏ませて安全だと思わせて油断させる、という利用法を思い付いたが、実戦で使えるとは到底思えない。敵を待ち伏せする時にだけ使うと決めておいた方が良さそうだ。
それと兵士達を指揮して戦うことが多かったからか、久々にSPを使わずに能力を得ることが出来た。この【指揮】と言う能力の効果はわかりやすく、自分の指揮下にある者達に能力のレベルに応じた強化を施すものだ。まだレベルが低いので誤差レベルだが、気休めにはなると思う。
「イザーム様、出陣の準備が整いました」
「おお、そうか」
私が艦橋の椅子で座りつつこの準備期間を振り返っていると、魔導人間のトワが囁くようにそう言った。彼女のパーツは磨耗しているものが多かったのだが、アイリスとしいたけの尽力により代替品を用意することが出来ている。これでいつ壊れてしまうかと恐れる必要もなくなった。
ただし、純正パーツではないので強度には若干の問題があるらしい。激しい戦闘には耐えられないようだが、基本的に彼女の役割はアイリスとしいたけのサポートやシラツキの操縦と定めている。前線に連れていくわけではないのでそこは問題はない。
閑話休題。何はともあれ戦争の準備は整った。装備を揃え、消耗品を山程作り出し、時間の許す限り訓練を積んで練度を高めている。出来ることは全てやったと胸を張って言えるだろう。
「つきましては出陣式が始まります。ご準備いただきますよう」
「…ついにこの時が来たか」
普段はログインしてフィールドに出ないのならラウンジで談笑している私が、どうして艦橋に一人で座っているのか。それはこの出陣式から、より正確に言うなら出陣式で全体に檄を飛ばす演説から逃げたかったからだ。
いや、ここにいたところで逃げられないのはわかっている。ただの現実逃避だと言うこともちゃんとわかっているのだ。しかし、何と言うか…恥ずかしいだろう?
こう言った形式的なものは必要ないのではないかと言ったのだが、各種族の長が士気を高めるのには必須だと頑なに譲らなかった。ならばそれぞれの長がやれば良いのではないかと返せば、この戦いの総司令である私以外の誰に務まるのかと叱責されてしまったのである。
総司令って、いつの間にそんな認識になっていたのか!?驚いた私は二の句が継げなくなってしまい、パクパクと口を動かすことしか出来なかった。その沈黙を了承したと捉えられたようで、私の思考が追い付いた時には段取りの話が終わるところであった。
仲間達にもその話をしたのだが、同情したり憤慨したりするどころか何を今更と呆れられてしまった。彼らの反応に再び驚いていると、ジゴロウがポンと私の肩に手を置いてこう言った。
「おいおい兄弟よォ…テメェは自分が何をやったか覚えてねェのかァ?難民に家をあげてよォ、四つの種族をまとめて今からドンパチやろうってのを主導したんだぜェ?そりゃァ総司令扱いされて当然だろォがァ」
ジゴロウに言われて初めて、私は自分が総司令として担がれるに足ることをやっていたと自覚した。集まる場所も人員も、必要なアイテムも用意したのは我々のクランである。そのリーダーである私が総司令になるのは当然なのだ。
こんなやり取りがあったので、私が総司令扱いなのはもう納得している。だが、納得しているからと言ってやりたくないと思わなくなるわけではない。ああ、行きたくないなぁ…
「イザーム様?」
「…ああ、わかっている」
いつまでも椅子から立とうとしない私をトワは不思議そうに眺めている。彼女にそのつもりはないのだろうが、圧力を感じてしまうのは私が子供のように駄々を捏ねている自覚があるからだ。よし、もう腹を括って行くか!
意志を固めた私はシラツキの艦橋から甲板へと出る。シラツキは広場の上空に待機させているので、後は甲板から降りるだけだ。
「グオオン」
「カル?背中に乗れと言いたいのか」
甲板にはカルがいて、短く喉を鳴らすと姿勢を低くして背中を向けた。こうなったらカルの背中の上から檄を飛ばしてやる!行くぞ!
私がカルの背中に飛び乗ると、カルは即座に飛び上がって広場の上に滞空する。すると広場に集まっていた者達は雑談を止め、全員が視線をこちらに向ける。私は咳払いを一つしてから口を開いた。
「皆、よく集まってくれた。これから始まる戦いは、この大陸に生きる者にとって避けては通れない道だろう。それがわかっているからこそ、四つの種族が集まり、協力してこの軍勢を成すことが出来たのだ」
私はここで一旦区切って全体を見回す。戦いに赴く者もそうでない者も真剣な顔つきであった。
「これだけ力を合わせたとしても、楽は戦いになると思っていない。しかし…自分でも不思議なのだが、私は我々が戦いに勝利することを疑ってもいないのだ。それはきっと、この軍が精強であると誰よりも知っているからだろう。さて諸君、そろそろ勝ちに行こうか。全軍、出撃する!」
「「「うおおおおおおおおおっ!!!」」」
緊張して舌を噛むこともなく、どうにか私は事前に考えておいた文言を言い切った。士気を上げることには成功したようで、広場は雄々しい叫び声に満たされる。そしてこの勢いのまま、我々は出陣するのだった。
次回は9月22日に投稿予定です。




