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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十四章 山海と先住民達
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洞窟の奥で

「この音…何か変じゃない?」


 近くで繰り広げられる戦闘の音を頼りに進んだ我々であったが、途中で兎路は違和感を抱いたらしい。私には何がおかしいのか全くわからないが、仲間が気付いたことを軽く見ることは出来ない。何が変なのか、聞いてみるとしよう。


「変、とは?」

「ちょっと待って…うん。やっぱりそうよ。アンタ達も止まって音をしっかり聞いてみて」


 私が尋ねたのだが、兎路は答える前に自分で何かを確信したらしい。そして音を聞くように指示したので、言われるがままに我々は耳をすました。


 うーん、変だと言われても私には何が変なのか全くわからない。強いて言うなら、我々が近付いている間ずっと同じ激しさで戦い続けていることは気になる。ただ、これは非常にタフな魔物である可能性があるので違和感と言うほどのものではない。よし、降参だ!


「あれ?何か…この声、ループしてませんか?」

「そうよね?ループしてるわよね?」


 私とは違って、アイリスは兎路の抱いた違和感に気付けたらしい。ループしている、だと?そう言われてから音を聞くと、確かに全く同じ音が繰り返し流されているではないか!


 怪しい。怪し過ぎる。洞窟の中で魔物の争う音がループするなんてあまりにも奇妙だ。この先には何かあるとしか思えない。


「よし、試してみよう。召喚(サモン)動く骸骨(スケルトン)

「カタカタ」


 私は最も弱い不死(アンデッド)である動く骸骨(スケルトン)を召喚してみる。相変わらずカタカタと歯を鳴らす人骨は、戦力としてではなく囮として使ってみるとしよう。


 我々は動く骸骨(スケルトン)を先頭に再び音のする方へ歩き出し、十分に近付いたところで動く骸骨(スケルトン)だけを先行させてみる。動く骸骨(スケルトン)が洞窟の曲がり角を曲がった時、事は起きた。


ドドドドドド!!!


 動く骸骨(スケルトン)がその通路へ足を踏み入れた途端に、その奥から槍のようなものが高速で飛来したのである。最下級の魔物でしかない動く骸骨(スケルトン)は一瞬でバラバラにされて消滅してしまった。


「グオオッ!?」

「…漁夫の利を狙った横着者を嵌める罠、ですか。誰がこんなものを作ったんでしょうか?」

「そりゃあ決まってるでしょ。ね、リーダーさん?」

「大掛かりな罠を作る技術と知能を持つ者…恐らくは鉱人(メタリカ)だろう」


 危うく探していた存在に殺されてしまうところだった。あのままだったら先頭を歩いていたカルが串刺しにされていたことだろう。墜落して大ダメージを負ったばかりだと言うのに再び串刺しにされたら可哀想過ぎる。兎路に感謝しなければ。


 しかし参った。この先に鉱人(メタリカ)がいる可能性が高いのだが、我々はその罠を踏み抜いた形になる。友好関係を築きたいのだが、第一印象は良くないものになってしまったぞ?


「どうするか…安全にあの通路の先を確かめる手段があればいいのだが…」

「お任せください、イザーム様」


 恭しくそう言ったのはミケロであった。そうか、彼の目は触手の先に付いている。通路の入り口まで伸ばせば向こうを見ることが出来るだろう。まるで内視鏡検査に使う胃カメラのような使い方だ。


 早速、ミケロはフワフワと浮かんだ状態で未だにループする魔物の争う音がしている通路に向かい、触手を伸ばしてその向こうを覗き見る。しばらく観察した後、彼は此方に戻ってきた。


「残念ながら、人影のようなものは見当たりませんでした。あったのは通路の真ん中に置いてある大型の弩…いわゆる弩砲やバリスタと呼ばれる兵器だけです」


 ば、バリスタか。と言うことは、先程動く骸骨(スケルトン)を破壊したのは射出された投擲体なのか。そんな物騒な物を逃げ場のない狭い通路で使われたらたまったものではない。どうやら鉱人(メタリカ)は想像していたよりも過激な性格なのかもしれない。


 そんな彼らに近付けば近付くほど、罠の凶悪さは増していくと思われる。今回のように誰かが気付くとは限らない。【召喚術】による囮は常に先頭を歩かせる必要がありそうだ。


「ところで、音を出していたのは何だったんでしょう?それらしい装置はありませんでしたが…」

「言われてみればそうだな。CDかレコード、または蓄音機のような機械を使っていたと考えるのが妥当か」

「ふーん。古代の技術って奴?」

鉱人(メタリカ)が発明した可能性もありますよね!」

「会ってみないとー、何にもわかんないねー」


 ウールの言う通りだ。鉱人(メタリカ)に会ってみないことには何もわからない。その遭遇が他の種族(レイス)のように平和的なものになることを祈るばかりである。



◆◇◆◇◆◇



ガラガラガラ!


「…ここはまるで忍者屋敷じゃないか」


 あれから洞窟を進んだのだが、予想した通りに殺意溢れる罠だらけの魔境であった。壁から槍が飛び出る、上から鉄球が落ちてくる、床から炎や雷が迸る、底が針山となった落とし穴など多種多様だ。


 今も目の前で囮役の動く骸骨(スケルトン)達が罠を踏んだ。すると天井から導火線の付いた油壺が落ちて火達磨にされ、瞬く間に灰にされてしまった。


「ルビーがいる時に来れば楽出来たんでしょうけど…」

「仕掛けた方からすれば反則臭い攻略法に怒っているかもしれません。あるいは危機感を抱いているかも…気を付けましょう」


 アイリスの言う通り、私達はかなりの力業で攻略している。囮役の動く骸骨(スケルトン)を複数体並べて進み、わざと罠を踏ませて安全を確保した後の道を通っているのだ。狡いと言われても仕方がないし、警戒されて然るべきだろう。


 ただ相手もそれを想定しているらしく、罠のスイッチには複数回の判定があるものが混ざっている。一度目を踏んで罠は終わりだと思わせておいて、再びスイッチを踏むと今度は別の罠が起動するのだ。


 警戒していなかった時に一度ミケロが引っ掛かった。彼の触手が数本千切れ飛び、治療にはそれなりに時間が掛かった。殺意が溢れていて勉強になったよ、うん。


「ええっと…おや?この先に広い空間があるようです」


 相変わらず胃カメラ式偵察を任せているミケロが、広い空間を見付けたと言う。これまでの経験上、どう考えても罠であろう。そのまま突っ込むのは危険なので、セオリー通りに動く骸骨(スケルトン)達を突撃させた。


 広い空間と言うこともあって罠のスイッチがどこにあるのかはわからない。なので適当に歩かせたのだが、一向に罠は起動しなかった。


「罠がない…?ここに来てそんなわけがない」

「私もそう思います」

「同感ね。でも他に道はないし、進むしかないんじゃない?」

「ああ。ここだけは自力で切り抜けるしかないようだ」


 皆も察しているようだが、ここは一種のキルゾーンなのだと思う。罠があるとすれば、それは確実に殺すための仕掛けなのだ。手動かもしれないし、強力な兵器を用意しているかもしれない。


 何もわからないのは恐ろしい。しかし、ここは覚悟を決めた我々は広間に足を踏み入れた。さて、何が起きる!?


「…何もないぞ。我々の思い過ごしか?」

「道中が罠だらけだったから無駄に警戒してしまったのかも」


ガコン!


 何も起きなかったことで警戒を緩めるのを待っていたかのように、我々が来た方向の通路に金属製の柵が降りる。慌てて周囲を確認すると、広間の外に繋がっていたと思われる通路にも柵が降りているではないか!


 これで閉じ込められた訳だが、閉じ込めるだけで終わりではない。罠であった以上、このまま餓死するまで放置するような雑な殺し方をする場所だとは思えない。私の嫌な予感は想像以上に悪い形で現実になった。


「壁が!?」

「ば、バリスタ!?それもこの数は…!」


 バカッと音を立てて広間の壁が剥がれ落ちると、そこには巨大な弩砲が置かれているではないか!しかもそれらは広間の全方位からこちらを狙っている。


「魔法陣起動!呪文調せ…」


 弩砲は容赦なく放たれ、ご丁寧にも【爆裂魔術】を付与していたのか飛翔体が着弾すると同時に小規模な爆発と共にその破片が撒き散らされる。その射撃は一分ほども続けられ、洞窟には爆発音が反響して木霊した。


 爆発の音が止むと、金属の柵がせりあがって向こうから何かがやって来る。ガシャガシャと喧しいので、金属製の鎧を着ているらしい。音は徐々に大きくなっているので、爆発によって巻き上げられたにしては妙に多い砂塵を掻き分けながら近付いているのだろう。さて、()()()()()()()


「ふう、危なかった」

「!?」


 まさか我々が生きているとは思っていなかったのか、砂塵の向こうにいる者は驚いたようにのけ反っている。実際、回避はかなりギリギリであった。


 先に見ていた弩砲の威力から、私はどう足掻いても魔術の防壁では防ぐことは無理だと判断した。なので咄嗟に使ったのが地穴(アースホール)である。可能な限り深い穴を私たちの足下に発生させて、そこに隠れてやり過ごしたのだ。


 穴の存在を気付かれ難くするために、私は【砂塵魔術】によって巻き上がる粉塵を増やして煙幕にしていた。上手く行ったようで何よりである。


 塹壕で息を潜める兵士の気分を味わったよ。爆風や飛翔体の破片と穴に落ちた衝撃もあって、我々は誰一人無傷ではない。しかし、同時に誰一人として死んではいなかった。


「やるなら先に言って…ってのは無理な注文よね」

「流石はイザーム様!」

「怖かったー」


 飛行する装備を持っている私に続いて身軽な兎路と浮遊出来るミケロ、そして四本脚を器用に使ったウールが穴の底から這い上がる。悪かった、兎路。注意する余裕なんて全くなかった。次が無いことを祈るが、その時もきっと余裕なんてないだろう。


「め、目が回るうぅ…。あっ、カルちゃん。ありがとう~」

「グオオン!」


 アイリスは穴に落ちたことでひっくり返り、さらに目を回していたらしい。それをカルは優しく抱えあげて穴から出してあげていた。優しい子に育ってくれて私は嬉しいよ!


 私が【砂塵魔術】を使うことを止めたことで減った砂埃はすぐに薄れ、その向こう側にいる相手の姿が露になった。その姿を見た我々は全員が口を揃えてこう言った。


「「「「戦闘ロボ?」」」」


 我々の前に立っていたのは、正しくロボットであった。上半身は人型で右腕の肘から先は剣に、左腕の肘から先は弩が装備されていた。両肩にはそれぞれ異なる謎の兵器が取り付けられていて、どんなものが飛び出すのか想像もつかない。


 そして下半身は腰の部分から放射状に四本の脚が広がっている。脚には武装があるようには思えないが、無いと断言することも出来ない。用心するに越したことはないだろう。


 正直に言おう。カッコいい!カッコいいぞ!ロボットアニメを見ていた子供の頃の心を思い出す。私だけではなくミケロとウール、そしてアイリスも興奮しているようだった。


 ロボットを見てもピンと来ないカルは我々の反応に戸惑いつつ威嚇しており、兎路は胡散臭いモノを見るようにして警戒している。そうだ、イカンイカン!今は呆けている場合ではない。これはリアルで大きなフィギュアではなく、歴とした敵なのだ!


 相手は既に戦闘状態に入ったようで、キュイーンと音を立てながら頭部にあるスリットからは紫色の光が漏れていた。ぐぬぬ、集中しなければならない時にカッコいい動きをするんじゃない!


 ええい!こうなったら破壊してからパーツを持ち帰り、アイリスに組み上げて貰うまでよ!そのためにも全力で戦ってやろう!

 アー○ード○アの新作、まだですか…?


 次回は3月22日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
AC6、発売されました 皆さんの願いが叶ったのですよ
[一言] 最後のキラーマシンじゃね? 戦ったら仲間になりそうだね
[一言] アー○ード○アは四つ足もいいけど、鳥足の方が好きなんですよね、なんかこう、メカとしてのえぐさがグッとくるというか。
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