真実と新たな発見
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【火炎魔術】レベルが上昇しました。
新たに炎帯の呪文を習得しました。
【時空魔術】レベルが上昇しました。
新た集団転移にの呪文を習得しました。
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うむ。激戦だったこともあって、格下ばかりだったがレベルが一つ上がってくれたか。魔術も新しく二つも習得したし、とても実りある戦いであった。
「あ、あのー、イザームさん?ちょっと良いですか?」
「何だ、と言っても大体何を聞きたいのかは解るがね」
そう言って私は銀色の仮面を外す。仮面の下に隠されていた私の凶悪な素顔(?)に、全員が驚いているのが伝わってきた。
「皆を我がクランに誘ってから話そうと思っていたのだがな。詳しくは剥ぎ取りを終えてからにしよう」
「せやな。丁度ええ場所もあることやし」
そう言って七甲が嘴で指し示すのは、住人が全滅した蟻の巣穴だ。一応確認は必要だろうが、一息付けるだろうとは思う。そこで私の事情を彼らに話そう。そしてクランに勧誘するのである。
順序が逆になってしまったが、勧誘しようと思った時点でいつかは教える事になっていたのだ。予定が前倒しになっただけだと考えよう。うん。
◆◇◆◇◆◇
蟻の巣穴は探索するとなると本腰を入れねばならなくなる程に広かった。あれだけの数の巨大な蟻が住んでいたのだから、当然と言えば当然である。なので我々は入り口のすぐそばで円座を組む事にした。
「…という感じで私は深淵系魔術を習得し、今の種族である混沌深淵龍骨大賢者に至ったのだ」
私はこれまで私の冒険とその顛末について皆に語った。もちろん、アグナスレリム様のことや『古代の移動塔』へ入る合言葉などは曖昧な表現に抑えてだが。重い沈黙が場を支配するが、そんな中で最初に言葉を発したのはモッさんだった。
「はぁー、それは隠したいと言うか、隠さなければどこまでも追いかけて聞き出そうとするプレイヤーが出てくるでしょうね」
「それに嫉妬であること無いこと出鱈目を広げる奴も出てくるやろうしな」
「うげっ、ストーカー?それは嫌ね」
「実際、魔専スレでも進化した種族のことになるとギスギスし始めることが多いですし」
モッさんや七甲、そして兎路とエイジは私が素性を隠していた事に一定の理解を示してくれた。彼らの指摘はまさしく私が危惧していた事でもある。
「それよりも俺は【錬金術】を使えば特殊な進化が出来るってのを試してみたい。やってくれんなら隠し事云々はどうでもいいや」
「あ、こっちは自分で試してみるよん。曲りなりにも錬金術師だしね~。むしろ情報ありがとうって感じ?」
激戦を潜り抜けた後で進化可能になったセイとしいたけはそう言った。二人には進化する前に私の話を聞いてもらったので、何か使えるアイテムがあれば早速進化の際に使って貰うとしよう。
「ってか、あたし達みたいな初心者に教えても良かったの?」
「ありがたいけどねー」
紫舟とウールに関しては教えたこと自体に困惑しているようだった。どうやら彼らは私が隠し事をしていた件について咎めるつもりは無いらしい。それはそれで都合がいいが、加えて言っておかねばならない事があった。
「七甲達には話しておいたのだが、今の話を聞いた上で聞こう。全員、私のクランに入ってくれないだろうか?」
それは勿論、勧誘である。引き込んでおけば何をどれだけ教えていても問題は無いのだ!
「強制はしないし、今すぐに決めろとは言わん。だが、このイベントが終わる迄には答えを決めておいて欲しい」
私は無理強いするのもされるのも好まない。だから勧誘もこのくらいでいいだろう。
「さて、面倒な話はここまでにしよう。次は楽しい進化の時間だ」
「おおっ!」
「待ってました!」
ここからは後回しにしていた進化の時間である。このタイミングで進化可能なのはしいたけとセイの二人。ここまでの戦いで得たアイテムの中に、彼らの進化に使えるモノがあれば使ってしまおう。
「では先ず持っている素材アイテムを出してみてくれ。使えるかどうかを調べる必要がある。一見使えなさそうなアイテムでも一応見せてくれ」
「ほいよ」
「わかった」
私の要請に従って、しいたけとセイは彼らがこれまでの戦闘で集めてきた様々なアイテムを並べて行く。魔物の角や爪、道中で採取したのであろう植物もある。おお、私の骨には適合しなかったが、鉱石も使えれば面白そうだな!
もし持ち込み制限が無ければ私が死蔵している様々なアイテムを提供しても良かったのだが、如何せん今は手元に無い。このイベントで得たアイテムだけで遣り繰りするしか無いのだ。
「よし、では見ていこう…おや?」
私は自分にやるように【錬金術】の融合を使おうとした。だが、何故か私の視界には『対象は融合出来ません』と出てくるではないか!
「どうしたん?」
「い、いや、何でもない」
まてまてまて!待ってくれ!あれだけ期待させておいて『無理でした』なんてとても言えんぞ!か、考えろ!どうにかして言い訳を…ってそうだ!
「こっちなら…行ける!」
私が思い付いたのは、混合獣作成という呪文だった。最も最近覚えた【錬金術】の呪文であり、試そうにもそんな機会が無くて放置していたものだった。
私は一縷の望みをかけて混合獣作成をセイに使おうとしてみる。すると『素材を選んで下さい』という文字が表示されたのである。あー、良かった。こっちなら色々と出来るようだな!
と言うかこの混合獣作成ってプレイヤーも対象だったんかい!
「すまん、手間取った。私の時と同じやり方ではダメだったようでね。ああ、安心してくれ。別の手段があったから」
「別の手段?」
錬金術師であるしいたけは興味深そうに聞いてきた。自分でやろうとしていた彼女にも伝えておかねばならないだろう。
「さっきも言ったと思うが、私は合成や融合、そして変形を用いて肉…骨体改造を施した。だが、何故かそれでは上手く行かなかったのだよ」
「それで?」
「【錬金術】レベルが20になった時に習得した混合獣作成。これを使えばどうにかなりそうだ」
「20かぁ~!もうちょっとだけど、まだ届いてないや。悪いけど今回はこっちもやってくれる?」
しいたけの【錬金術】レベルはまだ20に達していないらしい。戦闘系の能力と違って生産系の能力はレベルを上げるのに時間がかかる。レベルが低くとも仕方がない。なのでこの手段を用いることは出来ないようであった。
「わかった…と言いたいが、何事も素材の質を上げた方が良いだろう。個数の多いアイテムのレベルを上げておいてくれ」
「ほーい」
しいたけはそう言うといそいそと素材アイテムの合成を始める。真っ先に取りかかったのは、先の戦闘で腐るほど手に入れた劣崩蟻達の素材だ。顎や毒針なんかが使えそうだな。
「では、セイの強化を始めようと思う。使えるのは…動物系か」
セイの持つアイテムの内、使えるのは魔物の毛皮や牙などであった。アイテム同士を選択した時、『対象との混合獣化成功率は◯◯%です』と表示されるのだ。セイの場合は金属系や植物系のアイテムでは0%、虫系のアイテムでは10%以下となっている。これってほぼ失敗するということだよね?
それに成功率は解っても、どんな混合獣になるのかは教えてくれない。結果がどうなっても自己責任、ということなのだろう。特に確率が一桁の奴って成功すればとんでもなくレアな魔物になりそうだ。完全にギャンブルである。
「一つしか選べないみたいだ。何と混ざる?」
また、二つ以上の素材を選ぼうとしたら『これ以上の素材は選べません』と出る。今回だけなのか、はたまた毎回そうなのかは不明だが、取り敢えず選べるアイテムは一つだけのようだ。
「一個かぁ…じゃあこれしか無いよな」
そう言ってセイが棒で突いたのは、『獣鬼の皮膚』だった。元々は加工して皮革にし、革防具にする素材である。品質は『良』と悪くないし、素材となった魔物のレベルも最も高い。成功率も93%と非常に高い。セイの言う通り、彼の持つ素材から選ぶなら『獣鬼の皮膚』一択だろう。
「そうか。ああ、そうだ。君の従魔はどうする?混合獣に出来そうではあるが」
セイの従魔はまだ進化が出来る20レベルまで達していないものの、混合獣作成の対象にはなるらしい。今すぐに強化したいのなら直ぐに可能であった。
「出来るのか!なら、やるわ」
「だったらアイテムも選ぶといい。狼君は動物系から一つ、そして妖精君は虫系と魔石から二つ選べるようだぞ」
「テスは二つも選べるのか!だったらフィルはこの『刃馴鹿の角』で、テスは『大揚羽蝶の羽』と普通の魔石にしよう」
ふむふむ。狼のフィルには新たな攻撃手段を、そして妖精のテスには美しい羽と魔石を与えるということか。あ、ならばその前に…
「セイ、私の杖には魔石を作り出す機能がある。良ければ君が欲しい属性付きの魔石はあるか?」
「魔石を作れるって、凄いな。それなら光属性の魔石を出して欲しい。代わりに魔石を幾つか渡すからさ」
「別に無償でもいいのだがね。わかった」
私は杖の【属性魔石排出】によって光属性の魔石を一つ作り出す。私のレベルが上がったからか、【属性魔石排出】には能力レベルは無いのに出てくる魔石の品質は『可』ばかりになっている。セイの持つ魔石の品質も同じだし、これなら問題無いだろう。
「よし。では順番にやっていこう。最初は誰にからにする?」
「当然、俺からだ」
うむ、男前だな。従魔からでは無く、自分の身体で先ずは試してみようというのだから。
「そうか。早速始めるとしよう。魔法陣展開…さあ、この上に素材と一緒に立ってくれ」
「お、おう!」
男前な返事をしたとはいえ、少しは緊張しているようだ。私の展開した少し輝く怪しい魔法陣に自分から足を踏み入れるのには躊躇いを覚えるのだろう。気持ちはわかるぞ。
「…入ったな。では混合獣作成!」
「おおっ!おおおおお!?」
『獣鬼の皮膚』を担いだまま魔法陣に入ったセイに術を掛ける。すると手の中のアイテムが青白い粒子へ変わり、彼の身体に吸い込まれていった。元のアイテムは魔物の皮膚であるのに、エフェクトはとても幻想的で美しいではないか。
それと同時に、セイの身体にも変化が起こる。エフェクトに包まれたまま、メキメキと音を立てて彼の身長が大きくなっていく。先ほどまではニホンザルよりも少し大きい程度だったのが、人間と同じサイズまで大きくなったのだ。
と言うか、シルエットだけなら完全に筋肉質で大柄な人間だ。まあ全身から毛が生えているし完全に顔は猿のそれなので明るい所で見間違えることは無いだろうが。
彼の変化が終わると同時に、白い粒子のエフェクトは消え去った。成功したとは思うが、どうだろう?
「どうだ?種族に変化はあるか?」
「…ああ。勝手に進化してやがる。猿猴だってよ。さっき見た時の選択肢には無かった種族だ」
どうやら種族は勝手に進化した扱いになるようだ。そして通常の進化では出現しなかった進化先に至れる、と。いいねぇ。ならば一つ試してみようか。
「更に混合獣作成を使う事は…出来ないらしい。もう二度と出来ないのか、間を置けば可能なのかはわからんがな」
「そうなのか?まあすぐに混合獣作成の世話になるつもりは無いけどさ」
条件は不明だが、連続して混合獣作成を使う事は出来ないようだ。ここら辺の仕様を解明するのは面倒だが、これから経過を見ていけばいいだろう。
「次に移ろう。狼君と妖精君を順にやっていくぞ」
混合獣作成をした結果、フィルは大狼から頭部に角の生えた角狼に、テスは光妖精から蝶妖精へと種族が変化している。進化直前でなくとも種族が変わるんだな。融合で弄くった私とは大違いだ。
「そっちは終わった?じゃあ今度は私の番だよね?」
「使いたいのはこれか?」
しいたけが持ってきたのは『劣崩騎士蟻の毒針』であった。毒キノコであるしいたけが毒針と混ざろうというのか。成功率は75%となっているし、普通に成功するだろう。
「成功率は75%らしいが、いいか?」
「いいよ~。失敗したらしたでどうなるのかがはっきりするしね」
「わかった。なら魔法陣に入ってくれ」
「ほいほい」
こっちはこっちで豪胆である。しいたけは意気揚々と魔法陣に入ると、ワクワクしている様子で発動を待っている。なので私は即座に術を行使した。
「おっほぉ~!キタキタ~!…ふむふむ、毒動針茸だってさ!上手く行ったよ!」
進化したしいたけの姿は、毒々しい色の太い針が傘の中央部から一本生えたキノコだった。針が生えた以外に変わった点は無かったものの、成功したのは間違い無かろう。
さて、進化は終わった。次は巣穴の内部をしっかり調べるとするか!
レッド・デッド・リデンプション2、ストーリー全クリしました。やっぱり西部劇って、ほんっとうにいいもんですね。
よっしゃ、迷ってたけどやっぱりガンマンのキャラを出すぞぉ!(確固たる決意)
次回は11月10日に投稿予定です。




