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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十章 灼熱の砂漠
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砂魔蟲

 私達は可能な限りの速度で以て戦場へと向かう。ぐんぐんと双方の距離が縮まって行くと、私と戦士の一人の目が合った。此方に気付いたか!


「助けはいるか!?」

「っ!頼む!」


 我々の正体はわからずとも、とりあえず援軍だと判断してくれたらしい。私の呼び掛けに、一回り体格の大きな戦士が即答したのである。よし、介入するぞ!


「うっしゃあ!暴れるぜェェェ!」


 言うが早いか、ジゴロウはカルの背中から跳躍する。そして落ちていく勢いを乗せ、巨大ミミズ…いや、あれはミミズなのか?ニョロニョロしていて色は黄色っぽい茶色、そしてその先端は内側にびっしりと牙が生えた口がある。あの口に入ってしまったが最後、ミキサーにかけられたようになってしまうだろう。想像したくもないね。


 とにかく、ジゴロウは上空から巨大ミミズに急襲する。そうして突き刺さった彗星の如き蹴りは、カルの鱗も砕けそうな威力であったことだろう。


「ギュイイイイイイイイイ!!!」

「アァ?あんまり効いてねェのか?」


 巨大ミミズは苦し気で、しかし同情は出来ない耳障りな悲鳴を上げる。しかし、ジゴロウは手応えをあまり感じていなかった。実際、巨大ミミズはそれだけでは仕留めきれておらず、すぐに鎌首をもたげる。


 ビグダレイオからあまり離れていないのに、ジゴロウで倒しきれないこの強さの魔物がいるのか。いや、妙にタフなだけなのかもしれない。兎に角、いつも通りに【鑑定】だ!


――――――――――


種族(レイス)砂魔蟲(サンドワーム) Lv24~29

職業(ジョブ):なし

能力(スキル):【悪食】

   【牙】

   【酸】

   【単為生殖】

   【体力強化】

   【防御力強化】

   【打撃耐性】

   【土属性耐性】

   【水属性耐性】

   【火属性耐性】

   【風属性耐性】

   【砂属性耐性】


――――――――――


 うっわ!何だよ、このガチガチの防御にタフな能力(スキル)は!だが、これでジゴロウでも倒しきれなかった説明がつく。【体力強化】に【防御力強化】、さらに【打撃耐性】まであってはジゴロウの蹴りであっても効きが悪いのも頷けるというものだ。


 しかも土・水・火・風の四属性に強いらしい。それにしても、ハッキリとした弱点が無い敵というのも珍しい。しかし、【砂属性耐性】とはおそらく【砂塵魔術】に耐性があるという意味なのだろう。これは昼夜の寒暖差が激しい砂漠の環境に適応しているってことか?


「まあ、なら他の属性を使うだけだ。ジゴロウ、こいつには打撃は通りにくい。斬撃と刺突を狙え」

「そっかァ!なら、こうりゃいいんだなァ!」


 私がアドバイスをすると、ジゴロウは爪で切り裂き、角を突き刺す。更に躊躇なく砂魔蟲(サンドワーム)に噛み付き、そのまま肉の一部を引き千切った。もしも流血表現とかがリアルなゲームだったら、きっと汚い色の体液が撒き散らされていたことだろう。


 それにしても、よくそんな気持ち悪いモノに噛み付けるものだ。うぇっ、しかも咀嚼してやがる!?食うな!ペッしなさい!


「ガルル…」

「…うむ。アイリスを抱えたまま突っ込む訳にもいかん。私と一緒に援護に徹しよう。ああ、【火魔術】は使うなよ?効きが悪いからな」

「ガウッ!」


 カルが『どうするの?』と目で訴えかけてくる。それは彼が抱き抱えるようにしてここまで運んで来たアイリスがいるからだ。思い切り戦おうとすれば、彼女をどこかに降ろす必要があるが、そんな時間はない。今もジゴロウは牙や爪を使って戦っているのだ。援護しなければ数の力で押し切られるかもしれない。


 それに普段は前衛で暴れるカルにとって、これは魔術を訓練する絶好の機会だ。大きい的に安全な場所から魔術で鴨撃ち出来るなんて、滅多に無いぞ?


「すみませぇん…」

「気にするな。カルも気にしていないのだから。では先ず纏めてしまうか。呪文調整、聖輪(ホーリーリング)


 【神聖魔術】の聖輪(ホーリーリング)によって砂魔蟲(サンドワーム)の何匹かを束ねて拘束する。これで身動きがとれまい。更に的として相応しい姿になったではないか。


「ゴオァッ!」

「えいっ!」


 カルは口から闇槍(ダークランス)を放ち、アイリスはポイポイと投擲用アイテムを投げまくる。今更ながら、カルは魔術を使う時に口から放つクセがあるらしい。小さなころは私の真似なのか掌や尾の先から放っていたのだが、口から出すのがやり易いようでそのスタイルに落ち着いている。


 一方、アイリスは【投擲術】を持っているはずなのに、投げた武器の精度が良くない。やはり、環境のせいで動きのキレが悪くなっている可能性が濃厚だ。こういう仕様に関しては早急に把握しておく必要があるな。


「ブオオオオオオッ!」

「ブガアアアアアッ!」


 おや?助太刀している戦士達だが、どこかで聞いたことのある雄叫びを上げている。…そうか。彼らの正体がわかったような気がする。


「ハッハァ!アンタ等もやるじゃねェか!」

「ふはは!余所者に負けておられんよ!」


 特に私に返答した、特に大柄な戦士の戦闘力は凄まじい。ジゴロウと並ぶ速度で砂魔蟲(サンドワーム)を次々と始末していく。二人の妙な競争心が、砂魔蟲(サンドワーム)を倒す速度をどんどん上げている。


 ただ、二人とも。その快進撃は背後から迫る砂魔蟲(サンドワーム)を牽制する我々の援護あってのことだぞ?そこにもうちょっと配慮してくれないか?滅茶苦茶忙しいんだが!?


「ギュオオオオオオオ!」

「ギュギュエエエエエ!」


 かなりの数がいた砂魔蟲(サンドワーム)だが、討伐されていったことで数の利を失った。そうなるが否や、連中は砂の中に潜って帰っていくではないか。数の力で押し潰し、それが敵わなかったら即座に撤退…実に見事である。


「逃げたか。天晴れな逃げ足だ」


――――――――――


戦闘に勝利しました。

種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

種族(レイス)レベルが規定値に達しました。進化が可能です。

職業(ジョブ)レベルが規定値に達しました。転職が可能です。


――――――――――


 って!うおおおおお!?つ、遂に50レベルの大台に突入したか!きっとイベントの時の白光能天使(ホワイトエクスシア)を連続討伐したことが効いているのだろう。経験値を持ち越していたのである。


 うひょー!次はどんな進化が待っているのかなー?楽しみだなー!私が内心大盛り上がりしつつカル達と共に地面に降りる。するとジゴロウと一緒になって助けた戦士達がこちらに近付いて来た。


「奴らはいつもそうだ。数で劣る相手を襲い、数で劣った時点で逃げる。そういう生態なのだ」


 砂魔蟲(サンドワーム)の生態を語るのは、例によって一番大柄な戦士であった。彼はフルフェイスの兜を被っていたが、それを外す。それに倣って他の戦士達も兜を脱ぎ捨てる。そして彼らは私達に頭を下げた。


「ご助力に感謝するぞ、名も知らぬ旅人よ。私はボオイ。このビグダレイオでは百人長を拝命している猪頭鬼(ボアオーク)だ」

猪頭鬼(ボアオーク)…確か豚頭鬼(オーク)の進化した姿だったか?」


 猪頭鬼(ボアオーク)はエイジから聞いたことがある。ビグダレイオの主な種族(レイス)である豚頭鬼(オーク)の進化先の一つだ、と。確かにエイジよりも更に巨体であるし、下顎から覗く立派な二本の牙は雄々しさを感じさせる。


「全ての豚頭鬼(オーク)がそうなるとは限らないが、その通りだ。そして恩人よ、一つ問いたい。貴殿等は何者で、何のためにこの地までやってきた?」


 むっ、返答によっては戦うのも辞さないといった構えのようだ。自分たちの方が消耗しているというのに、同胞のためならば命を賭して戦うというのか。エイジの言う通り、彼らは武士のような性格なのだろう。


「危害を加える気は無い。私はイザーム。ビグダレイオにいるエイジと兎路という二人に会うためにやってきた風来者だ」

「エイジと兎路…おお、あの風来者達か!」


 お?どうやらボウイ氏は二人の事を知っているようだ。


「二人は有名なのか?」

「当然だ。今ビグダレイオにいるただ二人の風来者だからな」

「それもそうか」


 現在、ビグダレイオにたどり着いたのは小鬼(ゴブリン)の集落で聞いた噂を信じて愚直に南進した二人だけである。今はエイジがビグダレイオに到着したことを掲示板で報告したので、一部のプレイヤーが目指しているようだ。


 しかし、未だに到達した者はいない。エイジ曰く、それなりに厳しい道程だったので、逆に一発で辿り着けた彼らは幸運だったらしい。ビグダレイオを目指す魔物プレイヤー諸氏には是非とも頑張って欲しいものだ。


「しかし(ドラゴン)を従えているとは驚きだ。格は…劣龍(レッサードラゴン)か?」

「正解だ。この子は劣龍(レッサードラゴン)のカルナグトゥールという。出会うまでには色々とあったよ」

「そうなのか」


 女神に貰った謎の卵から産まれた、と言っても信じてくれないだろうからはぐらかすことにする。それよりも一つ言っておかねばならないことがある。


「それとカルは従えているというよりも、仲間の一人だと認識している。そこは勘違いしないでくれ」

「グルゥ!」


 同意するようにカルは頭を擦り寄せてくる。これだけ大きくなってもまだ甘えん坊なのは全く変わらないな。こんな反応を返してくれるカルを、ただの手下のように扱う事は私には出来ない。


「それは済まない。我が国にも騎兵はいるが、同じように怒られたことがあったよ。貴殿なら彼らと気が合うだろう」

「それよりよォ、なんで苦戦してたんだ?テメェ等の腕前で苦戦する相手じゃなかったろ?」


 我々の会話にジゴロウが割り込んで来た。確かに、ジゴロウの言いたいことも理解できる。まだ【鑑定】していないがボウイ氏はとても強そうだ。恐らくだがジゴロウと同等の強さを誇っているのだろう。他の戦士も歴戦の猛者に見えるのに、どうしてあの程度の魔物に苦戦していたのだろうか?


 彼らが初めてあの砂魔蟲(サンドワーム)と戦ったのならわかる。きっと地中から奇襲を仕掛けてくるだろうから、初見だったら格上であっても敗北する可能性はある。だが、彼らはこの地域の出身であり、生態を知っているくらいには戦い慣れている。だからこそ、疑問に思うのは当然であろう。


「情けない話だが、我らはとある魔物の調査に向かった帰りだったのだ。遠くから観察していただけだったのだが、攻撃されてしまって怪我人が多く出てしまった。そのせいで後手に回ってしまったのだ」

「とある魔物?それは一体?」

「わからん。遠距離からの攻撃で何かが刺さったこと、そして刺さったものには麻痺毒が含まれていたことはこの身で知ったよ」

「それは災難だったな」


 砂漠に潜む脅威、と言ったところか。ビグダレイオに住む者達でもわからない強力な魔物…これは…


「そいつァ強そうだ!兄弟、俺達でヤっちまおうぜ!」

「はぁ~…そう言うと思ったよ…」


 やっぱりな!ジゴロウはそう言い出すと思ったよ!この戦闘狂め!目的を忘れたのか?ここにはエイジと兎路を迎えに来たんだぞ?なのにここの問題に首を突っ込んではバーディパーチに戻るのは遅くなりすぎる!


「珍しい魔物…レアな素材…うへへぇ…」

「アイリス?君も目的を忘れていないよね?」


 アイリスまで何を言っているんだ!?暑さでおかしくなったとでも言うのか!?


「本当か!?まだ調査段階ではあるが、貴殿等のような手練が討伐に参加して貰えるのなら有難い!長期滞在の許可も必ずや降りるだろう」

「あ、いや…我々は…」

「色々お得じゃねェか。うっし!じゃあ行こうぜ!アンタ等の国によ!」


 ジゴロウはボウイ氏と共に歩き出した。私は頭を抱えながら、心配そうに私を見るカルとブツブツと何かを呟いているアイリスを連れて彼らについていく事しか出来ないのであった。

 砂漠と言えばワームを出さなきゃ(使命感)


 次回は3月10日に投稿予定です。

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[気になる点] P149 「まあ、なら他の属性を使うだけだ。ジゴロウ、こいつには打撃は通りにくい。斬撃と刺突を狙え」 「そっかァ!なら、こうりゃいいんだなァ!」 こうすりゃだと したの方 …
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