洞窟探検 その六
ふと拙作の情報を見たところ、ブックマークをつけて下さっている方々が5000名を越えておりました!本当に励みになります!
次は10000名を目指して頑張るぞ!
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【召喚術】レベルが上昇しました。
【付与術】レベルが上昇しました。
【死霊魔術】レベルが上昇しました。
【呪術】レベルが上昇しました。
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私達は来た道を辿って最初の通路に戻る。そして下へ続く道を進んでいった。ここに来るまでは呆れる程にいた動く骸骨系の魔物は鳴りを潜め、上層と同じ動物系の魔物が出現し始めている。
【死霊魔術】で創造した不死は術者が死亡しても動き続けるはずなので、恐らく我々が狩り尽くしたのだろう。基本的に見敵必殺で来たからな。侵入者対策に配置されていた奴等を殲滅してしまったのだ。
まあいいか。これ以上は魔骨が手に入らないのは残念だが、それが既に気になってはいない。何故かって?それはこんな奴らが出現しだしたからだ。
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種族:大百足 Lv18
職業:無し
能力:【麻痺牙】
【鎧術】
【筋力強化】
【防御力強化】
【敏捷強化】
【火属性脆弱】
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名前通り、デカい百足だな。レベルは高いが能力は数が少ないし魔術も使えない。
だが、シンプルに強い。長い体躯をくねらせ、外骨格の強度と巨体故の質量を活かした突撃戦法、更に麻痺の効果を持つ牙での噛み付き。私のような遠距離攻撃や罠、召喚獣の特攻戦法にような搦め手とは正反対だ。
これにはジゴロウと源十郎ですら苦戦していた。いや、まともに攻撃を食らってはいないのだが、頑丈過ぎる外骨格は【防御力強化】も相まってジゴロウの打撃と源十郎の斬撃を防いでいたのだ。体節の隙間を狙っていたらしいが、それでもほぼノーダメージだったのには驚かされたぞ。
結局、最初の一匹は私の魔術で仕留めるに至った。その後はジゴロウと源十郎の武器に火属性付与をしてフォローに徹したのだが。
しかし、これで課題が一つ浮き彫りになったな。それは源十郎の武器の新調だ。今更ながら、彼の武器は初期装備の剣である。むしろここまで通用している事の方がおかしいのだ。
源十郎は腕前さえあれば武器に拘る必要は無いなどと言っているが、これはリアリティーがあるだけでゲームなのに変わりは無い。更にマスクデータではあるが、ステータスというものが存在している。なら硬い相手にダメージを与える為にはシステム的な最低限の攻撃力が不可欠なのだ。
その事を孫であるルビーから説教されるように怒られたので、新調には同意していた。それにしても、源十郎だって若い頃には既にゲームが一般的だったであろうに、そんな無茶苦茶な事を言い出すとは、ゲームとは無縁の人生を送って来たようだな。読書ばかりでほぼゲームにはノータッチだった私が言うのも何だが。
いや、人様のリアル事情を詮索するのは口に出さずともNGだ。それよりも大百足の残したアイテム。これが有益なのだ。
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大百足の外骨格 品質:可 レア度:C
大百足の堅牢な外骨格。強度の割に非常に軽いのが特徴。
ただし熱に弱いので注意が必要。
大百足の毒腺 品質:可 レア度:R
大百足が麻痺毒を分泌する器官。
魔力を通すことで麻痺毒を生成可能。
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外骨格は防具や盾などに向いているっぽいな。ただ、火には弱いらしい。素材となっても元になった魔物の弱点からは逃れられないようだ。
問題は毒腺の方だ。見た目は淀んだ緑色をした掌サイズの臓器なのだが、魔力を込めると管から麻痺毒を分泌し始めるのである。使える回数に制限はあるようだが、森の毒草よりも効果が高そうだ。【錬金術】のレシピにも大百足の麻痺毒はあったはずなので、色々と面白いものが作れそうだな。ククク。
大百足という厄介だが使えるアイテムを落とす相手を狩りながら進むと、洞窟の先にどう見てもボスエリアな空間が広がっていた。
ここは地底湖だろうか。洞窟の地面は地底湖の中央に浮かぶ小島へと続いている。どうやらここが終点のようだ。
「皆、注意してくれ」
「ボス戦、だな!」
「どんな相手かのぅ?」
「や、やってやります!」
「よーし!頑張るぞ!」
皆の気合いは十分だな。では、皆に強化の【付与術】を施して、と。これで準備万端だ。よし、踏み込むとしようか。
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フィールドボスエリアに入りました。
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小島の中央まで全員が移動し終わった瞬間、全員にそんなインフォメーションが届く。さあて、ここのボスはどんな相手だ?
我々が警戒を強めた時、地底湖に変化が訪れる。我々から見て正面の位置の水面が盛り上がったかと思うと、水中から巨大な蛇のような何かが現れたのだ。こいつが、ボスか!
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種族:劣小蛇龍 Lv21
職業:地底湖の主 Lv1
能力:【毒牙】
【爪】
【水魔術】
【風魔術】
【水棲】
【浮遊】
【毒無効】
【龍の因子】
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劣小蛇龍、か。中々に恐ろしい外見をしている。パッと見ただけなら単に大きいだけの蛇だ。レベルも大して高くは見えない。
しかし、ズラリと生え揃った牙ややすりのような鱗、何よりも胴体の中ほどと尻尾付近の鋭い爪を持つ手足がただの蛇とは違うことを如実に物語っている。
間違いなく巨体と牙や爪を活かして戦うのだろう。さらに魔術も使えるので遠距離攻撃も備えている。しかも何だこの【龍の因子】という能力は?字面だけじゃどんな効果があるのかさっぱり解らない。
最初期のように相手の能力が全く見えないというのも面倒だが、中途半端な情報だけ与えられるというのも迷いが生じてしまうな。
「解らないことに囚われても仕方がない。いつも通り行くぞ、皆!」
「ウッシャアァァァ!」
「承知!」
魔術によって筋力や敏捷を強化されたジゴロウと源十郎が突っ込んでいく。二人の役割は徹底してボスの注意を引き続けることだ。
普通なら私の魔術の方が火力と攻撃頻度が高いせいで注意を引き続けるのは難しいのだが、二人共隙有らばそのまま自分が仕留めてやろうと急所を狙うので無視をさせないのである。…言葉にしてみると恐ろしい話だ。
今もジゴロウはその剛腕から繰り出される鉄拳によって劣小蛇龍をボコボコにしている。アイリス製の籠手にも数多くの傷がついているのだが、鱗に罅が入っている事から確実にダメージを与えているようだ。
源十郎もジゴロウの作った罅を正確に狙って剣を振るっている。しかもチャンスさえあれば目玉や口内にも剣を突き立てんとする始末だ。色々と徹底し過ぎているぞ、あのじいさん!
「Siyaaaaaaa!」
むむ、二人の猛攻に耐え兼ねたのか、水面から一気に飛び上がったか。その縦に割れた瞳孔からは明らかな怒気が籠っている。こっからが本番、ということか。受けて立とう!
宙に浮いた劣小蛇龍は、雄叫びを上げつつ魔術を使い出した。地底湖の水面が盛り上がって槍のような形状へと変容していく。水槍か?それが三本か。これを私のように【魔法陣】なしでやっているのは羨ましい限りだな。
「巴魔陣起動、水槍」
ボスと私の放った魔術が空中で激突し、相殺される。純粋な魔術師である私と同等なのか。
相手は中々の格上、しかも遠近両方に対応出来る万能型である。それは裏を返せば器用貧乏に陥り易い危険性を孕んでいる。結果、進化の格で劣っている私と魔術での威力が拮抗してしまうのだろう。
もし、私がソロのままであったなら、この時点で撤退を開始したに違いない。近付かれたら終わりな上、魔術でも同等の相手と戦って勝てるかも、等と都合よく考える程の楽天家ではないのだ。
しかし、今の私には仲間がいる。それも頼りに成りすぎる強い仲間が。ならば、私は私がやるべき仕事をこなすだけだ。
「魔術への対応は任せろ。ジゴロウは落とすまで回避に専念、源十郎は空中戦、行けるか?」
「わかった!」
「応さ!」
私は水面から飛び出てくる水槍や高い位置から降り注ぐ風槍を防ぐ。やはり、魔術戦ならば私に分があるようだ。結構余裕を持てているぞ。
源十郎は劣甲虫人になった事で背中に翅が生え、それを用いて空を飛ぶ事が可能となった。現実のカブトムシと同じく長時間に渡って滞空し続けるのは無理だが、空中の敵にも対応可能なのは有り難い。
しかし、このまま持久戦に持っていくのは愚策だ。どんな奥の手を持っているのかわからないし、源十郎は武器の関係で微少なダメージしか与えられていない。最大の火力を持つジゴロウの攻撃を活かさねば、勝機は無いだろう。
「アイリス、今だ!」
「ええーい!」
可愛らしい気合いの掛け声と共に放たれたのは、アイリスの触手だった。無数の触手を劣小蛇龍の尾に巻き付けて引っ張り出した。
何でもアイリスのような岩触手系の魔物にとって『触手を巻き付けて引っ張る』行動は【捕獲】という能力の恩恵によってかなり強化されるのだとか。私の【付与術】で筋力を強化されているにしても、劣小蛇龍と互角の綱引きが出来ているのは凄まじいな。
「ふん!」
「行くよ!」
そうして動きを止めた劣小蛇龍の後頭部に源十郎が剣を叩き付け、アイリスの触手を伝って劣小蛇龍の体表に取り付いたルビーが所々にある傷口にナイフを刺したり、酸を吐き掛けたりしだした。えげつない。
「Gyaooooooo!?」
余りの痛みに【浮遊】の制御が乱れた劣小蛇龍は、遂に地面へと墜落した。自由落下ではなくアイリスの力で引っ張り落とされたのでダメージも相当あっただろう。衝撃で割れた鱗が飛散し、地面に落ちた瞬間に青い粒子となって消えて行く。
「オオッラアァァ!」
「Syaeeeeee!?」
追い討ちとしてジゴロウの剛拳が劣小蛇龍を襲う。普段以上に声が大きいが、それはフワフワ飛んでジゴロウがまともな戦いが出来ないように立ち回った己の失策を呪うがいい。彼は今までの鬱憤を晴らさんとばかりに怒涛の連続攻撃を仕掛けている。アイリスが少し引く位の暴れっぷりだな。
「Sya…GRAAAAAAAAAA!!!」
「うおっと!」
「きゃっ!」
成す術もなくボコボコにされていた劣小蛇龍だったが、声の質が変わると共に鼓膜が破れんばかりの咆哮を上げた。どうやら強制的に戦いを仕切り直しする効果があるらしく、ジゴロウは派手に吹っ飛ばされ、アイリスの触手が不意に弾かれた。それでも空中で体勢を立て直して綺麗に着地する辺り、人間離れしたバランス感覚だな。
私が余計な事を考えている間に、劣小蛇龍の見た目は大きく変化していた。瞳は真っ赤に輝き、全身の鱗が逆立ち、角がうっすらと輝き始めたのである。怒りをトリガーとした第二形態と言った所か?マジギレモード、ということか!
しかも、体力バーはジゴロウの猛攻のおかげで半分を割っていたのに何故か体力バーがジリジリと回復しているぞ?ひょっとしてこのパワーアップには徐々に回復する効果が含まれているというのか?厄介な!
只でさえ強くなったのに、回復能力まであるのはマズい。相手の攻撃により一層の注意を払う必要があるのに、攻撃の密度を上げねばならないのだから。そのためには、劣小蛇龍を地面に縫い付けておく必要があるだろう。ならば私の出番だな。
「ごめんなさい!触手が!」
「いや、そう言う効果だったようだから気にするな。それよりもここからが本番だぞ、皆!アイリスは引き続き拘束に専念、私もそっちに参加する!魔術でのフォローが難しくなるぞ!」
「構いやしねぇよ!」
「うむ!」
「了解!」
よし、では下準備だ。ええと、相手の位置があそこだから…よし、行けそうだ!
「罠設置…行くぞ。巴魔陣遠隔起動!」
私は三つの魔法陣を劣小蛇龍の背後に展開させる。皆にはああ言ったが、私は劣小蛇龍が死ぬまで地面に縫い付けてやるつもりだ。さあ、私の多彩な魔術、特に深淵系魔術の本領をご覧戴こう!
洞窟のボスは蛇龍でした。予想通りの方も多かったかもしれませんね。
小さい上に劣っていますが、決して弱くはありません。レベルで負けていても『蒼月の試練』の敵よりも強いです。
その理由は世界における龍の立ち位置に関係してきます。情報の公開は後々。
手記の同時投稿は種族:虫人です。お楽しみに!




