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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二章 仲魔と共に
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幼虫と粘体

 プレイヤーらしき粘体と幼虫を勧誘に向かった二人。果たして、相手の性格キャラはどんな属性なのか…?


 予想してみてください!

――――――――――


【降霊術】レベルが上昇しました。

【邪術】レベルが上昇しました。


――――――――――


 積極的に【降霊術】と【邪術】を使いつつマップ上にあるジゴロウのアイコン目指して進む。使用感としては格下相手ならまさに無双状態になる、だな。【邪術】で幻覚を見せている間に【降霊術】で喚んだ亡者に突撃させ、動けなくなった相手に即死を使う。まだ成功率は低いが、相手が訳も解らず倒すと言うのは中々に悪役チックだ。


 あと、アイリスはいない。彼女はようやく可能になった生産に夢中であるし、今は急いでいるからだ。この言い方で分かるだろうが、劣岩触手(レッサーローパー)という種族(レイス)はとにかく鈍足なのだ。硬い外殻と無数の触手という手数と高い防御を両立させているのだが、如何せん遅すぎるのが最大の弱点なのだ。


 その速度は全力疾走でも魔術師の歩きに劣るほど。昨日は私が敏捷強化(スピードブースト)を二重に掛けた状態でも、危うく日の出に間に合わないところだったくらいである。その後、彼女が申し訳無さそうにしていたのは言うまでもない。


「おーい、こっちだ!」


 前方から聞こえるのはジゴロウの声だ。余り大きな声を出すべきではないと思うのだが、まあいい。そういう細かい所を気にしないのが彼なのだ。


「お、進化したのか?三つ目って、カッチョいいなぁオイ!」

「そっちこそ。小鬼(ゴブリン)とは思えん恵体だな。刺青もいい感じだ」


 ジゴロウは私と同じく進化していた。その身長こそ今までと大差ないが、身体を覆う筋肉はとても分厚い。体重で言うと倍以上になっているのではないだろうか?


 しかも全身に金色の刺青が刻まれている。虎を模したと思われるそれは、まるでどこかの部族に伝わる戦化粧のようだ。私も大概レアな種族になったと思っていたが、彼もまたそうだったのだな。


「へっへっへ!この良さが分かるたぁ、イザームとはいい酒が飲めそうだぜ!」

「確かにそうかもしれんが、私は物理的に酒を飲めんよ。さて、種族(レイス)の褒め合いはこの辺にして本題に移ろう。例のコンビは?」

「おう、着いて来てくれ」


 私はジゴロウの先導に着いていく。すると、何の変哲も無い木へとたどり着いた。


「何も無いぞ?」

「焦んなって?ホラよっと!」

「…蓋?」


 木の根元には奥まで続く穴があり、その入り口を土と枝葉で出来た蓋が塞いでいる。まるで隠し部屋のようだが、何のインフォメーションも無いので違うのだろう。恐らくはジゴロウの話で出てきた幼虫とスライムのどちらかが作った隠れ家で違いない。


「この奥にコンビで居やがった。俺が食いに来たと思ったみてぇでな、いきなり襲いかかって来たぜ」

「そうか。まあ、明らかに普通の魔物ではないからな。怖がるのも無理はないだろうよ」

「んで、どうする?俺とアイリスみたいに助けるのか?」

「仲間への勧誘はしてみよう。向こうも損は無いだろうしな」

「じゃあ行こうぜ」


 私とジゴロウは地中に続く穴に入っていく。穴は人間一人ならば普通に歩ける幅がある。人間よりも細い私と小さいジゴロウならば余裕だな。


 真っ暗だが魔物はほぼ【暗視】を持っているので問題は皆無だ。しばらく歩いていると、件の二匹が見えてきた。


 彼らの姿はジゴロウのメッセージに書かれていた通りのものだった。大型犬位の大きさがある巨大な幼虫と、その頭の上に鎮座しつつプルプルと震えるほんのり青いスライム。異色の組み合わせである。


「プルプル(うわわ)!」

「カチカチ(不味いのぅ)」


 両者共に私たちを見て警戒しているようだ。明らかにヤバそうな小鬼(ゴブリン)が去ったと思ったら、今度は黒いローブに第三の眼を持つ骸骨の仮面を被ったあからさまにヤバい奴を連れて戻ってきたのだ。むしろ死を意識出来ないなら、その者の脳ミソは脳科学の標本となれる位には想像力が欠如しているだろうな。


「カチカチカチチ(ここは儂が命を賭して)…」

「待ってくれ。我々に交戦の意思は無い」

「カチ(何)?」

「プルル(えぇっ?)」


 よし、どうやら自暴自棄になってはいないようだ。ここからは交渉タイム。魔物仲間を増やすチャンスだ。一言一言に注意せねば!


「まず、突然貴殿方の隠れ家に押し入った事を謝らせて欲しい。本当に申し訳ない。ただ、私は貴殿方と話がしたかったのです。我々と同じく魔物を選んだプレイヤーと、ね」


 私はそう言いつつ仮面を取り、素顔を曝した。あ、これ失敗したかも。メッチャビビってますやん。三つ目の骸骨仮面を外したら、内側の顔はその色違いだったら私でもビビるわ!


 なんだか趣味の悪いマトリョーシカを見せた気分だな。身体が強張ってるぞ。しかし今更だ。このまま説得してみよう。


「ああ、言葉の事なら問題ありません。私は【言語学】という能力(スキル)を所持していて、お二人を言葉を理解できますから」

「カチッ、カチカチ(何と、本当か)?」

「ええ、本当ですよ。私はイザームと申します。お二人の名前をお聞かせ願えますか?」

「カチガチガチ(儂は源十郎じゃよ)」

「プルプルルプル(ボクはルビーだよ)」

「なるほど、源十郎さんとルビーさんですか。単刀直入に申し上げますが、お二人共私達のアジトに来ませんか?ここよりは余程安全だと思いますよ」


 固有名詞を口にしたことで、二人は私が本当に言葉を聞き取れている事を信じたらしい。疑われる程度に怪しい風体という自覚はあるからな。


 そして私の提案に驚いたのか、源十郎とルビーは互いに顔を見合わせているようだ。それからしばらくはその状態が続いた。フレンドメッセージかパーティーチャットで話し合っているのだろう。そして最終的に二人は同時に答えた。


「カチカチガチッ(お願いしようかのぅ)」

「プルルゥ(お願いします)!」


 おお、説得も必要無かったか。安全な場所へ行けるとなればそりゃあ食い付くわな。


「では、パーティー申請を送りますから、加入して下さい」

「カチ(うむ)」

「プルプル(はーい)」


 これでOK、と。


「それでは出発しましょう。到着するまでは非常に怪しい場所を通る事になりますから、そのつもりで」



◆◇◆◇◆◇



「カチ、ガチガチカチ(ほっほ、小粋な仕掛けじゃ)」

「プルプル(凄いね)…」


 研究室の仕掛けに、二人とも驚いているようだ。欲しかった反応、ありがとうございます。


 道中で私達の事を話しつつ、二人の事も聞いてみた。まず源十郎だが、種族(レイス)は『虫人幼虫(インセクターラーヴァ)』だそうで、進化すれば二足歩行四腕の虫と人間の中間から虫寄りな見た目になるのだとか。


 キャラクタークリエイトの時に最初は幼虫からと言われなかったらしく、いざゲームの大地を踏み締めた時には土の中だったそうだ。…よく止めなかったな。


 ルビーの方は『粘体(スライム)』で間違いない。彼女は所謂サクセスストーリーが好きで、殆どの物語で最弱扱いされる粘体(スライム)で成り上がってやろうと息巻いていたようだ。


 しかし、源十郎が困っていると聞いていてもたってもいれずに初期位置からコソコソと助けに行った結果、合流したらしい。しかし、合流したからと言って何が出来る訳でもなく、二人で引き籠もりを余儀なくされたのだとか。


 『困っていると聞いて』からわかるように、この二人はリアルでの知り合い、というか家族なんだとか。関係は祖父と孫娘。仲が良いな。


「あ、おかえりなさい」

「ただいま。紹介しよう。『虫人幼虫(インセクターラーヴァ)』の源十郎と『粘体(スライム)』のルビーだ。二人とも、彼女がさっき話した『劣岩触手(レッサーローパー)』のアイリス。仲良くして欲しい」

「シュルシュル(よろしくお願いします)!」

「カチカチ(よろしくお願いする)」

「プルプル(よろしく)!」


 さん付けを止めたのはジゴロウ達と同じ理由だ。三人のファーストコンタクトは上手く行ったようだな。この調子ならすぐに打ち解けるだろう。必要な時は狩りを手伝うと言ったし、これでいいかな。


「ここにある物は壊さなければ全部使って構わないよ。じゃあ私は少し狩りに行って来る。何かあったらメッセージを飛ばしてくれ」

「わかりました!行ってらっしゃい!」

「あ、イザーム。俺も着いていっていいか?コンビの方が色々と便利だろ?」

「そうだが、今日は下水道のマップ埋めを進めるつもりなんだ。それでもいいか?」

「いいぜ。強ぇ奴が出るならより良いな」


 ふむ、だったら南側に行くか。進化済みの二人でなら鼠男(ラットマン)が複数でも十分戦えるだろう。行くか!



◆◇◆◇◆◇



――――――――――


種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【杖】レベルが上昇しました。

【魔力制御】レベルが上昇しました。

【呪術】レベルが上昇しました。

【降霊術】レベルが上昇しました。

【邪術】レベルが上昇しました。


――――――――――


 いや、ホントに楽だな。ジゴロウは鼠男(ラットマン)が二人相手でも余裕すら見せている。三人以上になると流石に厳しいようだが、彼が対応している間に私が葬れば同じこと。私達はサクサクと順調に南側を攻略していった。


「そう言えばジゴロウは何に進化したんだ?因みに私は深淵骸骨魔術師アビススケルトンメイジだ」

「俺ァ獣狂小鬼(ベルセルクゴブリン)だってよ。何か狂小鬼(バーサークゴブリン)って奴の上位互換らしいぜ?」


 何でも獣狂小鬼(ベルセルクゴブリン)は体力と筋力、そして敏捷が上昇した代わりに、武器系と魔術系の能力(スキル)の獲得が困難になるんだとか。私とは正に正反対。足して二で割ると丁度いいのか?いや、器用貧乏になるだけか。


「ほうほう。私も骸骨魔術師(スケルトンメイジ)の上位種だ」

「そうなのか。奇遇だな!」

「いや、奇遇ではないと思う。私達は何らかの条件を満たしていたんだろう」


 そうだ、偶然のはずは無い。私ならば深淵系魔術を全て獲得していたことだろう。ジゴロウもそう言った条件を満たしていたはずだ。


「条件ねぇ?あれか、『蒼月の試練』って奴か?ってかそれ以外思い付かねぇわ」

「『蒼月の試練』?お前も攻略していたのか?」

「お前も、ってことはイザームもか!アレ、強かったよなぁ」


 ジゴロウは思い出しつつ頷いている。私に出来たのだから、ジゴロウにも出来るのは当然か。一応、公式掲示板はチマチマ確認するように心掛けているのだが、そこでは条件の解析や考察などが行われていたな。


「ああ、強かった。報酬は美味しかったが、私としてはもう二度と戦いたくないな」

「俺は是非とももう一戦お相手願いたいがな」


 この戦闘狂め。しかし、ジゴロウも試練を突破したということは、報酬を受け取ったと言うことか。それらしい装備は無いが…?


「報酬は何だったんだ?ああ、言いたくなければ言わなくてもいいが」

「別に構わねぇよ。この腰巻と刺青、それによくわからん宝石だったぜ。俺、【鑑定】持って無ぇからわからんけど。良い機会だし、イザームが見てくんね?」

「良いぞ。どれどれ…?」


 私は言われるままにジゴロウの報酬を【鑑定】する。その結果がこれだ。


――――――――――


月虎の腰巻 品質:神 レア度:G(神級)

 『月ノ猛虎』の皮で出来た腰巻。破壊不可。所有者固定。

 真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。

 初期効果:【筋力増強】Lv2、【物理防御上昇】Lv2

      【猛虎ノ加護】


神獣の刻印 品質:神 レア度:G(神級)

 強力な神獣を討ち果たした証。所有者固定。

 真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。

 初期効果:【神獣化】、【魔術耐性】Lv2

      【敏捷強化】 Lv2


神獣の魂玉(虎) 品質:神 レア度:G(神級)

 神獣の魂を封じた宝玉。破壊不可。所有者固定。

 飲み込む事で神獣の因子を得る。


――――――――――


 私の報酬に負けず劣らずの性能だ。そして同じようにジゴロウの戦い方にマッチしている。やはり、試練の報酬はとても豪華だな。私は【鑑定】結果を彼に伝えた。


「へぇ、この宝石って食っちまうモンなのか。んじゃ、いただきますっと!」


ゴクン!


 ジゴロウは一切の躊躇無く『神獣の魂玉(虎)』を口に放り込んでそのまま嚥下する。思い切りが良すぎるぞ?


「何か変化はあったか?」

「あー、神獣の魂玉(虎)を取り込んだ、ってインフォが流れただけだな。能力(スキル)とか一切無いわ」

「そうなのか…。なら、これにも何か条件があったようだな。因子を得る、とあるし」

「ふーん、そっか。まあ何でも良いや。行こうぜ」

「…そうだな。行こう」


 本当にどうでも良さそうだな。どこまで行っても戦いを楽しむ事にしか興味がないと見える。私なら検証やら考察やらで一時間は浪費するだろうな。これは私の欠点のような気もするが。


 こうして私達はどんどん南に進んでいく。経験値稼ぎ兼マップ埋めがどこまで進むのか、とても楽しみだ!

 『ボクっ娘スライムとイモムシじいちゃん』がコンビの正体でした。なんだか絵本のタイトルみたいですね?


 『骸骨魔術師の手記』というタイトルで設定集を同時投稿する予定です。設定好きな方は是非ご覧ください。


――――――――――


名前(ネーム):イザーム

種族(レイス)動く骸骨(スケルトン) Lv10 max!

深淵骸骨魔術師アビススケルトンメイジ Lv11 up!

職業(ジョブ):見習い魔術師 Lv10 max!

   →見習い深淵魔術師 Lv1 up!

称号(タイトル):理の探求者

   称号を得し者

   異端なる者→深淵を知る者→深淵へ潜る者

   下剋上

   神算鬼謀

   試練を越えし者

能力(スキル):残りSP 60

   【杖】Lv14 up!

   【魔力制御】 Lv16 up!

   【土魔術】 Lv9

   【水魔術】 Lv9

   【火炎魔術】Lv0

   【風魔術】 Lv9

   【暗黒魔術】Lv2

   【虚無魔術】Lv1

   【召喚術】 Lv10

   【付与術】 Lv7

   【魔法陣】 Lv9

   【死霊魔術】 Lv7

   【呪術】 Lv6 up!

   【罠魔術】 Lv7

   【降霊術】 Lv2 up!

   【邪術】 Lv2 up!

   【考古学】 Lv7

   【言語学】 Lv6

   【薬学】 Lv7

   【錬金術】 Lv7

   【鑑定】 Lv10

   【暗視】 Lv-

   【隠密】 Lv10 max!

   【忍び足】 Lv9

   【奇襲】 Lv7

   【状態異常無効】 Lv-

   【光属性脆弱】 Lv6

   【打撃脆弱】 Lv10

   【不死の叡智】 Lv1

   【深淵の住人】 Lv1

   【深淵のオーラ】 Lv1

固有能力(ユニークスキル)

   【イーファの加護】


――――――――――

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― 新着の感想 ―
【推敲】 「おう、着いて来てくれ」 ⇩ 「おう、付いて来てくれ」  私はジゴロウの先導に着いていく。 ⇩  私はジゴロウの先導に付いていく。 「あ、イザーム。俺も着いていっていいか?コンビの方が色…
[一言] こうゆうコメント?で他作品の名前とか出していいのかわからないけど、オーバーロードに似ていて、なんか面白いです。このキャラ、あのキャラに似てるな〜と思いながら読んでます。 似ていなくても、普…
[気になる点] 誤字報告 「ああ、言葉の事なら問題ありません。私は【言語学】という能力(スキル)を所持していて、お二人を言葉を理解できますから」 ここ、お二人の、ではないでしょうか。
2019/11/13 13:24 退会済み
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