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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二章 仲魔と共に
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洞窟探検 その三

 同時投稿は種族:粘体です。

 ログインしました。トイレや水分補給、早めの昼食を済ませてからもどってきたぞ。


「戻った…って、私が最後か」

「シュルルル(おかえりなさい)!」

「プルルン(お帰り)!」


 女性陣は元気に出迎えてくれた。しかし、先にいる源十郎とジゴロウ(野郎共)は無言である。その理由はただ一つ。二人揃って闘技大会の生放送を視聴しているのだ。


「二人とも、戻ったぞ。出発したいのだが?」

「ギャギャ(ちょっと待て)!」

「カチカチチ(今良いところなんじゃ)!」

「…その試合が終わるまでだぞ」


 二人揃って似たような事を言いよって…。しかし二人は梃子でも動きそうに無いから、今やってる試合まではいいだろう。まったく、録画をしているのだから今無理に見る必要も無かろうに。


 しばらくすると二人は呆れたようにため息を吐いてから立ち上がった。彼らの期待を裏切る何かがあったのだろう。


「何やら二人ほどテンションが低いようだが、出発するぞ」

「シュル(はい)」

「プルル(OKよ)」

「ゲギャァ(へぇい)」

「カチカチカチ(わかったわい)」



◆◇◆◇◆◇



 緩やかな坂を下っていってしばらくは何事も無かった。入り口からここまでの密度が嘘のようだ。


 しかし、何もいない訳ではないらしい。少し奥の方で何かが動く気配がしている。それは皆が気付いているようで、警戒しながら進んでいた。


 そして五人の前に現れたのは、全員が見慣れている魔物。されど全員が敵として出会ったのは初めての魔物だった。その鑑定結果がこれだ。


――――――――――


種族(レイス)骸骨戦士(スケルトンウォリアー) Lv12

職業(ジョブ):見習い戦士 Lv2

能力(スキル):【剣術】

   【筋力強化】

   【防御力強化】 

   【暗視】

   【状態異常無効】

   【光属性脆弱】

   【打撃脆弱】


――――――――――


 私、の同族である。これは、アレだな。見慣れていると思っていたが、敵として見ると結構怖いぞ。やっぱりホラーじゃないか。


「ギャギャッギャ(野良の骸骨かぁ)」

「ガチガチ(不気味じゃのぅ)」


 色々と言いたい事はあるが、とりあえずやってしまおう。何、相手は私の同族だ。何をされるのが一番困るのかは、私だけではなく皆も一番よく知っている。


「シュルル(光球(ライトボール))!」

「オォォ…!」


 アイリスの放った【光魔術】の一発で沈んだ。眩い光の球が触れた瞬間、謎の力で繋がっていた関節がバラバラになってそのまま地面に落ちたのである。あまりにも呆気ない終わり方に、全員が絶句してしまった。


 だって一撃なんだもの。アイリスは魔術特化ではないのに、一撃。私と同格の同族が、一撃。マジかよ、不死(アンデッド)ってこんなに光属性に弱いのか!


「グッギャ(ざっこ)」

「言うな、悲しくなる」

「プルプル(今のは)…」

「シュルリュシュシュ(能力(スキル)レベルが足りなくても)…」

「カッチカチ(わかるのぅ)」


 【言語学】のレベルがまだ足りていない三人でも、ジゴロウの呟きが何を意味しているのかは伝わったらしい。つまりは彼らも似たような事を考えていたと言うことだ。


 く、悔しくないもんね!私は【光属性脆弱】を何段階も緩和させてるし、【深淵の住人】の効果で光属性の耐性も持ってる。あそこまで簡単にやられたりはしないもんね!


 そう考えると、ジゴロウを救出した時、真っ先に魔術師を殲滅したのは我ながら超ファインプレーだったんだな。もしそうしてなかったら、格好を付けておきながらアッサリと浄化されていただろう。ただの()()奴になるところだった。


「そんな事より、死体が霞のように消えてしまったが…。ドロップアイテムは剥ぎ取れないのか?」

「シュシュシュル(わからないですね)」

「もしかすると、【光魔術】で止めを指すとドロップが無いのかもしれないな。次は普通に倒してみよう」


 そしてその機会はすぐに訪れる。新たな骸骨戦士(スケルトンウォリアー)が物陰から現れたのだ。それに対して、今回はジゴロウが相手をすることになった。


「ギャア(オラァ)!」


 骸骨戦士(スケルトンウォリアー)はジゴロウの拳を盾で受けようとしたものの、動きの速さに全く付いていけずに頭蓋骨を粉砕された。やっぱり弱いな。


 今度は死体が、いや元々死体なのだから残骸と言うべきか?とにかく、それが地面に残ってくれたな。では、剥ぎ取ってみよう。


――――――――――


魔骨 品質:劣 レア度:C(普通級)

 魔力を含んだ骨。様々な用途に用いられる。


――――――――――


 これが魔骨か。見た目は人間の大腿骨みたいだな。【錬金術】や【調薬】、更には畑の肥やしにもなると本に書いてあった。


 しかし、私にとってはもっと重要な意味がある。これ、【死霊魔術】の創造に必要な素材なのだ。集めれば私が召喚獣のような仮初の肉体しか持たない木偶の坊ではなく、本物の身体を持つ下僕を造り出せる。胸が踊るではないか。


 私は皆に事情を説明し、これから余裕があれば動く骸骨(スケルトン)系の魔物と遭遇した際には【光魔術】を使用せずに倒して欲しいと頼んでみた。皆、そのくらいならば構わないと快く応じてくれ、それからしばらくは動く骸骨(スケルトン)狩りが始まるのだった。



◆◇◆◇◆◇



――――――――――


種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【杖】レベルが上昇しました。

【魔力制御】レベルが上昇しました。

【召喚術】レベルが上昇しました。

【付与術】レベルが上昇しました。

【魔法陣】レベルが上昇しました。

【死霊魔術】レベルが上昇しました。

【呪術】レベルが上昇しました。

新たに麻痺と睡眠の呪文を習得しました。

【降霊術】レベルが上昇しました。

【邪術】レベルが上昇しました。

【鑑定】レベルが上昇しました。


――――――――――


 いや、入れ食い状態だな!どうやらここは動く骸骨(スケルトン)系の巣窟らしい。さっきも出てきた骸骨戦士(スケルトンウォリアー)を始め、一段階下である動く骸骨(スケルトン)や私の進化先の一つであった骸骨魔術師(スケルトンメイジ)、変わり種としては動物の動く骸骨(スケルトン)である動く獣骨(ボーンビースト)とその進化系であろう骸骨獣(スケルトンビースト)にも遭遇した。


 群れで出てくる事もあったが、そのときはアイリスの【光魔術】に頼る事でさっさと数を減らしたので消耗はほとんど無い。お陰で魔骨は有り余るほどに入手出来た。しばらくは試行錯誤して失敗しても問題はないだろう。


 それにしても、魔骨がドロップするときの法則に早目に気付けたのは幸運だったな。最初はジゴロウかルビーがさっさと頭部を粉砕あるいは頚部を切断していたのだが、アイリスが「頭を残して倒してみましょう」と提案したのが功を奏した。すると、ドロップとして頭蓋骨の魔骨が出たのである。


 それから色々と検証した結果、ドロップする魔骨は体力が無くなった際に壊れていない部分に絞られる事がわかった。そのお陰で全てアイテムとしての名称は魔骨だが、様々な部分のそれを確保出来た。今からどんな不死(アンデッド)を造り出すかの妄想が捗るな!


 また、サポート重視で術を使っていたお陰で中々上げにくい魔術のレベルが上がってくれたな。特に【呪術】は新しい呪文を覚えるに至った。麻痺と睡眠、という状態異常を引き起こす呪文である。これは効果がそのままだから説明は不要だろう。


「やりました!」

「おお、身体が軽いよ!」


 しかしそれ以上に目出度いのは、他の三人の【言語学】レベルが異種コミュニケーションを取れるまでに成長し、さらに種族(レイス)レベルが10に達したことで進化した事だろう。アイリスは劣職人触手レッサーローパーワーカーに、ルビーは消音粘体(サイレントスライム)に、そして源十郎は劣甲虫人レッサーインセクター・ビートルになったのである。


 アイリスの劣職人触手レッサーローパーワーカーは、生産を得意とする種族(レイス)だ。生産品の仕上がりに補正が掛かるようになり、更にこれからは生産活動でも種族(レイス)レベルを上げられるようでとても喜んでいた。


 ルビーの消音粘体(サイレントスライム)はざっくり言えば暗殺に特化した粘体(スライム)だ。これは彼女が盗賊系の職業(ジョブ)を活かすべく【隠密】、【忍び足】、【奇襲】を全て10レベルまで上げた事で獲得した【暗殺術】という能力(スキル)を持っていた事で解放された進化先なのだろう。


 色はほぼ完全な無色透明で、色彩を多少自由に操れるという。速度も上がり、加えて移動時の音がほぼ無くなったので暗殺者っぷりに磨きが掛かったと言えるだろう。


 源十郎は劣甲虫人(レッサーインセクター)、即ち晴れて幼虫から蛹を挟まない完全変態を成し遂げたようだ。彼の見た目を一言で言えば、二足歩行のカブトムシである。より詳しく言えば、四本の腕を持つカブトムシをモチーフにした鎧を纏った小柄な男性、だな。ただし、その鎧は外骨格という歴とした肉体の一部なのだが。


 この姿となった時、源十郎はようやく初期装備である剣を装備出来るようになった。今更だが彼は見習い戦士、即ち武器を握ってこそ本領を発揮出来る職業(ジョブ)に就いていたのだ。今は一ランク上の戦士になっている。どういう仕組みかこれまで通り糸を吐くことも出来るようで、一気に出来ることの幅が広がったようだ。


「くははっ!爺さん、やるじゃねぇか!」

「カカッ、お主こそ!」


 早速、身体の動きを確かめるべくジゴロウと源十郎はスパーリングをやっている。源十郎は()()ジゴロウと互角にスパーリングが出来るほどの戦闘能力を持つようだ。こいつもリアルチートかよぉ!?


 なんなんだろう?この五人の内、リアルチートが三人もいるんですがそれは…。はっ、まさかルビーも何か秘めたる力があるのでは?い、いや、考えすぎだな。


「その辺にして、先に進まないか?ここも安全地帯、という訳じゃないんだから」

「わかったぜ、イザーム。爺さん、また後でヤろうや」

「うむ、稽古を付けてやろう」


 拳を交えてより意気投合したのか。仲がいいのは良いことだ。



◆◇◆◇◆◇



「ちょっと待って!この壁、何かおかしいよ!」


 動く骸骨(スケルトン)達を倒しながら進んでいると、壁に張り付きながら進んでいたルビーが違和感に気づいた。ルビーが粘体の一部を伸ばして怪しい位置を叩く。他の四人が集まって良く観察すると、確かにうっすらと継ぎ目のようなものが見える。奥に何かあるのだろうか?


「ルビー、これは仕掛け扉のような物だと思うか?」

「…ううん、違うよ。これは魔術で壁を作って通路を埋めただけっぽいね。ボクの職業(ジョブ)レベルが低いから見破れないのかも知れないけど、ね」


 ふむ、隠し扉ではないのか。しかし、誰かにとって隠しておきたい何かがこの奥にあるということ。これは…気になるな。


「ジゴロウ、いけるか?」

「勿論よ…オラァ!」


 ジゴロウが壁を力任せに殴り付けると、彼の腕がめり込んだ。進化したことでとんでもなく力強くなったものだな。


「…ルビー、アタリだ。俺の腕が貫通してやがる。この奥は空洞になってるぜ」

「よし、このまま壊してしまおう。…やれ」


 私は召喚獣に命令して土の壁を崩させる。こういう疲れるだけの単純作業はやはり下僕にやらせるのが一番だ。


 私の下僕達は黙々と作業を続け、壁を完全に取っ払った。そこには人が二人並んで歩ける位の通路が続いている。お宝の匂いがする…気がするな。


「ルビーが先頭、その後ろに源十郎、中央はアイリスで私はその後ろ。ジゴロウは一番後ろを頼む。慎重に行くぞ」


 四人は無言で頷く。さあ、脇道探索の始まりだ。物語の延長であるゲームなら、きっとこの意味深な通路には何かあるに違いない。出来れば我々にとって有意義な宝であって欲しいものだな。

 新たな素材入手と仲間の進化回でした。


 次回は強敵との戦闘回です!

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【誤字報告】  それにしても、魔骨がドロップするときの法則に早目に気付けたのは幸運だったな。 ⇩  それにしても、魔骨がドロップするときの法則に早めに気付けたのは幸運だったな。
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